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PAT MARTINO


RICKY TINO / SOMETIMES (Singular 1960)
WILLIS JACKSON / GREASE 'N' GRAVY (Prestige 1963.5.23)
WILLIS JACKSON / THE GOOD LIFE (Prestige 1963.5.23)
WILLIS JACKSON / MORE GRAVY (Prestige 1963.10.24)
WILLIS JACKSON / BOSS SHOUTIN' (Prestige 1964.1.9)
WILLIS JACKSON / JACKSON'S ACTION (Prestige 1964.3.21)
WILLIS JACKSON / LIVE ACTION (Prestige 1964.3.21)
WILLIS JACKSON / SOUL NIGHT-LIVE (Prestige 1964.3.21)
WILLIS JACKSON / TELL IT (Prestige 1964.3.21)
DON PATTERSON / HOLIDAY SOUL (Prestige 1964.11.25)
ERIC KLOSS / INTRODUCING ERIC CLOSS (Prestige 1965.9.1)
BROTHER JACK McDUFF / WALK ON BY (Prestige 1965-1966)
BROTHER JACK McDUFF / MIDNIGHT SUN (Prestige 1966.2)
BROTHER JACK McDUFF / HALLELUJAH TIME! (Prestige 1965)
BROTHER JACK McDUFF / I GOT A WOMAN (Prestige 1965)
BROTHER JACK McDUFF / SOUL CIRCLE (Prestige 1966.2)
BROTHER JACK McDUFF / STEPPIN' OUT (Prestige 1966.2)

◆ PAT MARTINO の初期のプレイは、一口で言えば、荒削りである。1963年以降のプレイを聞けば、テクニックについては既に完成の域にある。しかし、ウエス・モンゴメリーなどのトップ・プレイヤーとの演奏の質には、まだ隔たりがある。
◆ 初期では、WILLIS JACKSON 、DON PATTERSON 、BROTHER JACK McDUFF などの元で、R&B的グルーブを追求している。後年の、内面的ともいえる音楽的な方向性は、この時期の演奏からは窺い知れない。
(2002.1.13)

TRUDY PITTS / INTRODUCING TRUDY PITTS (Prestige 1967.2.15,21)

MUSICIANS / TRUDY PITTS:org , PAT MARTINO:g , BILLY CARNEY:ds , ABDU JOHNSON:conga
● 初リーダー作の "EL HOMBLE" のレコーディング直前のプレイ。ギター・プレイの洗練度は増している。
(記2002.1.15)

PAT MARTINO / EL HOMBLE (Prestige 1967.5.1)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , TRUDY PITTS:org , DANNY TURNER:fl , MITCH FINE:ds , and others
● オルガンに TRUDY PITTS を迎えての初リーダー作。聞き手に対する説得力という点で、プレイ・スタイルが一応の完成の域に達している。リーダー作の中では最もオーソドックスなジャズ・ギターのスタイルと言えるか?"ONCE I LOVED"と"JUST FRIENDS"以外は、全て自作曲。"ONCE I LOVED"では、WES MONTGOMERY 譲りのオクターブ奏法を聞かせる。"JUST FRIENDS"では、エンディングのロング・ソロでの聞き手を巻き込むドライブ感が、特に素晴らしい。自作曲は、いずれも佳作。
(記2002.1.17)


RICHARD "GROOVE" HOLMS / GET UP AND GET IT (Prestige 1967.5.29)
JOHN HANDY / NEW VIEW! (Columbia 1967.6.28)

DON PATTERSON / FOUR DIMENSIONS (Prestige 1967.8.25)

MUSICIANS / DON PATTERSON: org , HOUSTON PERSON:ts , PAT MARTINO:g , BILLY JAMES:ds
● サイドメンとしての演奏だが、ビ・バップ・フレーズで存在感を示す。"FREDDIE TOOKS JR." でのハイ・テンポのソロは、WES MONTGOMERY の影響を強く感じさせる。テーマ部での、テナー・サックスとのユニゾンは痛快。
(記2002.1.15)


ERIC KLOSS / LIFE FORCE (Prestige 1967.9.18)

TRUDY PITTS / THESE BLUES OF MINE (Prestige 1967.9.21,25)

MUSICIANS / TRUDY PITTS:org , PAT MARTINO:g , BILLY CARNEY:ds
● TRUDY PITTS のスタイルに合わせたプレイ。
(記2002.1.15)

PAT MARTINO / STRINGS! (Prestige 1967.10.2)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , JOE FARRELL:ts,fl , CEDAR WALTON:p , BEN TUCKER:b , WALTER PERKINS:ds , and others
● 初リーダー作から数ヶ月で、ギター・プレイを更に進歩させている。聞き手を圧倒するギター・サウンドとフレーズ、いよいよバーチュオーゾの域に到達しつつある。参加メンバーは、60年代のリーダー作では最も充実している。JOE FARRELL や CEDAR WALTON のプレイの内容と比較しても、ヒケを取る事もない。この頃から、8分・16分音符での小節埋め尽くしの傾向が顕著になる。"脱ビ・バップ"の方向性が、弱冠ながら感じ取られるようになる。
(記2002.1.15)

