『望み』 |
「頼忠さん、デートに行きましょう!」 「でぇと?」 頼忠は、外出の供に付きたい、との挨拶を遮られ、いきなり聞いたことも無い言葉を言われて目を瞬かせた。 「はい、デート。まっ、言葉の意味なんて細かい事は気にしない気にしない!ただ、気分転換に今日一日ゆっくりしたいので付き合ってくださいな♪」 そう言うと、花梨は頼忠の手を握り締めてさっさと歩き出した。 花を見つけては香りを嗅ぎ、猫の後を追いかけ、子供と笑いあう花梨の後に付き従う頼忠は、花梨の笑顔を目を細めて見ていた。 『神子殿にはやっぱり笑顔が一番お似合いだ。』 だが。 『この笑顔を見られるのも残りわずか、か・・・・・・?』 急に天候が変わり雪が降り出したので、頼忠と花梨は近くの誰も住んでいない建物の中へ飛び込んだ。 「うわぁ、びっくりしましたね。大雪だ!」 身体に積もってしまった雪をパタパタと払い落としながら、花梨は眼を見開いた。 「歩きっぱなしで少し疲れたし、ちょっと休憩しよう。」 そう言った途端、「くしゅんっ!」と大きなくしゃみをしてしまう。 「神子殿、御風邪を召されたのですか?」 頼忠が顔色を変える。 花梨は、大丈夫だよ!と笑うが、頼忠の心配事は消えず。 「神子殿、失礼致します。」 と言うと、いきなり花梨を抱き寄せた。 慌てふためく少女に、 「こうしていれば寒さが和らぎますゆえ、しばしのご辛抱を。」 と言うと、更に腕の力を強める。 最初は恥ずかしくて逃れようとしていたが、頼忠の熱が伝わってくれば実際に寒さが和らぎ、抵抗する気も失せてしまう。 花梨は自分から身体を摺り寄せると、眼を閉じた。 本当は「デート」をしているような余裕など無いのだけど、残り少ない日々、出来るだけ多くの思い出を作りたくて。 別れた後の人生、支えとなるような思い出が。 『でも・・・・・・やっぱり想いを断ち切る事は出来そうにもないな。頼忠さんが、こんなに素敵な人じゃなかったら良かったのに。欠点のある人だったら、ここまで苦しまずにすむのに。』 恨めしく思う気持ちさえ浮かんでしまう。 だが、今はただ、この優しい温もりに幸せを感じていた――――――。 頼忠は自分に、完全に無防備で身体を預けてくる少女を暗い瞳で見下ろした。 己を信頼し、安心しきっている・・・。それは普段なら喜ぶ事だが―――。 『私から離れても貴女は平気なのですか?』 『この華奢な身体は、自分が力を使わずとも思うように出来る。』 ―――逃げられないように、檻の中へと閉じ込めてしまいたいが。 少女は男の心の奥底で燻っている感情など気付かずに、頬を紅く染め口元に笑みを浮かべている。 『手折る事など造作も無い。天へと帰る羽衣を奪う事も出来る・・・・・・・・・。』 ―――欲望のまま、その清らかな身体を思う存分貪り、『源頼忠』という男の名前を刻み込んでしまいたいが。 心臓を鷲掴みにされたような痛みが走る。 『だが・・・・・・この少女の髪一本さえ、己が傷つける事など出来ない。涙の一滴流させる事など出来るわけ無い。微笑みを失わせるなど・・・・・・耐えられるわけが無い!』 頼忠は、少女を抱き締める腕に力を込めた。 この京を捨てて、誰もいない、誰も知らない遠くへ少女を攫ってしまいたい、という考えが頭の中を掠めるが――――――。 後悔で苦しむ事は解っている。 この少女を失えば、自分は生き続けられない事は解ってはいる。 それでも。 少女の望む事は全て叶えたくて。 少女を守りたいと思う気持ちが強すぎて。 零れ落ちるため息が尽きる事は無い。 『もしも・・・・・・貴女が私と共に生きる事を望んでくださるのなら・・・・・・。』 ――――――龍神に逆らってでもお傍にいようものを―――――― 雪が止み、屋敷に戻ってきた花梨と頼忠を幸鷹が出迎えた。 花梨を部屋まで送り二人きりになると幸鷹は、頼忠の耳元で二言三言囁く。そして、意味深な、挑戦するような表情を浮かべた。 「・・・・・・・・・・・・っ!」 頼忠は、幸鷹を射るような眼差しで睨むと、くるりと背を向け歩き出した。 幸鷹が祈るような、落胆したような複雑な瞳で自分を見つめているのを知らずに・・・・・・・・・。 「紫姫、お尋ねしたい事があります。」 幸鷹と別れた頼忠は、紫姫に面会を求め、挨拶もそこそこに話し始めた そんな礼儀に反した頼忠の態度に紫姫はびっくりしたが、質問の内容に更に驚く。 「龍神の神子がご自分の世界に戻られる時、他の人間が共に行く事は出来るのでしょうか――――――?」 注意・・・第4章終盤。『幸鷹の決意』と同じ日。 幸鷹の決意――――――策略を巡らせます、神子殿の幸せの為に。 頼忠には「愛するが故の行動」はさせません。愛の深さを表すために行動させる作品もあるけど、私的には「?」です。 これは元々ネオロマンスゲーム、ですもの。女の子の夢を叶えるのでしょう?だから、「大切に想うからこそ耐える」・・・・・・耐えて欲しいのだわ。 とか言いながら、他の人が書いた作品によっては喜んで読んでいたりするけどね。 2004/04/18 03:19:25 BY銀竜草 |
次で終わる予定ではいるのですけど・・・ワードは真っ白です。頭の中にはストーリーが完成しているのに、文章には出来ません。あぅぅぅぅ、何故だぁ?!何故書けんのだ??? 2004/09/29 19:36:17 BY銀竜草 |