お茶
寿司の材料にはのり、すし米、わさび、しょうが、お茶があるすし屋のお茶汲みは三年修行しなくてはいけないと昔から言われてきている。
親方が「あがりだよ」と、云いつけるときは、お客さまの、すしたべるのが終わりだよ」
と云う合言葉である。「お客さま、お帰りだよ」「もう、たべるのは済んだ」になる。
お変わりの二杯目のお茶を持参いたせの意味にもなる。
知識
1、すしの肴のあぶらというものは舌先に必ず残る。そこで次の味覚を得るのに、
濃くて熱い茶をすこしづつ飲んで消そうというのである。
舌先にあぶら気が残る、それを消す茶も熱いのが必要のために湯のみ茶碗は大きくて厚く、
熱いのが手に持っても外に伝わってこないので、二重の用を足している。
2、お茶は熱くてなくてはいけない。店によって気取って薄手の茶碗を使って熱くて手がつけられない。
これはすし屋としては失格である。
3 鼻で香りをかいただけで静岡の茶所の老主人はこの茶の木のあった近くに梅の木がある、桜の木がある、
と臭覚の発達ですぐ判ると云っている。茶は敏感に移り香を吸収するものだそうだ。
4、 むかし江戸城にお茶汲坊主という、大名などにお茶を接待する役の男は、みんな頭をそって坊主頭であった。
茶男だけが坊主頭かと云うと、茶というものは脂気を嫌う。
茶汲男がまげ(びんづけ油)を結っているとちょいと、指が頭の毛にふれる、それを知らぬまま茶器をいじる、
そうすると汲んだ茶に脂気がうつるということになる。
だからお茶汲男は坊主頭にしているのである。
5、 すし屋のお茶は、色と香と味の三つが揃わねばならない。お茶自身から出るなんとも云えぬ甘味が、
すしの味をを傷をつけるものである。
6、 それほど茶というものは、味に関連が深い。そこですし屋ではクセのないものを使うのが
一番安全いうことから静岡地方のお茶で、粉茶を多く使う。粉茶は葉茶より早く、茶自身の香と渋
みを出すからである。
7、 すし屋のお茶汲みは三年修行しなくてはいけないと云うほどに、むずかしいものである。
参考文献「すし物語」宮尾しげお著
寿司だねの知恵1 鹿児島江戸寿司へようこそ 寿司だねの知恵5