PAT MARTINO / EAST! (Prestige 1968.1.8)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , EDDIE GREEN:p , BEN TUCKER:b , TYRON BROWN:b("East"ONLY) , NENNY McBROWNE:ds
● ギター、ピアノ、ベース、ドラムスのカルテットが、MARTINO の特質を示す為の、最も効果的な編成ではないだろうか。60年代でのベスト・プレイが聞かれる。"EAST"は、60年代のイメージを強く感じさせる、1つのモードだけでソロ・パートが構成される楽曲。次作の "BAIYINA" に通じるコンセプト。注目すべきは "PARK AVENUE PETITE" で、MARTINO の演奏の一つの売り物である、非常に説得力のあるバラード・プレイが聞かれる事である。
(記2002.1.17)


CHARLES McPHERSON / FROM THIS MOMENT ON (Prestige 1968.1.31)
DON PATTERSON / BOPPIN' AND BURNIN' (Prestige 1968.2.22)

DON PATTERSON / OPUS DE DON (Prestige 1968.6.5)

MUSICIANS / DON PATTERSON:org , BLUE MITCHELL:tp , JUNIOR COOK:ts , PAT MARTINO:g , BILLY JAMES:ds
● このセッションでは、サイドメンの MARTINO としてはギター・ソロが比較的長く、初リーダー作以降の好調ぶりが伺える。
(記2002.1.17)

PAT MARTINO / BAIYINA (Prestige 1968.6.11)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , BOBBY ROSE:g , GREGORY HERBERT:as,fl , RICHARD DAVIS:b , CHARLIE PERSIP:ds , REGGIE FERGUSON:tabla , BALAKRISHNA:tamboura
● インド音楽とのジャズとの融合を目指したのか?楽曲・アレンジ共、綿密に構成されてはいる。ここでも、強い60年代的な時代背景を感じさせる。問題作。
(記2002.1.20)


ERIC KLOSS / SKY SHADOWS (Prestige 1968.8.13)
CHARLES McPHERSON / HORIZONS (Prestige 1968.8.27)

DON PATTERSON / FUNK YOU! (Prestige 1968.9.24)

MUSICIANS / DON PATTERSON:org , SONNY STITT:as,ts , CHARLES McPHERSON:as , PAT MARTINO:g , BILLY JAMES:ds
● オーソドックスなアプローチ。SONNY STITT と CHARLES McPHERSON にあおられ、一層ドライブするフレーズ。ギター・ソロが先発の "Airgin"、MARTINO の全盛期のソロがたったワン・コーラスで終わるのが、非常に残念。
(記2002.1.20)


SONNY STITT / NIGHT LETTER (Prestige 1969.10.27)

ERIC KLOSS / CONSCIOUSNESS! (Prestige 1970.1.6)

MUSICIANS / ERIC KLOSS:as,ts , PAT MARTINO:g , CHICK COREA:p,ele.p , DAVE HOLLAND:b,ele.b , JACK DeJOHNETTE:ds
● メンバーは超強力。CHICK COREA の演奏するフェンダー・ローズと生ピアノ、曲調と共に、ダークな1970年的空気が強く漂う。"OUTWARD WISDOM" は MARTINO の曲で、幾何学的フレーズを12弦ギターで取り憑かれたように弾きまくり、圧巻。
(記2002.1.20)
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PAT MARTINO / DESPERADO (Prestige 1970.3.9)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , ERIC KLOSS:ss ("Blackjack"only) , EDDIE GREEN:ele.p , TYRONE BROWN:ele.b , SHERMAN FERGUSON:ds
● 全曲に渡る12弦ギターのプレイが驚異的。現在、12弦ギターをここまで弾き切る人間は存在するであろうか?特に "OLEO" は凄い。各種エフェクターが出揃った現在なら、多分、12弦ギターでこんなプレイをしようとは考えないであろう。このアルバムも、1970年的サウンド。
(記2002.1.20)

BARRY MILES
WHITE HEAT
(Mainstream)◆ Barry Miles:p,el-p,vib , Lou Tabackin:ts,fl , Pat Martino:g , John Abercrombie:g , Victor Gaskin:b , Terry Silverlight:ds , Warren Smith:conga
◆ 1971
● 改めて傾聴してみると、凄いテクニックを持つキーボード奏者である事が分かる Barry Miles 。作曲面に関しては1960年代の影を引き摺っており、1970年代の波に埋没しそうになっているようにも聴こえる。Pat Martino は第二のソリストで、いつものフレーズで予想以上に弾きまくっている。それにしても、もう一人の偉大なギタリストの John Abercrombie の存在が目立たず、このセッションではどういう位置付けだったのか?
(記2007.8.28)
PAT MARTINO / FOOTPRINTS (Cobblestone → Muse 1972.3.24)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , BOBBY ROSE:g , RICHARD DAVIS:b , BILLY HIGGINS:ds
● このアルバムに関しては、年代を超えたジャズ・アルバムとして聞く事が出来る。MARTINO のキャリアの中でも、最もテクニックの充実したこの時期にスタンダード集をレコーディング出来た事は、非常にラッキーであった。この作品が無かったなら、MARTINO のディスコグラフィーの充実度は、イメージ的なレベルが少し下がったモノになったであろう。ピアノ・レス、バッキングはギターというフォーマットで、ジャズ・ギタリストとしての真の実力を見せ付けたと言える。バラード、"WHAT ARE YOU DOING REST OF YOUR LIFE?" は、屈指の名演である。
● RICHARD DAVIS と BILLY HIGGINS が素晴らしい。特に HIGGINS の名人芸とも言うべきドラミングは、この編成にハマっている。
(記2002.1.22)


