灯台下暗し

第4話 変化

平穏を望んで、今まで誰とも深く関わったことがなかった。だけど、海堂薫という奴が俺に関わってくるようになってきた。 そしてそれは必然的に平穏を好む俺をややこしい事態に立たせる。

今日も今日とて俺は眠い目を擦って登校した。登校路はかなり危なかった。気をつけないと歩きながら寝そうな勢いだったからだ。朝が弱いモンにとって早朝練習はかなり辛いものがある、言ってる場合じゃないけど。これがちょっと前なら朝練開始直前まで寝ぼけたままなのだが、最近はちょっと事情が変わった。
「おはよーございまーす。」
テニス部の部室に行ったら、先輩が何人か先に来てる。
「おはよう、。随分眠そうだね。」
「いえ、そんなことは。」
クスクス笑う不二先輩に不気味なものを感じながら俺は平静を装って答える。何でまたこの人がいちいち俺に話しかけるんだ、ついこないだまで俺に話しかけてきたことなんてほとんどなかったのに。海堂のせいか。
「朝早いからな。気持ちはわかるけど、シャキッとしないと。」
多分、一番最初に来てたであろう大石副部長が会話に混ざった。
「もとよりそのつもりっス。」
「やっぱりって面白いや。」
だから、俺のどこが面白いんですか、不二先輩と突っ込んでいいか。いいよな。
「何か勘違いしておられませんか。」
「全然。」
ダメだ、この人どうしようもない。これ以上関わったら体力の無駄だ。不毛な気分になってたら部室のドアがガチャリと開く。ん、この足音は
「海堂、おはよーさん。」
ここしばらくのせいでお馴染みになってしまった面を見て、俺は挨拶する。海堂ははっきりしない声で、おぅ、と返事をして
「しまりのねぇ面してんじゃねぇぞ、コラ。」
朝っぱらからそれかよ。
「眠いんだよ、俺はこう見えて血圧低いんだ。心配しなくても練習中に寝たりしねぇって。」
「どうだかな。」
「人を夢遊病扱いすんな。」
言ったら海堂はコメントする気がないのか、無視して着替え始める。言いっぱなしってのはどーなんだ、と思いつつ俺も海堂の横で鞄から体操服を引っ張り出す。
「何で俺の横にきやがる。」
海堂が唸った。
「手近だったんだよ、何かまずいのか。」
「別に。」
海堂は言ったきりまた黙る。よくわからん奴だ、だったらブツブツ言うなよな。どうしようもないので俺はほっといて引っ張り出した体操服にしみが残ってないかどうか念のため確かめた。どうやら今日は大丈夫らしい。気づけば、海堂が何やってんだという目で俺を見ていた。
「マジックとか乾先輩の危険飲料のしみが残ってたら嫌だな、と思って。」
何の気なしに答えたら、海堂の目が今度は信じられないものを見るものに変わった。何だ何だ、俺なんか変なこと言ったか。
「そんな目で見るなよ、事あるごとにあんなもん飲まされてたらしみの一個や二個ついてんじゃないかって心配したくもなるぜ。飲んでいきなり吹き出しそうになったことあるしよ。」
「何か間違ってねぇか。」
海堂がボソリと呟く。
「お前、食物のしみをなめんなよ。気づかずほっといたら滅茶苦茶取れにくいし、おかんには怒られるしで大変なんだぞ。まして妙な色の飲みもんのしみつけたら致命的だろうが。」
どうもこの答えは海堂的には気に入らなかったらしい。
「そこじゃねぇだろっ、このクソバカッ。論点ずれた発言しやがって、てめぇの脳味噌はどーなってやがるっ。」
「うるせぇ怒鳴るな、耳いてぇっ。」
「てめぇがおかしなことばっか抜かすからだろうがっ。」
「バッカ野郎、それくらいノリ突込みで乗り切りやがれっ、修行不足なんだよっ。」
「やんのか、この野郎。」
「誰がやるか、阿呆、朝っぱらから乱闘してどーするっ。」
2人でわーわー言っていたら、
「こらっ、2人ともっ。」
大石副部長に叱られた。
「仲がいいのはいいけど、静かにな。」
別に仲良くないっス、副部長。ふと気づけば後から来たテニス部のメンバーがこれでもかっていうくらい俺と海堂をジロジロ見ている。それはもうお化けでも見るみたいに。
「てめぇのせいだ。」
「お前の突込みスキルが低いからじゃねぇか、よく言うぜ。」
そんでいつの間にか俺は眠気がすっかりぶっ飛んでいた。少し前までなら考えられない事態だったと思う。

