ジャスミンの風

                                         
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6 -5- 女生徒はなぜ土木を選んだか?



          


  一方 我が校(PPI)の方では、土木の教師たちが集まりやすい土曜日の午後にミーティングを開いて、授業内容他いろいろ細かいことを打ち合わせて意
志の疎通をはかることにしています。先週は当方の指導予定の具体案を提示して説明しました。当校では系統だった授業をしていないので、先ずどこの
工事現場でも直面する土の締固め結果の確認をどうするかという課題に、土質試験と理論との両面から取り組むことにしました。JICAの現場業務費で
締固め試験機器の不足分を購入したり、近くにある公共事業運輸省の土質試験所から材料土を分けてもらって来たりと準備中です。そのうち
Engineering Geology(土木地質)やQuality Control(品質管理)等にも手を伸ばすことにしています。また当校に今秋にも大学院設置の構想があり、校長か
ら所管の教育青年スポーツ省にマスタープランを提出したいので修士課程のカリキュラムと単位数の情報が欲しい との依頼を受け、京都大学他の日本
の大学の事例を調査中です。
  以下に最近の授業状況等をまとめた資料を紹介しておきます。


女生徒はなぜ土木を選んだか?
                               
我がプレアコソマ総合技術専門学院(PPI)土木工学科において、このたびVCD授業の第2弾を実施しました。教材はJICA国際協力総合研修所(国総研)を
通じて日本から取り寄せたビデオで、タイトルは"The Century of Civil Engineering-Invitation to the Unknown World of Infrastructure Technology"です。
人類が今日まで築きあげてきた社会資本と、それを可能とした土木技術の発展の全貌を世界8ケ国に取材して忠実に記録したもので、製作は(社)日本土
木学会です。上下2巻で約2時間。内容は巨大ダム、運河、人工島、トンネル、長大橋、高速道路、巨大都市の再生、自然との調和等となっています。このビ
デオをVCD化して1月29日から2月7日にかけてCertificate class(中卒対象)1,2,3年、Diploma class(高卒対象)1,2年、さらに昨秋発足したばかりのEngineer
class(大学の学部相当)1年 の計6 classに対して、先日購入したLCD Projectorを使って順に披露しました。

         

上映中に「地中にトンネルを掘って、何故壊れないのか?」「掘進機械が故障した時にはどのようにして修理するのか?」「掘削した土(ズリ)はどう処理す
るのか?」とか、「運河を航行中の船舶はどうして標高の高い方の運河へ移動できるのか?」とか、「海上に人工島を作る際には、どういう順序で地盤を作
り上げるのか?」等々の質問があり、彼らの興味対象や知識欲の一端をうかがい知ることができました。前回の「日本橋復旧工事」の時とは違って、今回
は英語版なので彼らにはより分かりやすいかと思っていたのですが、終ったあと「理解しづらいので、クメール語に訳して欲しい」とか「内容を説明した資料
があれば見せて欲しい」等の要望がありました。できるだけ対応してあげようと思っています。また数人の生徒からは「コピーを取りたいのでVCDを貸して
欲しい」という要望もあり、喜んで応じました。何回も見て、土木技術はこういう所で我々の生活の基盤として役に立っているんだ、ということを充分に認識し
てもらいたいと思ったからです。
昨秋の入試結果によると、Engineer classでは土木工学科は他の電気工学科・電子工学科に比べてダントツの10倍以上の倍率でした。私の目に留まっ
たのはこの難関を突破して入学して来た女生徒の数で、定員40名のうち10名、またDiploma classでは同じく40名のうち女生徒がなんと15名(Certificate
classでは40名のうち1名のみ)という結果でした。そこでこの際、前々から知りたいと思っていた彼らの意識調査を実施することにしました。@なぜ土木工
学科を選択したのか? A将来どういう職業に就きたいか? という2つの質問事項を書いた用紙を配って、授業終了後に回収しました。Certificate class
1年の生徒は半数ほどがクメール語での回答でしたが、残りのほとんどは英文でした。内訳は回収者95名のうち男生徒82名、女生徒13名と全体としては
女生徒の割合が少なく、また的確な答になっていないものやお互いに見せ合って書いたりしているものも見受けられたのですが、あえて結果をまとめて紹
介しておきます。

@ なぜ土木工学科を選択したのか?
 (全体)・前々からビルを建てたりする技術者になりたかった(興味があった、好きだった等)
  ・カンボディアの発展に役立つことができる/カンボディアは建設技術者を必要としている
  ・給料のよい職を得やすい
  (男生徒)・道路や橋梁等のインフラが出来て運搬システムが整備されれば、物資とか人が移動し易
  くなり、カンボディアにはその余地がいくらでもある
      ・家や病院等の建物は年々古くなっていき、生活をより楽しむためには再構築が必要
  ・建設技術は日々進歩しており、事業は益々大きくなっていくので興味深い
  ・建設事業とはどういうものかを知りたかった
  ・ちゃんとした技術(インフラ技術等)を身につけたい/誇りを持てるものを作りたい
  (女生徒)・技術者として色んなことが勉強出来る/他の技術者よりも素晴らしい
  ・信じられない何かを作り出せる

A 将来どういう職業に就きたいか?
 (全体)・民間建設会社/政府機関のスタッフ/コンサルタント
     ・土木工学の教授(Ph.D)、先生/建設会社のオーナー
     ・土木技術者(設計、現場)
     ・地方でなく都会に住みたい(勉強や仕事を続けられるから)
 (男生徒)・試験所 ・出世したい  ・お金の稼げる職
     ・コンピュータ技術者(プログラマー、データベースの設計技術者等)
     ・英語も勉強したい
 (女生徒)・土木工学の先生 ・有名な土木技術者(日本の技師のような)
     ・建設会社の経営者/現場責任者
     ・道路や学校、病院、橋梁等色んなものを作ることが出来る職に就きたい
     ・どんな仕事でも何処でも

この国の現状を反映して、国の発展のためにとか、お金を稼ぎたいという回答が多かったが、全体として男生徒が現実的なのに対し、女生徒はあこがれを
描いて夢想的なように見受けられる。今秋の卒業時にはどういう現実が待っているのだろうか?これらの夢(?)が満たされるのだろうか?
昨年のDiploma classの就職状況を見ると、卒業者28名のうち民間の建設会社あるいはコンサルタントに6名、当校のEngineer classに5〜6名、ITC(国立カ
ンボディア工科大学)に2〜3名、NTTI(国立工業教員養成学校)2名で、全て男生徒ばかりである。測量実習や土質試験実習はまだよいとしても、ほこりだら
けになりながら炎天下で男生徒に混じってレンガ積み実習やタイル張り実習に励んでいる女生徒の姿を見ていると、何とかしてやらねば……という気持
ちにかられる昨今です。
なおつい先日タイミングよく、Managing Directorを勤めている現地建設会社の日本人がJICAの専門家から聴いて来たとのことで当校まで訪ねて来られ、
測量助手や図面チェッカー等のAssistantを2名雇いたいとの申し入れがありました。条件は英語がある程度堪能なことと、パソコンが使えることです。早
速土木の教師たちと相談して4,5名の卒業生(男生徒ばかり)をピックアップして面接に連れていくことにしています。女生徒も含め今秋の就職先の手がか
りにしたいものです。

          


                              18/Feb./'04  プノンペンにて





                                         
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