BOBBY PIERCE / INTRODUCING BOBBY PIERCE (Cobblestone 1972.4.6)

ERIC KLOSS / ONE, TWO, FREE (Prestige 1972.8.28)

MUSICIANS / ERIC KLOSS:as , PAT MARTINO:g , RON THOMAS:ele.p , DAVE HOLLAND:b,ele.b , RON KRASINSKI:ds
● タイトル曲の "ONE,TWO,FREE" は、複雑な構成を持つ組曲。MARTINO の ERIC KLOSS の楽曲への貢献度は高い。"IT'S TO LATE" はピアノ・レスで、ソウルフルとも言えるプレイ。MARTINO と ERIC KLOSS のコラボレーション歴は長く、この作品ではコンビネーションが結実していると言えるが、このコンビでの作品はこれが最後。
(記2002.1.26)


WOODY HERMAN / THE RAVEN SPEAKS (Fantasy 1972)

PAT MARTINO / LIVE! (Muse 1972.9.7)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , RON THOMAS:ele.p , TYRONE BROWN:ele.b , SHERMAN FERGUSON:ds
● フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノとエレキ・ベースのバッキング、ソリッド・ギターにウルトラ・ヘビー・ゲージのギター弦。"マシンガン"と形容される演奏スタイル、ここでの演奏が典型的。ギター・ソロは、ひたすら長い。"らしさ"という点では、MARTINO の最も代表的作品か?"SUNNY" での、シンプルなコード進行に乗った、8分音符で埋め尽くされたフレーズは、永遠に終わらないかの如く、聞き手を金縛りにする。オリジナルの "THE GREAT STREAM" は MARTINO らしい作品で、幾何学的音列で構成されるテーマと、モード的コード進行を持つソロ部分からなる。
(記2002.1.26)

STANLEY CLARKE / CHILDREN OF FOREVER (Polydor 1972.12.26,27)

MUSICIANS / STANLEY CLARKE:b , CHICK COREA:key , LENNY WHITE:ds , PAT MARTINO:g , and others
● CHICK COREA のバンド、RETURN TO FOREVER の主要メンバーが参加、当然ながら CHICK COREA がサウンドの中心。MARTINO は、アンサンブルの一部としてのプレイで、目立たない。
(記2002.1.24)
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DON PATTERSON / THESE ARE SOULFUL DAYS (Muse 1973.9.17)

MUSICIANS / DON PATTERSON:org , JIMMY HEATH:ts , PAT MARTINO:g , ALBERT HEATH:ds
● 60年代に戻ったかのような、オーソドックスな演奏。DON PATTERSON のオルガンは、60年代よりも更に洗練されている。MARTINO のバップ・フレーズも好調、この時期独特のドライなギター・サウンドが聞ける。リーダー作よりでのギター・プレイと比較して、サイドに廻ったケースでの方が、やはりリラックスしている。
(記2002.1.26)


WILLIS JACKSON / HEADED AND GUTTED (Muse 1974.5.16)
JIMMY HEATH / THE TIME AND THE PLACE (Landmark 1974.6.24)

PAT MARTINO / CONSCIOUSNESS (Muse 1974.10.7)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , EDDIE GREEN:ele.p , TYRONE BROWN:ele.b , SHERMAN FERGUSON:ds
● ウルトラ・ヘビー・ゲージの弦で、信じ難いスピードで弾き切る、"IMPRESSIONS"。ソロによる、ジョニ・ミッチェルの "BOTH SIDES NOW" は、特筆すべき素晴らしさ。ソロによるアルペジオでさえ、全てピックで押し通すこだわり。MARTINO のギター・テクニックに関して言えば、この時点でキャリアの頂点に達していると言えるであろう。
(記2002.1.26)

PAT MARTINO / EXIT (Muse 1976.2.10)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , GIL GOLDSTEIN:p , RICHARD DAVIS:b , JABALI BILLY HART:ds
● アコースティク・ピアノを入れたカルテットでレコーディングするのは、"EAST!"以来になるか。このセッションで使用したギターは多分フルアコで、ギブソン L-5 のタイプであろう。音の空間を生かすのがウマいピアニスト、GIL GOLDSTEIN との共演により、MARTINO のギター・プレイにも、ある種の変化が伺える。"COME SUNDAY" と "I REMEMBER CLIFFORD" でのバラード・プレイにおける表現力は、より一層表現力を増している。その他の曲でも、アドリブではいつになく、長さと音数の面で多少あっさりしている。それまでの激烈に空間を埋め尽くしたプレイに疲れた自分自身を、癒しているかのようである。
● "I REMEMBER CLIFFORD" について、最初にCD化された輸入盤では、ナゼかレコードと別のテイクであった。最近発売された日本盤では、この2テイクが両方とも収録されている。
(記2002.1.26)

PAT MARTINO / WE'LL BE TOGETHER AGAIN (Muse 1976.2.13-17)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g , GIL GOLDSTEIN:ele.p
● "EXIT" の数日後、今回は GIL GOLDSTEIN は、生ピアノでなくフェンダー・ローズを演奏。"OPEN ROAD" は組曲で、非常に印象深い。MARTINO の代表的プレイの一つである。その他の曲は、全てスタンダードでバラード。MARTINO のギター・サウンドを細かい点まで聞き取る事が出来る。このアルバムも、MARTINO の代表作として推薦できる。
(記2002.1.26)

