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10月17日(月) 夜

「ふぃ〜……」
 お湯につかって溜め息をもらす。
 四季書店から寄り道して香久山さんちに帰ると、ついに幼馴染たち(ひとりは偽者)が勢ぞろいで押しかけてきた。夜ごはんを終え、真理佳が倒れるほど苦労してお帰りいただいて。
「……ふぅ」
 溜め息セカンド。
 ……いよいよ、メインイベントのお時間です。
 そりゃぁ……慧のことは、好きだけど。
 生まれたときからずっとずっと傍らにあった姉。4年前離れ離れになったけど……また会えたら、あの頃よりずっと綺麗になっていた。
 来がけに、叔父から聞かれたことを思い出す。
『眼を閉じて、理想の女を思い浮かべてみろ』
 迷わずに慧のことを考えた。
『その女と母親と、どちらが美しい?』
 ……返事はできなかった。
「たくみー」
 脱衣所に続くガラス戸がちょっと開いて、慧が顔だけ出した。
「着替え、出しておいたからね」
「あ、うん。ありがとう」
 ちょっとどきどきしてしまう。昔はいっしょにお風呂したこともあったけど、さすがに今では照れるのです。
 しかし、こーいう場ではむしろ女の子のが開き直るらしい。
「入るね、拓海」
 ガラス戸が開いて、慧が浴室に入ってきた。
 腰まである、沙織譲りの赤い髪は後頭部でまとめている。胸元には左腕を渡して頂点を隠しているものの、姉たちどころか沙織を凌ぐ大きさは、腕の上と下からふくらみをむきだしていた。右手は両足の付け根に重なっているが、器用に(あるいはお行儀悪く)足でドアを閉じたものだから、見えちゃいけないところまで見えそうになってしまう。
 髪と同じくらいに、頬どころか全身を赤くしている慧は、ゆっくり近づいてきた。浴槽につかったまま後ずさる拓海だが、すぐに背中と後頭部が壁にあたる。
「けい、ちょっと……!?」
「そんなに引かないでほしいな。お風呂くらい、よく一緒してたでしょ?」
「昔と今とじゃ事情が違うでしょー!?」
 悲鳴を上げる。
 あの頃からずいぶん大きかった(実は、中学校手前でもご一緒したことがある)が、目算メートル超級にまで成長しているお胸。娘にいったい何食べさせたンですか、お義母さん……?
「ねえ、たくみ」
 いちど前髪をかき上げた慧は、両手を腰に当てて前かがみになった。沙織のよくやるお説教のポーズだが、無意識でしでかしたからだろう、大きなおっぱいが拓海の目前でぶるんっと揺れる。濁り湯でよかった。
「ほんとーに、イタリアに恋人とかいないんだよね?」
 おっぱいの先端には、やや大きい感のある乳輪が色づいていた。赤毛よりやや薄いピンクの乳輪とこちらも大きめサイズの乳首が、お胸が揺れるのに併せて動くものだから、拓海の意識はその辺に集中してしまう。
「いませんいません」
 姉は前髪をかき上げた。
「暗城さんは?」
 弟はまぶたを押さえる。
「彼女のお父さんと面識があるけど、それだけだよ」
「信じるよ? 拓海の云うことなら、何でも」
 責める色はない慧の視線だ。あんなことがあったせいで、理性か堪忍袋の緒がトンだらしい。シェリルと何かしたわけではないが、だからと云ってエリス絡みは慧相手にも話せることではない。
「信じてくれれば助かるし、慧になら殺されてもいいけど……」
 ちょっと落ちついてきた拓海は、浴槽の隅に移動する。
「さすがに、僕らのトシでこれはまずいンじゃないか?」
「何とでも云って。拓海とならいいもの」
