「ふじさんの当直日誌inボストン」
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2002年11月1日“I am Alien”<後編>

(前編はこちらです)

 現地時間12時に、シカゴ・オヘア空港からボストン・ローガン空港へ。

AA(American Airlines)の国内線。日本国内に比べて、空港のセキュリティ・チェックが異様に厳しい。係の中年女性が「ランダム・チェック」としきりに強調していたが、僕たち4人のグループと他にも学会に行っていた日本人は、みんな、その「ランダム・チェック」に引っかかっていた。アメリカ人はほとんど引っかかっていなかったのに。
すごく偏った「ランダム」だな、これ。

係の中年女性は、含み笑いを浮かべながら、ボディ・チェック方面にご案内。平等で、人種差別をしない国、アメリカ。実際は、「人種差別をしていないということにしているだけの国」なのかもしれない。これも、昨年の同時多発テロの傷跡の深さなのかもしれないが。

おそらく金属探知機であろう棒状の物体で、全身を検索された。クレジット・カードやベルトのバックルまで反応し、なかなか解放してくれない。言葉の通じない国でのこういう検査は、やっぱり参ってしまう。
ようやく身体検査が終わりAAの機内に入れた。機内は8〜9割がアメリカ人(とはいっても、人種は様々だけど)。他の同行の先生とは、満席ということで席がバラバラに。

最初、隣に座っていたアメリカ人青年は、ベルトランプが消えると同時に、隣の空いているほうの席に移ってしまった。なんだか、差別されているようで嫌だが、広いところに移っただけと思うことにした。実際、フレンドリーに英語で話しかけられても困るだけなんだけどさ。

 隣が空いたことで、気楽になったことは間違いない。しかし、次の攻撃が。
白人スチュワーデスの英語がものすごく早口で、よく聞き取れない。なんとか「カーフェー、プリーズ」と言うのが精一杯。アメリカのコーヒーは不味いという噂にたがわず、日本のファミレスのおかわり自由のコーヒーをさらに薄めて香りを飛ばしたような代物。

 シカゴからボストンまでは、飛行機で2時間半くらいなのだが、AAだけなのか、アメリカの飛行機はみなそうなのかは不明だが(たぶん、国際線とかは違うと思う)機内にテレビもなければ、音楽が聴けるヘッドフォンもない。アメリカ人にとっては、飛行機なんて日本人の電車感覚ということなのだろうか?

 14:30にボストン・ローガン空港着。最初みんなで「1時間半しかたってないのか…えらく長かったような気がする」と言い合っていたが、実際はアメリカは国内でも時差があるため、2時間半乗っていても、ボストンはまだ16時なのだ。

 「ボストンは寒い!」という話を聞いていたので厚着をしていたのだが、外気温は2〜3℃くらい。襟元や足元が冷たい。

 今回の学会のツアーの世話をしてくれる旅行会社の人が、空港まで迎えに来てくれていた。10人あまりのツアーの人数に比してやたらと巨大なバスで各人のホテルまで。

 ボストンは今、ハイウェイを地下に潜らせる工事が続いており、その工事は、今アメリカで最も大規模な公共事業なのだそうだ。
それで、地価もアメリカのバブル崩壊後でも下がっていない状態らしい。 

 16時半に、ようやく会場のすぐちかくにあるシェラトン・ホテルに到着。最初のバスセンターから、ほぼ24時間。

 シェラトンは、名前は有名なのだが、部屋には冷蔵庫もなければ、アメニティの歯ブラシセットもない。シャワーも固定されていて、水の出もあまりよくない。ツインの部屋に3人で泊まる予定だったのだが、追加のベッドも入っていない。こんなものなのだろうか?

 これで、ひとり一泊あたり250ドルもするなんて!
まあ、学会会場に近いので、特別価格ではあるんだろうけれども。

 会場の下見に行く予定だったのだが、みんな長旅で疲れ果てていて、会場は明日にすることに。今から行っても、どうせ何もできないし。

 17時30分に、ボストンで10年間留学生活を送っておられるというM先生と一足先に現地入りしていた教授と合流して、今、ボストンでいちばん人気があるというシーフードの店「リーガル・シーフード」の本店へ。
まず、ボストン名物のクラムチャウダーをいただく。濃厚で、貝の旨みがよく溶け込んでいる。日本人の舌にも美味しいと感じられる味。
生ガキやムール貝、そしてこれもボストン名物のロブスターを6人で4匹。ただひたすら食べることに集中。甲殻類は、世界中どこででも人類を黙らせる。
生 ガキは、瑞々しくて生臭さがなく、ロブスターは、バターがよく効いていて、プリプリしている。でも、ちょっと味が濃厚すぎて、多量に食べるのは辛い。というか、頼みすぎだったのだろうなあ。最後のほうは、ポン酢が欲しくなった。

この店は、かなり人気があるらしくて、18時を過ぎると外にはすごい行列。日本人は行列が好きといわれるけれど、少なくともボストンの人たちは、美味しいものを食べるのに行列を厭わない人が多いようだ。
食事代は、6人でワイン2本とビール1人あたり1杯、前述の食事のほかにいくつかのサイドメニューと食後のコーヒーまでで、ひとり一万円くらい。豪気にも教授のオゴリ。教授の話では、ボストンでは最高級クラスの店らしい。安いものはひたすら安い国みたいだからなあ。

あとでO先生がボソッと「教授には悪かったけれど、出しますよとか言うのも、かえって失礼だろうしなあ」とコメント。大人のカケヒキは難しいのだ。

20時半にホテルの部屋に戻り、シャワーだけ浴びてから、21時前に就寝。
だって、日本は、もう11月2日の昼間なのだ。
それに、横になって眠れるというのは、やっぱり飛行機の中とは大違い。

やっと終わった、11月1日。

<付記>リーガル・シーフードって、アメリカに詳しい先生に言わせると、「アメリカ中に支店があって、ロイヤルホストみたいなもの」なんだそうです。そうなんですか…とややがっかり。

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