江戸川区立宇喜田小学校
川島真紀雄 制作:10/09/2000
絵画,彫刻,工芸品などの美術品を収蔵展示する公共的施設としての美術館(art
museum) は,より広く文化遺産一般を収蔵する博物館の1種である。用語の上では,元来ギリシャ神話にいう詩・音楽など9つの学芸を司るムーサ(英語ではMuse)の神殿を指す。
ルネサンス期になると,古典復興と人文主義の高揚,あいつぐ史跡発掘の影響のなか,巨大な財と権力を手にした王侯貴族や教皇らは,パトロンとしての学問芸術の保護に努めるかたわら,宮殿や邸宅内に莫大な私的コレクションを形成するようになる。王候貴族の私的コレクションが広く公衆に公開されるのには,18世紀における社会構造の変化や文化的な諸条件の変容,すなわち新興ブルジョワジーの台頭,考古学・歴史学などの人文科学の発達,芸術概念の確率と芸術の文化的重要性の認識,そして何よりもコレクション公開の中に社会の「進歩」に貢献しうる教育的・道徳的意義を見いだす啓蒙思想の普及が必要であった。
この点を最も明確に示すのは,革命によって1793年にルーブル美術館の開館を実現したフランスである。国民公会が王室コレクションをルーブル宮殿に集め,それを国民のものとして公開したのは,啓蒙思想と革命勝利のデモンストレーションでもあった。
啓蒙と革命の世紀を通じて,過去の歴史は国家と文明の財産目録の対象となったが,美術館は,そこに集う過去の文化遺産によって,芸術の歴史を跡づけ趣味の規範を提供すると同時に,国家の記憶を可視的に配置し,国民文化を賞揚する政治的機能をも担った。こうして18世紀末から19世紀前半に「美の殿堂」としての美術館像が確立する。
現存する美術家の作品を集めて広く観衆に公開される公式の展覧会(art exhibition)はフランスの王立アカデミー設立後に始まる。第1回展は1667年に開かれたが,定着するのは18世紀半ば以降で,ルーブル美術館の「方形の間」でほぼ2年ごとに定期的に開催されたので,「サロン」と通称された。
他方,19世紀中頃から保守化するサロンの審査制度やアカデミーの権威に反発する形で,個展やグループ展という新しい展覧会形式が発生してくる。1884年にスーラらによって組織された無審査・自由出品制のアンデパンダン展は,印象派以後の世代の実験と示威活動の舞台として,1903年に創立されたサロン・ドートンヌと共に,新印象主義,フォービズム,キュビスムなど,19世紀末から今世紀初頭の前衛芸術運動の展開に大きく貢献した。展覧会は美術館にもまして美術を近代社会に媒介していく枠組として機能し,美術批評の発達をも促した。
第二次大戦後から今日まで美術館はその収集内容や地域性に応じていっそう多様化・専門家を呈しているが,一方では美術館をその1部に組み込んだパリのポンピドゥ・センター(1977年開館)や,美術から建築,デザイン,写真に及ぶ19世紀の文化全体を包括的に扱うオルセー美術館(1986年開館)のように,多領域にわたる収集・展示活動を行う機関も現れている。今日では,事業面でも収集・保存,展示,研究,普及といった基本活動に加え,専門家や大衆に各種の情報やサービスを提供する社会教育機関として,また地域の芸術センターとして文化創造に貢献することが要請されている。『芸術学ハンドブック』勁草書房
1989年
新小学校学習指導要領によると,第1章総則 1教育課程編成の一般方針では,「各学校においては,法令及びこの章以下に示すところに従い,●児童の人間として調和のとれた育成を目指し,●地域や学校の実態及び児童の心身の発達段階や特性を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとする。
学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,●児童に生きる力をはぐくむことを目指し,●創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する中で,●自ら学び自ら考える力の育成を図るとともに,●基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り,●個性を生かす教育の充実に努めなければならない。」と記されている。
1)人間として調和のとれた育成を目指す。
(表現力は体験として,個人内の知識と心と技術などを統合する)=全人的発達
2)課題に取り組み,生きる力をはぐくむことを目指す。
(自分の考えや思いを的確に表現する力,問題を発見し解決する能力を育成し,創造性の基礎を培い、社会の変化に主体的に対応し行動できるようにすることを学ぶ)=創造的課題解決力
3)創意工夫を生かし特色ある教育活動の展開を目指す。
(地域や学校文化の特性を紹介する)=個々の学校文化の特色
4)基礎的・基本的な内容の定着と,個性を生かす教育の成果を発表する。=個性の教育
(児童の発達段階や特性を十分考慮した作品の制作) 「教育の目的は,人間の個性の発達を助長するとともに,こうして教育された個性を,その個人の所属する社会集団の有機的統一と調和させることにある。」 ハーバート・リードEducation
