灯台下暗し

第5話 一歩

次の日、俺はぐったりとしていた。昨日面倒事があったのにその後ストリートテニスでちょっと頑張りすぎたな。つい調子に乗ってしまうとすぐこれだ。だけど昨日ストリートテニスで発散しなかったら、家帰ってから泣いていたかもしれない。男の癖に泣くなって言うのは勘弁してほしい。人間、男だろうが女だろうが何かあったら涙が出るように出来ているはずなんだから。(俺は、男の癖に泣くなという台詞が大嫌いだ。どう考えたって人間の体の構造上すぐに涙を止めるのは無理な話だし、悲しいという感情表現のどこが悪いんだ、と突っ込みたくなる。)どっちにしろ、予想通り今日は朝練からして最悪だった。俺がやってきた瞬間から周囲の空気が凍りつく。大半の奴が俺にチラチラ目をやりながら近くの奴とヒソヒソ言ってるし、近づいたらそそくさと逃げる。さりげなくやってるつもりなんだろうが、バレバレだ。放課後の部活も俺にとって戦場なのは間違いない。問題児、または危険物のレッテルを貼られ、敬遠されるかあるいはあからさまに嫌悪される、そんな中でやっていかなくてはいけない。それ以前にチームワークを乱してるって理由で最悪退部しなきゃならなくなったりしてな。考えすぎ、と思うかもしれない。でも人間、何かの騒ぎの当事者にはどうしても何らかの気持ちを抱くもんだ。またこいつのせいで何か起きるんじゃないか、と不安に思ってしまうのは自然な成り行きといえる。 あー、考えただけで頭痛むな。こうならないように気をつけてたつもりだったのに、油断しすぎた。完全に気が抜けて机につっぷしていたら、誰かが近づいてくる足音がする。俺のところにくるのか。いや、多分近隣の席の他の奴んところだろう。と、思っていたんだが
「おい。」
どっかで聞いた声が上から降ってくる。ああ、また来た。何でわざわざ来るんだよ、問題児(扱いを今んとこ受けてる)奴と関わったらお前の評判落ちるぞ。今日から話しかけられても聞こえない振りをすると決めていたから俺は返事をせずに寝てる振りをした。するとこないだみたいに机の脚をガインッと蹴られた。
「狸寝入りしてんじゃねぇぞ、コラ。大体、それでごまかせてると思ってんのか。」
うるせぇな、ほっとけ。お前が俺と関わって何かあったらこっちは責任取りきれねぇんだよ。なおも無視を決め込んだら、この短気な約1名は強硬手段に出た。
「ぐぇっ。」
海堂に襟首掴まれた上に、そのまま引っ張り上げられて俺は思わず呻く。目を開ければ、かなり怒ってる海堂の顔があった。
「てめぇ、さっきからシカトしてんじゃねぇぞ。」
怒気を孕んだ声で唸る海堂は毛を逆立てて威嚇してる動物みたいだ。
「何だよ、俺眠いんだけど。」
「ちょっと面貸せ。」
嫌だ、と言ったら今度こそ海堂はブチ切れそうだ。大人しく首を縦に振ると、海堂はちょっと来いと言わんばかりに手招きして先に教室のドアへと歩いて行く。俺は少し遅れて後を追う。2人で教室を出る時、クラスの連中がこっちをチラ見しながら何やら囁いているのが見えた。変な勘違いされてなきゃいいんだが。どうでもいいけど、休み時間10分しかないのに教室出たら次の授業に遅れやしないか、とちょっと的外れなことをぼんやりと考える。一方の海堂は俺のことなどお構いなしかのように先に立って歩き、廊下の突き当りまで進んだところで足を止めた。一体何なんだろう、と考えていたら
「大丈夫なのか。」
振り返って海堂が言った言葉は唐突すぎた。
「へ、あ、大丈夫ってどゆことだ。」
思わず間抜けな返事をすると海堂は少しイライラしたように言う。
「昨日一悶着あって、今日はあの状態だ、大丈夫なのかって聞いてんだよ。」
「あ、ああ。別にどうってことねぇけど。」
とりあえずお前イライラで興奮しすぎだ、顔が赤いぞ。頼むから落ち着いてくれ。
「何でそんなこと聞くんだ。」
「ボケ面通り越して腑抜けになってる。」
「そうかよ。」
なんちゅー言い草、ひどすぎる。ってか悪かったな、普段ボケ面で。
「とりあえず、俺は大丈夫。どっちかってーとお前がヤバいんじゃね。」
「どういう意味だ。」
「俺と仲いいって勘違いされたら何かと厄介だと思うぜ。」
更にどういうことか海堂が聞きたそうにしたから、俺はわざと背中を向けた。これ以上聞かれて答えたら今度こそ泣くかもしれない。泣いてしまうのはしょうがないけど、今この状態で人前で泣くのはさすがに気が引ける。
「海堂。」
「あ。」
「もう俺と話さない方がいい。お前の評判下がったら責任取りきれねぇから。」
「何言ってやがる。」
「んじゃ、俺、先に教室帰るわ。」
海堂を顔を見ずに俺はさっさと歩き出す。
っ。」
呼ばれるけど振り返らない。思わず走って俺は本当に先に教室に戻った。海堂は俺よりちょっと後に戻ってきたけど、その頃には始業のチャイムが鳴ってたもんだから何か言われる心配はなかった。