 微笑んだ慧は浴槽のふちに左手をおいた。右手で爆乳を支えて、右膝が高く上がる。髪よりやや濃い赤の茂みとその奥を拓海に見せつけるように、ゆっくりと右足が濁り湯の中に降りたので思わず生唾を呑んだ。
「やんっ」
 慧は軽く笑って、左手で股間を押さえた。慌てて拓海は顔をそむけ、横眼で慧を見続けるが、その視線に気づいている慧は左足も高く上げる。身体全体が右に傾いて、浴槽のふちに左足が乗った。
 顔をそむけたままの拓海が、眼だけで様子をうかがうが、左足はそこから動かない。どきどきしながら視線をたどれば、左手の指先が慧自身の秘所を広げていた。
 髪よりなお赤い、あの頃でも見せあわなかった、大事なところ。
 拓海の顔と股間に血が急速移動する。見られたのを確認した慧はわずかに笑って、左足も濁り湯の中に降ろした。水面が波打ち、慧の分だけ上昇する。
「背中、いいよね」
「えっ……と?」
 拓海がどきどきしながらそちらを向くと、おおきなお尻がむきだしてあった。思わず圧倒されそうになったが、そのお尻がゆっくり濁り湯の中に沈み、慧の背中が拓海にもたれかかってくる。右肩を差し出すと慧の身体がそこにのしかかり、赤毛が拓海に触れた。
「ふぅ……」
 赤毛をアップにしているせいで、うなじが拓海の目の前にある。女の命とは云うが襟足の処理も万全で、首周りにはムダ毛の一本も見えなかった。紅潮している肩の向こうでは、大きすぎるおっぱいが濁り湯に浮いている。
 ……誘われてるよね、僕。
 思いあがりでもないように思え、拓海はそっと息を呑んだ。触れている背中はわずかに震えていて、拓海が右腕を動かすとますます赤くなって、だが体重をかけてくる。
 触ってもいいってこと……かな。
 右手の甲でそーっとお尻に触れてみる。
「ふっ……」
 低く声を上げた慧の首がはねた。ぷるぷるぷると震えながら、拓海の肩に後ろ頭を預けてくる。
 手の甲でお尻をなでまわすと切なそうに震える。背筋がぞくぞくしてきた拓海は、少し強めに手の甲を押しつければ、ふかふかのお尻が拓海の手を受け止めた。
 精神的にかなり追い詰められているのだが、それが声に出ないよう努力しながら、慧は少し笑った。
「なんだか、痴漢されてるみたいだね」
「ひと聞き悪いなぁ……」
 努力が通じず慧の声がわずかにうわずっていて、少しは感じてくれているのを察した拓海は、いちど右手を引いた。軽くこぶしをつくってなされるままになっていた慧は、突然手が引いたので、ちょっとだけ残念そうに息をつく。
 だが、名残惜しい安心はあっさりと打ち破られた。拓海の右手が返ると、指先、次いで掌が慧のお尻に帰ってくる。本格的に触りに来たと本能で感じ取った慧は、濁り湯の中で腰を浮かせ、拓海の手が動きやすいスペースを確保した。
 拓海の右手がうごめく。尻肉の柔らかさと弾力を楽しむように、慧のお尻をなで、揉み、さすり、こねる。強くしないのは拓海の気遣いだろうか。こうなることを4年どころか生まれてずっと望んでいた慧にしてみれば、やや物足りない感はあったが、いきなり豹変して襲われるのも……悪くはないけど、好ましくないね。うん。
 恋する乙女色に染まっている慧の頭の中身は把握できていないが、拓海もやや物足りなく感じながら、慧のお尻をなでていた。濁り湯なのと慧がこっちを見ていないのをいいことに、左手で、そそり立ったペニスをしごいている。慧のお尻、慧の身体を触っていると思うと、興奮が抑えられなかった。
 が、その手が止まる。
 右手の中指がお尻の谷間におさまって、ゆっくり前後に動いているところだった。お尻の穴に触れないくらいで引き返してはまた近づいてくる……というのを繰り返されて、そっちじゃないのに〜と身もだえしていた慧は、急に焦らされて軽く息をつく。休ませてくれるなら、今のうちに呼吸を整えないと。
