灯台下暗し

第15話 思い・改(Side:???)

まぁ、そんなこんなで日々は過ぎて行く。海堂と一緒に朝走って、一緒に学校に行って、休み時間は喋って、昼飯も一緒に食って、部活も一緒に行く。周りがボツボツ俺ら異色の組み合わせに慣れてくる、それだけ一緒にいるのに、最終的に部活の後は2人は分かれてそれぞれ自分自身の練習に励む。例によって俺はあのストリートテニスコートで売られた喧嘩(試合)は買い捲ってる訳だけど、最近はたまたま強そうなのがくれば相手してくれ、と自分から頼むようにすらなっていた。ホント、人っていつどういう風に考えや行動が変わるんだかわかったもんじゃない。いいのか悪いのかは別にして。(俺の場合は悪い方向かもしれないけど。) そういう日が続いて、いつしか例の日がやってきた。そう、知ってる奴は知っている、青学テニス部名物・校内ランキング戦の日が。

毎度校内ランキング戦がある日は部室内の空気が物凄く変わる。レギュラー常連が異様なまでにやる気というか気合入れている様を隠そうとしないもんだから、それが他の部員にも伝染して緊張感が漂いまくるのだ。今日もいつものパターンで放課後に海堂と一緒に部室に入ったら先に来ている先輩レギュラーの顔つきが違っていた。ユニフォームに着替える間、靴紐を結び直している間、そんなほんの少しの動作の間にも闘気が漏れているようなそんな感じ。俺は息苦しさを感じて自分が着替える動作がいつもよりのろくなっている気がする。海堂は横で黙って着替え中だ。さすがはレギュラー常連、気後れしてる様子はない。いつもだったらこいつにギャグの1つくらいはかますけど、今は馴れ合う状況じゃないと空気を自分なりに読んで自重する。その代わり先に体操服に着替え、鞄からお気に入りの漫画を取り出し、安いつくりのページをパラパラめくってとあるところで手を止めた。赤い角帽子の主人公が音楽留学をためらっている女の子に何か言っているシーンだ。この漫画で好きなシーンの一つ、俺はしばらくそのコマをじっと見つめる。ついでに自己暗示もかけていこう、大丈夫、きっといけると。
「おい。」
どれくらいそうしていたか、ふいに肩をべしっと叩かれた。振り向いたら海堂の顔がある。
「時間だ。」
「ああ。」
俺は頷いて単行本を閉じた。もう退けない、覚悟を決めるしかなかった。

