ムラサキシジミ

紫蜆蝶 (シジミチョウ科)


2002/03/26 13:35 山武郡大網白里町金谷郷 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 中型~やや大型のシジミチョウ。冬の暖かい日に雑木林を散歩していると、足元を忙しそうに横切る青い小さなチョウに驚かされることがある。あっという間に飛び去ってしまうのでじっくり観察することすらできないが、ほとんどの場合は本種の♀である。
 写真は、千葉市緑区で3月下旬の正午過ぎ、林縁の陽だまりで下草にとまって日光浴する越冬明けの♀である。性差は斑紋に表れ、♂は翅表の青い部分が♀より広いので、翅さえ広げれば一目瞭然だが、翅を閉じたままだとちょっと難しい。ムラサキツバメに似るが、これは後翅に尾状突起をもち、本種のように前翅の先端が尖らないので簡単に区別できる。また、小型の♀はルーミスシジミに似るが、本種は裏面の地色がこれより褐色味を帯びる。
 一般に年に3回~4回世代交代し、シーズン最初の成虫は5月中旬ごろ現れる。県内では11月上旬 まで活動しているようだが、数が増えるのは夏の終わりから秋にかけてである。飛翔はかなり敏速だが、あまり長い間飛び続けることはなく、すぐに付近の草上などにとまる。越冬前後を除き花を訪れることはほとんどなく、またその時期には地上で吸水することもある。これ以外の時期に何を食餌としているのかはっきりしていない。成虫の寿命は結構長くて2ヶ月以上にも及ぶため、第2化以降の時期には新鮮な個体とかなりくたびれた個体が混じって飛んでいることもある。♂は日中、樹上の高い場所にいることが多いので見かけることは少ない。



ムラサキシジミ 原名亜種 (シジミチョウ科 ミドリシジミ亜科 ムラサキシジミ族)
Narathura japonica japonica  (Murray, 1875)
分布 国内: 本州(関東以西)、四国、九州、南西諸島。平地~山地に普通。
県内: 一部の市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。
国外: 朝鮮半島南部と台湾にのみ分布する。原名亜種は日本産をさし、本亜種は日本固有。
変異 形態: 若干の地域差が知られるが、国内での亜種区分は認められていない。翅裏の色調と斑紋に個体差がある。
季節: 知られていない。
性差: 異型。♀は翅表の黒褐色部が♂より広い。
生態 環境: 主に食樹の多い樹林(照葉樹林)や雑木林の林縁。社寺境内などにも棲息することがある。
発生: 多化性通常年3回程度。寒冷地で2回~3回、九州で3回~4回、南西諸島では5回~6回と考えられているが、南西諸島では周年経過ははっきりしない点がある。個体数は春には少なく、晩夏から秋に増加する。
越冬: 成虫(♂♀)。単独もしくは3頭~5頭程度の小集団で、常緑樹の葉上や地上の枯葉の隙間などにいる。越冬中でも暖かい日には活動することがある。
行動: 昼行性。飛翔は敏速だが長い間飛び続けることはなく、すぐに下草や樹上にとまる。夏季の日差しの強い時間帯には下草上などで翅を開いて休息していることが多い。主として夕方に活動し、活発に樹上を飛翔する。成虫の寿命は比較的長く、2ヶ月を超えることがある。
食性 幼虫: 食植性/新芽若葉ブナ科常緑樹(カシ類)のアカガシアラカシシラカシが主。他にはウラジロガシ、スダジイ、シリブカガシなど。それらの少ない地域や端境期にはコナラやクヌギなどのブナ科落葉樹(ナラ類)も食べる。
成虫: 食植性/花蜜。越冬前後には強い訪花性を示すが、それ以外の時期に花を訪れることは稀。この時期の食餌ははっきりしない。越冬後の個体は地上で吸水することもある。
類似種: ムラサキツバメと似るが、一般に本種のほうが小型で翅形が相違し、♀はルーミスシジミと似るが翅 裏の色調が相違する。
保 護: 群馬:NT
その他: 照葉樹林さえ残っていれば都市近郊でも棲息する。ただ、環境の変遷や種の内在する消長のサイクルによって不安定なことが多いようだ。
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: ヤドリバエ科のParadrino longicornis Shima、Senometopia prima (Baranov)が知られる。

メイン