河野勲の岩国ノート

 〔32〕人間の鎖 1984/6/3

基地は包囲された・・・

 「トマホークくるな!5.27岩国基地包囲集会」は、時どき小雨が落ちるなかで開催された。
 十時半過ぎから地元山口県をはじめ、広島県、岡山県は臨時列車を仕立てて、海を渡って四国勢がバスや自家用車でくる。
 集会は正午から開催された。主催者代表のあいさつ、各県からの報告、まだ参加する人の列はつづく。会場の児童公園の外の道路まで人でうまった。
 集会を妨害するため、前夜から集まっている中四国の右翼の宣伝カーは約五十台、二百人。会場周辺をボリュームをいっぱいあげ行進をする。
 だが、集会の熱気は彼らの妨害を問題にしない。
 集会を終わり、基地包囲の行進は会場を出発する。行進の総指揮者である私は、先導の宣伝カーに乗る。街を通り基地のあるデルタ地帯、川下へいく連帆橋を渡る。
 橋のふもとで一人の男が、狂気じみた叫びをあげている。酒に酔っているのか・・・。行進は川土手を北ゲートに向かって進む。
 北ゲートの手前の右折地点から連帆橋を見ると人、人・・・、旗、旗・・・だ。が、総指揮車になる宣伝カーはまだ見えない。
 北ゲートに着く。同乗してきたY氏とM氏に行進の先導を頼み、先導車を指揮車にして指示をする。
 「先導する人に従ってどこまでも歩いてください。四国の先頭がここへ到着したら行進をやめます」
 山口県が終わり、広島県がきた。ようやく総指揮の宣伝カーがくる。先導車を行進の先頭につくよう指示をする。
 広島県の隊列も長い、しばらくして先導車が行進の先頭についたことを、トランシーバーが伝えてくる。「こちらは先導車。いま弾薬庫の東側を行進している」。
 岡山県がきた。行進しながら「これが岩国基地か!」と誰かが叫んだ。
 「あと百メートルくらいで突当たりのフェンスまで・・・」と先導車が報告してくる。まだ四国はこない。
 「いま先頭はフェンスをつかんだ。そちらはどうか?」 「いま四国がきた。四国は直進するから四国が終わったら、基地は完全に包囲される」
 四国各県は直進する。四国の最後尾と岡山県が総指揮のところで手を握った。
 岩国基地は完全に“人間の鎖”で包囲された。
 あくる日、T新聞のN記者が、「昨日は大成功だったですね。ひさしぶりにデモらしいデモを見た」といった。

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