部室を出て掲示された対戦表の前はわらわらとテニス部員が群がっていた。毎度何が面白いってレギュラー常連よりもその他大勢が対戦内容に興味津々で、やれ誰が上がるだのこいつは絶対駄目だの好き勝手言っているのが面白い。ちなみに俺は一通り対戦表に目を通して、どうせレギュラーに上がるのはいつもの面子だわなとか思ってる嫌な奴だった訳だけど。でも今はそれまでと明らかに違う心境で対戦表を見てBブロックにこの俺、と共に海堂薫の名前があったのを見つけてちょっとにやけてしまった。少なくとも今日に限って言えば運命の三姉妹は俺に優しいようだ。戦うチャンスを与えられている。そして丁度、その対戦表の前で例の1年トリオが好き勝手に予想というかコメントをしていた。
「凄いね、このBブロック。」
加藤が言う。
「2年生が桃ちゃん先輩に海堂先輩、あと、」
何故かここで加藤は
先輩。」
ちょっとためらってから俺の名を口にした。何故そこで()を開けたんだろう。おまけに加藤は口にした後も一瞬間をおいたもんだから妙な空気が流れ、そこを慌てて埋めるように今度は水野が口を開く。
「だ、誰が上がってくるのかな。」
「そら2年は海堂先輩と桃ちゃん先輩だろ。この人等が落ちるなんて有り得ねぇよ。」
当たり前だと言わんばかりに答えるのは堀尾、しかし水野は思わぬコメントをした。
先輩は、ダメ、なのかな。」
まさかここで俺の名前が出るとは。ちょっとドキリとしながら俺は気づかれてないのをいいことに3人組の後ろに立って盗み聞きを続行してしまう。
「何言ってんだよ、カツオ。一緒一緒、どうせ他の先輩とレギュラー常連は比べもんになんないって。」
ムカ。事実ではあるが未だに基礎が甘いと指摘されてばっかの堀尾には言われたくない。危うく俺はちょっと待て、と突っ込みかけた、が、ここで加藤が言った。
「でも先輩、最近凄いよね。何か頑張ってるって感じ。」
「うん、前は全然しゃべらないからどんな人かわかんなかったけど結構真面目だと思うな。真面目っていうより熱い、のかな。」
「そうかぁ、相変わらずぼーっとした顔して何考えてんだかわかんないけどなぁ。」
「堀尾くん、そんなこと言って聞こえても知らないよ。先輩、怒ったらすっごく怖いのに。」
加藤がたしなめると堀尾はひぇぇぇ、そうだったと身をすくめる。
「何せ海堂先輩と桃ちゃん先輩の喧嘩に割って入るもんなぁ。」
コラコラ、最初の1件はともかくその後についてはあいつらが喧嘩を始める度にお前らが俺を呼びにくるからだろうが。ま、いいけど。
「でもどっちにせよ一緒だろ。先輩には無理無理、いくら頑張ったところでレギュラー常連の2人とは実力が違うって。」
悪気なく言われる事実が俺の中にズキズキと突き刺さる。自分でもわかってる、俺が必死こいている間にも海堂と桃城はもっと先を行っている。でも、それでも、
「でも、」
まるで俺の言葉を続けるかのような妙にいいタイミングで水野が言った。
「もし、もしもだよ。もし、先輩が上がってきたらどうなるのかな。」
また3人組の間に妙な空気が流れた。他の連中は自分らのことに必死で気付いていないけど俺はこの3人組をずっと見てしまっている。盗み聞きなんて悪趣味なことをせずにさっさと去ればいいのに、こいつらが更にどう思ってるのか知りたくて俺はそのまま動かないでいた。
「冗談だろ。」
一瞬固まっていた堀尾が言った。
「そんなことになったら一大事だぜ。俺心臓止まっちゃうよ。」
「でも、違う人がレギュラーになっちゃいけないって決まりはないよね。」
加藤の言葉に堀尾は笑えるぐらい動揺する。
「カチローまでよせよ、おい。」
「僕、ちょっと見てみたいかも。」
ここで何ちゃって、エヘヘと加藤は笑った。俺はフ、と思わず微笑んでそっとその場を去る。そこまで聞いたらもう分だ。

そうやって部活が始まって、いつもどおり最初に竜崎先生の話があったけど正直内容は覚えていない。普段から聞いちゃいないような気もするけどそれはおいておく。気がついた時には
「これより、校内ランキング戦を始める。」
「ハイッ。」
皆と一緒に手塚部長の号令に答える自分がいた。

開始が宣言されて皆それぞれが散っていく時、何故かすぐに動かずその場に佇んでいる奴らがいた。1人は俺で1人は海堂。
「手加減はしねぇぞ。」
海堂が呟き、俺はおう、と答える。
「当然だ、いくら俺相手でも本気出してもらわないと怒るぜ。」
「俺相手でも、か。相変わらずわかっててわざと言ってんのか。」
「差はれっきとした事実だからな。」
言えば海堂はフンと呟く。
「信用しねぇぞ、腹黒野郎。」
言いながらこいつが少し笑っているのは見間違いじゃないだろう。
「やれやれ、」
俺はわざとらしく肩をすくめ、
「ひでぇ言われようだ。」
首をふってみせた。

さて、ランキング戦初っ端の相手は3年の先輩だ。過去に何度も負けてる相手、向こうもなら余裕って顔をしている。
「お手柔らかに頼むぜ、。」
へらっと笑って言う先輩、完全に馬鹿にしている。
「申し訳ないんスけど、手加減は苦手でして。」
言う俺の顔は他人から見たらどんな風に見えただろうか。
「ハハッ、お前の本気か、怖い怖い。」
あんまり甘くみんなよ、てめぇ。俺は内心で呟いた。

