ジャスミンの風

                                         
                                           
マラウイ便り 10-2




 翌23日(日)は5:30に起床。砂漠の地平線から昇る朝陽を見ながら身支度をして、
紅茶にビスケットを食べて再びGame driveに出発。道中にはブッシュマンが水を
得る貴重な野生のスイカがたくさん見られました。日本の生物学者が調査に来た
こともあるそうです。手まりほどの大きさで中は白くて甘みは全くないのですが、水
気は充分あります。この日も3時間ほどゆっくりと時間をかけて廻ったのですが、ダ
チョウやスプリングボックそれに地面にあいた小さな穴から出入りする数匹のミーア
キャットたちに出会えただけでした。ハイエナの足跡や骨は見られたのですが…
…。後で当国に駐在している日本人に聴いてみても、ライオンはたまに見られても
臆病なのか遠くからそれも後姿だけだったとのことです。保護区内にある幾つかの
キャンプサイトには、柵で囲ったトイレの隣に、バケツの底にじょうろを取り付けて引
っ張ると水が出るようになった簡易シャワーがあります。2,3組キャンプに来ている
人たちを見掛けました。このクーツエ保護区の北側には「中央カラハリ野生動物保護
区」(面積≒52,800km2)という世界で三番目に大きな保護区が控えています。


ミーアキャット



ダチョウのペアが歩くカラハリ砂漠
帰りには近くにあるブッシュマンの集落(政府の意向で砂漠から移住させたもので2,000人ほど住んでいるとのこと)に立ち寄って、砂漠で火を起こしたり、水を大量に含む特殊な芋を掘り出す術等の生活の知恵を見せてくれるというSan-walkを頼んでもらったところ、当事者が急病とのことで残念ながら体験は出来ませんでした。9:00にロッジに帰ってきて遅い朝食を摂り、部屋で休息した後12時過ぎに、作ってもらったサンドイッチの弁当を持って帰途につきました。途中でそれを食べながらカラハリ砂漠に別れを告げ、Gaboroneのホテルに帰着したのが15:30でした。ひそかに期待していたライオンには出会えず、ブッシュマンとも直接接触出来なかったのは残念でしたが、360°地平線の見える広大で静寂なカラハリ砂漠の光景は、大きく印象に残りました。


 24日(月),25日(火)および 28日(金)はGaborone watchingに充てました。計画的に作られた人口20万人の街の中心部に各種省庁が集中
しており、銀行や郵便局も近在しています。そのすぐそばにMain-mallと呼ばれる長さ200mほどの歩行者天国があって、独特のデザインの施
された籐製のバスケットやタペストリーを置いた売店とか食べ物を売る屋台等があって、旅行者や地元の人たちで賑わっています。東端には
こじんまりとした博物館(入場無料)があって、ボツワナの歴史や風俗・動植物・鉱物等が展示・説明されています。先生に引率された小中学
生がよく来ているようですが、どこの国でも同じで説明しているそばで床に寝っころがっている横着な生徒も見掛けます。




サボテン
中庭には簡単なレストランがあり、豆入りライスや牛肉・鶏肉・ポテト・煮豆・生野
菜等を好きなだけとって勘定してもらうという仕組みになっています。もちろんト
ウモロコシを粉にして煮込んだマラウイでシマと呼ばれる食べ物もあります。ち
なみに畜産は当国の主要産業のひとつで、牛肉は重要な輸出品となっていま
す。ステーキやレバー・煮込んだもの等どれも安くて柔らかくおいしいです。街中
の屋台でもスパゲティやマカロニと共に昼食でよく食べました。250円も出せば
お腹いっぱいになります。外国人の集まるステーキハウスだと、200gのサーロイ
ンやヒレ肉が野菜もついて600円ほどで味わえます。なお、野菜類はすべて南ア
からの輸入に頼っているそうです。木陰のベンチに座って行き来する人たちを
眺めていて感じたのは、マラウイのように頭にものを載せて歩いている人はまず
居ないこと、ほとんどの女性が小奇麗なズボンやジーンズを履いていること(マラ
ウイではどんなに小さい女の子でも大抵薄汚れて半分破けたスカートを履いて
います)です。生活レベルの違い-豊かさ-を実感させられました。


