―― 消えない オモイ 2 ――





開いた瞳がぼんやりと、真正面にあった白い壁に残る染みを見つめる。
琥珀はまだ水の膜を張ったように潤んでいて、焦点も視線が向いているだけで、そこに合ってはいない。
じっとしばし動かない瞳で一点を見つめた後、遅れてやっと浮上してきた意識が、シーツの上の指先を持ち上げた。
蛮が、不自由に動くそれを、自分の手に中に軽く握る。
それにはっとしたように琥珀の焦点が合い、ゆっくりゆっくり、ゆうるりと室内を見回すと、やっとベッドに腰掛ける蛮を見つけた。
「あ…」
「よう」
「…蛮、ちゃん…?」
「やっとこお目覚めかよ?」
「えっと…。ここ。どこだっけ…?」
殊の外眠りが深かったせいか、それとも兜に支配された後遺症なのか、多少呂律の回らない口調で言う。
声も、少し掠れている。
蛮がそれを気にしつつも、おくびにも出さずに軽く返した。
「裏新宿の、いつも泊まるの安ホテルだ。それよっか、気分はどうよ?」
「え…? えと、うん。なんか、まだぼうっとしててよくわかんない」
「そっか…」
”まあ、ぼうっとしてんのは、いつものことだがよ”と笑んで、蛮の手が、急がずそっと相変わらず髪を撫でつける。
それに、ちょっとくすぐったいように肩を縮めながら、銀次が数度眼をしばたたかせ、あぁそうかーと息を吐き出しながら言った。

「帰ってきたんだ…」

「ああ」
「あ。でも、どうやって?」
「馬車のオッサンが、トラックで迎えに来てくれてよ」
「そうなんだ…。あ…! 蛮ちゃん、士度とマドカちゃんは…!」
「ああ、二人とも無事だ。さっき、糸巻きらが送っていったぜ。もっともよ。じゃねえと、オレたちもこうして帰ってなんか来てねえだろ?」
静かな答えに心から安堵して、銀次が肩を使って大きく息を吐き出す。
「よかった…。士度が、もうあのままかと思って…。マドカちゃんがそれを知ったら、どんなに悲しむだろうと思ったら、オレ…」
言って、つらそうに言葉につまる。
そして、一度、何かを思い出すように瞳を伏せると、今度は少し重めの溜息を吐き出した。

「そっか…。オレが寝てる間に、全部終わっちゃったんだ…」

安堵なのか落胆なのか、どちらとも取れるような物言いに、蛮が宥めるように手の甲で軽く銀次の頬を叩いた。
「一応、起こしたぜ? まあ、”一応”だがよ」
本気で叩き起こしたわけじゃないから、オレを責めるなら責めてもいいぞ、とそんな風な言い方だ。
銀次が小さく笑んで、蛮を見る。
「うん。蛮ちゃんの声、聞こえてたと思う。でもオレ、なんかもうくたくたで。起きなくちゃって思うのに、身体がどうしても言うこと聞かなくて」
言って、僅かに睫を伏せかける。
まだもうひとつよくない顔色に、それが更につらそうな陰を落とした。
それをふっきるように、はっきりとした口調で言う。
「…蛮ちゃんが、見届けてくれたんならいい」
「あ?」
「蛮ちゃんが、全部見届けてくれたんなら、オレはそれでいい。出来たら自分の手で決着をって、それは確かにそう思ってたけど。でも、結果のが大事だもん。蛮ちゃんが見届けてくれたんなら間違いはないって、オレ、いつもそう信じてるし」
蛮が、”テメーはなあ”と、困ったように苦笑を浮かべる。
「別に、オレは特別何もしちゃいねえよ。一番カラダ張って頑張ったのは、オメーと猿マワシと、それから…」
「それから?」
「…ああ」
「蛮ちゃん?」
珍しく口ごもる蛮に、銀次がしばしその瞳を見つめる。
そして察した。
自分と冬木士度の他にも、この闘いに生死を賭けた人間がいたということ。
そしてその者はもしかすると、自分たちと同じ側には戻れなかったのかもしれない、ということを。
「ねえ?」
「ん?」
「見せて?」
銀次の静かな言葉に、蛮がズボンのポケットから取り出したマルボロをくわえようとして、少し驚いたように銀次を見る。
眉を顰めた。
「まだ、んな状態で見るにゃキツイだろうが。明日にしろや。もう少し身体が、回復してから…」
「いやだ、そんなの」
「ああ?」
「今がいい、蛮ちゃん」
「…テメエなあ」
「気になって、眠れないし」
「…そりゃまあ、そうだがよ」
「大丈夫だよ、オレ」
「ぎーんじ」
「ね、大丈夫だから。蛮ちゃん」

