ゲンゴロウ・ミズスマシの仲間

( Dytiscidae,Noteridae,Gyrinidae,Haliplidae )


 陸上生活をするオサムシやゴミムシなどの陸生オサムシ類(Geadephaga)に対し、水生オサムシ類(Hydradephaga)と呼ばれ、甲虫の中で最も水生生活に適した一群である。ゲンゴロウの仲間は、ごくわずかな例外を除き、体の概形は楕円形あるいは卵形を基調とし、頭部〜腹部にかけてほとんど段差のない流線形で水の抵抗を最も抑えた形状である。前脚と中脚は比較的短いが、後脚は櫂状によく発達し、遊泳毛と呼ばれる多くの長毛を密生する。潜水時には前翅と腹部の間に空気を溜め込むアクアラング式の呼吸法を行うことが知られている。
 日本産は大きく、ゲンゴロウ科(Dytiscidae)、コツブゲンゴロウ科(Noteridae)、ムカシゲンゴロウ科(Phreatodytidae)の3科に分けられ、前二者の種が県内に分布する。またゲンゴロウ科は、ゲンゴロウ亜科(Dytiscinae)、ヒメゲンゴロウ亜科(Colymbetinae)、ケシゲンゴロウ亜科(Hydroporinae)、ツブゲンゴロウ亜科(Laccophilinae)の4亜科に分けられるが、いずれの亜科の種も県内に分布している。ゲンゴロウ科は幼虫成虫共に例外なく水中生活で、鋭く発達した大顎を持ち、小昆虫などを捕食するほか、カエルや小魚までも狩ってしまう 貪欲な狩人である。陸上歩行は苦手だが、成虫が燈火に飛来する種もある。コツブゲンゴロウ科も幼虫成虫共に例外なく水中生活であるが、多くは食植性もしくは雑食性で、稀に捕食性の種がある。陸上・水底を問わず、6本の脚を用いて歩行することがある。
 ミズスマシ科(Gyrinidae)はゲンゴロウ類とは逆に前脚と中脚が発達し、後脚は短い。しかしその後脚をスクリューのように回転させて、水面を機敏に遊泳する。前脚は、静止時に水草などにつかまるために発達したものと考えられている。複眼は左右それぞれが上下に分かれており、水面上と水中の両方を同時に見られるようになっている。幼虫成虫共に捕食性で、成虫は主に水面上に落下した昆虫を狩る。
 一方、コガシラミズムシ科(Haliplidae)は食肉亜目に分類されてはいるが、完全な食植性の一群で、糸状の藻類を食べている。体はかなり丸みの強い卵形で、和名のとおり頭部が小さく、複眼は大きい。一般に泳ぎは得意でなく、水草上や水底を歩くように移動する。全世界で4属約200種、日本産は2属8種が知られる。


現在日本で土着が確認されているゲンゴロウ類は132種、ミズスマシ類は16種、コガシラミズムシ類が8種。
そのうち下記のゲンゴロウ類33種、ミズスマシ類5種、コガシラミズムシ類5種が千葉県で記録されている。

種類 保護区分
千葉県 環境省
ゲンゴロウ科 (Dytiscidae) 18属33種
ゲンゴロウ亜科 (Dytiscinae) 5属10種
シャープゲンゴロウモドキ Dytiscus sharpi  Wehncks, 1875 CR+EN
クロゲンゴロウ Cybister brevis  Aube, 1838
ゲンゴロウ Cybister japonicus  Sharp, 1873 NT
コガタノゲンゴロウ Cybister tripunctatus orientalis  Gschwendtner, 1931 CR+EN
マルガタゲンゴロウ Graphoderes adamsi   (Clark, 1864)
ハイイロゲンゴロウ Eretes sticticus  (Linnaeus, 1767)
シマゲンゴロウ Hydaticus bowringi  Clark, 1864
オオイチモンジシマゲンゴロウ Hydaticus pacifficus conspersus  Regimbart, 1899
コシマゲンゴロウ Hydaticus grammicus  (Germer, 1830)
ウスイロシマゲンゴロウ Hydaticus rhantoides  Sharp, 1882
ヒメゲンゴロウ亜科 (Colymbetinae) 5属11種
ヒメゲンゴロウ Rhantus suturalis  (Macleay, 1825)
マメゲンゴロウ Agabus japonicus  Sharp, 1873
クロズマメゲンゴロウ Agabus conspicuus  Sharp, 1873
コクロマメゲンゴロウ Agabus insolitus  Sharp, 1873
チャイロマメゲンゴロウ Agabus browni  Kamiya, 1934
セスジゲンゴロウ Copelatus japonicus  Sharp, 1873
トダセスジゲンゴロウ Copelatus hasegawai  M.Sato, 1988 NT
ホソセスジゲンゴロウ Copelatus weymarni  Balfour-Brown, 1946
キベリクロヒメゲンゴロウ Ilybius apicalis  Sharp, 1873
モンキマメゲンゴロウ Platambus pictipennis  (Sharp, 1873)
サワダマメゲンゴロウ Platambus sawadai  (Kamiya, 1932)
ケシゲンゴロウ亜科 (Hydroporinae) 5属6種
ケシゲンゴロウ Hyphydrus japonics  Sharp, 1873
ヒメケシゲンゴロウ Hyphydrus laeviventris  Sharp, 1882
キボシケシゲンゴロウ Allopachria flavomaculatus  (Kamiya, 1938)
シマケシゲンゴロウ Coelambus chinensis  (Sharap, 1882)
チビゲンゴロウ Guignotus japonicus  (Sharp, 1873)
コマルケシゲンゴロウ Hydrovatus acuminatus  Motschulsky, 1859
ツブゲンゴロウ亜科 (Laccophilinae) 3属6種
ツブゲンゴロウ Laccophilus difficilis  Sharp, 1873
コウベツブゲンゴロウ Laccophilus kobensis  Sharp, 1873
ルイスツブゲンゴロウ Laccophilus lewisius  Sharp, 1873
シャープツブゲンゴロウ Laccophilus sharpi  Reginbart, 1889
キボシツブゲンゴロウ Japanolaccphilus nipponensis  (Kamiya, 1938)
チャイロチビゲンゴロウ Liodessus megacephalus  (Gschwendtner, 1931)
コツブゲンゴロウ科 (Noteridae) 3属3種
コツブゲンゴロウ Noterus japonicus  Sharp, 1873
ムツボシツヤコツブゲンゴロウ Canthydrus politus  (Sharp, 1873)
キボシチビコツブゲンゴロウ Neohydrocoptus bivittis  (Motschulsky, 1859)
ミズスマシ科 (Gyrinidae) 3属5種
ミズスマシ Gyrinus japonicus  Sharap, 1873
ヒメミズスマシ Gyrinus gestroi  Regimbart, 1883
コミズスマシ Gyrinus curtus  Motsculsky, 1866
オオミズスマシ Dineutus orientalis  (Modeer, 1776)
コオナガミズスマシ Orectochilus punctipennis  Sharp, 1884
コガシラミズムシ科 (Haliplidae) 2属(2亜属)5種
クビボソコガシラミズムシ Haliplus (Haliplus) japonicus  Sharp, 1873
キイロコガシラミズムシ Haliplus (Liaphlis) eximius  Clark, 1863
マダラコガシラミズムシ Haliplus (Liaphlis) sharpi  Wehncke, 1880
カミヤコガシラミズムシ Haliplus (Liaphlis) kamiyai  Nakane, 1963
コガシラミズムシ Peltodytes intermedius  (Sharp, 1884)
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