ふじさんの当直日誌inボストン(4)11月2日<後編>
 
〜ボストン美術館

11月2日<前編>の続きです。未読の方は、こちらを先にどうぞ。


13時半にようやく解放されて、K先生と市内観光に行くことに。
 あまり乗り気でなかったK先生に頼み込んで、ボストン美術館に行くことに。
 K先生、前にボストンに来たときは、興味がなくて美術館には行かなかったとのこと。もったいない!

 市内をちょっと迷いつつも、美術館方面へ。
 だいたい、今回ボストンに来たのも、この世界4大美術館のひとつを見るために来たといっても過言ではないのだ。ああ、拷問なんて受けてる場合じゃなかったのに。

 約30分くらい歩いて、美術館到着。なんだかとてもアメリカっぽい建物。
 
ホワイトハウス風とでも申しましょうか。
 20代くらいの人が多いよう。中年夫婦もちらほら。入場料は、大人ひとり15ドル。まあ、日本とそんなに変わらない。

この美術館は、日本の浮世絵をはじめとした、東洋美術のコレクションが有名。夕方からは御大O先生の発表もあるので、僕たちに許された時間は約2時間。
 全部観るのは到底不可能なのだが、とりあえず最低限は抑えなければという覚悟のもとに、ボストン美術館めぐりスタート。

 まずは、東洋美術のコーナーに。でも、僕にとっては日本の美術館で見慣れているせいか、正直、あんまり面白くない。「あっ、北斎」とか、「あっ、歌麿」とか思うけれど、地球の裏側で見る不思議さ以上の感慨は伝わってこない。
 いや、絵自体がつまらないわけじゃなくて、わざわざここで見なくても、などと思ってしまう自分がいるんだよなあ。

 この美術館で驚いたのは、かなりの「演出」が作品に対して施されているということだ。
 インドや中国の洞窟の中で見つかった仏像は、真っ暗な部屋の洞窟風な展示室に飾られて、ボンヤリとした光があてられている。
 エジプトのピラミッドから持ってきた壁画は、石室風の展示室に飾られている。

 館内には、スケッチをしている学生風の人が多い。ものすごく巧い美術学生風の人から、学校の美術授業で書かされているらしいハイスクールの学生まで。
 もう時間がなくなってきて、印象派のコーナーへ。

 ここが、僕たちが行ったコーナーのなかではいちばん人が多かった。
 東洋美術のコーナーは、ほとんど人がいなかったのに…

 マネ、モネ、ミレー、ルノワール、ピカソ…
 下世話な話だが、この部屋の絵だけで、いくらになるんだろうか?そんなことが、頭に浮かんだ。

 K先生も「あんまり興味なかったけど、やっぱり本物ってすごいんだね〜来てよかった!」と喜んでくれたらしい。
 もっと時間があれば、アメリカの現代美術とかも観たかったんだけどなあ。

 お土産を買って、また歩いてホテルへ。
 ボストン美術館、また来ることがあれば、もっとゆっくり観たい。

 ホテルに戻ると、O先生たちは、もう発表用のポスターの準備を終えて戻ってきていた。
 そのために来たのに、面目ない。まあ、別に怒っている風でもなかったけれど。

 アメリカでは携帯電話が使えないので、一度はぐれたら、連絡のとりようがない。
 そう考えると、携帯電話というのは僕たちの生活習慣を大きく変えている。
 「待ち合わせ」なんてことをあんまりしなくなったものなあ。
 使えなくなると、あらためて携帯の生活浸透度を実感。

 18時半から、ポスターセッション。
 最初はO先生のところにいたのだが、「好きに観てまわってていいよ」と言われたので、会場を見て回ることに。でも、緊張したあと、ひたすら歩き回ったために、ものすごく眠くなってきたため、こっそりと部屋に戻って休憩。

 …のつもりが、ベッドで一眠り。起きたときは、さすがに時計を確認した。
 もし時間に遅れたら、みんな探し回ってしまうだろう。携帯が使えないというのは、やっぱり怖い。
 それにしても、人間というのは、どんなに疲れていても危機的状況のときは時間通りに起きられるものだな、と自分で感心。

 とりあえず知り合いの先生と話し込んだという設定にして、ポスター会場に。
 O先生、不肖の鞄持ちで、すみません。

 このポスター会場、日本とは違って、食事に加え、アルコールも供されている。
 参加者たちは、ワインの入ったコップ片手に会場内を歩き回っている。
 日本の学会会場では、終わったあとはともかく、発表中にアルコールなんて考えられないのだが。
 明らかに飲み食いして酔っ払いに来ているだけのような人もいて、びっくり。
 こういうのって、文化の違いなんだろうなあ。

 ポスターセッションは20時半に終了。
 食事は、ボストンでいちばん夜景が綺麗という会場近くのビルの最上階のレストラン「トップ・オブ・ザ・ハブ」へ。
 この建物、テロの標的にされているという噂も流れていて、入り口で身分証明書の提示を求められた。
 一緒に行った留学中の先生の身分証で、なんとかパス。

ディナーの予約はいっぱい、ということで、軽食とお酒のコーナーに。
 それでも、ビールとワイン、ピザにサラダ、またまたクラムチャウダーなどを食べて、結構お腹いっぱい。

ココから観るボストンの夜景は、ほんとうに素晴らしい。冷たい空気に映える暖色系の明かりたち。
稲佐山から観る長崎の夜景をもっとスケールを大きくしたような感じだ。

この夜景が、いちばんの御馳走なのかもしれない。

22時近くにホテルに戻り、ホテルのバーで軽く二次会。シャンパンを開けて、御大O先生の発表が無事終わったことを祝した。
1時間近く飲んで、23時に部屋へ。あとはもう、寝るだけだ。

寝付いた頃、現地の勉強会に参加していたT先生が部屋に戻ってきた、ような気がする。
 でも、なんとなくしか記憶がないくらい熟睡。


 11月3日の日記へ