ふと気づいたら自分でも信じられないくらい早くその試合は片付いた。6-1、俺の勝ちだ。相手である先輩の方はマジで信じられないって顔をしていて、コートに尻もちついた格好のまままじまじと俺を見つめている。
「嘘だろ、が何で。」
「いや、何でと言われても。」
「最近、実はお前が手を抜いてたんじゃないかって話やたら聞くけどよ、本当だったんだな。」
それは、
「半分は事実だけど、半分は違います。」
なるべく冷静に言った俺の言葉に先輩は激昂した。
「ふざけんなっ、この腹黒野郎っ。」
「勘弁してくださいよ。揉めたらお互い難儀でしょう。」
それでも何か言おうとする相手、このままだと確実に手塚部長に走らされるからどうしたもんかと俺は困る。
「よせよ、」
意外なことに他の先輩が止めに入ってくれた。
「次詰まってんだ、2人とも早くどけよ。」
俺の相手だった先輩は渋々引込み、俺は止めに入ってくれた人に礼を言ってそそくさと去った。

*  *  *  *  *

とうとうこの日が来やがった。今日の校内ランキング戦、俺とは本当の意味でぶつかる。対戦表に自分との名前が同じブロックにあるのを見た時思ったのは当然だということ。予感めいたものがあったのかもしれない。まったく、桃城以外の同級生でこんだけ意識することになる野郎は初めてだ。正直最初はただのキレやすい変人野郎くらいにしか思っていなかったが、改めて思う。俺は案外周りを見ていなかったんだと。

ランキング戦が始まってからはほとんどいつもどおりのノリで他の連中を蹴散らし、俺は試合をどんどん消化していった。も奮闘しているらしく、掲示を見たところ結構勝っている試合もある。いくつか負けてる試合はレギュラー常連の先輩に当たったやつだったが、
「もー、ヤダヤダヤダ。俺とは絶対試合やんないもんねっ。」
と菊丸先輩がぶーたれているのを聞いた。
「ちょっと、かいどー、のしつけ悪いぞー。」
「何で俺なんスか。」
いきなりわけわかんねぇタイミングで話をもってこられた。だったらどう対応しただろうか。(余計なことをいって騒ぎをでかくしそうな気もする。)
「だってさ、だってさ、」
俺の気も知らずに菊丸先輩は続ける。
ったらメッチャしつこいんだよー、ズルズルズルズル試合引き伸ばして、まるっきり誰かにそっくり。」
「何言ってんスか。」
俺は呟いた。
「あいつはあいつだ。誰にも似ちゃいないッスよ。」
言ってもこの人はピンと来ないかと思ってたら案の定菊丸先輩は首をかしげている。
「それよりいいんスか。」
「はにゃ。」
にてこずってるようじゃ先が思いやられるッスね。」
先輩は失礼だのなんだの騒ぎ出した。さすがに余計なことを言い過ぎたかもしれない、のことは言えねぇな。菊丸先輩とよくわかんねぇやりとりが終わった直後にまた一試合終わらせたらしきがやってきた。すでに汗まみれで正直体力余ってんだか怪しい様子、だが目は明らかにやる気、今までのランキング戦で誰もが見たことがなかっただろうその雰囲気に周りの連中がビビって道を開けていく。
「よぉ、海堂。」
俺の姿に気がついたのか、がこっちにやってきた。
「さすがだな、さっきの試合もう終わったのか。」
「当然だ、それよりお前、」
「んあ。」
「途中でへばってんじゃねぇぞ。」
はハッハッハッと声を上げて笑った。
「ここんとこ毎日お前の走りについてってんだぞ、へばってたまるかよ。」
それが言葉通りであることを俺は祈った。

