食事が睡眠に与える影響
最新疫学研究情報No.104
米国のコロンビア大学メディカルセンターの研究者らによって、「食物繊維が少なく飽和脂肪や糖質が多い食事は、睡眠の質を低下させる」との発表がなされました。
研究の目的
睡眠は食事による影響を受けるとの報告がありますが、食事パターンがどのように睡眠に変化をもたらすかは、ほとんど知られていません。研究チームは、「管理された食事(*栄養士によって提供される食事)」と「自由な食事(*食べたいものを自由に選べる食事)」の2つの食事パターンを設定し、これらの食事による睡眠への影響を明らかにするための調査を開始しました。
研究方法
研究者らは、1日に7~9時間の睡眠をとっている30~45歳の男女26人(*全員が標準体重)を対象に、5日間(5泊)の睡眠実験を行いました(無作為割付クロスオーバー試験)。研究チームは被験者に対し、初日から4日目までは「管理された食事」、5日目は「自由な食事」を摂取させ、それぞれの日の睡眠時における脳波などを測定しました。その睡眠データの中から、3日目(*「管理された食事」を摂取した日の睡眠)と5日目(*「自由な食事」を摂取した日の睡眠)のデータを分析し、食事との関連性について比較検討しました。
研究結果
2パターンの食事内容を比較した結果、「管理された食事」は「自由な食事」に比べ、飽和脂肪が少なく、タンパク質が多かったことが明らかにされました。これらの2パターンの食事が睡眠に与える影響については、以下のことが確認されました。
- 「管理された食事」と「自由な食事」は共に、睡眠時間には影響を与えなかった(平均睡眠時間は、7時間35分だった)。
- 「管理された食事」と「自由な食事」は共に、睡眠の質に影響を与えた。「管理された食事」を摂取した日の睡眠は、床について眠るまでの時間が平均17分だったのに対し、「自由な食事」の場合は、平均29分かかった。
- 「自由な食事」を摂取した日の睡眠は、「管理された食事」の日と比べ、深い眠り(*徐波睡眠と呼ばれる、最も深い睡眠の状態を指し、回復力のある眠りとされている)の時間が少なかった。
- 食物繊維を多く摂取するほど、浅い眠り(*ステージ1と呼ばれる最も浅い睡眠の状態)の割合が減り、深い眠りの割合が増えた。
- 飽和脂肪の摂取割合(*エネルギー比)が増えるほど、深い眠りの割合が少なくなった。
- 砂糖や精製炭水化物の摂取割合(*エネルギー比)が高くなるほど、眠りから覚める回数が増えた。
結論
研究者らは、「今回の研究により、食物繊維が少なく飽和脂肪と糖質が多い食事は、目覚めの回数を増やし、体を回復させるタイプの睡眠が短くなるなど、睡眠の質の低下と関連性があることが明らかにされた。今回の結果は、食事が睡眠障害の対処に役立つ可能性があることを示唆している。しかしそれを実証するためには、さらなる研究が必要とされる」と結論づけています。また、本研究に参加していない別の専門家は、「この研究は、食事と睡眠が、健康的なライフスタイルの条件に組み込まれているという事実を強化するものである。最高の健康を手に入れるためには、栄養価の優れた食事を摂取し、定期的に運動するといった健全な睡眠を促すライフスタイルの選択が重要である」と述べています。
出典
- 『Journal of Clinical Sleep Medicine 2016年1月号』