つくづく…。
銀次は、自分に強請るのが巧い。
そう蛮が思う。
口調は甘えているが、真剣そのものの瞳で真っ直ぐに蛮を映している。
やれやれ。
蛮が、思わず苦笑する。
まるで、こういう場面でこういう強請られ方をされれば、蛮がそれを覆すことが出来ないと知っているかのようだ。

「後で具合悪くなっても知らねーぞ」
「うん。平気」
「…まったく。言い出したら、きかねえんだからよ」
「…ごめん」
「謝るぐれぇなら言うな。アホ」

横向きになっていた身体を真上に向かせ、蛮が銀次の右肩の側あたりに肘を付く。
覆い被さるようにして顔を近づけ、瞳を合わせると、銀次が蛮の紫紺の瞳を見つめたまま頷いた。
「いいよ」
「ああ」
答えるなり、蛮の瞳の紫紺が深い紫がかっていく。
同時に、銀次の瞳の焦点がブレた。


かくん、と落ちていく感覚で夢が始まる。
この感覚を知っているのは、今のところ銀次だけだ。
他の者なら当然、どこからどこまでが夢なのか、まったく気がつかないまま邪眼に囚われていく。
そして、一分間のイリュージョンの中で、よりリアルな現実に遭遇するのだ。


銀次は、蛮の視点で今、雷帝化している自分を見ている。
蛮が玉座に到着してからの情景のため、兜に支配された自分や、自分を雷帝化させて息絶えた士度を見ることはなかったが。
「眠れ」とやさしく言われて、ふわりと蛮の腕に倒れ込み、雷帝化を解いて眠りに落ちていく自分。
安らいだような表情をしていることに、己のことなのになぜか安堵する。
そして。
やっと到着した皆が、士度の死を知って凍りついた。
視点が蛮から離れた。
そのすぐ隣に移動する。
そこはたぶん、いつも銀次がいる、蛮の傍らの定位置だ。
もう手はないと、厳しい横顔で蛮が言う。
自分がそばにいたら、きっと食い下がっただろう。
そんなことはない、きっとあるはずだ。何かまだ手だてが在るはずだ、蛮
ちゃん―と。
そして、夏木亜紋が…。

「………っ」

銀次の顔が、苦しげに歪む。
唇が震えた。
同時に、固く瞑った目尻から、静かにそのこめかみに向かって涙が溢れていく。
「…笑師…っ」
苦しげに呼ばれた名に、夢の外側で蛮が少々驚く。
そして、蛮が兜に邪眼をかけ、いともたやすくその業は解き放たれ、取り込まれた鬼里人らの魂も、同時に解放されていた。
視点が、再び蛮に戻る。

そして、互いに生還を喜び合う鬼里人の戦士らを、涙にくれながら見つめている笑師春樹の姿をも、蛮の視線は捉えていた。

同じ光景を見て銀次が、ふいに両手で自分の顔を覆う。
歯を食いしばっているが、それでも嗚咽は押さえられない。
「銀次…」
相棒を無くして取り残されたその姿を、互いに自分と重ねたかもしれない。
悲しいというよりは、切り刻まれるような痛みが走る。
自分にとっての”唯一”を失う痛みは、自身の存在をも揺るがすのだ。


最後の最後で、銀次が微かな笑みを浮かべたのは、飛蜘蛛らのおかげだろうか?