余計かもしれねぇが、は知らないランキング戦の数日前にあったことを一応話しておこうと思う。その日もはいつもの通り部活が終わったらさっさと自分の練習の為に帰ってしまい、俺は一人帰路についていた。しかし一体なんの偶然か、その途中で山吹中の千石さんが他校の女子連中と話しながら歩いているところにでくわした。俺はいちいち話しかけるつもりはなかったから無視していたんだが、向こうは女子連中と別れるやいなや即刻こっちによってきた。
「やぁ、海堂クンじゃない。奇遇だねぇ。」
「どうもっス。」
一応の挨拶をすると千石さんは何がおかしいのか、かったいなぁ、とヘラヘラと笑う。
「元気そうだね。」
「まぁ、悪くはないッス。」
「ははは、海堂クンらしいや。でもねぇ、そんなお固いと女の子が逃げてくよー。」
しゃべりにくい。とにかくしゃべりにくい。やたらしゃべってくる点ではだって変わらないはずだがこの人のノリはとはまた違う。ってか、だったらこの人に言ってはいけないレベルまでの突っ込みを入れそうだ。
「余計なお世話だ、俺は今んとこ好いたのはれたのには興味がねぇ。」
「あららららら。」
何なんだ、この人は。別に用事がないなら俺はさっさと行くぞ。あほらしくなって俺は千石さんを無視してさっさと去ろうとした。だけど、
「あ、ちょっと待って。聞きたいことがあるんだけどさっ。」
「何スか。」
あるならあるで用事はさっさと済ましてほしいもんだ。そう思ってたらここで千石さんは妙なことを口にした。
「お宅んとこの彼、元気。」
馬鹿か、彼に該当する奴はいくらでもいる。
「誰のことスか、意味わかんねぇ。」
「ほらあの、パッと見地味で、やる気なさそうで、そのくせ言うことがたまにめっちゃキツくって、えーと、何て名前だったかなぁ。」
この人テニスの実力はあるが頭の方は微妙なのか。しばらく思い出せないとうんうん唸って頭を抱えている。 いい加減早くしろと俺が思い始めた頃、やっと千石さんはあ、思い出したと声を上げた。
「そーそー、クン。彼は元気にやってるかい。」
「あのボケ面がどうかしたんスか。」
「うわぁ、チームメイトなのに厳しいねぇ。いや、別にどうってことないけど前にちょっと知り合ったんでね。」
がいっぺんこの人とやりあったってのは本当らしい。だが、
「よく思い出しましたね。」
「ちょっとちょっと、もしかして海堂クン、俺のこと頭悪いって思ってる。」
「ちょっとばかし。」
「うわわ、ホント厳しー。それはともかく、クン面白かったからさっ、ちょっと印象強いんだよね。」
が聞いたら、どうせ3秒後には忘れるくせによく言うぜ、と一言言いそうだと思って俺は思わずクスリと笑ってしまう。だが千石さんの目が笑っていないことに気がついてギクリとした。
「実は前にクンに頼まれて手合わせしてね。」
「あの馬鹿のことだ、別に驚かないッス。」
「あれれ、そうなの。それにしてもホント面白かったよ。クンって、言ってることとやってることが全然違うんだねー。 口じゃどうせ負けるから適当にするとか、秒殺されるのはわかってるとか言ってるくせに 実際は負けるつもりはないって感じで動いてさ、いくら青学だからってレギュラーさん以外で、俺の球返してきた人はそういないよ。」
「どうせまぐれ辺りの一発、それもノーコンで妙なところにすっ飛んだに決まってる。」
「ピンポン、さすが。まぁ、変なトコ飛んでった方が多かったけどまぐれにしちゃ返した回数多すぎだったかな。」
何でそんなことをわざわざ言うんだ。思ったことは勝手に口から飛び出し、千石さんは更に言う。
「何か時々妙に集中してる時があるんだよね、クンって。周りの音も景色も何もかんも感じてないみたいに。で、そういう時は絶対一発返してくる。」
「手加減してたんスよね。」
「まぁ悪いけど、本気でやる程の相手じゃないから。でも最初はボロボロだったから、もうちょい楽勝で行けると思ったんだけどねぇ、まぁ粘る粘る。」
ここで誰かさんにそっくり、とこの人がいらないことを言ってくるので少しムカッとした。 ったく、どいつもこいつもどういう意味だ。
クンは、見えてるのかな、集中してる時は。」
「それが何か。」
「否定はしないんだ。」
あんまり外にペラペラ喋るもんじゃないが身内の俺でも思い当たる節があるから否定できるはずがねぇ。何が面白いのか、千石さんはアッハッハと笑い出した。
「いやぁ、意外意外。レギュラーのみんなは前から凄いけどさ、その他大勢クンの中にも頑張り屋さんがいるもんだねぇ、さすがは青学。」
「嫌みか。」
「全然。」
言う相手間違ったか。本気で面白そうに笑ってる千石さんの面を見ていると力が抜けそうになる。
「で、クンは一体何を狙ってるのかな。」
「さぁ。」
いちいちこの人に話す義理はない。
「そうケチケチせずにさー。」
うぜぇノリだ。
「勝手にバラしたらがうるせぇ。つーか、アンタ本当は気づいてるんじゃないんスか。それに実現する訳ないと思ってる。」
「ハハハ、ホントに参ったね。何となくってレベルなんだけど。」
ひとしきり笑って千石さんの目がまた真剣になった。緩急激しいこの面、山吹中で顧問やってるじじぃの影響だろうか。
「一応どういうつもりかは見当がつくよ。よく頑張ってるとも思うけど、あれじゃあね。」
「そんな、もんスかね。」
「わかってるんでしょ、本当は。クンの集中モード、ちょっとしたもんだと思うけど、あんな何度もやってたら体力が1試合分もたない。それに残念ながらクンは素材(もと)が悪すぎる。」
それは確かに事実だとは思う。漫画じゃあるまいしいくらが必死こいたところでどうしようもない、これは現実なのだから。だけど実際のところ、俺はにそれを告げることが出来ずにいる。時々あいつが見せる熱い意志に、意外性に、もしかしたらと思ってしまう。叩き潰したいと思ってる一方で必死になっていることを知る度にもっと頑張れ、と言いたくなってしまう。
「言ってないんだね、クンには誰も、現実を。」
「言えるはずがねぇ。」
俺は呟く。そう、言えるはずがなかった。自分が諦めたことがないというのに他人に、それも本人なりに努力してる奴に言えるはずなんかあるか。
「ま、それもいいのかもね。とりあえず、クンによろしく伝えといて。」
「多分、よろしくしてほしくないって言うと思うっスよ。」
言うと千石さんは、やっぱりクンって怖いんだなぁ、とまったくそう思ってない口調で言った。

