間近に見える、銀にも見えるやつの白い牙に、自然と体が強張る。
意識しないよう、俺はあえて顔をそらし横を向いた。
「力を抜いてくれ、危ないぞ。」
首筋に柔らかな息がかかった。 思わず蹴り退かしてぇ衝動に駆られるが、
よろよろのこいつにそんなことしたら。間違いなくくたばる。 がまんだ。
一度深呼吸をして、力を抜く。力を抜いたと同時に、首に冷たい感触がした。
冷たくて、柔らかい感触。
それだけだった。考えていた痛さはちっともない。
痛くないのはアレか?蚊が、血を吸うとき麻酔を出して相手に針を刺すってやつと同じなのか?
・・・蚊と同じって言ったら、こいつはどんな顔するかな?
嫌な顔するかな?一緒にするなって言うか?
なんだかとても静かだ。なんとなく、そう思う。
自分に覆いかぶさる、こいつの頭を撫でてみる。意外とさらさらする。
そういや、撫でられることは多いが、俺がこいつの髪、触る事ほとんどねぇな。
・・・だんだん力が抜けていくのがわかる。
でも、もう少し。こいつが少しでも満足出来るように・・・。
・・・・・・もう少し。
・・・・・・・・・なんか、眠い。・・・