第14話「難攻不落の砦」


 今回は第11話「衣装は偉大なのか否か」、第13話「それぞれの事情」の続きなので、前回を未読の方はまずそちらから読んでいただきたい。

 

 

 遅刻のまると合流した、体調不良の勝竜と金欠のフルは地下鉄に乗って目的地へ向かうのであった・・・

 

 今まで、コスプレ鍋屋とさんざん呼んで来た訳なのだが、そのお店の正式名称は「モデル鍋」である。

モデル鍋の所在地は、名古屋市中区錦。錦とは、知る人ぞ知る町。東京で言うなら歌舞伎町。北海道で言うなら薄野。岐阜で言うなら金津園である。

そんな立地に有るものの、決して風俗店ではなく、店員さんがコスプレをしただけのごくごく普通の鍋屋である。いや、「火鍋」と言う、ちょっと珍しいタイプの鍋を味わう事の出来る店なのである。店員はたまたまコスプレをしているのだ。我々は火鍋を食いに行くのだ。

そんな、言い訳にしか聞こえない台詞が僕ら3人の最後の砦だった。わざわざここまで説明しないと、皆が「いやらしい店に行くのだな?」と口を揃えてしまうのである。だから僕らは火鍋を食べに行くだけですってば。・・・・多分。

 

 地下鉄の駅を降りて外に出ると僕はおもむろに用意しておいた地図を取り出す。

こんな用意周到さが、普段から幹事やら何やらをやらされる原因に繋がっているのだろうと分かっているのだけれど、不安が有るまま出掛けるのはやっぱり不安なのでこの性格は治らない。

 地図と景色を見ながら3人でゆっくり歩いていると気になる看板を見付けた。そこには「1000酔漢」と書かれていた。

多分飲み屋なのだけど、一体この店名、何と読むのだろう。え〜と「せん すい かん」。「せんすいかん」だ!

と僕が言うと

「店内に入ると1000人の酔ったオトコ(漢)が居る訳だ。絶対入りたくないな」

とフルが言った。確かに。

「でもオトコと言う意味の漢を使った事は評価する」

まるが言う。・・・いや、これは意味わからん。

 

そんなくだらない話をしている間にも我々はモデル鍋に近付いているのである。そして遂に看板が見えた。

そして看板を見て驚愕した。露出度の高い服を着たCGお姉さんがでかでかと描かれているではないか。店名の「モデル鍋」は「モデル」の部分が虹色で描かれている。

そして店は地下1階。

3人は思った。

こんな店に入るのか。これはまるで・・・

僕らの最後の砦が音を立てて崩れるのを感じた。

 

[続く]


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