*岩国基地の軍事的役割

  軍事的役割を考える場合に、何と言っても一番危険なのは、朝鮮半島に隣接しているということです。特に去年の今頃は、チーム・スピリット(韓国軍と在韓米軍による合同軍事演習)がやられておりました。七六年から始まっておりますから、もし去年とおなじようでしたら、こんな静けさじゃないと思いますが、今日は静かです。しかし、じつは静かなこと自体が、尋常な事態ではないことを示しています。つまり、軍事的に緊張した状態、普通でなく危険な状態にあるということで、通常の訓練はやっていないんです。普通の訓練をやっているということは、岩国基地はその日の訓練のスケジュールによって動いているということです。
  現在の北朝鮮を巡る核問題というのは、我々が想像しているよりも緊張した状態にあるのではないのでしょうか。新聞を見てみますと、この前の核査察の時に新しいミサイルが開発されたということが分かりましたが、そういう緊張した状態にあるような気がしてならないんです。そういう面からすると、この岩国基地というのは非常に危険だ。
  なぜ危険かと言いますと、アメリカの前国防長官のアスピンが去年の九月に発表しクリントンに提言した、いわゆる「冷戦後におけるアメリカの戦力維持」を見ますと、極東では北朝鮮を一番のターゲットにしています。そして具体的には、第三遠征軍という沖縄の第三海兵師団と岩国の航空団の位置づけを述べています。岩国基地を見る場合は、岩国基地を単独でみてはならないんです。沖縄基地の延長線上にあるんだという位置づけをしないと、基本的に狂いが出てくる。そうすると、現在緊張している情勢というのが、最も身近に存在しているのが岩国です。これは具体的には、今が静かであるということになるんですど、通常訓練をやめて待機している。まあ、そういうものです。軍事的には非常に危険ということが言えるんです。
  岩国の場合、朝鮮戦争の前までは、さきほどお見せしました地図で、ほぼ東西に滑走路が日本海軍によって作られたんです。現在の滑走路は南北に走っております。これは昭和二十三年から二十四年にかけて、米軍によって作られたのです。朝鮮戦争が昭和二十五年から始まりまして、新しくできた滑走路から直接朝鮮半島に行って、爆弾を落として岩国に帰って来るということがありまして、朝鮮戦争が休戦になって韓国におった海兵隊が岩国に帰ってきたわけです。ですから当時でも、直接に北朝鮮を攻撃して帰って来る。今は航空機そのものが格段に進歩してジェットの時代になっておりますから、時間的にも距離的にも進歩し変わっています。だから、北朝鮮の側からも、直接岩国を攻撃できる。韓国の場合は、当時の朝鮮戦争の時も、釜山の線まで後退してしまったことがありましたから、もっと後方の岩国に基地を持っている方が、アメリカとしては安全です。だけど、逆の意味からすれば、危険度という点では、当時は北朝鮮、あるいは中国にも、日本を攻撃する能力はありませんでしたが、現在はミサイルの時代になっていますから、岩国を報復攻撃することは可能です。山口はその途中ですから、「労働(ノドン)二号」は精度はよくないから、誤差はかなりあるということだから、誤って途中、どこに落ちるか分かりません。
  もう一つの問題が、例の迎撃用ミサイルのパトリオットです。今日の『読売新聞』に出とりますけど、築城の自衛隊航空基地のすぐそばの写真が出ております。岩国周辺にはパトリオットのような、基地を守るために敵の航空機やミサイルを迎撃する装備は全然ないんです。山口県のどこにもない。そこが海兵隊の特徴なんです。つまり、海兵隊というのは、いっぺん攻撃をかけたら、二回目、三回目の攻撃はやらないんです。攻撃したら報復を受ける。だから、どこかに即座に転戦するのです。海兵隊の基地というのは、そういう性格を持っている。転戦場所がどこかは分かりませんけど。

  現に、そういう訓練を基地はやっているんです。基地の機関紙に『トリイ・テラー』というのがあって、その三年ほど前のものに、そうした訓練のことが書いてありました。ある日突然、北朝鮮が岩国基地を攻撃するをいう情報が入る。それに呼応して、それを迎撃する航空機を敵の陣地を攻撃する航空機が飛び立つ。同時に、輸送機に乗ってどこへともなく岩国基地から飛び去る、という訓練をしっかりやろうと書いてある。岩国にいるのは第三海兵旅団ですけど、軍事的には、そういう性格を持った基地であるということです。私は、日本の基地そのものは、全体的に、基本的には、そういう基地じゃなかろうかと思っています。いざとなれば、アメリカは日本を放っといて、アメリカに帰ってしまうんですからね。


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