ジャスミンの風

                                         
                                           
マラウイ便り 10-1


= ボツワナ紀行 =



Dumela !! (ツワナ語で「こんにちは」)

3回目のマラウイ滞在となる今回の任国外旅行では、ボツワナを訪ねました。日本ではあまり馴染みの無い国ですが、あのブッシュマン
(San people)が狩猟生活をしていたカラハリ砂漠が国土の2/3以上を占める乾燥気候帯に属しています。そのせいか国旗には水色が
ふんだんに使われ、また当国の通貨単位Pulaはツワナ語で水・雨という意味だそうです。全体として緩やかな起伏の地勢で、山地はほ
とんどありません。マラウイから見るとモザンビーク・ジンバブエを挟んで西南方に位置する内陸国で、西はナミビア、南は南アに接して
います。日本の約1.5倍の面積の国土に、人口はわずか186万人という超低人口密度で、政治・経済が安定しているため治安はきわめ
て良好。1966年にイギリスより独立(マラウイは1964年)、翌年ダイヤモンドが発見されその後も続々と発見・開発が進んで、品質が良い
ため現在取引額は世界最大と言われています。

教育・福祉・インフラ整備に投資された結果、アフリカ随一の発展を遂げています。ちなみに2006年度のGNI(国民総所得)はUS$5,
900.00/人で、他の大部分のアフリカ諸国とは桁が違っています。一方HIV/AIDSの感染率は40%で世界一とのことで、平均寿命は40才
弱となっています(マラウイは45才)。マラウイを含め他のアフリカ諸国で多くの人が罹るマラリアは、北部の湿地帯の一部を除いてほと
んど無いとのことです。

今回の旅行先は業務柄、このダイヤモンド王国ということに魅かれて決めました。


 ボツワナに関する資料がほとんど手許に無かったため、現地の様子やホテル,ツアー旅行社等の情報集めは
一ヶ月半以上前からインターネットを中心に始めたのですが、メールを入れても返答が無かったり、有っても途
中で急に途切れてしまったりで時間がかかり、大きな不安を抱えたまま、11月21日(金)マラウイを出発しました
(今回も一人旅)。いつもの例でAir Malawiは45分遅れで離陸、2時間後に着いたヨハネスブルグ空港では雨天
の影響かまるまる1時間遅れで出発(ボツワナの首都Gaborone-ハボロネ-までの飛行時間は50人乗りほどのプ
ロペラ機でわずか1時間なのに)。おかげで予めホテルに頼んでおいた迎えのタクシー料金は、1時間待ったと
いうことで2.5倍の料金(2,000円相当)を請求される始末。運転手と一緒にホテルのレセプションへ行ったとこ
ろ、居合わせた男性の係員もそれだけ払うべきだと言う。当方の責任では無いと言い張ったが「払うべきだ」の
一点張りで、仕方なく支払わざるを得ませんでした。
夕刻のGaboroneは曇り空で、着ていた半袖では涼し過ぎるぐらいでした。


 翌22日(土)の朝、メールでやり取りしていたツアー旅行社のメールが途切れていたので心配だったのですが、約束の時間
の10分前にホテルまで迎えに来てくれたのでホッとしました。行き先はカラハリ砂漠で一泊の行程です。Land-roverを改造
した10人乗りのサファリ車には他に参加者は誰も居なくて、当方一人でした。どうやらオフ・シーズンのようです。目的地は
Gaboroneから210kmあまり北西方にあるカラハリ砂漠の南端部Khutse Game Reserve(クーツエ野生動物保護区;面積≒2,
500km2)で、9:00にホテルを出発。朝方は小雨模様で寒いぐらいだったのですが、Gaboroneから離れるに従って徐々に暖
かくなってきました。道路舗装は完璧でマラウイやカンボジアみたいに穴ぼこは無く、常時80〜100km/時のスピードで飛ば
して行きます。




ブッシュマンの家
半分ほど走った所で砂道になり、いよいよカラハリ砂漠が始まります。砂漠と言っても
一ヶ月ほど前から既に雨季に入っているので、周りの広大な地面にはブッシュや背丈
の低い木々が生えています。道中、若い男性のガイドによる通り過ぎる街の話やらブ
ッシュマンの物語やらカラハリ砂漠に屯する動植物の話やらを聞きながら、また途中
で馬に乗って牛やヤギを追っている青年たちを眺めながら、3時間ほどで保護区の手
前にあるロッジに到着。気がつくと、空は真っ青で日差しがきつくなっていました。事
前に申し込んでいたのは保護区の中にあるテントサイトで一泊するということだった
のですが、参加者が一人ということでロッジに変更になったようです。ロッジの方がゆ
ったり出来て湯も使え、食事も豪華で高価なのですが、追加費用は払わなくても良い
とのことでした。ボツワナ伝統の造りを模した独特の形をした数棟の戸別ロッジの周
りには地平線までサバンナ状の広大なカラハリ砂漠が広がっており、静かながら圧
倒される感じです。中庭には小さいながらもプールがあり、聴いてみると比較的浅い
所に地下水があるのでそれを利用している、とのことでした。ブッシュマン特有の背丈
の低い小さな草葺きの住居も残されています。


豪華な昼食で満腹になり、ロッジでしばらく休憩してからサファリ車でクーツエ保護区
にGame driveに出掛けました。メインのお目当てはカラハリ以外では見られないと
いう黒いたてがみを持つKarahari black maned lionと呼ばれるライオンを見つける
ことです。簡単な棒を渡しただけの門を入って、カラハリ・クリスマスツリーと言われる
色とりどりの花が両側に繁茂した凸凹道をゆっくりと進む。Panと呼ばれるだだっ広
い平原に動物がよく集まるというので何ヶ所か行ってみました。一部は簡単な飛行場
になっています。ペアで仲良く歩き回るダチョウやジャッカル・野うさぎ・インパラ・スプリン
グボック(鹿の仲間)・バッファロー等が見られました。3時間ほど広大な砂漠を走り回った
のですが、ライオンはついに見当たりませんでした。ガイドも「ライオンよ、何処に居る
んだ。出て来〜い」とつぶやきながら遠くまで良く見える目で探してくれたのですが…
…。その日は諦めて、砂漠の彼方に沈んでいく真っ赤な夕陽を見ながらロッジに帰っ
てきました。


カラハリ砂漠の夕景




ケープコブラの子供
ガイドお薦めのAmarulaという果実酒を嗜みながら夕食を摂っていると、玄関の方で騒ぎ
声がする。行ってみると薄暗い玄関の外側に蛇がとぐろをまいて鎌首をもたげています。
聴けばケープコブラの子供で猛毒を持っており、噛まれると数分で死に至ると言います。
フラッシュをたいて写真を撮っても姿勢は変わらない。しばらくは誰も玄関に近寄れなか
ったが、そのうち居なくなってしまいホッとしました。また聴くところによると、Game
Reserveの周りには柵が無いので、飼っている牛がライオンに襲われるということもたま
にはあるそうです。ロッジで働く職員も命がけというわけです。
部屋で熱いシャワーを浴びて表に出ると(蛇に注意しながら)、あたりは真っ暗なので見上
げると満点の星空で、天の川もはっきりと見えます。地平線の彼方までこんなにも星が有
ったのかと思うほどの眺めで、部屋に入るのがためらわれるほどでした。




                                         
                                           


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