「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 5

著 高田敞


     


(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

{宇宙が膨張している証拠が見つかった}P24〜25

問題1

{ハッブルはこの法則をたった18個の銀河の観測から,みちびきだしました}

考察

ビッグバン理論には、現在、銀河団内の銀河は膨張しないという理論がある。銀河団は、内部だけでなくかなり遠くまで、ガスに満たされていて、万有引力で強く結び付いているという観測がなされている。この為に膨張しないということだ。(注;ビッグバン論者はダークマターだといっている。しかし、謎の物質であるダークマターは観測されていないが、通常のガスが銀河団の中や外をおおっているのは観測されている)

ハッブルが観測した銀河は、銀河団の内部の、銀河系が含まれている局部銀河団の銀河や、おとめ座銀河団の銀河である。したがって、万有引力で結びついていて、膨張はしないことになるはずである。実際、銀河系とアンドロメダ銀河は接近しているという観測である。

したがって、ハッブルの観測した銀河が、赤方偏移しているから、銀河が遠ざかっているということには矛盾が生じる。

 これに対し、高田式定常宇宙論だと、銀河の赤方偏移は、銀河の光が宇宙空間物質に衝突することによって、光のエネルギーが奪われることによって生じるとする。これだと、局部銀河群の銀河も、おとめ座銀河団の銀河も距離によって赤方偏移するので矛盾は生じない。元々宇宙は膨張しないという考え方だ。

結論

ハッブルの発見したのは、距離と赤方偏移の関係であって、赤方偏移と宇宙空間膨張の関係ではない。

 

問題2

{自由に伸び縮みするゴムでできた板}の比喩

考察

ゴムの板を均一に延ばすと、{宇宙を表}すということである。

ゴム板を均一に伸ばすのはかなり難しいことだ。よほど、うまく力をかけないと歪みが生じる。これを、地球ほどの大きさのゴム板にすると、均一に延ばすのは人間にはできないことだ。コンピューター制御の機械でもほぼ不可能だろう。太陽系ほどの大きさになると、ゴム板を作ることさえ不可能に近くなるだろう。

宇宙の大きさは地球どころではない。これを均一に延ばすという。至難の業だ。

結論

ものには大きさがある。小さいものでできても大きくなるとできないのは普通だ。地球も太陽ほどの大きさにすると、核融合を始める。太陽も、数十倍ほどにすると、あっという間に燃え尽きて爆発するという。

ゴム板の比喩は、もっともらしいが、宇宙を表すには小さすぎて役に立たないか、間違いに陥る可能性があるといえる。

 

問題3

{宇宙のすべての物質は、過去に狭い場所に集まっており、非常に高密度な状態だったことになります}

考察

太陽系は46億年間膨張していない。その原因は、太陽系の空間は膨張しているのだけれど、太陽の重力が空間膨張より大きいから膨張しない、ということらしい。

銀河系の星が宇宙膨張の為にばらばらに離れていかないのは、銀河系の重力が空間膨張より強いからということだ。

銀河系と、大小マゼラン星雲も離れていかないのは、銀河系とマゼラン銀河の引き合う力が空間膨張より大きいからということだ。銀河系とアンドロメダ銀河が接近しているのも、空間膨張より、二つの銀河間に働く重力が大きいからということだ。

 これが、地球から近い場所の星や銀河が離れていかない理由だとビッグバン論者は言っている。

 {宇宙のすべての物質は、過去に狭い場所に集まっており、非常に高密度な状態だった}ということだ。この宇宙の全物質が、狭い場所に集まっていたのだから、その相互に及ぼし合う重力は非常に大きかったと思われる。太陽1個でも、遠い、肉眼では見えない冥王星を引きつけて宇宙膨張に打ち勝っている。アンドロメダと銀河系は230万光年ほど離れているという。それでも、宇宙膨張に重力が打ち勝って近づいている。

 すると、普通の銀河も、銀河間が230万光年より小さい時は、銀河どうしは膨張できないはずだ。ビッグバン論では、ビッグバンとともに全宇宙の物質ができるというのだから、そのとき、銀河の形はしていなくても、銀河系の物質も、アンドロメダ銀河の物質もすでにできていたはずだ。すると、アンドロメダ銀河と、銀河系の前駆物質はその時から一度も、遠ざかることはできずに、ただ接近することしかできなかったことになるはずだ。

また、{宇宙のすべての物質は、過去に狭い場所に集まって}いたとき、その中には全宇宙の物質が既に入っていたはずだから、宇宙空間は膨張しても、その物質の重力の為に宇宙の全物質は膨張できなかったはずだ。全宇宙の物質は、少なくとも、宇宙が直径230万光年以下のときは、それ以上には、膨張できないことになる。ということは、今観測されている宇宙は、いつどのようにして膨張したのだろうかという疑問が生じる。現在観測されている宇宙と大きな矛盾があるということになる