「ジャスト1分だ」


蛮の声とともに、銀次がゆっくりと瞳を開く。
瞼が腫れぼったい。
夢の中では、きっともっと涙を流したのだろう。
蛮の手が、まだ自分の顔を覆ったままでいる銀次の手をそこから退かせた。
まだ流れ続けている涙に、蛮が苦しそうな顔をした。

「大丈夫か?」
「…うん」
「オレが賽蝶と闘っている間。テメーの身に何が起きたかは、だいたいウサ耳の嬢ちゃんと筋肉ダルマから聞いたがよ」
「うん…蛮ちゃん…」
「あ?」
「ごめん…。オレ、また雷帝に…」
「しょうがねえだろが。ありゃあ、不可抗力だ。ああでもしなけりゃ、兜はテメーの中から出ていきゃしねえし、そもそもが猿マワシに仕組まれてのことだしな。テメーに責任はねえ」
「でも…」
言って、ゆっくりと首を横に振る銀次の顔色は、先ほどより明らかに悪い。
蛮が、心中で舌を打った。

邪眼が見せる夢はある種、現実以上にリアルだ。
それが、嘘偽りのない事実だとしても、実際よりも心にずしりとくる。
ついでに、自分が兜に肉体をのっとられた時の、おぞましい不快感や、冬木士度に、自分はマドカの身代わりとして連れてこられたのだと知らされた時の、一瞬の、心に深く落ちてきた衝撃をも思い出したのだろう。
「う…」
小さく呻いて、全身がガタガタと震え出す。
猛烈な吐き気に襲われ、身を捩るようにして枕に顔を突っ伏させた。
「銀次?」
尋常ではない様子に、蛮が瞳を厳しくさせた。
俯せる身体を、反転させ抱き起こし、自分の腕の中に抱き包む。
「ったく、言わんこっちゃねえ」
「ごめ…」
「テメーに怒ってんじゃねえよ。ほら、こっち向け」
「蛮ちゃん… 苦し…」
「ああ、気分悪ぃか? 吐くなら、トイレに運んでくぞ?」
「……だ、いじょう…ぶ…! すぐおさまる…と思う…から」
「やせ我慢すんじゃねえ」
言って、苦しげな背中に添えられた蛮の右手の中に、不思議な力が集まってくる。
銀次が、それを敏感に感じ取って瞳を震わせた。
「……あ」
「猿マワシと嬢ちゃんの魂の浄化は、ウサ耳の嬢ちゃんが”癒し”の力で行ったがよ。テメーは、雷帝の封印の関係もあって、オレがアスクレピオスの力を使ってやったからな。浄化という点に置いちゃ、今一不十分なんだろう。まあ、魔女の力なんてのは、そんな清らかなモンにゃ元々向かねえからな」
お前が今つらいのは、自分のせいだとでも言いたげな蛮の言葉に、銀次が嘔吐感と頭痛に堪えながら、それでも”それは、ちがう”と言いたげに懸命に首を横に振る。
「つれぇか?」
やさしく問われ、涙が滲む。
それが大きく見開いた銀次の瞳からぼろりと溢れ、伴って口から漏れそうになった泣き声を、何とか封じ込めようと銀次がきつく唇を噛み締める。
蛮が、それに深く眉間に皺を落とすと、涙に濡れている頬に手のひらを添えた。
「構やしねえ」
「ば…ん」
「構わねえ、誰も聞いてやしねえ。ここにゃ、オレしかいねえだろが」
「う……」
「オレにだったら、いいだろ? それとも、オレでも駄目だってか? あん?」
「蛮、ちゃん…」
「泣けよ」
「ば…」
「泣けよ、銀次」
「う…」