「そうだよな……自分でしなくても、うん」
「……たくみ?」
 痴漢の名を呼ぶが、当人は何やらぶつぶつ呟いている。次の瞬間、拓海の左手が伸びてきて、慧の左手をつかんだ。痛いほどではないがやや強い握力で、慧の左手を拉致していく。
 背中に回った慧の手に、何かが触れた。
 熱くて硬くて脈打っているそれが男性自身だと気づくのに時間はいらなかった。拓海の左手が慧の左手ごとペニスを握り込み、そのままゆっくり上下し始める。右手も動きを再開して、改めてお尻をなでまわした。
「っく……大きいんだ。それに、すごく硬い……」
 熱に浮かされたような声。
 少しだけ慧の手を動かしていたが、そーっと左手を外しても慧の手はゆっくりペニスをしごき続けていた。慧にしてもらうのがこんなに気持ちいいとは思わず、拓海の右手にも力がこもる。
「やっ……ちょっと、強いよ、たくみ……」
「あ、ぁ、悪い……」
 口に出して文句を云われたので素直に謝り、拓海は両手を慧のお尻に向けた。天国な感触が掌にしっかりはっきり伝わってきて、拓海のペニスがさらに大きくなる、硬くなる。
「ぅわぁ……」
 感嘆の声をもらしながらも、慧は振り向くことはしない。
「こんなに、すごいんだ……? 拓海のしか知らないけど、こんなにすごいの他に知らないよ……」
「慧のお尻も、素敵だよ」
 耳元で囁くと、首筋まで赤くなった。赤毛の恋人は拓海に背を向けたまま、
「……でも、わたしの身体には、もっと素敵なところがあるよ?」
 自爆とも自慢ともとれるその発言が、何を指しているのか判らないような子供ではなかった。肩越しに見える、濁り湯に浮かぶ慧の爆乳。沙織より大きな、100センチを超えるふくらみを慧の右手が軽く持ち上げれば、紅い頂点がお湯から顔を出す。
 ……鼻血出そう。
 お尻をつかんでいた両手を離し、お湯の中をゆっくり移動する。察した慧の右手が自分のおっぱいを離せば、爆乳がお湯に浮かんだ。
 触られるという期待と恐怖に、慧の身体は無意識に硬くなる。更衣室で綾やきずなに触られたことはあるが、女同士のお遊びと大好きな男に触られるのとでは、露骨に心構えが違う。加えて、クロエとも面識があるせいで、こんなに大きいものを拓海が喜ぶのか自信がなかった――クロエのサイズがサイズなので。
 大きいおっぱいで、満足してくれるかな。
 大きすぎるって嫌がらないかな。
 大きくなりはじめた頃からずっと思い悩んでいたことは、どーやら杞憂で済んだようだが、拓海の手に触られると思うと、ついつい身体を硬くしてしまった。
「ったたたっ!? けい、痛い、痛い!」
 拓海のペニスを握っていたことも忘れていた。男の急所だというのに強く握られたモンだから、さすがに拓海でも悲鳴を上げてしまう。
「さすがに効いたよ……」
「あの……ごめん」
 手を離し、拓海に背を向けたまま小さくなる。思い詰めやすい性格なのは知っていたので、あの頃ハンがよくしていたように、拓海は頭をなでた。お湯に濡れた左手がゆるゆると赤毛をなでまわすと、慧は顔を上げる。
「……えへへ」
「うん」
 照れが先に出た。
 軽く笑いあって、濁り湯の中で身体をくねらせ、顔を向けあう。湯船はそれなりの大きさで、ふたりで入っていても不自由なかったのが幸いした。
「けい……」
「たくみ……」
 4年ぶりのキスを交わす。あの日は別離の、でも約束の。


※ エロシーンの公開は保留です。
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