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私釈三国志2周年企画 三國演技


1 角色扮演

F:……はい、遅れましたー。
三妹:遅い!
F:だから謝っただろ!
三妹:謝ってないでしょーが! アンタがやったのはただの事後報告よ!
F:ほほぅ。では事前に『遅れる』と連絡しておいたら、キサマは笑って許すと云うのか?
三妹:その場で怒鳴りつけるに決まってるじゃない。ボケてんの?
F:お前と千年つきあっておってはボケも始まるわ!
三妹:アンタのボケは先天性よ! アタシのせいにするンじゃない!
M:あー、ちーちゃんちーちゃん……ヒトのダンナと痴話げんかしないでくれる?
三妹:むっ……
F:その、殺意を孕んだ眼はやめろ。カタギの衆に向けていいモンじゃない。
三妹:アンタのヨメがカタギだったら、アタシはとっくにノーベル平和賞を両手の指ほどもらってあるわよ!
F:減らしてやろうか!?
M:だから、お兄ちゃんもちーちゃんも落ちつきなさい! まったく、ひとさまの前で……。
三妹:くっ……
F:あぁ、たびたび失礼しました……。えーっと
ヤスの妻:えーじろは相変わらずねぇ。
F:えーじろ呼ぶな。悪いね、休日にわざわざ来てもらって。
ヤスの妻:いいよ。日頃ヤスばっかりえーじろとお話してるから、ちょっと羨ましかったもの。呼んでくれて嬉しい。
F:だからえーじろは……
翡翠:はい師匠。弟子は素直に師匠と呼ぶっす。
F:……黙ってなさい、翡翠ちゃん。呼んでおいてアレだが。
三妹:でも、何でコイツまでいるわけ?
翡翠:呼ばれましたっす♪
F:呼びました。ちゃんとしたプレイヤーで身体の空いてたヒトが他にいなかったので、とりあえずだまして。
翡翠:だまされましたっす♪ ……あたし、だまされたっすか?
ヤスの妻:相変わらず足りない子だね。
翡翠:しみじみバカにされるのもアレっすけど……じゃぁ師匠のお相手云うのは、カラダのオハナシじゃないンすか?
F:ナニを期待している、高校生。お前に手を出す趣味はないと何度云ったら判るか。
翡翠:え〜、出してほしいっすよぉ、ししょおぉ〜。あたしがんばってお肌に磨きかけてきたっすから。ほーら、せっけんの香り、せっけんの香り。
ヤスの妻:翡翠ちゃん、えーじろに襲われたかったらリンゴの香りがいちばんよ。
F:はい、そこ! 無責任にけしかけない! そっちもメモを取るな!
三妹:取らなくてもそれくらいカラダで理解してるわよ!
F:お前は頼むから黙ってろ!
三妹:それがアタシにもの頼む態度か!?
翡翠:……じゃぁ、下着もしましまじゃダメっすか?
ヤスの妻:そうねぇ、何もはかないのがベストだけど……
F:アホの子にへんなこと教えちゃいけません!
翡翠:あー、そんなコト云っちゃダメっすよ、師匠。あたしは師匠のことを親と思っているっすから、その発言は自分をアホとののしって……
F:自分のバカさ加減は、腕見るたびに痛感しとる……。
M:……ひょっとして、お姉ちゃんって意外とマトモなのかしら。
F・三妹・ヤスの妻:それはない、それはない。
翡翠:だそーっす。

F:はい、オープニングジョークだけで体力と人生の半分を使い果たした気分ですが、諦めて『私釈三国志』2周年企画をおっぱじめます。
翡翠:台詞が非道いっすねー。
ヤスの妻:でも、そんな席に私たち集めてどうするの? ヤスじゃなくて。
F:たびたび云っている通り、僕が『私釈』をはじめたのは『恋姫』に影響されてのことですから。ただ、泰永ほか皆さんに指摘されている(注1)ように、その辺の方向性が瓦解しているのは事実。ここらで方向修正を……と思ったのに、コンシューマ版が発売延期ですからねェ。とりあえず、次善の策を弄することにしました。ちなみに、編集が面倒なので、以降丁寧語で喋らせていただきます。
三妹:うむ、苦しゅうないわ。
F:お前にだけは、オレに潜む雪男の本性マル出しで喋るから覚悟しとけ。
翡翠:羨ましいっす……
F:恋する乙女色に瞳を染めるな、翡翠ちゃん! えーっと、お題は『角色扮演遊技・三國志演技』で。
ヤスの妻:ろーるぷれいんぐげーむ……さんごくしえんぎ。
M:義の字が技になってるわよ?
F:その昔に、コーエーが出して失敗した三国志のTRPGですね。個人的にはTの字つけるのは気に入らんのですが。
ヤスの妻:しっぱい?
F:えーっと、まず、テーブルトークRPGについて……知らなそうなのはひとりだけみたいですね、この場では。
ヤスの妻:私だけ?
F:ですね。RPG……ロールプレイングゲームというのは、アメリカで開発されたゲーム形態です。ゲームマスターと呼ばれる司会進行役が、その場面での状況を説明して、それにプレイヤー(だいたい複数)がリアクションを伝えるもの。乱暴に云えばルールと調停役のあるごっこ遊びです。
三妹:乱暴すぎるわよ。
F:珍しく反省。事例を見ましょうか。

