ホロコーストを生き延びたヨーロッパ系ユダヤ人はガンの発生率が高い
最新疫学研究情報No.74
イスラエルのハイファ大学の Lital Keinan-Boker 医学博士らの研究チームによって、「ホロコースト(*ナチスドイツによる大虐殺)により、飢餓や厳しいストレスを経験したヨーロッパ系ユダヤ人は、ガンの発生率が高い」との報告がなされました。
研究チームは、イスラエルに移住したヨーロッパ系ユダヤ人のうち、第二次世界大戦を生き延びた1920~1945年生まれの人たち(31万5544人)を対象に、ホロコーストを経験したグループ(25万8048人)と、ホロコーストを経験しなかったグループ(5万7496人)に分け(※1)、ガンの発生率を調査しました。イスラエルの地域ガン登録データをもとに2004年までのガンの発生率を比較しました。
調査の結果、性別、年齢を問わずホロコーストを経験したグループでは、経験しなかったグループより、ガンの発生率が高いことが判明しました。特に乳幼児期にホロコーストを経験した年齢層(1940~1945年生まれ)で、その傾向が強く見られました。またガンの種類別に見ると、ホロコーストを経験したグループでは全てのタイプのガンの発生率が高く、中でも乳ガンと大腸ガンの発生率が特に高いことが確認されました。
研究チームは「今回の研究により、ホロコーストを体験し、飢餓や厳しいストレスにさらされた人たちは、全てのガンの発生率(特に乳ガンと大腸ガン)が高いことが示された。今後これらの因果関係を解明するために、個人データに基づいたさらなる追加調査を行う必要がある」と結論づけています。
※1ホロコーストの経験の有無については、個人別のデータがないため、イスラエルへの入国データ(移住時期)に基づき決定されました。今回の調査では、戦前・戦中に移住した人はホロコーストを経験していない人、戦後に移住した人はホロコーストを経験した人と定義づけています。
出典
- 『Journal of the National Cancer Institute 2009年10月26日号』
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