ジャスミンの風
プノンペン便り 1 -14-へ
2 -1- カンボディアの概略
カンボディア入国以来2ケ月、勤務先(プレアコソマ総合技術専門学院;PPI)に通い始めてからはや1ケ月が過ぎました。6月1日には 定年退職して初めて
の誕生日をここプノンペンで迎えました。体調に異常はまったく無く、元気にかつ快適に暮らしています。
今回はこのカンボディアを概略紹介しておきましょう(地図が手許にあれば幸いです)。
地理
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大阪から首都プノンペンまで直線距離で約4,000km(沖縄・小笠原を除く日本列島の長さの約2倍で、思うほど遠くはない)。インドシナ半島の中央や
や南西寄りにあり、タイ・ラオス・ベトナムと国境を接する。東西≒560km、南北≒440km(北緯10〜15度, 東経102〜108度)の大きさで、国土面積は約
181,000km2(日本の約半分、タイの約1/3)。メコン川・トンレサップ川の流域に広がる広大な平野部が国土全体の4割を占める。
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人口≒1,200万人*(日本の約1/10、タイの約1/5)で、プノンペンにその1割が住む。長年続いた内戦の影響で 女性が半分以上、15才以下が40%以上
を占める。 * 戸籍が不正確なため色んな数値がある。
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高温多湿の熱帯モンスーン気候に属し、乾季(11月上旬〜5月中旬)と雨季(5月下旬〜10月下旬)に分かれる。乾季には雨はほとんど降らず 3月,4
月は気温40℃を越える。雨季といっても一日中降り続くわけではなく、1,2時間スコールがある程度(その都度道路が冠水して 交通渋滞が発生する
が)。雨季には 中国雲南省に源を発するメコン川*(全長≒4,200km)が氾濫して乾季との水位差が10mにも達するといわれ、プノンペンで合流するト
ンレサップ川の上流にあるトンレサップ湖(乾季で3,000km2)の面積が3〜4倍になる。カンボディアの主産業である農業はこのお陰で成り立っ てい
るが、河川氾濫原より成るプノンペンはこの期間陸の孤島となる。
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* 2〜3月に京都で開催された「第3回世界水フォーラム」でもメコン川の流域管理問題が取り上げられた。
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国民性
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礼儀正しく、正直・朴訥で温和な性格(豊かな自然があり 食べるものに困らない、それに敬虔な仏教徒であることに起因?)。一方 プライドが高く、1
月末のタイ女優のアンコールワット発言に端を発して暴動が起こったように、一度切れると怖い(悲しい歴史が背景にあり、精神的障害者も多いせ
い?)。
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宗教
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クメール人 中でも農民の大半が 現世での身分は前世での行いに起因する という輪廻
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思想を柱とする「上座部(小乗)仏教」を信仰する(日本は戒律のより緩やかな大乗仏教)。
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歴史
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紀元1世紀には歴史の舞台に登場(宗教・文化などはインドの影響が大)。
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800〜1450年 アンコール時代(隆盛期は日本の平安時代に相当)
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*1 一時はインドシナ半島の大半を支配したが、山田長政等の居たアユタヤ王朝に滅ぼされた。
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*2 アンコールワットはクメール人のこころの拠りどころ(イスラム教徒にとっての聖地メッカに匹敵?)
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1953年 フランスから独立(今年は独立50周年)
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1970年 アメリカ寄りのロン・ノル将軍がクーデターで政権獲得 → ベトナム戦争により内戦激化
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1975〜79年 原始社会主義を唱えるクメール・ルージュ(ポル・ポト派)による恐治、虐殺→ 技術者・教育者・医者等知識階級のほとんどが対象
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1979年 ベトナム軍のカンボディア侵攻により、ベトナム寄りのヘン・サムリン政権と民主カンプチア政府3派連合との対立 → 二重政権による内戦
が長期化
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1991年10月 パリ和平協定 → 11月 シアヌーク殿下が12年振りにカンボディアに帰還
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1993年 UNTAC(国連カンボディア暫定統治機構;明石康元国連事務次長が代表)の活動により、制憲議会選挙(総選挙)を実施 → 新憲法交付、
「カンボディア王国」発足、シアヌーク国王即位
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1998年7月 第2回総選挙実施 * 同年 ポル・ポト死去
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政治
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立憲君主制 → 国家元首はシアヌーク国王。人民党(CPP)のフン・セン首相率いる連立政権。
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*「クメール(現地語ではクマエ)」と「カンボディア(同カンプチア)」の違い?
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→ 本来同じであるが、一般的には クメール人、クメール語、クメール音楽等 民族・文化に関連する場合は前者が、政治的・国際的な問題や正式の
文書等には後者が使われる。なお日本の旅行図書や地図等ではカンボジアと書かれる場合が多いが、外務省の文書ではカンボディアと表記され
ているので、ここではカンボディアに統一して用いることにする。
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経済
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GDP(国内総生産) ≒270$/人(タイの約1/7で非常に小さい)
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外国からの援助は国家予算(≒6億$: JICAの年間予算の1/3.5)に匹敵。うち日本からは20〜25%。 教育・保健医療に力を入れている。
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公務員の給与≒20〜30$/月で非常に低く、これが副職・汚職等の元凶となっている。
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* プノンペンでは一般の4人家族で150〜250$/月 ほどの生活費が必要
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主要産業は農業で全体の4割を占め、第2次産業(工業)の育成が課題。縫製業や製靴業等の軽工業に力を入れているが、一般に民間企業が極
端に少ない。電気代・通信費が高い。
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通貨単位はリエル(1$≒4,000リエル)であるが、US$が流通。
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教育制度
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6・3・3制であるが、就学率は低い。大学は数えるほどしか無く、職業訓練校は多くあるが 卒業しても就職の機会が少ない。工大等での土木の授業
の教科書はフランス語らしい。一方 当国では英語熱が盛んで、英語塾をあちこちで見かける。小さい時から通い(メイドの子供も習わせているとの
こと)、どこも繁盛していると言う。我がPPIは現在 日本の工業高校および高専に相当するが、将来は大学並みの規模・内容を目指している。
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☆カンボディアでのJICA事業
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人材が不足し 政府機能が停滞しているということから、社会的弱者(孤児等)支援・職業訓練・教育制度改革等の要請が強く、日本の最重点援助国
の1つである。1966年以来 教育文化部門・職業訓練部門・保健医療部門を中心に 青年海外協力隊(JOCV)160名余り、シニアボランティア(SV)40
名余りが派遣されている。グッドガバナンス(行政改革支援等)・経済・社会インフラの整備(交通網や電力供給,都市洪水対策等)・保健医療の充実・
教育の充実・農業・農村開発・地雷除去・障害者支援・環境資源管理(森林再生等)の8分野を重点項目として、専門家等も継続して派遣している。ま
た日本や第3国への技術研修員他の受け入れ等も行なっている。全般的に援助への依存が高く、カンボディアのオーナーシップ(自助努力)の強化
が大きな課題となっている。
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