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神子を守る為に存在する八葉、花梨の為ならば行動は素早い。本気を出したら、不可能はない。 あっと言う間に犯人を探し出した。 八人が犯人の屋敷に踏み込むと――――――犯人は、文車妖妃に説教をされているところだった。 「「「「「「「「えっとぉ・・・・・・・・・・・・。」」」」」」」」 まぁ、これは一応、神子の命令を守っていると言えなくもないが。 「そなたは、自分が想いを寄せている相手がどんな姫君なのか、存じておらぬのか?別人であるわらわの姿を見ても気付かぬとはっ!」 「・・・・・・ごもっとも。」 「恋文を贈る事さえしておらぬのに、白々しい嘘で誤魔化し想いを伝えようとするなど、神子を愚弄しておるのか!」 「・・・・・・申し訳ありません。」 「それでいて、想いを返して貰おうなどとはもっての他。問題外であるぞ!」 「・・・・・・・・・。」 「そもそも恋文と言う物はだな――――――。」 「「「「「「「「まぁまぁ、落ち着いて下さい。私達が話しますから!」」」」」」」」 延々とお小言を言い続ける文車妖妃を、男から引き離す。 「あぅぅぅ・・・・・・、有難う御座いますっ!龍神の神子様をかどわかそうとした事を、どうぞお許し下さいませっっ!!」 犯人である公達からは涙ながらのお礼と謝罪の言葉を贈られたが、拒否したのは当然の事。 そして。 「我らの神子への乱暴なふるまい、未遂とは言え無体しようとしたその心根、許しません。成敗致します。」 東宮の冷たい笑顔での宣言の後、七人が頷き行動した。 「うわああああ!と、東宮様、どうかお助け下さいませっ!もうこんな事は絶対にしませんからっっ!!」 「何じゃ、わらわには乱暴してはいけないと言っておったが、この者には良いのか?」八葉の行動に瞳を輝かす。「ならば、わらわも少々この者にお仕置きを――――――。」 「いえ、あなたはやってはいけません!花梨さん、神子の命令ですよ?」 慌てて彰紋が止める。 「人間は良くても、わらわは駄目なのか?」 「死んでしまったら、神子に迷惑が掛かります!」 不満そうに眉を顰める文車妖妃を彰紋が必死で宥めている間、七人が思う存分、満足するまで成敗する。 「ぎゃあああ!!幸鷹殿!泉水殿!!助けてぇぇぇ!!」 そしてその後、まだ物足りなそうな文車妖妃を無理矢理、四条の屋敷にまで連れ帰った。 後悔して泣き倒れた男を一人残して――――――。 「神子殿の御身だけでなく、屋敷の警備もお任せ下さい。」 「穢れた人間は近付けないように、呪いを掛けておこう。」 「俺は京職だ。京の治安は守るぜ。」 「京の町は俺達庶民も暮らしている。貴族だけが守っている訳じゃないんだぜ。」 「帝にお話を致しましょう。」 「院に御相談致しましょう。」 「私は検非違使別当です。不届き者には反省を促しましょう。」 「あぁ、後悔して心を入れ替えるだろうね。」 その後。 花梨には24時間365日完璧な警備。 怨霊と同じく穢れを帯びた人間も、四条の屋敷に忍び込む事は出来ず。 封印した見栄えの良い怨霊をいくつか具現化して、屋敷の中でも外でも花梨の護衛をさせる。―――幸鷹曰く「屋敷の中は、動物ふれあいパーク」 四条の屋敷だけでなく、全ての貴族の屋敷にも目を光らせる。 庶民にも貴族の間にも「龍神の神子に仇なす者には龍神の怒りを買うだろう」との噂をバラまく。 ―――花梨の安全は確保された。 帝に進言をして院に相談をして貴族の間に根回しをして、その結果、一人の公達が伊予の国に飛ばされた。 そこには、某海賊のお頭からの「海賊流に可愛がって差し上げるように」との命令が伝わっていて―――――――――合掌。 花梨は、と言えば。 「じゃあ早速お願いします!」 文車妖妃が無事に戻り何の騒ぎも起こっていない事もあって、後始末は俺達に任せておけ、との八葉達の言葉を信じていた。それで、暇さえあれば文車妖妃に文の書き方を教わる日々を送っている。 勉強はあまり好きではないと言っていた花梨のあまりの熱心さに、想い人は誰なのかと、八人の男達にとっては怖れと期待の日々が続く。お互いに探り合いはったりを掛け合うなどの駆け引きをしていたが。 「これでどうですか?」 「・・・・・・・・・。」文車妖妃はじっくり丹念に読む。「宜しい。これならそなたの心は十分伝わる。合格じゃ。」頷きながら文を返す。 数十枚目にしてやっと完成した文。花梨の不安げな表情だった顔にやっと笑みが浮かぶ。 「やったぁ!じゃあ、早速これを送り届けて貰おうっと♪」 いそいそと庭に咲いている花を添えて、お付きの女房に頼んだ。 そんな嬉しそうな姿が噂となって八葉達にも伝わったが。 「私の元には来ない・・・・・・・・・。誰に贈ったのだろう?」 貰えなかった男達は完全に自分が振られたと思い込み、ショックを受けて次々と倒れ込んだ―――。 注意・・・伊予に飛ばされた男は死んでいません。 花梨ちゃんに知られたら怒られるから。 ですが、死んだ方がマシ!と泣いているでしょうね。 日本語の手直しをしていた筈が、なぜ長くなっていくのだろう? 多分、次で終わりです。多分ね・・・(自信ナシ)。 |