今日の治療への提案
〜治癒するための診断法tと、治癒するために様々な治療手段を持とう〜



その1.プロセスを重んじた縦断的診断をする

 今日では、精神科・心療内科においては、DSMWやICD10などの質問紙形式の病名診断と薬物療法を行うことが、より一般的である。しかし、このような診断に基づいた治療では実際には治癒率は低い。それはこれらの診断が疾患の本質を突いていないからである。生育歴、現在の生活環境、身体状態、人間関係がその人の生き方や物の考え方に大きな影響を及ぼし、病気の発症やその在り方を決定付ける。この事から考えても、質問紙形式の病名診断がいかに表面的であり、それに基づいた薬物療法が十分に効果を発揮しないことは明らかである。
 では、より多くの人が治癒する診断と治療とはどのようなものか。それは、その人の生まれてから現在までの個人的及び社会的要因を吟味し将来の人生を見据えた診断と、それに側した適切な治療であると、私たちは考えている。その人の心身両面の状態とそれらをとりまく環境の過去・現在・未来を、時間経過と共に多角的にとらえることこそが重要である。過去に於いてはどんな問題が有り、現在はどのように生きにくいのか、それらを解決して将来どのような人生を送りたいかが問われなければならないのである。



その2.様々な治療手段を持つ

 例えば、「授乳中で服薬したくない」という患者さんが来院すると、以前は、精神療法のみで治療をすることになるが、それだけでは治療者としても心細いものがあった。しかし、最近ではこんなとき、即座に血液検査をして、健康状態と栄養状態を見ることにしている。授乳中は鉄欠乏、蛋白欠乏など様々な栄養障害を持つ母親が多く、それらを改善することで各種の精神症状が消失する。(分子整合栄養医学的アプローチ)また、一方では、子供を預かって、キックボクシングによる運動療法を行うことで、精神症状が軽減することもしばしばである。(運動療法)
 また、不登校ひきこもり、職場不適応、うつ病、パニック障害、アダルトチルドレンを疾患の根底に持つ患者さんは、デイケアで集団精神療、運動療法などを受けるとで、回復を早めていける。(集団精神療法)さらに、精神症状以外の疾患でも、栄養療法、運動療養、集団精神療法は様々な効果を上げている。
 この世には、薬物療法以外にも、同様の効果があり、副作用が無い素晴らしい療法が存在する。私達は、患者さんにとって良いと思われる治療法を医療従事者としての知識と良識をもって試みるべきであると考えるし、この考えに当院の患者さんの多くが賛同して下さっているものと確信している。




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