ジャスミンの風

                                         
                                           
マラウイ便り 11-1




 = 雨季を迎えて =
                       
Chaka Cha Bwino (チチェワ語で A Happy New Year) !!
今年も異国で暑い元旦を迎えました。雨季に入る10月下旬は異常に暑くて(30℃以上)、
むしょうに喉が渇いてペットボトルが手放せなかったのですが、今はかなり涼しくなり(それ
でも27〜28℃前後)時折強い風が吹いて木々を揺らし、「風立ちぬ」という感じの時も間々
あります。毎日のように雷鳴を伴った雨が降ったり止んだりという状況です。雨の合間は
カッと太陽が照りつけるので、出掛ける時は折りたたみ傘と帽子が欠かせません。ゴルフ
場やホテルの中庭の芝生は生き返ったように湿気を帯び、職場への行き帰りに近道をす
る植物園の草も目に見えて背丈が伸び、歩き難くなっています。自然のサイクルの恵みを
強く感じる今日この頃です。お陰で乾季にはチルワ湖の彼方に霞んで見えていたモザン
ビークの山々も、かなりクッキリとなって来ました。


現場にて




つい先日気付いたのですが、レストランで夕食後、部屋へ戻ろうと広い中庭を横切って
いると突然停電になり何も見えなくなってしまいました。何時ものことで別に気にもして
いなかったところ、刈り取ったばかりの芝生のあちこちから光の玉が点滅しながらゆら
ゆらと舞い上がりました。その数20や30ではありません。ホタルです。うっかりすると
踏みつけてしまいそうなぐらい居ます。ふと見ると部屋の前のポーチに置いてある籐
椅子の周りにも光が数個点滅していました。部屋の横の暗がりにも幾つもの光の筋
が飛び交っています。幻想的な光景でしばらく見とれていました。灯りが点くとほとん
ど見えなくなるのですが、それでも部屋のカーテンを開けて外を見ると、光の乱舞が見
られます。2,3日前の夜中に目を覚ましたところ、何時何処から入って来たのか、部屋
の片隅に一匹のホタルが光っていました。大晦日の夜にも部屋の電気を消して外を
眺めるとこの光景が見られました。この時期、ホタルが大発生する季節なのでしょう。
何か懐かしく、心が和む感じになりました。
昼間は、隣接する植物園や森林に住むヒヒたちが沢山現れて、この芝生の上を走り回
ったり、木々の梢を揺らして飛び回ったりしています。



 11月の初めにある葬儀に参加して来ました。亡くなったのは地質調査所所長秘書の旦那
さんです。職員と一緒に行った自宅の前庭で待っている間、彼の弟さんから聴いた話では
「この5月に軍隊を除隊したばかりで、死因は脳性のマラリアで4日間の入院後亡くなった。
享年50才。」とのことでした。葬儀はMilitary style(軍隊式)で執り行なわれ、軍用車2台に乗
って到着した10数人の兵士と花束などを抱えた女性たちが、赤の上着に赤のストライプの
入った黒ズボン姿の銃を捧げ持った兵士たちの立ち並ぶ中をマラウイ国旗に包まれた棺
桶と共に進み(2人の女性兵士も見掛けました)、家の中に安置されました。居並ぶ女性たち
の一段と激しい嘆き声が聞こえます(葬儀の際の所作らしい)。親族たちと最後の対面を済
ませた後、500mほど離れた墓地に移動。既に穴が掘られてあり、上に多くの竹が渡してあり
ます。牧師たちによるお祈りが捧げられた後、この竹の上に棺桶が載せられ、兵士たちによ
って竹のしなりを利用して穴の中へ降ろされました。土葬です。さらに村人たちによって土
が被せられました(この間ずっと賛美歌?が歌い続けられていました)。祈りと共に遺族たち
によって花や供物が盛られた土の上に置かれ、軍隊式らしく兵士6〜7名による空砲3連発
が放たれました。その最後の薬きょうが、あろうことか少し離れた斜め後方に屈んでいた当
方の顔を直撃しました。痛みはほとんど感じなかったのですが、鼻と左目の間から血が滲み
出していました(押さえているとすぐに止まりましたが)。危ういところでした。まさか後ろにま
で飛んでくるとは……。兵士の一人が何食わぬ顔でそばに落ちていた直径5mm,長さ5cm
ほどの薬きょうを拾って行きました。その後、遺族や代表者たちによる挨拶でお開き。待ち
時間も入れて計4時間半ほどの行事でした。当国の結婚式や披露パーティには何度か出席
したことがあるのですが、葬式は始めての体験でした。秘書は気丈な人でしばらくは落ち込
んでいましたが、その後は元気に勤務についています。


慰霊祭




戦争記念碑と火焔樹
 同じ日に、米国次期大統領選挙でObama氏が勝利を収めました。聴いてみるとほとんど
のマラウイ人が初の黒人大統領となることを祝福しており、また彼はケニヤ系ということで
翌日はケニヤは公休となったようです。サブプライム問題に端を発して世界的な不況感が
漂っている現在、「Change」を是非とも実現化して欲しいものです。ちなみに今マラウイでは
ガソリンが約175円/リットル もしており、飲食料品やバス料金等必需費用も大幅に値上がり
しています(ホテルの朝食についてくるソーセージや卵も小さ目になりました-ウエイターが
恐縮していましたが-)。
 11月半ばに散歩で、20分ほど離れたユーカリ並木のある「戦争記念公園」に行ってみる
と、たまたま慰霊祭をやっていました。大勢の人々が集まって、鼓笛隊による演奏等もあっ
て賑わっており、兵士たちの歩き回る碑の周りの火焔樹の深紅色が目に鮮やかに映りまし
た(ちょうど日本の紅葉狩りをした気分でした)。遺族なのでしょうか、正装した女性たちの姿
も見られました。





                                         
                                           


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