ベニシジミ

紅蜆蝶 (シジミチョウ科)


2002/5/25 12:35 袖ヶ浦市吉野田 / NIKON F100 + AF MicroNikkor ED200mm F4(IF) /Kodak Kodachrome PKR64

 野原に春を告げるやや小型のシジミチョウ。黒褐色の地色の中の紅色がとっても鮮やか。地域によっては後翅の水色斑がない個体もいる。食草が生えている場所であれば、たいていどこでもお目にかかることができ、ヤマトシジミに混じって飛んでいることも多い。ちなみに食草のギシギシやスイバは、俗に「スカンポ」と呼ばれるタデ科雑草の代表格。
 写真は、袖ケ浦市吉野田で5月下旬の午前中、日当たりのよい野原で翅を半開して日光浴する短日型の♂である。長日型は短日型より翅表の黒色鱗が発達しているため全体に黒ずんでいるので簡単に見分けられる。両型を通じて♀は♂より翅が全体的に丸みを帯びるが、性差は斑紋に表れないので区別は慣れないと難しい。
 足元を忙しそうに飛び回るが、あまり長く飛び続けることはなく、すぐに草上や地面に翅を半開きにしてとまる。長日型の♂は自分の縄張りに入った他の♂を追いかける習性を持つので、夏になると♂同士がくるくると回りながらもつれ合うように飛ぶ姿を見かけることがある。見かけによらず結構気の強いチョウなのかもしれない。ちなみに英語圏では、その色合いからSmall Copper(小さな銅貨)と呼ばれている。



ベニシジミ 日本亜種 (シジミチョウ科 ベニシジミ亜科)
Lycaena phleas daimio (Matsumura, 1919)
分布 国内: 日本本土全域。屋久島以北のほぼ全ての周辺島嶼。
県内: 平地~山地に普通。市街地を含めほぼ全域に棲息する。
国外: アフリカ北部、欧州全域~中国大陸、極東、朝鮮半島、北米大陸東部に分布する。日本産亜種の標式産地は「日本」とされるのみで詳細不明。
変異 形態: 国内での地理的変異は知られていないが、後翅表亜外縁の水色斑列を欠く個体が知られる。
季節: 明瞭。短日(低温)型(春秋)と長日(高温)型(夏)が知られる。
性差: ほぼ同型。斑紋に差はないが、♀は♂より大型で、翅形が丸みを帯びる。
生態 環境: 食草の多く生育する日当りのよい草原や堤防、田畑周辺、路傍など。
発生: 多化性通常年4回5回 。寒冷地や山地では2回~3回、平地や暖地では5回~6回。
越冬: 幼虫(齢数不定)。幼虫は秋に気温が下がると食草を下り、地上の落ち葉の隙間や石の下、食草の根元付近などで越冬するが、冬でも暖かい日には食草にのぼり、摂食する。
行動: 昼行性。飛翔は敏速だが長く飛び続けることはなく、すぐに翅を半開してとまる。長日型の♂は日中の正午前後に梢の上などで占有行動を示し、領域内に侵入した他の♂を激しく追飛 したり、ミドリシジミ族のような「卍ともえ飛翔」をすることが知られる。♂は♀を見かけると執拗に追い続けて求愛し、♀は地上を歩行したり短い距離を飛んだりしてこれをかわそうとする。交尾は茂みの中で行われることが多く、普通種でありながら見かけることは少ない。葉にとまった♀は後ずさりしながら食草に潜り込み、そのままの姿勢で葉柄や茎などに1卵ずつ産卵する。
食性 幼虫: 食植性/タデ科スイバギシギシが主。他にヒメスイバやノダイオウ、エゾノギシギシなども知られる。
成虫: 食植性/花蜜。訪花性は強く、タンポポ類、ナズナ、ハルジオン、ヒメジョオン、シロツメクサ、オカトラノオ、セイタカアワダチソウ、ツルボ、キク類など多くの花で吸蜜する。
類似種:
保 護: 指定されていない。
その他: もっとも普通に見かけるシジミチョウのひとつで、個体数も多い。
天敵 捕獲: 幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。
寄生: ヤドリバエ科のサンセイハリバエ(Aplomyia confinis (Fallen))、カイコノクロウジバエ(Pales pavida (Meigen))、ヒメバチ科ウスマルヒメバチ亜科のTeleutaea corniculata Momoi, 1978、ヒメバチ亜科のアカシジミヒメバチ(Anisobas diminutus (Uchida, 1926))が知られる。

メイン