PAT MARTINO / STARBRIGHT (Warner Bros 1976)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g,syn , GIL GOLDSTEIN:key , WILL LEE:b , and others
● シンセサイザーなどを大幅に導入し、バラエティに富んだ内容ではあるが、アルバムのコンセプトに焦点が定まっていない。ただ、"PRELUDE"で聞かせるアコースティック・ギターのソロが、非常に素晴らしい。
(記2002.1.27)

PAT MARTINO / JOYOUS LAKE (Warner Bros 1976.9)

MUSICIANS / PAT MARTINO:g,syn , DELMAR BROWN:key , MARK LEONARD:b , KENWOOD DENNARD:ds
● このメンバーでライブ活動を行なったのだろうか?前作と違い、バンドとしての統一したコンセプトを感じ取る事が出来る。MARTINO , BROWN と DENNARD のオリジナル曲が収録されており、いずれも佳曲である。特に "PYRAMIDAL VISION" などは複雑なシンコペーションを導入したアプローチの難しい曲だが、痛快な演奏が展開されている。ギター・サウンドの一部に、ディストーションやオート・ワウが取り入れられている。筆者としては、このアルバムは代表作に推すのだが・・・。DENNARD のドラミングと、キーボードの BROWN の"叫び声"が、楽曲の迫力を倍化させている。
● MARTINO はこのアルバムで、明かに音楽的はに一局面を開拓したと言えるのだが、次のリーダー作は何と10年以上後なのである。
(記2002.1.27)

WILLIS JACKSON / BAR WARS (Muse 1977.12.21)

MUSICIANS / WILLIS JACKSON:ts , CHARLIE EARLAND:org , PAT MARTINO:g , IDRIS MUHAMMAD:ds , BUDDY CALDWELL:conga
● かつてのボス、WILLIS JACKSON との共演。ひたすらブロウする JACKSON のテナーと、最先端のギター・フレーズを駆使する MARTINO の組み合わせである。だが、繰り広げられているのは、60年代に戻ったかのようなファンキーなプレイである。MARTINO は、何の苦もなくバップ・フレーズを聞かせ、ジャズ・ギタリストとしての本質、幅の広さ、レベルの高さを示す。60年代初期の頃よりもフレーズの幅は広がり、十分リラックスしており、JACKSON のファンキー・テナーへの貢献度も遥かに高い。"THE BREEZE AND I" は、両者の組み合わせの良さを聞き取る事が出来る、もっとも典型的なトラックである。
(記2002.1.27)

WILLIS JACKSON / SINGLE ACTION (Muse 1978.4.26)

MUSICIANS / WILLIS JACKSON:ts , PAT MARTINO:g , CARL WISON:org , JIMMY LEWIS:b , YUSEF ALI:ds , RALPH DORSEY:perc
● 前作に引き続き、豪快なブロウの WILLIS JACKSON は快調。今作ではエレキ・ベースを採用、全体に幾分はイージー・リスニング的なバンドのサウンドか?スティービー・ワンダーの "YOU ARE THE SUNSHINE OF MY LIFE" を選曲するなど、コマーシャル的。MARTINO のギターは弱冠、切れを欠く。
(記2002.1.31)


WILLIS JACKSON / NOTHING BUTT... (Muse 1980.6.20)

