10代の若者における食事とメタボリック症候群との関連性
最新疫学研究情報No.91
米国のミシガン州立大学のジョセフ・カールソン准教授らによる研究チームによって、「食物繊維が豊富な食事は、子供のメタボリック症候群の発症リスクを大幅に低減させる」との報告がなされました。
この研究は、10代の若者のメタボリック症候群を減らすために、「食物繊維が豊富な食事」と「飽和脂肪酸やコレステロールを制限した食事」の効果を比較検討する目的で実施されました。研究チームは、1999~2002年の米国健康栄養調査(NHANES)に参加した12~19歳の男女2128人の食事データをもとに、食物繊維・飽和脂肪酸・コレステロールの含有量(*1000kcal当たり)を算出し、メタボリック症候群の発症率との関連性を調査しました。血液検査等のデータの分析の結果、138人の被験者(全体の6.4%)がメタボリック症候群(※1)であることが判明しました。
研究の結果、食物繊維の摂取量が最も少なかった子供は、最も多かった子供と比べて、メタボリック症候群の発症率が3倍も高かったことが明らかにされました。一方、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量とメタボリック症候群の発症率との関連性は見られませんでした。
研究者らは、「今回の研究により、食物繊維の摂取量が増加するほど、メタボリック症候群の発症リスクが低下することが確認された。食物繊維が豊富な食事は、心血管疾患のリスク要因に有益な効果をもたらすビタミンやミネラルなどが多く含まれている。10代の若者のメタボリック症候群を減らすためには、飽和脂肪酸やコレステロールが多い食品を制限することよりも、食物繊維が豊富で栄養価の高い植物ベースの食事を多く摂取するための対策を強化する方が効果的である。ただし、これは脂肪の多い食品を自由に摂取してもよいということではない。飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させることがすでに立証されている。今回の結果は、果物・野菜・全粒穀物・豆類など食物繊維が豊富な食品の摂取を増やすことの重要性を示唆している」と述べています。
※1メタボリック症候群の診断は、ウエストサイズ・血圧値・HDLコレステロール値・中性脂肪値・血糖値のうち、3項目以上に異常が見られた場合を基準としています。
出典
- 『Journal of the American Dietetic Association Vol.111 2011年11月号』