10代の時の牛乳の摂取は、高齢時における股関節の骨折リスクを低下させない
最新疫学研究情報No.98
米国のブリガム&ウィメンズ病院とハーバード大学の合同研究チームによって、「10代の頃に牛乳を多く摂取しても、高齢になってからの股関節の骨折リスクを下げることはない。それどころか、男性においては逆に骨折のリスクを増大させる可能性がある」との報告がなされました。
従来、青年期における牛乳の摂取は、青年期の骨量を最大に引き上げ、その後の骨折リスクを低減させる効果があるとして推奨されてきました。一方、股関節の骨折に関しては、これまでの研究では、牛乳の効果(骨の強化)については明確な結論が出ていませんでした。むしろ牛乳の多量摂取によって、身長が伸びすぎることで、股関節の骨折リスクが高まる可能性があることが示唆されてきました。
今回の研究は、こうした従来の見解を追跡し確認することを目的として実施されました。この研究は、閉経後の女性(看護師)と50歳以上の男性(医療従事者)96000人以上を対象に、10代の時の牛乳の摂取が、高齢時の股関節の骨折リスクにどのような影響を与えるかを22年以上にわたって追跡した大規模コホート調査です。
研究チームは被験者に対し、最初に13~18歳までに摂取していた牛乳を含む食物の量など(*思い出しによるもの)を報告させ、10代の時の食事状況を調査しました。さらに、2年毎に現在の食事・喫煙・運動・薬の服用などについてのアンケートを実施し、牛乳と股関節骨折との関連性を検討しました。(期間中に、1226人の女性と490人の男性が股関節の骨折を発症しています)。
調査の結果、男性においては10代の時の牛乳の摂取量が1日に1杯(240ml)ずつ増えるごとに、高齢時の股関節の骨折リスクが9%ずつ増加することが判明しました。一方、女性では10代の時の牛乳摂取と高齢時の股関節骨折との間には関連性は見られませんでした。
研究者らは、「今回の牛乳の摂取と股関節の骨折に関する研究結果は、男性のみに限定され、女性ではその関連性が見られなかった。男性の場合は骨量の増加に伴うプラスの影響よりも、身長が高くなることのマイナスの影響の方が上回ることによって、骨折が引き起こされている可能性がある。老年期の股関節骨折を防止するためには、青年期の牛乳摂取と身長の増加の影響を明らかにする、さらなる研究が必要とされる」と述べています。
当研究所の見解
牛乳に関する論文は、業界からの圧力があるためか極端に少なく、マイナスの研究結果もほとんど公表されない中で、今回の研究結果は画期的なものと言えます。
出典
- 『JAMA 2013年11月18日号』online版