とは言うものの、正直俺は海堂の執念を侮っていたと思う。俺は完全に関わらないことに決めていたが、あれから海堂はしつこく俺と話をしようと何度もやってきた。その度に俺は適当にあしらうか、何か用事があった振りをして途中でトンズラするかしてたんだが、こいつはまったくもって諦めようとしない。テニスで粘り強くてかなり厄介なタイプなのは知ってたけど、まさか実生活でもここまでしつこいとは思わなかった。その癖短気だからあまり無視すると本気で血管切れそうな勢いで怒り出すし始末が悪い。どうしたらいいんだ、この手合い。
「海堂、お前いい加減にしてくれよ。」
放課後、部活に行く前、他には誰もいない教室で俺は言った。
「何もないつってんのに一体どういうつもりなんだ。」
俺の席のそばにたたずむ海堂は鞄を背負って、俺の顔を見つめている。教室には俺と海堂の2人だけ、他はとっくに部活へ行くなり帰るなりして教室を出て行ってしまっている。
「何もないだ、笑わせんな。」
海堂が言った。
「何もねぇなら、んな悲壮な面する必要があんのか。」
「お前に関係ねーだろ。」
言うと睨まれた。別に海堂の目つきが悪いからそう見えたという訳じゃなくて、本当に睨まれた。
「気にいらねぇな。」
「何だよ。」
俺はイライラしてきた。別に友達って訳でもないのに勝手にしつこく聞いてきといてどういうつもりだ。
「てめぇの、その1人で何でも押し込めてる風が気に入らねぇ。」
「知るか、勝手なことばかり言うな。」
お前は俺に何をさせたいんだよ。思わずそう叫びそうになるけど、どっかでブレーキがかかった。それを言うと今度こそ海堂と喧嘩になる。これ以上騒ぎを起こすわけには行かない。そんな俺の気持ちを知ってか知らずか海堂はフンと呟くと、次の瞬間信じられないことを言った。
「1人悲壮な面して悲劇のヒーロー気取りか。どうしようもねぇ野郎だな。」
「んだとっ。」
とうとう我慢できずに俺は噛み付いた。しかも体が勝手に動いて、海堂の襟首を引っつかんでしまっている。
「てめぇにそこまで言われる筋合いねぇぞっ、黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって、こっちはこう見えてもてめぇに火の粉がかからないように気ぃ遣ってんだっ、いい加減にしやがれっ。」
一気に言ったもんだから肩で息をする羽目になった。息苦しい。襟首掴まれた海堂の方はてっきり怒るかと思ったが、意外にも静かにしている。
「やっぱりそういうこったか。」
言う海堂の声は穏やかだった。
「何。」
急に力が抜けて俺は海堂の襟首から手を離した。
「昨日の今日で態度変わりすぎだ、俺でなくても何かいらねぇこと考えてるくらいわかる。」
「まるで俺が単純みたいじゃないか。」
「違ったのか。」
「どつくぞ。」
違うとは言い切れないのが何か悔しい。ふう、と息をついて俺は話を戻す。
「そういうけどよ、俺どうも部内で危険物扱いになってきてるからさ、お前が一緒くたにされたら何か悪いって思うんだよな。今朝のあれ見ただろ、2年と3年は白い目してるし1年は怯えてるし。まぁひでぇのなんのって。」
「ほっとけばいい。」
「俺1人の問題ならそれですむけどよ。」
言うと海堂は首を捻ってポツリと呟いた。
「わからねぇな。」
「え。」
「別にやましいところがあるってんじゃねぇんなら、顔を上げてりゃいい。何だってそういう風にグジャグジャ考える。てめぇのその思考がわからねぇ。」
そう言う海堂はおちょくってるんでもなんでもなく、本気で理解に苦しむ、といった風だった。ふ、と俺は思わず笑みをこぼす。一生懸命考える海堂の様子が何だか面白くて、頭ぐちゃぐちゃで悩んでいたのが阿呆らしくなってきたのだ。
「こっちもわかんねぇな、お前がいちいち俺に気を回す訳が。」
海堂の顔が一瞬赤くなり、また元の色に戻った。
「腑抜け面を晒されっぱなしじゃ全体の士気に関わるからな。」
うん、多分本音は別のところにあるとみた。どこにあるかは知らないけど。
「どーでもそろそろ部活行かないとな。俺はともかくお前はヤバそうだ。」
「ヤバいのはてめぇもだ、バカ。さっさと行くぞ。」
こらこら、お前のせいで足止め食ったんだろうが。何当たり前の顔して先に立って歩いてんだ。俺は慌てて後を追い、教室を出る。
「時間どうなってる。」
「後10分、ってヤベーッ。こっから部室まで5分はかかるぜ。」
「さっさとそれを言え、馬鹿野郎っ。」
「お前がいちいち俺が口割るまで粘るからだろーがっ、とっとと自分だけ先に行きゃいいじゃねぇかっ、俺のせいにすんなっ。」
「んだと、てめぇ。」
危うく俺と海堂はそのままぎゃあぎゃあと言い合いモードに突入するところだったが、
「チッ、言い合ってる場合じゃねぇな。」
海堂の方が気がついてやめる。
「走るぞ、。」
「あ、こら、てめぇ先に行くなーっ。」
バタバタと廊下を走る俺と海堂の姿は、傍から見ればかなり珍妙だったと思う。

