銅版画家 長谷川潔展」    作品の秘密


   クリックすると元のサイズで表示します 「長谷川潔展」パンフレットより


仕事の後なので行こうかどうか迷ったが、北埼玉の私にはまた横浜まではなかなか来られないと思い切りました

横浜美術館
は、「歩く歩道」を使っても、泊まり道具一式抱えていた私には桜木町の駅から近そうで案外遠く感じました 

美術館入り口より前にレストランのメニューに合い、「先に食事してしまおうかな?」とも思いましたが、帰りの電車が気になり先に見ることにしました 

   

 
            「狐と葡萄」

私は「長谷川潔の版画」を観て、黒に「暖かい黒」というのがあることを知りました

印刷にしてしまうと分からないのですが、そばで見ると「上質のフェルト地」のような「ふんわりした暖かさ」があります 私は、無意識に黒は冷たいと思っていたことに気付きました

いくつかの作品には、原版もあり、それらを見ると本当に薄い彫りで、繊細に彫られています 彼の場合はみな自分で描き、自分で彫り、自分で摺ったそうです 

製作は、印刷の「この黒の色を出すに一番苦労した」とありましたが、そうだったのかと思える豊かな黒でした



私は、これまで「黒の技法」マニエル・ノワールの時代の版画しか思い浮びませんでしたが、他にも作品は多くありました 


         


「マニエル・ノワール(メゾチント)の時代」は70歳近くなって始めた技法だそうですから、89歳で亡くなる日まで製作したとしても19年間ですから、その前が多い訳です 長生きするって素敵なことと思いました


初期のこの人作品には、あれこれ私の知っている作風が見えます 木版画では川上澄夫を思い出しました 

ルドンに惹かれていたとありましたが、ルドンの影がずいぶん見えます 女性の横顔や目玉の作風、リトグラフの色彩については少しルドンの影響が見えすぎて、ついつい比べてしました 

フランスに渡って描いた女性の顔はレオナルド・フジタを思い出し、フジタに惹かれていたからこうなるのか、フランス女性を描くとこうなるのか、と考えました

それでも、いいものはやっぱり良くて、マニエル・ノワールの時代の版画はどれもみな素敵ですが、そこにいたるまでの作品も好きです




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    パンフレットより
「T 裸婦とミューズ」
「聖体を受けたる少女」「横顔」は清潔で高雅でした


「U 風景 −丘上の古村、窓、樹木」
「ロエの村道」「丘の上の古村」「ニレの木」などなど・・  この人の目を通すと、自然はなんと魅力的になるのでしょうか


「V 草花・静物−日常にひそむ神秘、宇宙のリズム−」
「野辺の小禽」は、私の好きな作品のベスト5に入れます 

ここは、「マニエル・ノワール(メゾチント)の時代」の作品を含み、代表でしょうか・・ 

「狐と葡萄」や飼い慣らされた小鳥」「玻璃球のある静物」など目にしたことある作品が多くなり黒の美しさに飲まれます ただ、私は彼が愛したレース模様の作品にはあまり惹かれませんでした
 

「W 小さな世界(挿画と装丁)−文学、音楽、食との交換−」
挿絵や装丁、なんと贅沢な本かと眺めました

昔の本にはこういう作家と画家の交流から、素晴らしい装丁や挿絵を見ます 前に「立原道造展」見た時には、友人の深沢紅子にデザインの依頼した手紙が残されていました



今回のカタログには本物の黒の雰囲気がなくて残念でした 他の美術館でやった時のカタログの方がまだ近かったので、そちらを買いました 

でも、思い出すよすがにやはり見た作品が全部載った物も買えばよかったと後悔しています 私が好きな「黒をバックにした横顔の女性」の作品の名前が思い出せないのです


銅版画は、手に取るように丁寧に観て行きたい作品です これだけの作品揃った今回の展覧会、多くの人に観て欲しいと思います 

海外での評価が高く、皆外に流れてしまった「福井良之助の孔版画」ように日本で観られなくなったら寂しいことです



全館企画「横浜美術館 まるごと全部 長谷川潔!」という、スタンプラリーをしていました


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                                 ミュージアムショップより

 長谷川潔展、常設展、情報センター、ミュージアムショップ、レストランと
みな周って行くとスタンプを押してくれ
ミュージアムショップとレストランで小さなプレゼントが貰えます

スタンプが素敵と褒めたら
ミュージアムショップで普段押さないスタンプまで押してくれました

左上・飛行船&表側にです


おかげで、ふだん周る余裕のない「美術情報センター」にまで入り、 過去の長谷川潔展のポスターをたくさん観られました 

最近10年位でも彼の展覧会は府中・京都などあちこちで開催されています、人気のある人なのでしょうか・・

その中でも今回のものはずいぶん作品数が多いのですが、その理由はパンフレットを読み分かりました

この美術館は横浜出身の彼の作品を650点も集めていて、また2005年には、パリのアトリエに残した100点を越す、デッサン、水彩、下絵の寄贈を受けたそうです

その中から選ばれた250点の作品はボリュームがありました



    

 レストランで
スタンプラリーの「長谷川潔・蝶の栞」を頂きました

食事は
「忙しいビジネスマンのためのランチ」という軽めの物にしましたが
とても美味しく
展覧会を幸福な気持ちで締めくくりました




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