「宇宙,無からの創生」(Newton別冊)への疑問と反論 2
著 高田敞
(以下{ }内は上記本よりの引用)
メッセージ |
{宇宙はかつて超高温・超密度だった} P10〜11
問題1
{大昔,宇宙全体には水素が満ちていて、超高温・超高密度だった。そのときおきた核融合反応で大量のヘリウムが合成された}
考察
インフレーションビッグバン論では、このとき、今ある宇宙のすべての物質が一か所に集まって核融合をしていたということだ。もちろん、まださまざまな元素はできていなかったが、その元になる水素の形では存在していた。質量でいえば、核融合で質量は減じるといわれているのだから、今あるすべての物質の質量より多いということさえいえる。
太陽1個でもすごいエネルギーを出している。恒星は、銀河系でも1千億個は下らないという。その銀河が、宇宙には1千億個以上はあるという。
1千億の1千億倍の核融合が1か所で起こっているということだ。そればかりではない。多くの銀河にはその中心に巨大ブラックホールがあるという。巨大ブラックホール1千億個分の質量が集まって核融合しているということだ。銀河には、中にもその周りにも、かなりの量のガスがあるということが観測されている。それらも集まって、核融合をしていたということになる。そればかりではない。銀河団には中にも外にも、水素を中心としたガスが満ちていることも観測されている。それも集まって核融合していたということだ。そればかりではない。銀河団と銀河団の間にも、ガスがある。これも、核融合していたということだ。ガスを合わせると、星を上回る質量があると思われる。
これらすべてが、1か所で核融合していたというのは、ものすごいことだっただろう。
{そのとき起きた核融合反応で}と書くのは簡単である。ものの数秒ですむ。労力もたいしたことはない。しかし、実際にそのようなことが起きたとなると、まるで違う。その核融合の反応のエネルギーはどれほどになっただろう。星なら、超新星になって粉々になれば済む。しかし、宇宙全体が隅から隅まで核融合していると、爆発して飛び散ることはできない。もし宇宙に端があるなら、宇宙の端を物理的爆発では越えられないはずだから。
まさかとは思うが、そのときの火の玉は超新星ほどと思っているのじゃないでしょうね。それとも超新星の3万倍くらいとか。少なくとも、全宇宙の物質が、水素の形になってそこで核融合していたとは思っていないでしょう。
この本では、観測可能な宇宙の半径が414億光年だということだ。そのほかにも数十のそれと同じくらいの宇宙が広がっているということだ。その広大な宇宙がビッグバンのときにはすべて集まって火の玉になっていたというのだ。その全物質が、そんな小さな領域に集まったら、火の玉では済まないはずなのに、簡単に火の玉などといっている。
結論
言うは易し、行うは難しである。
問題2
宇宙の大きさと、集合した物質の重力と、ブラックホール。
考察
インフレーションビッグバン論では、このとき集まっていたのは、現在の宇宙のすべての物質とダークマターであるはずだ(ビッグバン論者は、ビッグバンの後、宇宙は素粒子を生んだとは述べていない)。これらは共に重力を持っている。
このときの宇宙の大きさはどれくらいなのだろう。その中に、これだけの物質と、謎の物質が詰まっていたら、必ずブラックホールになる。何故ブラックホールにならずに、核融合などしていたのだろう。中性子星だって重力が強くて核融合せずにすべてが中性子になるといわれている。何故、物質が水素のままで存在して、核融合でヘリウムを作ることができたのだろう。
結論
ビッグバン論者はそのときすべての物質が集まっていたとは考えていないからだ。理論に都合のいいほどほどの量しか考えていない。
問題3
{太陽に含まれるヘリウムの量を説明するには,核融合反応だけでは不十分で,太陽ができる以前から大量のヘリウムが宇宙に存在していたと考えなければならないことをガモフは明らかにしました}
考察
地球には水素以外の元素がかなりの割合で存在する。これは、地球を構成する元素が、一度以上、他の恒星の中で核融合したことを示している。また、鉄以上の元素があることから、一度以上、超新星爆発を経ているということもわかる。
太陽系ができたとき、太陽も地球も同じ星間ガスの収縮によってできたと考えられるから、太陽の元素も、一度以上他の星の中で核融合したと考えられる。そのときつくられたヘリウムはかなりの量になるだろう。それが、今の太陽の中にあるということは考えられる。一度で足りないなら、2度、3度と、星になったということだ。少なくとも太陽は2度目の恒星なのだから。3度目でも4度目でも可能なはずだ。なにも、宇宙開闢のときに舞い戻ってヘリウムを生成しなくてもいい。
恒星の中の核融合は、理論もあるし、観測もされているから実証されたということになる。しかし、宇宙開闢のときの核融合は理論のみで実証されていない。全宇宙の水素が集まっているのだから、ものすごい重力と熱だろう。ヘリウムの核融合だけで終わるのだろうか。太陽の中でさえ鉄までできるという。その数千兆倍の数千兆倍では利かない、熱と、重力である。ヘリウムでストップするわけがない。
このときの宇宙はビッグバンという全宇宙(もちろんその中には、太陽も地球も月も入っているはず。そんなこと考えたこともないでしょう)の爆発という巨大な爆発をしているといっている。超新星の爆発の一兆倍の1兆倍の350万倍以上の爆発である。すると、必ず、10−23秒ですべての元素ができるはずだ。ところが、出来たのはヘリウムだけだという。
太陽の過剰なヘリウムは、恒星の中で核融合されたと考えても不都合はない。インフレーションビッグバン説でなければ、宇宙は、何百億年、何千億年、いや何兆年続いていてもおかしくないのだから、恒星の中でヘリウムを作る時間は十分ある。
結論
宇宙の全水素が集まって火の玉になったときの熱と、重力はどれくらいだったのだろうか。ビッグバン論者はどれくらいを見積もっているのだろうか。もちろん全宇宙の物質量が皆目見当もつかないのだから、計算のしようがないとは思うが。計算のしようがないのに、ブラックホールではなく火の玉になったとか、ヘリウムができたという。不思議な見積もりだ。
恒星の中でヘリウムが生まれたということの方は、実証もされているので、不都合はない。星の大きさによって、できる物質が違うことも研究されている。
宇宙初期にヘリウムができたという考え方は、ビッグバンまずありきから考えだされたことだということだ。ビッグバンがなくたって、太陽のヘリウムの説明は普通の現象として説明できる。ガモフの言うことが正しいということは言えないということだ。