結論

正確に観測できるところには宇宙膨張は現れないが、観測が不正確なところや、観測できないところではインフレーションビッグバン論の人の言うとおりに宇宙は膨張していく。

 

問題4

{銀河が現在,互いに遠ざかっているということは、時間をさかのぼるほど,銀河間の距離は短かったことになります。}

考察

 さきに述べたように、銀河系とアンドロメダ銀河は接近しているという観測がある。これは宇宙の例外ではなく、衝突している銀河は多数発見されている。

これらの銀河は{時間をさかのぼるほど,銀河間の距離は}長かったことになる。

ではどこまで長くなるだろう。それはインフレーションビッグバン論では、銀河が離れすぎていて銀河どうしの重力が空間膨張の力に負けるところまでである。そのときは、空間膨張によって、時間経過とともに膨張していく。

銀河系と、アンドロメダ銀河は、過去にさかのぼるとどんどん離れていって、空間膨張の力が重力より大きくなったところで、近づきだす。そして、ビッグバンまでさかのぼり、銀河系と一緒になる。離れていってそこから近づきだす境界は、銀河の重力が空間膨張に負ける時だ。その境界の前は、空間膨張の力で銀河どうしは離れていっていたはずだ。すると離れすぎて、空間膨張に負けていたのに、その時点で逆転し重力が勝ったのはどうしてだろうかという疑問が生じる。その時点で、銀河間の重力が急に大きくなったということなのだろうか。ではそのもっと過去だと、銀河間の距離はさらに近くなっていたはずだ。そのときでも、銀河間は空間膨張によって離れていったはずだから、空間膨張の力が重力より強かったということだ。

これは大きな矛盾が生じる。さかのぼっていくと離れる。離れれば離れるほど接近することができなくなるはずだ。接近できなければ、今のように、アンドロメダ銀河は近づいてこれないはずだ。

今、衝突している銀河が数多く発見されている。これらの銀河も遡ると遠く離れていたことになる。ビッグバンのところまでさかのぼっても離れていたことになる。アンドロメダと銀河系のように矛盾が生じる。

 ビッグバンから考えてみよう。物質とエネルギーに関しては、インフレーションとビッグバンで全宇宙の物質とダークマターとヒッグス場といろいろなエネルギーができた(これが今の宇宙論である)。その後も宇宙は膨張した。

 すると、衝突した銀河の物質も、このとき1点(どれくらいの大きさか分からないが)に集まっていたことになる。もちろん銀河系もアンドロメダ銀河も、太陽と地球も、である。そして、これらは重力をものともせずに空間膨張によって互いに遠ざかっていった。これは、互いの重力が、膨張力にかなわなかったからであろう。

 その後、衝突した銀河は、それまで互いに離れていっていたのに、突然、膨張力に打ち勝ち、接近を始めるということだ。その地点は、ビッグバンのときからの空間募宇宙の為に一番遠ざかっているときのはずだ。一番離れた段階で重力の方が打ち勝つ。変な話だ。

 インフレーションビッグバン論では、空間の力は空間膨張では薄まらないで、空間が増えるほどかえって大きくなるといっている。一方、重力はビッグバンのときできただけでその後は増えないから、時間経過とともに物質が離れるほど、重力よる及ぼし合う力は弱まる。その弱まり方は距離の2乗に反比例するという。したがって、銀河どうしが離れると、間の空間の膨張エネルギーは増え、及ぼし合う重力は大きく減ることになるはずだ。ところが、ビッグバン以後、順調に、空間膨張によって離れていっていたはずの銀河どうしが、あるところまで遠く離れると、突然、重力が、空間膨張力に打ち勝ち、たがいに接近し始めるというのだ。

考えられない不思議な現象が起こっているということだ。

 この現象は素粒子でも同じだ。すべての素粒子は、空間膨張で離れていくはずだ。ところが、離れながら原子を作る。原子もビッグバンの空間膨張で離れるはずなのに、集まって、星を作る。星ができときは、ビッグバンのときに比べて、ずいぶん遠く離れていたはずだ。そこまで離れていったのに、星を作る。もっと原子や分子が接近しているときにはばらばらに離れて、空間斥力が増え、及ぼし合う重力が減ると、重力が空間斥力に打ち勝ち、星になる。力学的には矛盾した話だ。

 空間が一番小さくて、空間斥力が一番小さく、すべての宇宙の重力を持つ物質が集まって最大の重力を持っていたときに宇宙は膨張を始める。その後、斥力が大きくなり、及ぼし合う重力が小さくなると、接近を始める。力関係と現象がまるきり正反対になっている。なんとも不思議なのがインフレーションビッグバン宇宙だ。

結論

矛盾だらけなのがインフレーションビッグバン論の素晴らしいところ、かな?ピカソみたいなものか。宇宙は神秘であるという、昔ながらの宇宙像なのだろう。