GM:君たちは旅をしていて、小さな村に辿りついた。日が暮れかけてきた今、酒場で休んでいる。そこに、がらの悪そうな連中が五、六人入ってきた。連中は酒場の看板娘にいやらしい言葉を投げかけ、困らせて楽しみ始める。
A:それはよくないなあ、よし、ちょっと注意してやろう。
B:よせよせ、そんなことして怪我でもしたら、ばかみたいじゃないか。無視してようぜ。
A:何を言うんだ。それでは正義の味方の名がすたる。
B:正義の味方を気取りたがっているのはお前だけだろ?
C:……。ねえ、看板娘って美人かな?
GM:美人だよ。
C:ごろつきの身なりはどんなふう?
GM:薄汚れた革鎧に、ショートソードだね。
B:盗賊っぽいじゃないか。盗賊ギルドは怖いんだぞ。
C:わたしにだって盗賊ギルドの後ろ盾はある(笑)。こいつら、大した連中じゃなさそうだし、"正義の味方"しよう。
 『おい、兄ちゃんたち、人の迷惑はやめておけ』
A:それは俺の台詞だぞ!
B:僕は他人のふりしてるからね。
GM:でも、同じテーブルについてる以上、向こうはそう思ってくれないんじゃないかなあ(笑)。『何だ、俺たちブランドー一家に文句をつけるとはいい度胸じゃねえか』ごろつきのなかでもとくに悪そうなのがすごんでみせる。
B:あ〜あ、もめごとになっちまった。
A:望むところさ。

F:……とまぁこんな具合に、ゲームマスターが状況を説明し、プレイヤーはその中でどういう行動を取るのか考えて、それを申告していく。登場人物となって、物語を自ら進めていくゲームですね。
三妹:補足。この『ブランドー一家』を最初に見たのがいつか……というか何かで、そのひとのRPG歴はだいたい判る(注2)わ。上にTの字つける年代だとあんまり馴染みはないンじゃないかしら。
F:"コレ"がテーブルトークRPGと呼ばれるようになったのは、コンピュータRPGが普及しだしてから、区別をつけるためだからな。実際に、RPGの本場ではテーブルトークと云っても通用しない。そんな事情で、上の『ブランドー一家』の引用元は記載しない……あ、おいてけボリでしたか。
ヤスの妻:ううん、何をするのかはだいたい判った。つまり、三国志の武将になって三国志をするのよね?
F:それもできますが、ちょっと違います。このゲームでプレイヤーが演じるのは、だいたい市井の名もなき人です。
ヤスの妻:?
F:たとえば、賊をこらしめて歩く武人、あるいは知恵をめぐらせてトラブルを解消する文人、街から街を渡り歩く商人、表に出ない間諜……などなど、史書に名を残すことなく歴史の荒波の中を乗り越えていった、民間のヒーローを演じるンです。水滸伝の方が判りやすいかもしれませんね。
ヤスの妻:ふむー。
F:ただ、武将でもできます。その辺のデータも収録されていますから。
ヤスの妻:じゃぁ私、孔明さんやるー。
F・三妹:そんな怖いモン(注3)ぜったいダメに決まってンでしょーがっ!
M:……凄い反応ね。
翡翠:センセのキレ具合は並じゃねーっすからねぇ。
M:……いや、そうじゃなくて。
翡翠:?
F:はっきり申し上げまして、コーエー(当時は光栄)が失敗したのは、その辺が原因です。もともとそーいう市井のヒーロー向けでのシステムだったのに、従来の武将に当てはめたり、合戦だの領国経営だのをつけたしていったせいで、拡大する状況に最初のルールがついていけなくなったンですよ。ために、簡易領国経営ルールまで掲載したパワーアップブックまで出して、頓挫しています。出ると予告されていた『角色扮演遊技・平家物語』も出ませんでした(注4)し。
三妹:予告じゃないでしょ、アレは。
F:……(あ、しまった)
三妹:? 何よ?
F:いや……(←本気で失敗した、という表情)
三妹:……(←こっそりメモを書き始める)
F:まぁ、ともかく。RPGの、実際のゲーム記録をこーいう形式に書き起こしたものをリプレイと呼びますが、2周年企画ということで三国志RPGのリプレイを公開しようかな、と。
ヤスの妻:私たちがお相手な理由は?
F:アキラや泰永相手では、できないこともあるので……としておきましょうか。
翡翠:師匠はハラの底で何考えてるか判んないっすからねー……と。
三妹:ん?
ヤスの妻:ふーん……まぁ、深くはツッコまないでおこうかな。
F:助かります。
M:でも、そんなのが2周年企画でいいの? ちゃんとした歴史ものじゃ、……なくて?
F:それはあとのお楽しみで……ふふふ(注5)
三妹:はい、全員! この笑い方ってことは、コイツ何か企んでるわよ!
F:オレが何の準備もせずに、お前の前に来ると思うか!?
M:……ホントに、いい加減にしてくれないかしら。
F:ええぃ、このアマ……。ともあれ、ここまでの説明だけでも割と時間を喰っているので、ゲームに入りましょうか。まずはキャラクター作成からです。
4人:はーい。(注6)



注1 メールでも「『恋姫』関係ないですよね」みたいなご意見が多い。反省してます。
注2 僕の場合だと、社会思想社の「T&Tがよくわかる本(清松みゆき著)」が初見。だいたい20年というところ。
注3 基本システム記載の孔明さんは「知力100、交渉・指揮98、威圧・士気高揚・雄弁・礼儀作法・裏技・説得・挑発・内政・故事歴史・計略・情報分析・天文地理・流言飛語・引率・陣形・夜襲各5段」という、ほとんどバケモノに近いキャラクターに仕上がっている。
注4 「角色扮演遊技・ウィニングポスト」も出なかった。……そっちは出られても買ったか判らんが。
注5 三妹→翡翠→ヤスの妻→Mの順に、こっそりメモが渡されているのには気づいています。
注6 後で確認したメモの内容。
「パワーアップブックの内容を知っているとまずいネタみたい」
 互いに性格を把握している同士、しっかり表情で読まれたようです。ふふふ。

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