PAT MARTINO
THE RETURN
(Muse)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , STEVE LaSPINA:b , JOEY BARON:ds
◆ 1987.2
● 永らく沈黙していた PAT の復帰作。オリジナル曲で臨んだ、ライブ盤。全盛時の迫力は、蘇ってはいなかった。指はもつれ気味、リズム・キープは緩い。リリースされた当時は、複雑な心境であった。だが、自分を取り戻す為の期間の、過渡期的作品であると、現在では考える事が出来る。一つ発見があったとすれば、全盛期にトリオのアルバムを制作すれば、それは大変に凄い作品になったであろう、ということ。
(記2002.2.6)
BRONX TALE
STREET OF THE BRONX
(Paddle Wheel)◆ MUSICIANS / JACK McDUFF:org , PAT MARTINO:g , BOB KENMOTSU:ts , PAUL SAMUELS:ds
◆ 1994.2.6-7
● かつてのボス、JACK McDUFF との共演。現在まで続く復帰後のキャリアの、実質的スタート。フレーズだけは、全盛時に戻ったと言ってもよい。この当時はソリッド・ギターを使用し、独特の軽いサウンド。
(記2002.2.6)
PAT MARTINO
INTERCHANGE
(Muse)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , JAMES RIDL:p , MARC JOHNSON:b , SHERMAN FERGUSON:ds
◆ 1994.3.1
● ピアノ入りカルテット、MILES DAVIS の "BLUE IN GREEN" 以外はオリジナルと、空白期間を埋めようとするかの如き、意欲的な作品。JAMES RIDL は、リズミックなプレイとバラード、双方でハイ・レベルなプレイを聞かせる俊英。MARC JOHNSON は、BILL EVANS のラスト・トリオなどで著名な名手。そしてドラムスに、"LIVE!" などで MARTINO の全盛期を支えた SHERMAN FERGUSON で、彼のサビの加わった小技が特に素晴らしい。ギター・サウンドの迫力は落ちたかもしれないが、オリジナル曲にはかつて聞かれなかった深みが加わっている。MARTINO のプレイからは、かつてのマシンガン的プレイばかりを期待するのではなく、新たな展開を聞き取るべきなのかもしれない。
(記2002.2.7)
PAT MARTINO
NIHGTWINGS
(Muse)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , BOB KENMOTSU:ts , JAMES RIDL:p , MARC JOHNSON:b , BILL STEWART:ds
◆ 1994.5.27
● リリースは、THE MAKER の後であった。全曲オリジナル。ラテン的リズムの楽曲で臨んだセッション。名手、BILL STEWART の刻むリズムが極めて快適。MARTINO は自作曲に乗って、淡々とフレーズを綴ってゆく。
(記2002.2.13)
 ROYCE CAMBELL / 6×6 (Paddle Wheel 1994.5-7)
PAT MARTINO
THE MAKER
(Paddle Wheel)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , JAMES RIDL:p , MARC JOHNSON:b , JOE BONADIO:ds
◆ 1994.9.14
● マイナーの、ダークな曲調、演奏に際しての難易度が高いオリジナル曲で占められたアルバム。復帰以降のオリジナル曲の質と量に関しては、リタイア前をはるかに凌駕している。ボサノバ的リズムの "THIS AUTUMN'S OURS" も、佳曲である。
(記2002.2.14)
PAT MARTINO
東京・渋谷でのライブ
◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , JAMES RIDL:p , and others
● 前年に公演の予定であったが、ミュージシャン・サイドの事情により、翌年に延期された経緯があった。しかし何れにせよ、MARTINO の演奏を生で、しかも日本で拝めるとは・・・。"INTERCHANGE" 、"THE MAKER" からの楽曲を中心に、ライブが構成されていた。スリムな MARTINO ではあったが、やはりライブとなると燃えていた。JAMES RIDL のピアノも素晴らしい。"THE GREAT STREAM" のイントロが聞こえて来た場面では、観客はどよめいた。
(記2002.2.15)
PAT MARTINO
ALL SIDES NOW
(BLUE NOTE)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , CHARLIE HUNTER:g , TUCK ANDRESS:g , KEVIN EUBANKS:g , LES PAUL:g , JOE SATRIANI:g , CASSANDRA WILSON:vo , MIKE STERN:g , MICHEAL HEDGES:g , and others
◆ 1996-7
● 1曲ごとにゲスト・ミュージシャンを替えている。顔ぶれが非常に興味深い。人選は、MARTINO 本人が主導しているのか?LES PAUL とは、セッションを行なった仲なのかもしれない。変則的チューニングのギターで臨んだ CASSANDRA WILSON とのデュオ、"BOTH SIDES NOW" は印象深い。JOE SATRIANI のハード・ロック・ギターとの共演でも、ペースを変えない MARTINO が面白い。
(記2002.2.14)
 BLUE NOTE / YULE BE BOPPIN' (BLUE NOTE 1997)
FIRE DANCE
(Mythos Records)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , PETER BLOCK:as,bass.fl , HABIB KHAN:sitar , ILYA RAYZMAN:violin , ZAKIR HUSSAIN:tabla perc
◆ 1997
● インド音楽。やはり MARTINO はマイ・ペース。"BAIYINA" の再演とも言える?
(記2002.2.15)
PAT MARTINO & JOYOUS LAKE
STONE BLUE
(BLUE NOTE)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g,syn , ERIC ALEXANDER:ts , DELMAR BROWN:key , JAMES GENUS:b , KENWOOD DENNARD:ds
◆ 1998.2.14-15
まさか、"JOYOUS LAKE" のリユニオン・バンドまで出現するとは思わなかった。非常に精力的な MARTINO の活動。ERIC ALEXANDER のテナー、JAMES GENUS のベースで、バンドは一層強力に。オリジナル曲も益々冴え渡る。JOYOUS LAKE の再演も聞ける。
(記2002.2.15)
PAT MARTINO & JOYOUS LAKE
BLUE NOTE 東京での LIVE (1998.8.10, 2nd セット)
◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , ERIC ALEXANDER:ts , DELMAR BROWN:key , ・・・・:b , KENWOOD DENNARD:ds
全て "STONE BLUE" よりの楽曲であった。ソロ・パートは、スタジオ演奏よりも長時間に。KENWOOD DENNARD のドラムスは、余りにもウルさかった。アプローチの難しい MARTINO の楽曲をモノともせず吹きまくる ERIC ALEXANDER が超絶であった。
(記2002.2.15)
PAT MARTINO & JOYOUS LAKE
スタジオ・ライブの映像 (1998)
◆ 衛星放送で放映された、グループのスタジオ・ライブ。楽曲は新譜より。時間に制限があるので、サスガにあっさりとした演奏。
(記2002.2.15)
 70s JAZZ PIONEERS / LIVE AT TOWN HALL, NYC (Paddle Wheel 1998.3.20)
PAT MARTINO / SEVEN SKETCHES (Private Label 1998)
JOE PESCI / VINCENT LAGUADIA GAMBINI SINGS JUST FOR YOU (Sony 1998)
PHOEBE SNOW / RIGHT TO THE END (House Of Blues 1998)
ERIC ALEXANDER
THE FIRST MILESTONE
(Milestone)◆ MUSICIANS / ERIC ALEXANDER:ts , PAT MARTINO:g , HAROLD MABERN:p , PETER WASHINTON:b , JOE FARNSWORTH:ds
◆ 1999.11.3-4
● "STONE BLUE" で共演、ツアーもこなした ERIC ALEXANDER の新作に客演。サックスとギターのユニゾンが冴える。8分音符や16分音符で攻めるアドリブのプレイぶりが、MARTINO と ERIC ALEXANDER には共通しており、ソロ交換に統一感がある。