その考えられないはずの事態を経て、今日も朝練が始まる。
、お前一体どうなってんだ。」
練習前の準備体操で、俺と一緒に柔軟をしていた池田が言った。
「何だ、急に。」
聞き返すと池田は言う。
「さっき海堂と騒いでるとこみたけどよ、何かキャラ違くねぇ。」
「違くねーよ、前からだ。」
「嘘だろ、こないだまでもっと何つーか、大人しかったのに急にうるさくなったみてぇな。」
「気のせいだ。」
池田は首を傾げるが実際俺は何も変わっちゃいない。ただお前が知らなかっただけのことだ。しばらく沈黙状態になる。ふいに前屈の補助に俺の背中を押してた池田がボソリと呟いた。
「何で急に海堂と仲良くなったんだよ。」
「なってねぇよ。そりゃ、仲良くなれるならその方が俺的には都合いいけどさ。」
俺がそう答えた時、何故か池田の表情は固かった。気に入らねぇ、そう言われてる気がするのは気のせいだっただろうか。どうもこないだの1件で海堂と関わるようになり、テニス部内の俺を見る目が変わったのは先に言ったとおりだが、その変わり方はまた別の方向へ転換してるように思える。最初は意外な奴が海堂・桃城と渡り合おうとしたという好奇心で見られる程度だったが、少なくとも2年生の連中には今の池田みたいに何か気に入らないといった態度を―程度の差こそあれ―取られることが多くなった。何が気に入らないのかは全くわからない。でもそれは少なくとも今まで平穏に平穏にと過ごしてきた俺にとって大きな変化だった。
準備体操が終わって、練習に入る時俺は手近にいた同級生と組んだ。そいつも一度俺を何か含むところでもあるようにジロリと見つめる。どうかしたかと尋ねると、別に、と無愛想に呟くだけでそれ以上は答えない。思うところがあるのは丸見えなのに一体何なんだ。不機嫌の理由がわからない相手と練習をするのはかなりのストレスだった。

「何だか訳わかんねぇ。」
朝練が終わって教室に向かう途中、俺は呟いた。
「てめぇが訳わかんねぇのはわかりきってる。」
横を歩く海堂が失礼なことを言う。
「ちげーよ。」
俺は言って海堂に同級生の俺に対する不可解な態度について話した。だが、海堂にこの手の話をするのは間違いだったっぽい。
「自意識過剰じゃねぇのか。」
「んなことねぇよ、あからさまにやられてんだぞ。」
「現場見てねぇのに知るか。」
身も蓋もない奴だ。 そういえば、何でこいつは当たり前のように俺と一緒に歩いてんだろうか。やっぱり俺を観察してるのか。ああ、今日も朝から何か色々と疲れるな。そうこうしてるうちに、教室のドアが近づいてくる。
。」
ドアを開ける直前に、海堂が口を開いた。
「何だ。」
「気をつけろ。」
意味がわからず俺はぽかんとした。