「う……ウワアアァアアァアア……ッ!!」


蛮の言葉に導かれるようにしてその唇から溢れ出たものは、泣き声というよりは叫びに近かった。
額を蛮の胸に押しつけるようにして、両腕の回して強くしがみつく。
銀次の肩が、大きく揺れた。
激しく全身を震わせて泣きじゃくる姿はひどく痛々しくて、それまでどれほどのことを銀次が1人で抱えて堪えてきたのか、どれほどのストレスとプレッシャーと苦痛とをその身に受けたのか、それをまざまざと蛮に思い知らせていた。
震える背中を抱き寄せながら、宥めるように撫でさすってやると、涙声が、嗚咽につまりながら、途切れ途切れに告白する。

「蛮ちゃ……ん! ば…んちゃ…ん! 蛮、ちゃん…蛮ちゃん……オレ……ほ…んとう…は…どうしていいか……わかんな…くて……」
「……ん?」
「士度に…マドカちゃんの…身代わりに……オレを…って………でも…オレは……本当は、そんなの…いやだって……バケモノの…肉体に使われて、力を…利用されんの…やだった…から。…けど…士度は、マドカちゃんのために……そうするより、仕方なくて………だからオレも…マドカちゃんのためなら、いいかなって……思っ……た…… でも、だったら……オレ、もう、蛮ちゃんに……会えないのかなあって……そう思ったら、つらかっ…た……! でも、それも、もう、よくわかんなくなって……」 
「ああ…」
「オレ、雷帝に……ナリたくなかった…!」
最後の一言は、掠れながらも悲鳴のようだった。
「自分の力が何かも…なんもワカってないまま…雷帝になって……力が戻んの、嫌だった…!」
「……そっか…」
「オレは、結局、自分で何も…選べてなくて、何も、出来なくて…」
絞り出すように苦しげに言う銀次に、その背中をさすってやりながら、蛮が静かに言う。

「それは、ちがうぜ? 銀次」

「え…?」
「確かに雷帝化したのは、猿マワシが誘発したがな。それを受け入れ、兜をその肉体から追い出したのは、テメエと雷帝の意志だ。猿マワシは、それを信じて全部の力をオメーに託したし、オメーはちゃんとそれに答えてやったんだよ。しっかり、テメエの役割を果たしてるじゃねえか。その証拠に、雷帝化しても力の暴走はなかったろ? オメーがその力を、自分でコントロールしてたからだ。ま、常日頃、雷帝にゃナるなナるなと、口を酸っぱくしてほざいているオレが言うことでもねえがな。―ナり方としちゃ、上出来だったぜ」
「蛮ちゃん…」
「なあ、銀次。兜の魂がテメーの身体に入ってきた時、すげえ不快感があったろ?」
「え…うん。すごく、気持ち悪かった」
「けど、同じようにテメーの中に在っても、雷帝はそうじゃねえだろ?」
「う、うん。そういえば」
「兜が異物なのに対し、雷帝はテメエの一部だからな」
「雷帝も…オレの一部…?」
「おうよ。オレは、ひっくるめて”テメエ”だと思ってんぜ?」
「蛮、ちゃん…」
「だからよ。そんな風に、オメーが嫌ってやるな」
「………」
「雷帝の力をコントロールすることを覚えろ、銀次。テメーにゃ、それが出来る。雷帝とテメーが完全に融合をはたせば、力のことで、もうあれこれと悩むこともねえだろ?」
やさしく諭すように言われ、銀次が、ゆっくりと蛮の胸から顔を上げる。
まだ止められない涙が、見開いた琥珀から、ぽろりと頬を伝い落ちる。
蛮が、さらにやさしい眼をした。
目の前の、その存在の全てを受容しようというような、そんな包み込むよ
うな深い紫紺で静かに見つめる。
「蛮ちゃん…」
「ん?」
「オレ、なんか、今、気持ちぐちゃぐちゃで…」
「ああ…」
「どう、答えていいか…わかんない…けど」
あまりに正直な言葉に、蛮が思わず笑みを漏らす。
「今すぐ考えろとは、言っちゃいねえぞ」
「うん…。でも。オレ、本当バカで、何も後先考えずに、いつもそん時の思いだけで行動しちゃうから。結局、空回りばっかで。蛮ちゃんみたいに、誰かを救ってあげることも出来なくて」

