「重力とは何か」について目次
重力とは何か16 フラットランドの怪
重力とは何か18 重力の本性
重力とは何か(大栗博司・幻冬舎新書)について17
著者 田 敞
(以下{ }内は上記本からの引用)
問題
{重力の正体は時間や空間の歪みだった。}
フラットランドの人は{自分の住む世界が立体的にゆがんでいることに気がつきません。ボールを投げた場合も、まっすぐに進むはずだと考えます。ところが実際には空間が歪んでいるので、ボールは円の中心に向かって曲がります。二つの方向に投げられたボールは、欠損角の中心に向かって「見えない力」に引き寄せられ、再開します。中心におかれた質量によって「重力」が生じているかのようです。しかし、この「魔法使いの帽子」を切り開いて平面におくと、各々のボールの軌跡は直線です。そこには何ら特別な力は働いていません。ですから、このアインシュタイン理論で考える限り、重力は「幻想」でしかありません。重力という力の作用があるように見えるだけで、その現象の正体は「欠損角」であり、それによって生じる「空間の歪み」なのです。}
問題1
{二つの方向に投げられたボールは、欠損角の中心に向かって「見えない力」に引き寄せられ、再開します。}
考察
欠損角はどのようにして作られたのでしょう。紙で作ったフラットランドに円を書き、その中心をハサミで60度切りとりました。その切り取った部分が欠損角ということでした。そして残った部分を丸めて円錐を作りました。できたのは魔法使いの帽子ということです。
円を書くのも、切るのも、魔法使いの帽子にするのもみんな人間がおこなっています。すると、{二つの方向に投げられたボールは、欠損角の中心に向かって「見えない力」に引き寄せられ、再開します。}という見えない力とは、元もと、紙で作ったフラットランドの一部を人間の手で切り取った部分を欠損角と名付けたので、その切り取った部分が見えない力ということになります。ハサミで切り取ると、見えない力が生じるようです。不思議な現象です。それとも、フィクションですから、不思議な幻想とでも言えますか。
問題2
{重力という力の作用があるように見えるだけで、その現象の正体は「欠損角」であり、それによって生じる「空間の歪み」なのです。}
考察
「{重力という力の作用があるように見える}{現象の正体}」は「空間の歪み」。「空間の歪み」は「欠損角」。「欠損角」は「人間がハサミで切りとった部分」。ということは、「{重力という力の作用があるように見える}{現象の正体}」は「人間がハサミで切り取った部分」、ということになります。人間はとてもすごい力を持っているということのようです。魔法使いどころではありません。
{空間の歪み}とか、{欠損角}とか、おどろおどろしいことを言っているけれど、何のことはない、紙を切り取っただけのことでしかないということです。
人間の紙工作が、重力や空間を曲げるはずはありません。円錐を作ったら空間が歪むなら、クリスマスは大変です、地球上のあちこちで無数に空間が歪みます。無数の欠損角が現れます。その{欠損角の中心に向かって「見えない力」に引き寄せられ、}人々は落ち込んでしまいます。神隠しです。サンタのクリスマスプレゼントどころではありません。無数の人が神隠しにあってしまいます。
空想のフラットランドとはそんなものです。空想は空想しか生みません。そこから事実は出てきません。
問題
{「見えない力」に引き寄せられ、再開します。}
考察
「見えない力」はどこから生じたのでしょう。エネルギーは無からかってに生まれません。「見えない力」はどこから生まれたかというと、その一つは{二つの方向に投げられたボールは、}ということですからやはり人間です。これは見える力ですから、見えない力から除外されます。もうひとつは{欠損角の中心に向かって「見えない力」に引き寄せられ、}とあるので「見えない力」がありそうです。この「見えない力」はどこから出てきたのでしょう。
このフラットランドには引力の存在は定義されていません。フラットランドは2次元ですから、3次元の物質のような質量は持てないでしょう。だから万有引力は存在しないでしょう。とすると、「見えない力」は引力以外のなにかのようです。
{欠損角の中心に向かって}とあるので、魔法使いの帽子の、頂点に向かってボールは進みそこで再開するということなのでしょう。その頂点に見えない力があるのでしょうか。そこは詳しくは書かれていないので定かではありませんがたぶんそうでしょう。すると、これは魔法使いの帽子をさかさまにして頂点を下にしてボールを投げ込んだ時にボールは頂点に落ちるということと同じ現象ですからそれを想定しているのでしょう。
普通に考えたら、円錐をさかさまにして、ボールを入れたら下に落ちて頂点に集まります。その常識を利用しているのでしょう。ただ落としたら、真っすぐボトッとただ落ちてしまうので、ヘリに向かって投げ入れるというのが条件のようです。
しかし、ことはフラトランドで起きていることです。問題は、私たちが目にすることができる円錐の頂点にボールが集まる現象は、地球の引力が働いているから起こるということです。宇宙空間でこれをやると、ボールは頂点には集まりません。投げ入れる方向でさまざまな方向に転がっていきます。頂点にボールを集めるには、頂点側からボールを引っ張る力がいります。欠損角には力はありません(欠損角なるものがあったとしても)。だから、宇宙空間でやると、ボールは、投げ込んだボールの角度によってさまざまな方向に転がるでしょう。これは、人が持っている常識(円錐にボールを入れるとみな下に落ちる)をうまく使ったトリックです。
もうひとつトリックがあります。それはボールの投げ入れ方です。魔法使いの帽子は、頂点を下にして、上から投げ入れるということを暗黙の条件にしています。これは円錐の中にボールを投げ入れられるのは底面からだけという常識を利用しています。頂点はふさがっているから、自然と底面から投げ入れるという常識をうまく使っています。すると投げる方向は、頂点に向かって斜めになります。投げた力だけでも、螺旋を描いて頂点に向かいます。宇宙空間でやってもこのようになります。引力は必要ありません。まあ、引力がないと跳ね返って出てきますが。このときの現象を、{「見えない力」に引き寄せられ、}と言葉巧み言っています。{見えない力}だって。あたかも引力があるかのようです。しかし、このときの力はボールを投げ入れた人の力です。投げ入れたときの運動エネルギーをボールが保存して円錐の壁に沿って曲がりながら、頂点に向かって進んでいくのです。「見えない力」に引き寄せられているのではありません。まして欠損角などという人が切り取った扇形の頂点に向かって進むわけありません。切り取った扇形はもうごみ箱の中なのですから。
この円錐の底面から投げ入れるという常識をうまく使っているところも、なるほどアインシュタインだわい。さすが天才と思うところです。
実際は中から外に向かって投げることもできます。その場合は外に飛び出してしまいます。投げないとどうなるか、というと、引力がないので、その場にとどまっています。慣性の法則です。新たなエネルギーが加わらない限り物体はそれまでの運動を続ける、です。
円錐の頂点に到達するのは、そん方向に投げたときだけです、その反対に投げると、頂点とは別のところに行ってしまいます。
ボールを投げる人は、相対論都合ばかりを聞いてはいられないのです。
結論
{重力の正体は時間や空間の歪みだった。}というけれど、歪んでいたのは、「魔法使いの帽子」くらいです。時間も空間も関係ありません。円の一部を切り取って、円錐を作ったら、時間や空間が歪むというなら、世界は混とんとしてしまいます。時間が曲がりくねったり、螺旋を描いたりしたら、大変です。こっちの森から恐竜が出てきたり、あっちの畑では関ヶ原の合戦が始まってしまいます。空間がゆがんだら、みんなムンクの叫びになってしまいます。
相対論が何と言おうとこの世界は歪んでいません。歪んだ世界は、フラットランドと同じで、アインシュタインの空想の世界です。