地味ながら何気に影で知名度が上がりつつある、だけどにあいつが現時点で目指してることの実現は無理だろうと思っている連中がいる。それが事実であることを本当は俺だって知っているが、俺は未だににそれは言っていないし今でも言う勇気はない。今この場でと対峙している俺の心境は複雑だ。絶対に負けたくはない。だが、
『言ってないんだね、クンには誰も、現実を。』
あの時千石さんが見せた笑いながらどこか馬鹿にしたような顔がチラつく。まるで夢をこのまま見させるのは返って可哀想じゃないのと言いたそうな表情、思い出しただけで胃の中が熱くなりそうだ。相反することを思ってしまう、、勝ってみせろ。俺に勝って自分の目指している先が現実に出来ることを証明してみせろ、と。

「どしたぁ、海堂。見えちゃいけないもんでも見えたか。」
の声で俺は我にかえる。暑い、と左腕で額の汗を拭うはさっきまで周りをビビらせていた雰囲気がどこかに行っている。この野郎、どこまでも。
「ぜってぇ負けねぇ。」
「お、おう。」
はちょっとビビったみたいな反応をしたがコートに入った次の瞬間にはまた目つきが変わっていた。それでいいと思った。

作者の後書き(戯れ言とも言う)
4年空けた挙句の更新がこれか、と思われても文句は言えないことは素直に認めます。
2013/01/27

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