河野勲の岩国ノート

 〔5〕戒厳令の夜 1983/11/13

 MPの腰に黒い拳銃が・・・

 十一月一日朝、祖生無線中継所の米軍施設の一部が何者かに破壊される事件が起こった。新聞は「中核派の犯行」と書いた。
 三日、十八時三十分、娘と基地沖へいく。滑走路の北側までいくと沖からライトをこうこうと照らした車がきて五十メートルくらいのことろで止まる。ライトを消さないので目がくらみ自転車を下りる。よくみればパトカーだ。しばらくは対じする。
 パトカーは何もいわず通り過ぎた。川口で釣りをしている人に「釣れますか」と声をかける。
 「パトカーがたびたびきて釣にならない。昨夜は三分おきにきた」という。
 レーガン来日を前にして基地は厳しい警戒に入っている。各弾薬庫も今までになく明るく照明がついている。そのなかでMWWU1の建物はひっそりとしずんでいる。堤防の突き当たりのフェンスのところへいくと基地内の堤防をバイクが二台ライトをつけてくる。米兵が大声で何かいうが英語なのでわからない。娘に「何といったのだ」と聞くと「近よるな」といっているようだとの返事。
 五日、「赤旗」のTカメラマンが『グラフこんにちは』の写真を撮りにきた。基地をバックに私を写していると、パトカーがきて尋問を始めた。
 「なぜ聞くのか」と質問すると、「レーガン来日で過激派に備えて警戒している。協力してくれ」という。しばらくして今度はMPがバイクでくる。よくわからないが基地を写すな、といっているようだ。
 MPが基地外で日本人にさしずをすることは違法であるが、言葉が通じないし、MPの腰には拳銃が不気味に黒く光っている。
 その日は撮影を中止。帰りに北ゲートに寄ってMPの違法行為をやめさすよう申入れた。

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