海堂は自意識過剰じゃないか、と言ったが俺が感じた変化は間違いなく本物だった。それはよりにもよって今日のうちに、それも凄くまずい形ではっきりすることとなる。結論から言おう。何か勘違いした手合いに俺は絡まれた。しかもそれはちょっとした騒ぎになった。事の次第はこうだ。いつものように授業が終わって、俺は放課後に部活に行こうとしていた。海堂は職員室に何か用事があるらしく、今日は一緒じゃなく俺1人でテニスコートに向かおうとしてた。校舎を出て歩いてたら、同じテニス部の同級生幾人かにに呼び止められた。ちょっと話があるというから何かと思ってその場で止まっていたら無理矢理引っ張られる。勿論悪い予感がしたから抵抗したが、生憎通じなかった。お約束どおり校舎裏の人気のないところに連れてかれて、数人に囲まれた挙句に言われたことは調子に乗るな、といった意味不明の言葉だ。当然、意味がわからねぇ、と言ったら向こうは何故か怒った。要するに最近俺が海堂と仲良くしてるし、何かと目立ってる(ようにこいつらに見える)のが気に入らない、更には今まで地味で静かにしてたくせに急にレギュラーに取り入ってるように見えてたらしい。実際、俺が海堂と関わるようになってからレギュラーの先輩方も一部俺に構ってくるようになってるが、間違いなくこいつらは勘違いしてる。だから、俺は言った。
「ハァッ、何語喋ってんだ。別に取り入ってねぇよ、変な勘違いすんな。」
意味不明な上に失礼なことを言われたもんだから、俺の言い方はかなりきつくなっていた。こいつらにとってはそれが意外だった上に勘に触ったようだ。相手は激昂し、俺は襟首掴まれた。後もうちょっとで殴られるところだったかもしれない。カッカして更に崩壊した日本語で何か言う相手に俺も言い返していたら、騒ぎを聞きつけたのか1年生連中がやってきた。うち1人が先生を呼びに行ったもんだから事は大きくなって、俺は職員室で絡んできた連中と一緒に先生に話をしなきゃいけない羽目に陥った。
絡んできた連中は先生にはっきりとは言わなかったけど、俺に対して最近調子づいてきて鬱陶しい奴という思いを抱いていたのは明らかだ。でなかったらあんな阿呆な行動に走らないだろう。だが、この阿呆共のおかげで俺は先生から開放された後、部活で手塚部長にこいつらと一緒に走らされた。確かに言葉でかなり抵抗したが今回の場合俺からは手出ししてないのに何で、と思う。正直、手塚部長のこの喧嘩両成敗ってな感じの方針だけはついていけない。テニス部にはいたいから絶対に言わないし、態度には出さないけどムカムカはひどかった。
「理不尽だ。」
走ってる最中にポソリと呟いたら、俺だけ周数を増やされた。くそっ、くそっ、くそっ。 そんで、この1件で更にテニス部内の俺に対する好奇の目が強くなり、一部の連中の中では『=危険』みたいな勝手な式が出来上がったようだった。俺の平穏はあっというまに遠ざかっていってる。最悪な急変ぶりだ。これから一体どうなるんだろうか。

走らされてヘロヘロになって戻ってきたら、他の連中は休憩してるところだった。やっとこさ手塚部長に勘弁してもらい、俺も水分を補給する。じろじろ見られるのが嫌で離れたところにいたら、わざわざ海堂がやってきた。別に問題児(扱いになってる)のところへいちいち来んでもいいだろうに。
「荒井らの次はてめぇか、2年の面汚しが。」
別にこいつから慰めの言葉なんか期待しちゃいなかったけど、そう言われるとやっぱり凹む。
「俺が好きでやってると思ってんのか、お前、最悪だな。」
思わず睨むが海堂は見えてないかのようにフンと呟く。
「朝に気をつけろっつっといたろーが。」
そういや、そんな意味不明のこと言ってたけど。
「訳がわかんねーよ。」
「てめぇ自分で気がついてねぇのか、普段黙ってるくせに口を開いたら手加減なしに言いたい放題なとこあんの。そのうちトラブるんじゃねぇかと思ってたが、思った以上に早かったな。」
「俺から手ぇ出したんじゃねぇぞ。」
「ふざけた真似されて我慢出来ずにガーガー言い返して相手を追いこんだ点で同罪だ。」
だから手塚部長に走らされたってか、やっぱりちょっと納得行かねぇ。ってゆーか、待て待て待て。何でこいつに説教されにゃならんのだ。
「何で海堂がわざわざ俺にそんなこと言うんだ。」
「別に、また騒ぎ起こされると目障りってだけだ。」
事あるごとに喧嘩して騒ぎ起こしてんのはどこの誰だ。そりゃ、俺の場合と性質が違うけど目障りの点ではある意味共通してるだろうに。だがもう何か言うのも嫌になって俺は黙り込んだ。頭の中で色々な感情がグルグル渦巻いていて訳がわからなくなってきている。これ以上口を開いたら訳のわからないことを口走りそうだ。
。」
今度は何だ。自分でもそれとわかるくらいむくれた面で海堂の方を向くと、海堂は俺の方を見ずにコートに目を向けたまま言った。
「潰されんじゃねぇぞ。」
何故か俺はその言葉に勇気づけられた。海堂はひょっとしたらそんなつもりでいった訳じゃないかもしれないのに、俺は勝手にちょっと救われた気がしていた。