幸い部活にはギリギリ間に合ったものの、几帳面な海堂が遅くに来たというのでまずそこで周囲は吃驚、そこへ危険物・(つまりは俺)がくっついてたもんだから更なるプチ混乱が起きた。朝に引き続き気分はよくなかったが、海堂が(何故か)一緒だったからほんの少し気は楽だ。虎の威を借りる狐もいいとこだが、この際勘弁してもらおう。というより、俺を見て何か言う奴を勝手に海堂が睨んで黙らせてるのだけど。それともあれか、単に海堂はチラと見てるだけなのに目つきのせいでそう見えるだけか。とりあえず、手塚部長のありがたいお言葉を頂戴して今日も練習が始まる。練習で組んだ奴がやっぱり感じ悪いが、我慢するほかあるまい。だけど、ラリーしてたらわざと変な方向に球を打たれたので咄嗟に打ち返したら球がフェンスを越えてしまった。一応謝ってボールを回収に行ったけど、背中から悪態をつかれる。聞こえない振りをしたからそれ以上ややこしいことにはならなかった。それにしても、
「ボールどこ行った。」
コートの外で俺はウロウロと自分がぶっ飛ばした球を探し回る。部の大事な備品なんだから是非とも探し当てたいところなんだが、多分にこっちに飛んでったはずと見当をつけたあたりでは何故か見つからない。そんなに強く打った訳でもないんだけどな。まさかと思いつつ植え込みの中にまで入っていたら、きっちり潅木の間にボールがはまり込んでいた。くっそ、何だってたかが俺のヘロヘロショットでこんなとこまで飛ぶってんだ。ちょっとイラっとしながらボールを掴み、植え込みから出てコートに戻る。練習相手が待ってるところへ向かう途中でレギュラーが練習してる側を通ったら何故か9人共俺が動くのに合わせて視線を動かす。何だ、何だ一体。
「何か、俺、変ですか。」
たまたま側にいた河村先輩に聞いてみたけど、バーニング状態で人の話を聞いてない。困って他に目をやったら不二先輩は何か腹黒そうな笑みを浮かべてクスクスしてるし、副部長はどうしたんだと心配顔してるし、越前は何か馬鹿にした笑みを浮かべてるし、桃城と菊丸先輩にいたっては腹抱えて爆笑したいのをこらえてる始末だ。乾先輩はまた鉛筆を動かしていたんだが、どさくさに紛れて何かに無頓着とか何とか言わなかったか、この人今。更に困って海堂に目をやったら、こっちはイライラしたみたいに歯軋りしている。
、てめぇ。」
「は。」
「ハ、じゃねぇっ、自分のなりを見ろっ。」
言われて見たら、あ、いけね。茂みに入った時についたんだろう葉っぱが体操服や頭にひっかかったままだった。
「やっちまった。」
ポソッと呟いたら、とうとう我慢がきかなくなったのか桃城と菊丸先輩が転げまわって笑い出す。で、海堂は完璧にキレた。
「やっちまったじゃねーだろ、このくそボケがぁっ。落ち着き払って言うことかっ。」
つくづく短気な野郎だ。そして手塚部長は一連の出来事を顔色一つ変えずに見ていたが、一言、
、校庭10周。」
何でとは聞かなかったのに部長はわざわざこう付け加えた。
「スポーツ選手たるもの、常に身嗜みに気をつけるものだ。」
まさか部長にまで口ごたえしかねない危険物って思われちゃいないだろうな。いずれにせよ、俺はまたも要らない体力を使う羽目になった。