 26日(水)朝にはJOGMEC*1の車で70kmほど南にあるLobatse-ロバツエ-の街に
向かいました。道中完全舗装された道路脇を歩く人は皆無で、周辺にも人気は無
く、人口密度の差異を実感しました(マラウイでは途中に青空市場等があり、頭に野
菜などを載せた人たちがしょっちゅう行き交っています)。40分あまりで着いた
Lobatseは静かな田舎町といった感じですが、立派な中央分離帯があるのには驚
きました(マラウイでは望むべくもありません)。さっそく地質調査所を訪ねて、ボツワ
ナの地質図とその説明書・ダイヤモンド関連他の鉱物資料を入手。翌朝には調査
所所長と物理探査担当者に面会し、磁気探査や重力探査の具体例等ダイヤモンド
探査に関するヒヤリングをしたりして、参考になる有力な情報を得ることが出来まし
た。なお、鉱物図鑑や地質博物館について尋ねたところ、ボツワナにはどちらも無
いとの返答でした。また地震については、北部にアフリカ大地溝帯に繋がる断層帯
があるが、今のところ地震はほとんど無いとのこと(アフリカ大地溝帯が南北に貫通
するマラウイには小さな地震があります)。その後、その中に開設されている
JOGMECのRemote Sensing Centreのセミナー施設他を見学して、その手法や現
況を聴いたりしました。夕刻、再びJOGMECの車でGaboroneに帰着。


Jwanengダイヤモンド鉱山(インターネットより)




チーターと
 29日(土)朝には、15kmほど南の郊外にあるMakolodi Reserveに
出掛けました。ここは12,000エーカー(≒50km2)ほどの広さの丘陵地
で各種動植物の保護区になっています。7,8人の参加者とともにサ
ファリカーに乗って出発。インパラやキリン・象・シマウマ等が次々
に現われ、しばらく行った別々に金網で囲われた中にはハイエナと
チーターが居ました。二重になった頑丈な門を入り車から降りて、
小さい時から飼育されていると言う一頭のチーターの頭を撫でてい
ると、茂みの奥からもう一頭現われてすぐそばに寝転がってしまい
ました(どちらも雄)。頭を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らしているけれ
ど、噛み付くような気配はまったくなくて、まるで猫そのものです。最
近このイベントを始めたとのことでした。展望台を含めて2時間ほど
のサファリでした。敷地の一番奥の方には、今や貴重種となった白
サイと黒サイが数頭飼育されているとのことですが、それは別枠の
ウォーキング・ツアーになっており見ることは出来ませんでした。帰
途立ち寄ったRiver-mallやGame-cityと呼ばれる真新しいショッピ
ングセンターは、先進国にもひけを取らないほどの大きさで賑わっ
ていました。もちろんダイヤモンド店も中にあります。


 夕刻ホテルで寛いでいると、突然外から電話が掛かってきました。女性の声で聞いてみると、マラウイの地質調査所職員
のお姉さんで、オランダ人の医師と結婚して5年前からGaboroneに住んでいるとのことだったので、3週間ほど前にメールで
会えたら……と連絡しておいた人からでした。ついさっきメールを開いてみたのでお茶でもどうぞ、ということだったので、早速
迎えに来てもらって自宅を訪ねました。中心部から北東方向に車で10分足らず行った閑静な住宅地内にある結構大きな家
で、庭には緑色の実をたくさんつけた大きなマンゴーの木がありました。中学生の子供が二人居て、上の男の子は父親と同
じ医者を目指しており、下の女の子は飛行機のパイロット(スチュワーデスでは無く)になりたいとのことでKLM航空の研修を
受けたりしているそうです。旦那さんはちょうどオランダに出張中で不在でしたが、JICAの顧問医をしているとのことでした。


彼女の話によると、穏やかな気質のマラウイ人に比べてボツワナ人は人あたりがきつい、とのことです。一時間あまり談笑
して帰りに、マラウイの弟さんの家族宛にチョコレートか何か買って行って欲しいとのことで、100Pula(≒1,300円)札を預か
りました(帰途、マラウイでは見当たらないウェファース等を幾つか買って持って帰りました)。諦めていただけに何とか会え
てラッキーでした。
 翌30日(日)朝Gaboroneを発ったのですが、ヨハネスブルグ空港のTransit deskのAir Malawiの所には搭乗時間になっ
ても係員が現われず、ウロウロしていた数人の乗客と共にかなり離れた搭乗口まで歩いて行って、そこで直接搭乗券を作
ってもらうはめになったため出発が30分以上遅れる、という相変わらずのハプニングがありました。午後遅くには何とかマ
ラウイに帰り着きましたが……。ずっと降圧剤は飲んでいたので、血圧には異常はありませんでした。






                                         
                                           


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