「アーク!!」
突然名前を呼ばた。
カインの瞳へと、手を伸ばしかける途中だった。
カインは、私の名前を忘れたはずじゃなかったのか?
思わず伸ばしかけた手が止まる。
カインは、私のその手を大きく見開いた目で凝視しながら、涙を流した。
ただ、ボロボロと流れる、突然のカインの涙に私は動けなくなった。
カインの涙の訳は分からないが、その涙があまりにも透明で、冷たく、悲しくて。
カインにこんな涙を流させた自分自身に、深い嫌悪感を抱いた。
このままだとカインが、どこか遠くへ行ってしまう。
それだけはさせない。
私の側を離れるなと、何度囁いた?
私がお前の全てを守ると、何度教えた?
お互いにお互いから離れる事が出来ないと、何度言い合った?
私が、お前を一度手放した事を、これほど悲しんでいるなら、泣き止んでくれ。
私も、もうあんな思いは二度としたくない。
全てに誓って言える。
たとえ、私が死のうと、お前が死のうと、二度と離さない・・・。
「カイン!!」
分かってくれ・・・。
細い身体を力の限りに抱きしめる。
細い腕が答えるように、しがみついてくる。
そして、カインはゆっくりと、その意識を闇へと落とした。