宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 8
著者 高田敞
(以下{ }内は上記本よりの引用)
{インフレーション宇宙論の登場}
問題1
{インフレーション期の宇宙は、10の数十乗分の1秒という一瞬に,大きさが数十桁も増大したと考えられています。}
考察
問題1の2行を書く時間で、宇宙は数百乗桁も増大することができるということだ。すごいことだ。宇宙が膨張する方が、文字を書くより、数百乗桁も速いのだ。
インフレーション宇宙とはすごいことだ。宇宙が数十桁膨張する間に、文字一つ書けないのだ。
地球一つだって1m公転軌道を変えるのだって、並大抵のことではない。火山の爆発だって、大地震だって、核爆発だって、地球の公転軌道を変えられない。それなのに、インフレーション宇宙は、全宇宙の物質を、一瞬で数十乗桁も動かすというのだからすごいことだ。どれほどのエネルギーだろう。
もちろん計算してあるのだろうと思うけど。まあ、無理でしょうね。宇宙の物質の総量が分からない。動かすエネルギー源が分からない。肝心なことが何一つ分からないんだから、何にも分かってないでしょうね。それなのに、{インフレーション期の宇宙は、10の数十乗分の1秒という一瞬に,大きさが数十桁も増大したと考えられています。}と、堂々と宣言している。科学というのは大見えを切ればいいんだ。それも超特大の、宇宙より大きいくらいの大見えを切ればいいということのようだ。
インフレーション宇宙が考えられた理由は、{猛スピードの膨張だからこそビッグバンモデルが抱えていた難問を解決できるわけです。}ということだ。なにか具体的なもの(空間を膨張させる猛烈なエネルギーの発見とか、何かすごい爆発が観測されたとか)が発見されたから生まれたものではないということだ。自分たちの理論の矛盾を解決するために、現象を支える証拠も理論も何一つないけど、まあ、とりあえずそういうことだと助かるなあということで、あり得ない現象を持ち出しただけみたいだ。銀行の借金の穴埋めに、サラ金から借金するようなものだ。
問題2
{初期宇宙では大量のモノポールがつくられたと予測されています。}{しかし、初期宇宙がインフレーションを起こしたと考えると,モノポールの密度は極端に薄められることになります。そのため,現在の宇宙ではモノポールの密度はとても低く,観測にかからないのだと考えられるのです。}
考察
インフレーション前の初期宇宙ではすでにモノポールができていたということだ。すると、そのときにはすでに他の素粒子もできていたと考えられそうである。そうとしたら、モノポールがインフレーションで薄められたように、他の素粒子も{猛スピードの膨張}で極端に薄められたはずだ。モノポール同様、観測にかからなくなるということになりそうだが。他の素粒子は、星になったりしてたっぷりあるのはどうしてなのだろう。
たぶんモノポールだけは、インフレーションのときに既に生まれていたが、他の素粒子はまだ生まれていなかったのだろう。なんていったって、モノポールは薄めたいが、その他の素粒子は薄めるわけにはいかないのだから。
で、他の素粒子は、ビッグバンを待って誕生したということになったのだろう。
また、モノポールができたときは、インフレーションの始まりのときと同じか、それ以前であると思われる。すると、ほぼ宇宙創成の瞬間とともに生まれたと考えられる。インフレーションは{10の数十乗分の1秒という一瞬に}起こったというのだから、その間に、モノポールもできたのだろう。そして吹きとばされた。