「アホ」

今度は、心底呆れるような声色で蛮が言った。
大袈裟なほど、両肩を落として深々と溜息をつく。

「テメーの目は、節穴か?」
「え?」
指先で、いきなり額を突っつかれ、銀次が驚いて瞳をぱちりとさせる。
「そのでっかい目は、ただのお飾りかって聞いてんだよ」
「え、えと…」
「夢の中で見たよな。兜の業から解き放たれたヤツらの中に、女郎蜘蛛のババアやねーちゃんらがいたろう? ヤツらは、もう闘うことはねえと言っていた。”人”として生きていくと―。いくらな、兜が絶えて、鬼里人の連中を生き返らせることが出来たにしてもだ。ヤツらの気持ちに変わりがなければ、戦争なんて終わる道理がねえ。戦いを終結に向かわせるための、一番厄介な部分がそこだ。”ずっと古くから続いてきた闘いだから、今更やめられねえ”、そう言っていたヤツらの気持ちを変えさせたのは、誰よ?」
「あ……」
「その上着は、なんでテメーのとこに帰ってきてる?」
銀次が着ているグリーンのジャケットの胸を手の甲でトンと叩き、蛮が笑む。
銀次が、しばしそれがどうしてだったか考え込むようにして、それからちょっと赤くなって、上目使いに蛮を見た。
頬に当たった、やわらかくて可愛い唇の感触を思い出し、思わずそのあたりを自分の手でさすってしまう。
「あれって…? 本当?」
「おう」
「蛮ちゃん、脚色してない?」
「してねえよ」
「オレのこと、からかってるとかじゃない?」
「どうせからかうんなら、もっと面白えもんを見せるぜ?」
にやりとされて、それって何だろう?とちょっと考えつつも、銀次が小さく笑みをこぼす。
「でも、そっか…。みんな、ワカってくれたんだ…。美隷さんも、あの子たちも」
「おうよ」
「よかった」
本気で胸を撫で下ろすように言う銀次に、蛮がその頭をくしゃくしゃっと乱暴に撫で、笑った。

「そういうのもな。テメーの”力”なんだよ。よーく覚えておきやがれ」







――――いつの間にか、夕暮れが近づき、やっと体調も心も落ち着いて。


それでもなんとなく、まだ身体を寄せていたくて。
ベッドに腰掛けたままの蛮の肩に、同じようにベッドから足を下ろして甘えるように凭れかかって、銀次が微笑みながら呟くように小さく言う。

「本当の強さのことも、闘いの結末も…。オレの力のことも。なんだか今は、まだ心の中でごちゃごちゃになってて……。うまく整理がつけられないけど……。でも、今は、今だけは―。オレ、もうそういうの、どうだっていい気がしてる―」
「ん…?」
「また、一緒にいられる。そのことが…こんなに嬉しい―」
大事そうにそうこぼして、蛮の肩の上に置いていた頭をゆっくり持ち上げる。
そして、間近に蛮を見つめて笑んだ。
「蛮ちゃんが今、ここにいてくれることが… すごく嬉しい――」
とろけそうな幸福げな笑みとともに、銀次が、フ…とやわらかく目を細める。
蛮がそれに笑みを返し、その頭にポンと手を置き、言った。
 
「いろいろ考えなけりゃなんねーことは… まあ、気長にやれや、銀次。
オレの隣でよ。一生かかって、のんびりやりゃあいい――」

銀次は、ひどく嬉しそうに、それに満面の笑みを浮かべ強く頷いた。

「うん!」





――そして”あれっ?”と、しばし、その言葉の意味を考えた後。

”蛮ちゃん。今、もしかしてオレ、プロポーズされたんでしょうか?”と、
タレてきょとんと返し。
蛮を真っ赤に憤慨させて、たくさん拳骨をくらってしまったけれど。










END





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