(記2002.1.13)
 CYRUS CHESNUT / A CHARLIE BROWN CHRISTMAS (Atlantic 2000)
THE PHILADELPHIA EXPERIMENT (Ropeadope 2000.9.25-27)
PAT MARTINO
LIVE AT YOSHI'S
(BLUE NOTE)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , JOEY DEFRANCESCO:org , BILLY HART:ds
◆ 2000.12.25-27
● 復活ぶりも本物になって来た。昔の得意技を次々に繰り出す。JOEY DEFRANCESCO の圧倒的テクニックも、MARTINO のプレイと楽曲に貢献している。ドラムスは、あの "EXIT" でもプレイする、BILLY HART。復活直後のレコーディングでは、ギターにリバーブをかけ過ぎて聞き辛い面あった。しかし最近は、ピックの弦に対するヒットがはっきり録音されている。MARTINO のギター・サウンドの本来の姿が、製作サイドでも完全に理解されたか。
(記2002.1.13)
 PAT MARTINO with MICHAEL SAGEISTER / CONVERSATION (Acoustic Music 2000)
BROTHER JACK McDUFF / BROTHERLY LOVE (Concord Jazz 2000.3.6-8)
JOEY DEFRANCESCO
BALLADS AND BLUES
(CONCORD)◆ MUSICIANS / JOEY DEFRANCESCO:org , PAT MARTINO:g , BYRON LANDHAM:ds , PAUL BOLLENBACK:g , and others
◆ 2001.9.4-5
● MARTINO は、"THESE ARE SOULFUL DAYS" と "YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS" をプレイ。2曲とも再演で、コード進行を熟知した MARTINO フレーズの完成度は高い。"YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS" でのバラード・プレイは淡々としてはいるが、そこが逆に泣かせるプレイであるのが不思議。他の曲でプレイするギタリスト、PAUL BOLLENBACK のレベルも高く、MARTINO とのサウンドの対比が興味深い。
(記2002.7.17)
PAT MARTINO
THINK TANK
(BLUE NOTE)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , JOE LOVANO:ts , GONZALO RUBALCABA:p , CHRISTIAN McBRIDE:b , LEWIS NASH:ds
◆ JAN.8-10,2003
● これまでの MARTINO のレコーディングでは名前の出てこなかったジャズ界のビッグ・ネームを起用しての、オールスター・バンドとも言える陣容。演奏上、今までよりも更に難易度の高い楽曲が並んでおり、1960年代の MILES DAVIS の"黄金のクインテット"の演奏をも連想させる。意外にも、COLTRANE の"AFRICA"など、 MARTINO の作ではない楽曲も取り上げている。難曲を楽々とこなすメンバーの技量はサスガで、MARTINO の作品の中でもベストとも言える出来となっている。JOE LOVANO の、MARTINO とのユニゾンでのテーマ部での演奏は完全にツボに入っており、抑制されたアドリブと共に、予想以上の好演である。GONZALO RUBALCABA のソロとバッキングも、不安定な響きを持つコードの特徴を捉え切っている。CHRISTIAN McBRIDE と LEWIS NASH が発する強烈なスイング感も、今までの MARTINO の作品では聴かれなかった種類のものである。そんな中でも MARTINO のアドリブは普遍で、マサに不惑の境地に達している。1944年生まれの MARTINO の、更に進化する精力的なチャレンジ精神には恐れ入る。
(記2004.1.29)
FUSION FOR MILES - A GUITAR TRIBUTE
(SEVEV SEAS 2005)◆ THE BAND / VINNIE COLAIUTA:ds , ALPHONSO JOHNSON:b , LARRY GOLDINGS:key , JEFF RICHMAN:g , DAVE LIEBMAN:sax
7. "THE SERPENT'S TOOTH" featuring PAT MARTINO:g
● MILES DAVIS の著名曲をフュージョン系(と見られている)ギタリストに弾かせるという企画。MARTINO に提示されたのが、MILES が PRESTIGE 時代に録音した、これまたやたらに古い曲。VINNIE COLAIUTA や ALPHONSO JOHNSON などの強力メンバーが現代的に演奏しているが、MARTINO は例によっていつもと同じペース、同じフレーズ。どんなミュージシャンと競演しても全くペースが乱れないのは、それはそれで凄い事なのかも。
(記2005.7.29)
PAT MARTINO
REMEMBER - A TRIBUTE TO WES MONTGOMERY
(BLUE NOTE RECORDS)◆ MUSICIANS / PAT MARTINO:g , DAVID KIKOSKI:p , JOHN PATITUCCI:b , SCOTT ALLAN ROBINSON:ds , DANIEL SADOWNICK:perc
◆ Recording:2005.8.9-10
● MARTINO の WES MONTGOMERY へのトリビュート・アルバムと言えば、当然第一に1972年の "FOOTPRINTS" が来る。MARTINO のギター・テクニックが一つのピークに達していた時期であったが、リリースされたてから30年以上経過した今日から思えば、恐ろしく内省的な音楽であった。このニュー・アルバムを企画したのは MARTINO 本人でないかもしれないが、"FOOTPRINTS" と比較対置される事によって、現在 MARTINO が音楽に対する姿勢を窺い知るのが可能となっている。"復帰"以降はアルバムを立て続けにリリースするし、ライブも精力的に消化して、リスナーとのコミニュケーションを更に深めようとの意志がはっきりと伺える。WES MONTGOMERY が演奏していた代表的楽曲は、MARTINO のオリジナル曲よりもメロディーとコードが明快で、耳に馴染みのある曲ばかりで、MARTINO "復帰"以降で初のスタンダード曲集という捉え方も出来る。アドリブ・フレーズの中でマイナー・コードの時の6度とメジャー7度の音の、ここぞとばかりの頻繁な使用が認められ、このようなフレーズは WES MONTGOMERY 直伝と言って良く、1960年代に WES から受けた影響が今なお色濃く残っている事が証明された。"FOOTPRINTS" では MARTINO 以外のメンバーのソロは1曲でベース・ソロが聴かれるだけだったが、CDの一般化による収録時間の延長という恩恵を受け、メンバーのソロが十分に収録されているのは勿論、MARTINO のソロ・スペースにも更に余裕が。例によって、ひたすら途切れる事なく続く8分音符。MARTINO の超絶テクニックばかりが強調されてきたが、ここに至って MARTINO の8分音符にはバーチュオーゾとしての風格すら備えられた。確かに、前人未到の境地に達した1970年代の全盛期のパワーは失われた。しかし、かつての求道的でストイックな表現から、制約なく自由に演奏できるという悦楽の発露へと、表現の質が変わったようにも思える。
● ピアノの DAVID KIKOSKI のプレイに見られるモダンさは、このアルバムでの MARTINO のスタンスに完全にフィットしており、予想以上の好演。名手 JOHN PATITUCCI のソロは残念ながらほんの少しだけで、堅実なバッキングに徹している。ライブでのレギュラー・メンバーと言える SCOTT ROBINSON のドラミングはシャープで非常に痛快なプッシュを見せているが、このアルバムではややウルサ気味か?
(記2006.4.13)
VIVA CARLOS ! A SUPERNATURAL MARATHON CELEBRATION
(MASCOT RECORDS)◆ THE BAND / DAVE WECKL:ds , ABRAHAM LABORIEL:b , PETER WOLF:key , LUIS CONTE:perc
5. "FLOR D'LUNA" featuring PAT MARTINO:g
● あのカルロス・サンタナへのトリビュート・アルバム。ギンギンの泣きのギターに混じって、PAT MARTINO のパサパサの ジャズ・ギターのサウンドが。多少なりとも参加ギタリストにバリーエーションを付けたいという製作者の気持ちは分からないでもないが。しかし、他の FRANK GAMBALE や MIKE STERN や ROBBEN FORD のギターの泣き具合も、良し悪しは別にして、"泣き具合"はやや弱い?とは言え、意外と(?)楽しめるアルバムではあった。DAVE WECKL と ABRAHAM LABORIEL を揃えたハウス・バンドは強力。
(記2007.4.13)