ではモノポールはどこにあったのだろうか考えてみる。宇宙創成の瞬間、まだ、インフレーションも始まらないときだから、まだ宇宙は膨張していないから非常に小さな時だったと考えられる。するとその中に、無数の、インフレーションビッグバン流に言えば、10×10237個ほどのモノポールが詰め込まれていたということになる。モノポールはプラス極のとマイナス極のとがあるというが、それがおそらく隙間もなくぎっしり詰まっていただろう。隙間どころか、すべてが、互いのモノポールに埋め込まれていたはずだ。インフレーション前の宇宙は、素粒子1個分にも足りない大きさなのだから。そこに、10×10237個ほどのモノポールが詰め込まれていたとしたら、すべてのモノポールは1個に合体していただろうと思われる。すると、モノポールは+極と−極でくっつきあって普通の磁石になってしまわなかったのかしら。それより、もし宇宙初期の小さな空間にモノポールが無数にできたら、それだけで、ブラックホールになってしまうだろう。
ところが、モノポールはくっつきもしないで、ブラックホールにもならないで、無事インフレーションとやらでばらばらに吹き飛ばされたということだ。めでたしめでたし。
問題3
{初期宇宙ではN極だけ,またはS極だけの素粒子{モノポール}が,大量につくられたと考えられます。}というほど大量のモノポールがあったという
考察
すると、それが{現在の宇宙ではモノポールの密度はとても低く,観測にかからないのだと考えられるのです。}というまで薄まるには、宇宙はかなり大きくならなくてはならないことになる。この本ではインフレーションで宇宙は直径100mほどに膨らんだという説を言っているが。直径100mとか直径1kmとかのレベルではとても薄まらないだろう。直径1光年ならどうだろう。これくらいではまだ無数に観測されるだろう。では、1億光年ではどうだろう。これなら何とかなるだろうか。最初のモノポールの量が不明だから分からないが、これなら何とかなるかも。ただ、普通の物質は、半径137億光年の宇宙に膨らんでいるにもかかわらず、たっぷり観測されているのだから、1億光年くらいではとても薄まらないとは思うが。おそらく、100個ぐらいはすぐ見つかりそうな感じがする。
しかし、これ以上大きくなると、ハッブル定数とやらで、138億年前には、銀河間の距離が0になり、宇宙のすべての銀河が1点に集まるという理論と整合性がなくなる。138億年前には、すでに、インフレーションで、宇宙は1億光年にも広がっていて、とても1点とは言えなくなる。最初の一瞬だけはハッブル定数ではないということもありかも知れないが、それでは、ハッブル定数の初期設定を、1億光年とか、2億光年とかにしなくてはならない。銀河間0mではない。いや、星がぎゅうぎゅう詰めだから銀河間は0mになるか。直径一億光年の火の玉だ。壮大なことだ。
問題4
{10の数十乗分の1秒という一瞬に,大きさが数十桁も増大した}
考察
加速度の問題がある。膨大なモノポールを、一瞬で光速の数10桁の速度に加速する。ものすごいエネルギーがいる。このエネルギーが、原子より小さな真空にあったということになる。
モノポールが質量をもたなかったということが考えられる。素粒子が質量を持ったのは、ヒッグス粒子によるというから、インフレーションのときには、質量がなかったといえそうである。すると、ヒッグス粒子ができたときには、モノポールは、はるか遠くに飛び散ってしまっているから、ヒッグス粒子に出会わないことになるから、いまだに、モノポールは、質量を持たないままなのかもしれない。
ヒッグス粒子は、陽子の100倍以上の質量を持っているということだから、インフレーションでも加速するのは非常に大変であることがいえる。とても、質量のないモノポールには追いつかないだろう。
これは、モノポールが観測されていないから検証ができない。
空間膨張だから、空間とともに膨張しているから、空間に対して加速しているわけではないから、エネルギーはいらないということかもしれない。
このときは、空間というものの構造を示さなければならない。空間の構造と空間の膨張の仕組みを示し、それゆえに、空間とともに膨張すると、加速のエネルギーはいらないと科学的に述べなくてはならない。ところがそれがない。空間とは何かがわかっていないからだ。空間について何一つ分かっていないのに、空間が膨張すると平気で述べている。この場合は科学の理論にはならない。
結論
難問が一つ解決したら、難問が一つ現れる。あちらを立てれば、こちらが立たず、である。困ったもんだ。