思春期の子供のストレスと肥満の関係

最新疫学研究情報No.69

米国のアイオワ州立大学の研究チームによって、「思春期の子供は、ストレスが多くなるほど肥満になりやすい」との報告がなされました。

この研究は、米国の社会福祉事業の一環として、ボストン・シカゴ・サンアントニオに住む低所得層の子供とその家族(2400世帯)を対象に行われた調査(*A Three‐City Study)をベースにしたものです。米国の低収入の家庭で暮らす青少年は肥満が多いという現状から、子供を取り巻く生活環境要因(食事・ストレス)と肥満との関連性を明らかにするために実施されました。研究チームは、データの中から特に貧困層に該当する子供(10~15歳)と母親(養育者)1011人を抽出し、調査の対象としました。被験者に食事やストレスに関する質問(※1)を行い、それらの回答をもとに6年間の追跡調査をしました。

その結果、子供自身のストレスが多くなるほど、肥満(または過体重)になるリスクが高くなることが明らかになりました。一方、「母親のストレスと子供の肥満」と「低所得の家庭における食事と子供の肥満」については、いずれも直接的な関連性は見られませんでした。ただし健康的な生活を送るための十分な食事を摂ることができない家庭で、母親がストレスを抱えている場合は、母親のストレスが多くなるほど子供の肥満のリスクが高くなることが確認されました。

研究を指揮したBrenda J. Lohman博士は、「今回の研究で、思春期の子供のストレスが肥満に影響を与えることが示された。子供の肥満対策については、子供自身が抱えているストレスを減らしていくことが大切であるが、食事内容に問題がある家庭においては、母親のストレスを軽減することも考慮していかなければならない」と結論づけています。

※1食事については、低所得の家庭における食事の量や質の問題(子供が健康で活動的な生活を送るために必要な栄養を満たした食事が摂れているかどうか)の聞き取り調査が行われました。 ストレスについては、子供のストレス状態を調べるために、5項目の要因(①教育に関する問題の有無 ②薬物・アルコール摂取の有無 ③うつまたは無気力な精神状態の有無 ④攻撃的行為の有無 ⑤将来への関心の有無)に関するアンケートが行われました。この研究では、これらの要因のうち4項目以上当てはまる場合を“ストレスを多く抱えている”としています。

また、「母親のストレスと子供の肥満」との因果関係も明らかにするために、母親のストレスについての聞き取り調査も実施されました。

出典

  • 『Journal of Adolescent Health online版 2009年9月号』
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