ファンとしての一考察

◆ 1960年代初期から1970年代まで活動し続けたジャズ・ミュージシャンは、その演奏スタイルを変化させている場合が多い。PAT MARTINO というギタリストも、例外ではない。60年代前半でのプレイ・スタイル及び音楽と、70年代後半でのそれは、明かに変化している。と同時に、特に一人のギタリストとして、頑なまでに変化させなかった部分もある。変化した部分とさせなかった部分のバランス、そしてその過程。これが MARTINO の音楽を聴くに際し、大きく興味を惹き付けるファクターである。

◆ PAT MARTINO は1944年生まれで、感受性の強かったティーン・エイジャーの時期は、1950年代後半に当たる。今日的な意味でのモダン・ジャズ、ハード・バップと呼ばれるスタイルの音楽が形成される、最も重要な時期である。MARTINO はこの時期、音楽全般とジャズをどのように聞いていたのであろうか?

◆ MARTINO は、ジャズ・ギターを学ぶ初期の段階でそのテクニックに大きく影響を受けたギタリストは、JOHNNY SMITH であるという。ジョニー・スミスのギター・テクニックは非常に優れており、明かにクラシック・ギターの影響を受けた運指と端正で明快なピッキングに特徴がある。レイド・バックしたスイング感も、ジャズ・ギタリストとして一つの指標となるものであったろう。また間違い無く、1950年代最大のテクニシャンである TAL FARLOW の影響も見られる。ヘビー・ゲージの弦を強いピッキングでヒットさせながら、圧倒的なドライブ感を生み出すスタイルは、ジャズ・ギタリストを目指す MARTINO にとって魅力あるものであったろう。JOHNNY SMITH と TAL FARLOW に共通するのは、延々と綴ってゆく、いくらテンポ上げても淀みが無い8分音符のフレーズである。MARTINO は結局、現在に至るまで、この段階で習得した特徴的なギターのスタイルを、変化させなかったと言える。