Through Art 1943
5)日常の教科学習の統合として表現活動を目指す。
(各教科等で得た知識・技能等が表現や鑑賞の活動において生かされ,総合的に働くような,横断的・総合的な学習を目指す。)=知の総合化
6)児童文化の展示と擁護 (児童画と同じく,児童作品は未発達な大人の表現ではない。その時期特有の児童文化の普及を目指し,大人の真似ではなく,その年齢でしかできない児童の世界を具現させる。) 「子ども自身に成長させ,発展させ,成熟させよ」フランツ・チゼック(Franz
Cizek 1865-1946)=児童文化の紹介
7)一人一人の児童理解の研究と示唆
(児童作品は,その児童の現在の興味や関心,欲求や感情など,広く人格そのものが投影されたものである。作品や活動を通して個々の児童のよさや叫びを捉える。=児童理解
8)多様な芸術の紹介と鑑賞の指導(文化センター) 見ることによって制作活動を呼び起こし,生涯を通じて芸術に親しみ,表現する喜びを 味あわせる。=鑑賞教育
<注釈> 《整理番号》及び[校内展覧会]は筆者が加えています。
1.ねらい
(1)児童の調和のとれた育成を目指し,特色ある教育活動を展開する。
(2)個性を生かすと共に,日常の学習成果を総合的に発展させて発表しあう。
(3)作品を正しく鑑賞する能力と態度を養い,合わせて豊かな情操を育てる。
(4)望ましい集団活動・共同製作など通して,分担・協力などの社会的態度や美的実践力を養う。
(5)家庭や地域社会と交流して,学校教育の理解と協力を得る。
《参考:図画工作科のねらい》 表現及び鑑賞の活動を通して,つくりだす喜びを味わうようにするとともに造形的な創造活動の基礎的な能力を育て,豊かな情操を養う。
1)学習指導要領〈第1章 総則〉より
《1》児童の人間として調和のとれた育成を目指し,地域や学校の実態及び児童の心身の発達段階や特性を十分考慮して,適切な教育課程[校内展覧会]を編成するものとする。
《2》学校の教育活動[校内展覧会]を進めるに当たっては,各学校において,児童に生きる力をはぐくむことを目指し,創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する中で,自ら学び自ら考える力の育成を図るとともに,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。
2)学習指導要領 第2 内容等の取扱いに関する共通的事項より
《3》学校において特に必要がある場合には,第2章以下に示していない内容[校内展覧会]を加えて指導することもできるが,その場合には,第2章以下に示す各教科,道
徳,特別活動及び各学年の目標や内容の趣旨を逸脱したり,児童の負担過重となったりすることのないようにしなければならない。
《4》第2章以下に示す各教科,道徳,特別活動及び各学年の内容に掲げる事項の順序は,特に示す場合を除き,指導の順序を示すものではないので,学校[校内展覧会]においては,その取扱いについて適切な工夫を加えるものとする。
3)総合的な学習の時間の取扱いより
《7》総合的な学習の時間[校内展覧会]においては,各学校は,地域や学校,児童の実態等に応じて,横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする。
《8》総合的な学習の時間[校内展覧会]においては,次のようなねらいをもって指導を行うものとする。
(1) 自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。
(2) 学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること。
《9》各学校[校内展覧会]においては,2に示すねらいを踏まえ,例えば国際理解,情報,環
境,福祉・健康などの横断的・総合的な課題,児童の興味・関心に基づく課 題,地域や学校の特色に応じた課題などについて,学校の実態に応じた学習活動を行うものとする。
《10》各学校における総合的な学習の時間[校内展覧会]の名称については,各学校において適切に定めるものとする。
《11》総合的な学習の時間の学習活動[校内展覧会]を行うに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(1) 自然体験やボランティア活動などの社会体験,観察・実験,見学や調査,発表や討論,ものづくりや生産活動など体験的な学習,問題解決的な学習を積極的に取り入れること。
(2) グループ学習や異年齢集団による学習などの多様な学習形態,地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となって指導に当たるなどの指導体制,地域の教材や学習環境の積極的な活用などについて工夫すること。
(3) 国際理解に関する学習の一環としての外国語会話等を行うときは,学校の実態等に応じ,児童が外国語に触れたり,外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習が行われるようにすること。