無駄な消耗を経て今日も部活が終わる。でも明日からまた別の意味で面倒な状態に晒されて部活動をしなければならない。2年、3年からは疎まれて、1年からは怖がられて。孤立は大袈裟だけど、いい状況とは言えない。味方らしい味方がいないからだ。え、海堂はどうかって。あいつは敵でもないけど味方ではありえない。あいつはひたすら自分のことで戦っている訳で、また、ずっとそうあるべきだと思う。俺は話しかけられると基本的に拒否しないタチだからついうっかり相手してしまったが、あいつは本来俺にかかずらっている場合じゃないはずだ。寧ろ関わらないでほしい。自分の平穏が崩れるのも嫌だが他人に波及するのはもっと嫌だ。明日話しかけられたら聞こえなかった振りをしよう。そう思って俺は今日も着替えずに、早々に部室を出た。部室を出たらテニスコートで海堂がまだ頑張っていた。熱心で結構なことだ、俺には関係ないけど。邪魔をする気はなかったから声をかけずに通り過ぎようとすると、気がついたのか、海堂が近づいてきた。
「帰るのか。」
「ああ。」
フェンス越しに海堂はそうか、と低く呟いた。会話はまともに続かず、すぐに沈黙が流れる。
「海堂はいつも熱心だよな。じゃあ、俺もう行くから。」
先に沈黙を破ってとっととその場を去る俺に海堂が後ろから何か言った。聞き取りづらかったからその瞬間は無理に返事をしなかったけど、校門を出てから思わず足が止まった。あいつ、さっきひょっとしてこう言ったのか。
『てめぇも練習バカだろうが。』
と。聞き間違いだといいんだが。