◆ MARTINO の影響という点では、WES MONTGOMERY を除外する事は出来ない。10代でプロとして活動を開始した MARTINO にとって、WES MONTGOMERY の影響がプレイ・スタイルに現れるのは、プロになって以降という事になる。最も影響を受けた時期のプレイを聞くと、WES MONTGOMERY の親指での弦のヒットを、ピッキングに置き換えたのが、 MARTINO のプレイである、とまで言える。アルバム、"EL HOMBLE" や "EAST!" でのプレイに、特に顕著に表れている。自身にとっての理想のジャズ・ギターのプレイ・スタイルを追求しようとしていたであろう MARTINO にとって、WES MONTGOMERY の圧倒的な存在感は無視は出来なかったと思われる。フレーズ、オクターブ奏法、ブロック・コード奏法、スイング感と、全てのプレイを徹底的に研究した足跡が見られる。よく2人でセッションもしたらしいので、直接の教授もあったのかもしれない。

◆ プロとしての初期の共演者は、テナー・サックスの WILLIS JACKSON や、オルガンの BROTHER JACK McDUFF といった、リズム&ブルース的なファンキーなプレーヤー達である。この時期のプレイとしては、バンドのカラーにつとめて接近しようとしていた MARTINO の姿勢が顕著である。この時期のブルース的なダーティーな奏法は、MARTINO のプレイ・スタイルの一部として、今でも僅かながら垣間見る事が可能である。現在では、モダン・ジャズ・ギターのオーソリティー的な見方をされる MARTINO ではあるが、様々なスタイルを綜合したプレイが、MARTINO の魅力であると言える。

◆ MARTINO のプレイの諸々の特徴を、筆者としては以下のように見ている。
● フレーズ
バップ・フレーズの基礎を習得した上に、モダンなモード奏法などを加えた、音楽的に優れたライン。フリーとも言える、無調のフレーズも駆使する。ただ、ひたすら長いアドリブの最後の部分で、尻切れトンボ状態になる場合がある。どんな時でも完璧にアドリブをまとめにかかる WES MONTGOMERY とは、この点で異なっている。最大の弱点か?
モード・フレーズへのアプローチは見事である。楽器の構造的に、ギターでモード・フレーズを演奏するのは難事である。4度・5度の音程を含むフレーズを弾く場合のフィンガー・ボード上の運指は、かなり難しいのであるが、MARTINO は問題を何とか解決している。
● コード・プレイ
フィンガー・ボード上での弦のキープが完璧。明かに、クラシック・ギターの影響が見られる。短音だけでなく、コードを押さえる時でも、十分なサスティンを得る為に、縦(ネック−ブリッジ方向)のビブラートをかけて、弦をしっかりと押さえている。開放弦を交えたソロ・プレイも素晴らしい。
● 弦
ヘビー・ゲージ。70年代に入って、特にエスカレートしたもよう。全盛期のギターの写真を見ると、ベースの弦かと思えるくらいに太い。この弦であのマシンガン的フレーズを弾いているのかと思うと、そら恐ろしくなる程である。大理石のピックを用いていたと言うが、この時期の弦は普通のナイロンのピックでは反応し切れなかったであろう。
● ピッキング
兎に角、ピッキングにこだわっている。

◆ MARTINO の初期のプレイは極々オーソドックスであり、後年の難解なプレイへの萌芽すら見られない。しかし、1960年代後半の音楽界は激動の時期を迎え、ジャズ・ミュージックにも数多くの変化が起き、MARTINO のスタイルにも影響を与えた。

◆ 1960年代の、フリー・ジャズ、モード奏法、東洋音楽の影響、ロックの影響。70年代の、クロスオーバー/フュージョンのムーブメント、アコースティック・ジャズへの回帰。キャリアを進行させて行く過程で、MARTINO は、上記全ての影響を受けている。だが、それぞれの音楽スタイルを取り入れる手法に関しては、特に目新しくも革新的でもない。オクテともいえる位である。だが、MARTINO のキャリアを今日的視点で俯瞰してみると、現在の MARTINO の音楽は大きく変化している。それは特に、音楽の外観というより、プレイそのもの、フレーズそのものの変化(進化)である。最近では、MARTINO の音楽の精神性や内面性が云々される事もあるが、実際に本人が音楽に対して、音楽以外の精神的なメッセージを込めようとしているのか、それは分からない。

◆ 1970年代には、ソリッド・ギターや12弦ギターを手にしたり、エフェクターを導入したりしているが、極論すれば、ほとんどのプレイをフル・アコとアンプとシールド1本だけでプレイしても、それぞれの作品に大きな変化はないであろう。世代的に見て、MARTINO がもっとロックよりのアプローチをしたり、ディストーションを使用したりしてもおかしくはない。MARTINO は若年にしてプロ入りしているので、若くして老成してしまったのかもしれない(冗談)。

◆ バック・ミュージシャンの各々のサウンドの違いへの対処は、MARTINO は常にフレーズそのもので勝負している。東洋的サウンドへは東洋的フレーズで、ファンキーなプレーヤーへはファンキーなフレーズで、自作の難曲へはメカニカルなフレーズで。筆者は、ここにジャズ・ギタリストとして、ジャズ・ミュージシャンとして、インプロバイザーとしての MARTINO の意地とこだわりを見る。リーダー作では難曲を並べるが、一本立ちした後も WILLIS JACKSON の作品へ参加し、苦も無くバップ・フレーズを繰り出す。PAT MARTINO は、やはりジャズ・ミュージシャン、"最後のギタリスト"なのである。

(記2002.3.8)

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