宇宙物理学者が解きたい12の謎について目次  解きたい謎9    



宇宙物理学者がどうしても解きたい12の謎(スティーブン・ウエップ、松浦俊輔訳、青土社)10

 

著 田 敞

(以下{ }内は上記本からの引用)

 

再度のインフレーション


 現在、宇宙は2度目のインフレーションの最中だということです。遠い宇宙を観測すると、宇宙の膨張が加速しているということが見つかったそうです。その現象を宇宙が再度のインフレーションを起こしていると解釈しています。

1 インフレーション

 ビッグバン宇宙論によると、最初のインフレーションは、光速をはるかに超える速度の膨張だったということです。しかし、現在観測されている100億光年以内の宇宙では、光速で離れていっている銀河はありません。再度のインフレーションというにはあまりに遅すぎます。計算では、距離に比例して離れる速度が速くなるので、遠い銀河は光速で離れていっているということですが、それは観測されていません(注1)。まあ、光速で離れているのだからそこからの光は届かないということになるのかもしれません(注2)。また、最初のインフレーションは極端に小さな宇宙が超光速で膨張したということですから、ハッブルの法則による距離に比例して速くなるということとは別のシステムです。今のハッブルの法則による宇宙膨張とはまるでことなるシステムのようです。

(注1:ビッグバン論では、銀河の赤方偏移は、後退速度ではなく、空間が膨張しているから起こっている現象だということです。だから赤方偏移していても、その速度で銀河が後退してるということではないようです。後退していなくても赤方偏移はあるということです。たとえば、銀河団は膨張しないということですから、銀河系が属しているおとめ座銀河団は膨張していないことになります。したがって、ハッブルが観測した銀河でも、そこに属している銀河は赤方偏移しても宇宙膨張による後退はしていないということです)

(注2:光りは光源の速度に影響されないから、光速で地球から離れていっている恒星からでた光も秒速10mで飛んでいる恒星から出た光も、特殊相対論が正しいとすると空間の中を観測者(人間)に対して光速で飛ぶので、地球には届く可能性があります。ただ、その空間が光速で地球から離れていっていると、光は空間と共に離れていくので地球に届かないということになるかもしれません。ビッグバン論の言うように、空間なるなにかが存在し、それが膨張するというのが正しい場合ですが)

2人間の体とインフレーション

 最初のインフレーションでは、1点から生まれた全宇宙を、光速を超える速度で膨張させています。生まれたての宇宙は人間より小さな宇宙でした。そこに全宇宙の物質とダークマターが詰まっていたのですから、実質の中身は人間など比べ物にならないくらい密度の高いものでした。

それでもインフレーションは宇宙をやすやすと超光速で膨張させていたというのです。今再度のインフレーションなのに、人間の体はどうして膨張しないのでしょう。光速の何百倍何万倍の速度で膨張してもよさそうなのにその兆候さえありません。再度のインフレーションは髪の毛一筋動かさないのです。

このことから、最初のインフレーションと今のインフレーションはまるで違う現象だということが分かります。異なる現象なのに同じインフレーションという名前をつけるのは勘違いのもとになります。

 

また、太陽系もそうです。再度のインフレーションだというのにすかすかの太陽系さえ膨張させることができていません。なぜなのでしょう。

銀河系も、アンドロメダ銀河も、それらを含む局部銀河団もインフレーションだというのに膨張していません。かえって、銀河系とアンドロメダ銀河は接近しているというのです。インフレーションのイの字もありません。

 宇宙誕生直後の宇宙と今とは何が違うのでしょう。インフラトンの志向性?あっちは膨張させてもこっちは膨張させないという。

インフラトンというのは、インフレーションを起こした謎の力といっている人がいます。ビッグバン宇宙論に必要なことはなんだって無から呼び出せばいいのですからビッグバン論は便利です。「無」はまるでドラえもんのポケットです。実証も、理論もなしで、「謎」といっていれば通るのですから。ビッグバンは正しいのだから、それに必要なものはなんだって正しいということなのでしょう。だから、ビッグバン宇宙は「謎」だらけで、「謎」が「謎」を生んで、今は収拾がつかないくらい「謎」に満ちた宇宙になっています。なんせ、宇宙の95%が謎なのですから。

 はっきりした違いが一つあります。今の人間や地球や太陽系はかなり正確に観測できるけれど、インフレーションが起こっているという数十億光年先の宇宙ははっきり観測できないということです。遠すぎて実際に銀河どうしがどの速度で離れているかを直接測れません。方法は、銀河の赤方偏移だけです。ところが、銀河の赤方偏移は銀河が後退していることから起こるのではなく、空間の膨張によって起こるとビッグバン論者は云っています。銀河どうしが離れていっているということは赤方偏移では測れないのです。また、空間膨張が光りの赤方偏移を起こすということは科学的証明はできていません。先に書いたように、銀河の光は銀河間ガスに衝突することによって、赤方偏移するという可能性があります。そしてこれは科学的な理論も、実証もあります。

 したがって、赤方偏移で測った銀河の速度は根拠がないといえます。

 

結論

観測が正確にできる銀河系やアンドロメダ銀河くらいまでは宇宙は再度のインフレーションによっての膨張は一切していなけれど、遠く離れて観測が難しい宇宙はインフレーションを起こして、光速で膨張しているということのようです。いつものビッグバン宇宙論です。観測が正確なところには現れないけれど、観測が不正確になるにつれてビッグバン論どおりの現象が現れる。

普通の現象はこの反対なんですけどね。近くてよく見えるところでははっきり表れるけれど、遠くてぼやけているところでは曖昧になってよくわからないのですけどね。まあ、常識を覆したところにビッグバン宇宙があるのでしょうから、遠いほど、よくその現象が現れるのでしょう。

このことからいえることは、再度のインフレーションは宇宙の遠い彼方では起こっているかもしれないけれど、この近辺の宇宙では起こっていないということです。それは、観測の正確さに比例しているということです。観測が遠くて不正確になるにつれて膨張速度が上がるということです。ビッグバン論の真骨頂を発揮したといえますね。

本当は、このあたりの宇宙と同じように、どこの宇宙も膨張などしていないのです。