ジャスミンの風

                                         
                                           
マラウイ便り 9-2



 9月の半ばに、風邪気味で盛んに汗をかき身体がダルかったので、勤務を休んだことがありまし
た。体温を測ってみると37.5℃余り。せきも止まらずしばしばシャックリが出、舌の味覚もおかしいの
で、近所のインド人の経営するクリニックを訪ねました。診断結果は「上部気道炎」ということで、シロ
ップや錠剤等数種類の薬(当然のことながらどれもインド製)を受け取りました。2,3日は何もする気
が起きなかったのですが、静養したのと薬が効いたのか間もなく回復しホットしました。業務の方で
現場行きがどんどん先延ばしになって精神的にまいっていたのと、気候の変わり目とが重なり合って
疲れが溜まっていたのでしょう。食欲がほとんど落ちなかったのが救いでした。軽い肩こりは未だに
残っていますが、これは多分パソコンのやり過ぎだと思います。ちょっと自重しなきゃ……。お陰で
JICAの図書室で借りていた小説(ミステリー物が多い)を数冊読みきってしまいました。中にあった
「慎重であるよりは果敢である方がまだ良い」(マキャベリの君主論より)という引用文が頭に残って
います。ちょっと意味合いが違うかも知れないのですが、マラウイのような開発途上国にあっては、
何をするにも恐れず常に挑戦するという強い前向きの姿勢を持たなければいけない、という気持ち
を新たにさせられました。


時々散歩に出掛ける隣接する植物園では、沢山の野生の可愛いヒヒたちがじゃ
れあっていて、じっと見ているとマラウイに居ることを忘れるほど癒されます。昼休
みなどに、手拍子を打ちながらゴスペルの合唱練習をしているグループもよく見
掛けます。また山裾の道を歩いていると、2mほどの長さに切って束ねた木材を頭
の上に載せて、次から次へと山から下りて来る女性に出くわします(炭に加工して
売るのでしょう)。いつも見掛ける光景です。


 一方業務の方は、現場行きの手当てや車・ボーリング機械の燃料代の予算が手許に中々
回って来ないとかで延び延びになっていたのですが、ようやく9月の終わりになって先発隊が
出発しました。当方は10月半ばに現場を訪ねて一年振りにテント生活を再体験しました。昨
年の磁気探査結果からKimberliteの賦存位置・大きさを想定し、数ヶ所の試掘孔を確認して
ボーリング位置を設定して来ました。現場はZombaより暑くて仕事は午前中のみです。現場
で雇っている10数人の村人たちは通常は当地特有のヤオ語という地方語をしゃべるので、何
を言っているのかまるで分かりません(標準語のチチェワ語は通じますが)。中には独特の帽
子を被ったモスレム(イスラム教徒)も居ります。ちなみにこの国には10%ほどのモスレムが住
んでいてあちこちでモスクを見掛けます(10月1日にラマダン-断食月-明けの祝日を祝ったば
かり)。彼らはその後木の根っこを掘り起こしたり、時には繁茂する草むらに火を点けて野火
にしたりしてボーリング機器搬入路の整備に精を出しています。現場の一番高い所には農家
が一軒あって、そばに大きなマンゴーの木が立っています。鈴なりになっているマンゴーは未
だグリーンの状態で、今は塩をつけたりしておやつ代わり(?)に食べるようです。周りには耕す
前のMaize(主食であるシマの原料)畑が点在しています。4日間現場にいて一人で帰って来
た時には、両腕が真っ赤に日焼けしやがて皮がむけて黒ずんで来ました。腕時計の白い跡
がくっきりと残っています。結局種々の理由でボーリング実施は大幅に遅れ、今のところ11月
半ば開始という状況です。
一ヶ月ほど前に、南アに囲まれたレソト王国でこれまでで20番目に入るという大きさ(478カラッ
ト≒95g)のダイヤモンド原石が見つかった、という羨ましいニュースがあったばかりなのです
が……。


 この1月にマラウイに新しく日本大使館が開設され、その披露パーティが10月上
旬にLilong- weのホテルの大ホールで催されました。内外の多くの関係者が招待
され、海老の握り寿司等が食卓に用意されたのですが、やはり内陸国でモザンビー
クとの運搬路も未整備のためか新鮮さに欠け、評判はあまり良くなかったようで
す。
  8月末から里と言わず街中と言わずあれほど咲き誇った紫色のジャカランダも今
はかなり散ってしまい、木の下が一面紫色に染まっています。ジャカランダの花の
形はラッパ状で、散る時には桜みたいに風に吹かれてヒラヒラという具合ではなく、
ポツン, ポツンと地面に落ちてきます。あまり優雅なものではありません。青空に映
えるジャカランダも見ごたえがありますが、今回は朝陽や夕陽に照り輝くジャカラン
ダもまた趣きがあるな、と感じました。今はうって変わって、深紅の火焔樹があちこ
ちで目につくようになっています。


  11月下旬には任国外旅行で、世界的なダイヤモンド王国であり、またブッシュマン(サン族)の住んでいたカラハリ砂
漠で知られるボツワナを訪ねる予定にしています。

* 色々話題の多かった北京五輪もずっと前に終わった気がしてなりませんが、つい最近日本人科学者4人が相次い
でノーベル物理学賞,化学賞を受賞したことは喜ばしいことです。

Tionana(= See you) !!
25/Oct./2008
                                         夏真っ盛りのZombaにて




                                         
                                           


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