「つ、疲れた。」
言われた校庭10周を終えてフラフラとコートに戻ってきた俺はポソリと呟いた。折悪しくと言おうか何と言おうか、戻ってきたところに桃城がいる。
「よう、。おっ疲れさーん。」
「死ぬかと思ったぜ。」
「お前も懲りねぇなぁ、ここんとこ走りっぱなしじゃねぇか。あんだ、持久力鍛えてマムシに対抗するつもりかぁ。」
阿呆か、こいつは。
「出来る訳ねーだろ、根本的に実力が違いすぎる。」
「あいつはそうは思ってねぇみたいだけどな。」
意味深に桃城は言う。
「何だそれ。」
聞いて桃城はニヤニヤ笑うだけで答えない。こいつの頭にその辺の雑草を生けたりしてもいいもんだろうか。そんな会話をしてたら、
「何喋ってやがる。」
海堂が近づいてきた。
「さっさと練習しろ。」
「いや、桃城の頭に花を生けてみたつわものはいねぇのかなって。」
「は。」
海堂は意味不明だと言いたそうに眉根を寄せる。後ろで桃城が、あーっ、ひでぇっ、と抗議してるが無視。
「てめえ、やっぱりイカれてるんじゃねぇか」
海堂はボソッと言う。
「イカれてねぇよ、あくまで自然体だ。」
「なおのことタチが(わり)ィな。」
「あ、ひでぇ。」
ムッとすると何故か海堂はふ、と口の端を曲げる。あ、笑った。何でだ。
「おいっ、っ。さっきから俺を無視すんなっ。」
まだ喚いてたのか、桃城。
「うるせー、あんまギャーギャー抜かすとそこに植わってる躑躅(つつじ)、頭に生けっぞっ。」
「ああ、何だそりゃ。」
桃城はキョトンとする。しまった、こいつには表現が高等すぎたか。だが翻訳機は意外とすぐ近くに居た。
「おい、クソ力。こいつ、てめぇのドタマに枝を突き刺してぇんだと。」
ちょっと待てーっ、何で海堂にわかるんだよ。桃城はというとライバルに翻訳されてやっと俺の言葉を理解したのか、失礼にも
、やっぱお前(こえ)ぇよ。」
余計なことを言った。

