いけべ医院ホームページへようこそ

ペインクリニックとは

◆ ペインクリニックとは

 「ペイン」という言葉は痛みという意味ですから、痛みの診断・治療を行う診療科ということです。しかし痛みを持った病気のみをあつかっているわけではありません。麻酔科が行っているペインクリニックでは、病気の治療に主として神経ブロックを用いていますので、痛みがなくても神経ブロックが有効な病気もペインクリニックの治療対象になります。もちろん神経ブロック以外にも薬物療法、理学療法、心理療法、漢方薬なども使って、総合的に診療を行っています。

◆ 神経ブロック

1)神経ブロックとは
 ペインクリニックでの治療には主に神経ブロックが用いられます。神経ブロックとは、痛みを伝える神経や、痛みを増幅している交感神経に向かって、ブロック針を刺入し、おもに局所麻酔薬を注入することによって、神経の伝達を遮断することをいいます。おもにというのは、局所麻酔薬以外にも、神経破壊薬であるエチルアルコールを用いたり、薬を用いるのではなく、高周波により得られる熱で神経を凝固したりして神経を遮断する場合もあるからです。

 神経ブロックの際に最も多く用いられるのは局所麻酔薬です。この薬は種類にもよりますが、2~3時間効いて、その後は何も残さず、すっかり元に戻るのが特徴です。ではなぜ局所麻酔薬を用いた神経ブロックにより、永年の痛みがとれたりするのでしょうか。それは神経ブロックが痛みの悪循環を断ち切るからです。

☆ 痛みの悪循環
 手や足に傷を負ったとします。その刺激は知覚神経を通って脊髄に伝えられ、そこから脳に伝わります。そのときに手や足が痛いと感じます。そうするとヒトはその痛みに対して反応を起こします。運動神経が興奮して筋肉が硬くなり、また交感神経が興奮して血管が収縮します。そうなると血液の流れが悪くなりますから、傷を負った場所が酸素不足になります。すると痛みをさらに悪化させる物質(発痛物質)が作られ、それにより痛みがいっそう強くなります。これが痛みの悪循環です。

 この悪循環をどこかで断ち切れば、局所の血液の流れが改善して、酸素の供給が増加し、発痛物質が洗い流され、長時間続いた痛みが和らいできます。
 神経ブロックは注射ですが、通常の注射よりも細い針を使って行い、経験豊富なドクターが行えばあまり痛みは感じません。

痛みの悪循環

2)よく行われる神経ブロック
 現在約20種類の神経ブロックが行われており、大別して末梢体性神経のブロック(知覚神経および運動神経のブロック)、交感神経のブロックおよびそれらを混合したものがあります。現在注目されているのは交感神経のブロックで、これを行うとその支配領域の血行が促進され、痛みが緩和してきて、自然治癒も促進されます。非常によく行われているのが以下の2つのブロックです。

ⅰ)星状神経節ブロック
 これは首のところにある交感神経節(神経のかたまり)に局所麻酔薬を注入して、交感神経を一時的に麻痺させ、頭、顔、首、肩、腕、上胸部の血流をよくして、その部分の痛みを和らげる治療法です。 

ⅱ)硬膜外ブロック
 脊髄(せきずい)神経のすぐ近くに局所麻酔薬を注入します。頭部、顔面以外の部位にある痛みに対応できます。痛みを伝える神経を直接遮断すると同時に、交感神経系も遮断します。それにより、血流がよくなり痛みへの治療効果をもたらします。