部活が終わってから向かったいつもの場所には既に人がいた。よく見かける面々と、知らない人が少し。よく見かける方は俺の姿を見ると声をかけてくる。
「よう、。」
「おっす。」
「何だ、今日は随分疲れてんな。」
「んまぁちょっと色々。」
「あら、君。こんにちは。」
「ども。」
「何、性懲りもなくまた来たの。しぶといなぁ、雑草じゃあるまいしさ。青学ってアレなの、しつこい奴が多いとか。」
「開口一番ぶつぶつぼやくんじゃねーよ。てめ、同じ学校だったらとっくにどいつてんぞ。」
「乱暴だなぁ、やんなっちゃう。」
ハハハ。俺は思わず笑いながら鞄を下ろしてラケットを取り出す。多分、こんな光景、青学の連中が見たらぶっ倒れるだろうな。レギュラーでもないのに当たり前のように他校の連中と喋ってんだから。
「んじゃ、今日もよろしく。誰からやってもらえんのかな。」
「じゃあ、あたしから。いいよね。」
いつのまにか知らない面々が好奇心に駆られたのか、遠くからこちらを窺っている。さっき喋ったうちの1人が審判を務め、興味津々のギャラリーが見つめる中、俺はストリートテニスを始める。この人強いからな、うまく行くかな。ってか、球重っ。いきなり俺は1点を失う。ギャラリーが笑うが聞こえない振りをした。
「どうしたの、君。まだエンジンかからない。」
「俺、トロいんだよ。知ってるだろ。」
俺は言ってラケットを構えなおした。相手のサーブが飛んでくる。今度は打ち返したけど、勿論また返される。しばらくラリーが続いた。どうしたもんかな、技術は明らかに向こうが上だし、俺は力任せってのは得意なタイプじゃないし。向こうが動いた、何か仕掛けるつもりか。と思ったら、きっついボレーが来る。慌てて打ち返したが、威力はヘロヘロですぐに強烈な反撃を食らいまた失点する。あーあ、またやってる、ホント懲りないよね、とブツブツ言う奴がいるがそっちは無視。そんなこんなであっという間に3ゲーム取られる。
君、本気でやってる。」
「手ぇ抜いてなんかねぇよ。そんなことして勝てる相手じゃないだろ、あんた。」
ったく、トロい奴の苦労ってもんも理解してもらいたい。悪い人じゃないんだけどな、全然。うん、でも3ゲームも取られてやっとこさ感覚がわかってきた。ちょっとはマシにやれる、と思う。今度は俺のサーブだ。とりあえず力むな、と自分に言い聞かせる。力んだら絶対に外す。俺の場合はとりあえず入りさえすればいい。
「よっと。」
バシィッと音がして打ったボールが飛んで行く。お、思ったよりうまくいった。打った瞬間にすぐ前へ出る。相手は打ち返すが一瞬吃驚(びっくり)した顔をしたように見えた。気のせいだろうと思って返ってきた球を打つ。多分、この辺か。あ、ダメだ、余裕で返される。またラリー、結構長く続く。くそ、面倒くさいな、試しにやってみるか。また返されてきたボールを俺はコンッと打ち返した。誰かが、ロブ、あいつ正気か、と呟く。うん、正気とはさすがに自分でも言えない。相手はためらわずにスマッシュを打ってきた。そして、瞬間俺はいちかばちかの迎撃にかかった。
「んのぉっ。」
ギャラリーから、阿呆かあいつと声が上がる。相手は今度こそ本当に目を見開いて吃驚している。だが俺は構わずにラケットを振るった。手ごたえあり、いける。バァンッと音がして、俺のショットは見事に決まった。
「っしゃぁ。」
思わず呟く。
「やるじゃない。」
「ども。」
お互い軽く火花を飛ばして、試合は続行された。

結局この試合は俺の負け、2ゲーム取れただけ俺にしては上等だと思う。
君、この前よりずっとうまくなったわね。」
「そうかな。」
「そうよ。球重くなってるし、さっきスマッシュ打ち返された時なんかびっくりしちゃった。ひょっとして、今まで手加減してたの。」
俺は飲みかけのドリンクを吹くところだった。
「してねぇしてねぇ。そんなこと出来るよーな余裕まったくないし。」
「だよね、って必死になってやっと人の半分だし。それでまだテニス続けるってんだからよくやるよね。諦めって言葉知ってる。」
横から口を挟む奴にいらんことを言われて俺は、うるせぇよ、と呟く。言われなくても自覚はあるっての。
「でもどうかなぁ、君ってまだ何か隠してる感じする。」
確実に勘違いだ。勘弁してくれ。
「そういや、お前、最近マムシと仲良くしてんだって。」
おいおい、何で他校にまで言われないといけないんだ。どっかから情報漏れてんのか。
「仲良くしてねぇよ、悪くもないけど。つーか、頼むから本人の前でマムシ呼ばわりすんのやめてやってくれよ、すっげ機嫌悪くなって俺らの心臓もたねぇから。」
「一応気遣いしてるあたりがなんだかなぁ。」
そろそろこいつ蹴飛ばしていいか。
「海堂が勝手に関わってくんだよ、俺は知らねぇ。」
「そこが不思議なんだよ。」
同じ学校でもわからないんだからその意見は正しいと思った。海堂は俺が何モンか知りたい、と言っていたけどその先に何を求めているんだろう。俺は奴の前で、どういう立場に立てばいいんだろう。ほんの短い間に、俺の状況は本当に変化した。次に何が起こるのかは、まったくわからない。

続く

作者の後書き(戯れ言とも言う)
試合シーン(もどき)を書くのは久しぶりだったので、サーブ権の移動がどうだったか思い出せず、
ネットで調べていたら妹に『必死やな。』と言われました。
だってたかがドリーム小説といえど、あんまりおかしなことを書いてたらアカンやろ、と思うんですが、どうなんだろう。 2008/09/27

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