そうして疎まれたり避けられたり合間にちょっと笑われたりしながら、今日の部活は終了した。俺はいつものように着替えずそのまま部室を出て校門へ向かおうとする。コートの脇を通り過ぎようとしたら、海堂が例によってまだ1人で練習していた。
「おい。」
まるで昨日の巻き戻しみたいに声をかけられる。
「何だ。」
「帰るのか。」
「ああ、まぁな。」
答えると海堂は一瞬、俺から視線をそらしてフシュゥゥゥと息を吐く。
「暇なら、」
「あ。」
「相手しろ。」
何故か断わることが出来ず、俺はそのままコートに入って海堂の練習相手をさせられた。
「俺なんかで練習になんのかよ。」
飛んでくる球を打ち返しながら俺は問うた。
「うるせぇ、黙ってやれ。」
海堂は質問には答えずに俺の打った球を返してくる。俺はまたそれを返すわけだが、俺が返せるってことは海堂は相当手加減しているはずだ。
「どうせやるなら桃城か乾先輩あたりに頼みゃいいだろうに。」
「先輩はともかくクソ力の名前を出すな。胸くそ悪い。」
「ホントしょうのねぇ奴らだな、お前ら。」
そこまで嫌がらんでもいいだろう、どうせ類は友を呼ぶの典型なんだし。まあこれ以上言ったら今度こそ怒鳴られそうだからやめておくけど。喋りながら何の気なしに打った球は高いロブとなる。何を思ったのか海堂は地面を蹴ってスマッシュを打ってきた。おいおいっ、ラリーじゃなかったのか。
「わあああっ。」
ビビッて咄嗟に俺はそれを打ち返したのだが、返した瞬間に海堂の目がカッと見開かれた。でも、次には普通に打ち返してきたから多分気のせいだろう。
「殺す気かっ、滅茶苦茶ビビったじゃねーか。」
リターンしながら俺は声を上げた。相手が桃城でなくてよかった。あいつ相手だったらとっくに腕がおかしくなってるところだ。勿論、海堂だって伊達じゃなくて結構な威力だったからちょっと手がビィンと来てる。ってゆうか、
「話聞いてんのか、海堂。」
海堂は答えない、打ちながら俺を凝視している。何球か返した後に、こいつはやっとこさ言った。
「確かにてめえは危険物かもしれねぇな。」
「何でだよ。」
「気をつけねぇとすぐに爆発する。」
人をちょっとの振動でもバーンッと行く液体みたいな扱いしやがって。俺はわざと強くボールを打った。海堂ならこれくらい屁でもないだろう。思ったとおり、余裕で返される。そうやってて俺は今、こうやって海堂と一緒に打ち合っている瞬間が凄く不思議だと思っていた。この瞬間が現実に存在していることが不思議で仕方なかった。ありえない、と思っていたはずなのに。
「どうかしたか。」
「いや、別に。」
不審そうにする海堂に俺は答えてもういっぺん力いっぱい球を叩いた。

今考えれば、俺と海堂が関わるようになってから既に何か始まっていたと思うけど本当に始まりの一歩はこの辺からだったんじゃないかと思う。だらだら続く日常の中にさりげなく潜んでいたからすぐには気がつかなかったけど、俺と海堂はこっから一挙に深く関わるようになっていったから。

続く

作者の後書き(戯れ言とも言う)
やっとこさ前置きが終わったような気がします。どんだけ話を消費してんだか、自分に突っ込みたいです。 2008/10/1

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