4)授業時数等の取扱いより
《12》各教科等や学習活動の特質[校内展覧会]に応じ効果的な場合には,これらの授業を特定の期間に行うことができる。なお,給食,休
憩などの時間については,学校において工夫を加え,適切に定めるものとする。
《13》特別活動の授業のうち,児童会活動,クラブ活動及び学校行事[校内展覧会]については,それらの内容に応じ,年間,学期ごと,月ごとなどに適切な授業時数を充てるものとする。
《14》各学校においては,地域や学校及び児童の実態,各教科等や学習活動[校内展覧会]の特質等に応じて,創意工夫を生かし時間割を弾力的に編成することに配慮するものとする。
5)指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項より
《15》各学校においては,次の事項に配慮しながら,学校の創意工夫を生かし,全体として,調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。
(1) 各教科等及び各学年相互間の関連を図り,系統的,発展的な指導[校内展覧会]ができるようにすること。
(2) 各教科[校内展覧会]の各学年の指導内容については,そのまとめ方や重点の置き方に適切な工夫を加えるとともに,教材等の精選を図り,効果的な指導ができるようにすること。
(3) 児童の実態等を考慮し,指導の効果を高めるため,合科的・関連的な指導[校内展覧会]を進めること。
6)以上のほか,次の事項に配慮するものとする。
《16》1) 各教科等[校内展覧会]の指導に当たっては,体験的な学習や問題解決的な学習を重視するとともに,児童の興味・関心を生かし,自主的,自発的な学習が促されるよう工夫すること。
(2) 日ごろから学級経営の充実を図り,[校内展覧会]教師と児童の信頼関係及び児童相互の好ましい人間関係を育てるとともに児童理解を深め,生徒指導の充実を図ること。
《17》(4) 各教科等の指導に当たっては,児童が学習課題や活動を選択したり,[校内展覧会]自らの将来について考えたりする機会を設けるなど工夫すること。
(5) 各教科等[校内展覧会]の指導に当たっては,児童が学習内容を確実に身に付ける
ことができるよう,学校や児童の実態に応じ,個別指導やグループ別指導,繰り返し指導,教師の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図ること。
《18》(6) 障害のある児童などについては,[校内展覧会]児童の実態に応じ,指導内容や指導方法を工夫すること。特に,特殊学級又は通級による指導については,教師間の連携に努め,効果的な指導を行うこと。
(7) 海外から帰国した児童などについては,[校内展覧会]学校生活への適応を図るとともに,外国における生活経験を生かすなど適切な指導を行うこと。
《19》(8) 各教科等[校内展覧会]の指導に当たっては,児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実するとともに,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。
《20》(9) [校内展覧会]学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り,児童の主体
的,意欲的な学習活動や読書活動を充実すること。
《21》(10)児童のよい点や進歩の状況などを積極的に評価する[校内展覧会]とともに,指導
の過程や成果を評価し,指導の改善を行い学習意欲の向上に生かすよう にすること。
《22》(11)開かれた学校づくりを進めるため,[校内展覧会]地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めること。また,小学校間や幼稚園,中学校,盲学校,聾学校及び養護学校などとの間の連携や交流を図るとともに,障害のある幼児児童生徒や高齢者などとの交流の機会を設けること。
*この文章は,各学校において校内展覧会を創設したり,教育課程に位置付けるために作成したものです。展覧会が単に作品の陳列だけでなく,「総合的な学習の時間」のねらいを含んだ創造的な体験学習に広まることを願っています。
制作10/09/2000
宇喜田小学校展覧会 Student Art Exhibition at Ukita Elementary
*2001年11月、本校で行われました総合的な展覧会をインターネットで発表しています。画像が90枚と多い為、アルバムを利用しました。
■学校美術館リンクサイト作成
[宇喜田小学校図画工作科]Ukita Elementary School
戻る [美術と総合の実践事例]Back to Art Lessons
HOME: アートeラーニングセンター(Art e-Learning Center)
Thursday, 14 January 2021