乳がんの手術法
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乳がんの手術法は大きく分けて3つあります。
乳がん手術を行うことの本来の目的は、ガンを完全に取りきることです。乳房切除手術もこの趣旨にのっとり行われますが、現在では手術でほぼガンを取りきれれば、放射線治療と組み合わせることによって乳房を残したも安全であることが分かっています。そこで、まずがんが乳房の中でどの程度広がっているかを把握して手術法を選択します。
一般に、ガンが限られた範囲にとどまっていれば乳房を残すことができるし、ガンが乳管という管を伝って広く広がっていれば乳房を全部摘出しなければなりません。

ハルステッド手術
19世紀の終わりに考案された手術で、乳房のみならず、その裏側にある大胸筋と小胸筋、わきの下のリンパ節をも切除します。ラジカールとか定型的手術と呼ばれることもあります。ハルステッド手術を受けたときの問題は機能上の障害です。筋肉を切除する為、腕の動きはとても悪くなります。また、リンパ節をとるので腕のむくみがあらわれ、ひどい場合腕が丸太のようにふくらんでしまいます。あばら骨が浮き出た残酷な傷口も、精神的な苦痛になります。
たしかにこの手術は、患部を大きく切除してしまうためガンを根治させられるような印象を与えますが、実際は再発や転移もあります。欧米では、この手術法が無意味・有害という証拠がたくさんでて、70年代にはほとんど消滅しました。
しかし日本では、まだまだこの手術法を行う医師が存在します。
胸筋保存乳切手術
乳房は切除するけれど胸の筋肉は残す手術で、モディファイドとか非定型的手術とも呼ばれます。
この手術は、大胸筋・小胸筋共に残す手術と、大胸筋は残すけれど小胸筋は切除する方法の2通りがあります。
どちらもリンパ節を切除するのが普通で、腕がむくむ可能性がありますがハルステッド手術よりは軽くすむようです。
また、胸の筋肉まで切除しないので機能障害は軽いといえますが、なんらかの後遺症は発生しますし、体のあるべき部分を失ってしまうことに変わりはありません。ハルステッド手術と同じように、傷跡への局所再発が見られることがあります。
乳房温存療法
がんを取り去り、なおかつ美容的に意味のある乳房が残せる場合に行われます。一般的には乳がんの8割を占める1〜2期の乳がんでは、何か特別な理由がない限り乳房温存手術が可能です。具体的には、しこりの周囲1〜2cmの安全域をとって切除しますが、しこりを中心とした90度の扇形を切除する(四分の一切除法)こともあります。
けれど問題なのは、現代の医学では事前に乳房の中でどこまでガンが広がっているかを正確に把握することができないという点です。そこで手術中にガンが取りきれているかどうかを評価する迅速病理診断・細胞診を行いますが、この方法だけでは正確さに欠けるため、手術中に切除した検体を後日診断することになります。
そうして切り取った端っこの部分が陽性(ガンがある)の場合は、再手術をすることになります。
乳房温存療法では、手術後温存した乳房に放射線を照射するのが原則です。放射線を照射することによって微小ながん細胞をコントロールするという概念の治療法なのです。
乳房温存療法ができない場合もあります
しこりが小さくても、乳房内に広く石灰化(乳管の中で増殖した癌の一部が壊死を起こし、そこにカルシウムが沈殿してできた もの)がみられる場合
複数の腫瘍がある。また、手術によって切除した断片にガンが残っていて局所再発率が高い場合
妊娠中の場合、膠原病などで放射線をかけると皮膚の反応が強く出ると予想される場合
乳房に対して腫瘍が大きい場合
患者自身が乳房温存を望まない場合
乳房を全摘した人も温存療法を行った人も、乳房の再建ができます。

腋窩(えきか)リンパ節の治療
手術前に決めておかなくてはならないもう一つの問題が、腋窩リンパ節の治療法です。
リンパ腺は広く全身に分布していて、腋窩(わきの下にあります)だけで20〜50個程度見つけることができます。直径は数ミリから1cm程度で大豆のような形をしています。
乳房の中の老廃物や様々な細菌はリンパ管の中のリンパ液によって運ばれリンパ節に注ぎ込まれます。リンパ節はフィルターとしての役割を果たしていますが、処理しきれなかった場合、リンパ節自体ががん細胞に占領されてしまいます。これがリンパ節転移です。これまで乳がん治療ではこの腋窩リンパ節を郭清(すべて切り取ってしまうこと)していました.リンパ節は転移の重大なステップであり、手術でこれを取り除くことで、がんの全身への転移を防止することができると考えられていたからです。しかしその後、がん細胞は乳房の中でリンパ管や毛細血管の中を容易に移動できることが
わかりました。このため、リンパ節にガンが転移していれば全身にもガンが転移しやすく、リンパ節転移がなければ、ガンが転移していない可能性高いという指標(抗癌剤やホルモン治療をするかしないかの判断基準)としての意味合いが強いことがわかってきました。腋窩リンパ節の郭清には、腕の浮腫や脇の下のなんともいえない不快感などの後遺症が残ります。
現在では(2003年)スタンダードな手術法だと考えられています。

センチネルリンパ節生検法
ガン細胞がリンパの流れに乗って一番最初に到達するリンパ節を、センチネル(見張り)リンパ節といいます。そこにガンが転移していれば他にも転移の可能性があり、転移がなければ、他にも転移がないだろうという仮説に基づいた、がんの転移の有無を調べる方法です。
この方法はまだ新しく、確実な方法として認知されているわけではありませんが、少しづつ広がり始めています。また日本では保険適用になっていないという問題もあります。
この新しい手術法のメリットは、浮腫や違和感などの後遺症が非常に少ないことで、デメリットは、転移したリンパ節を取り残す危険が若干のこることと(2%以下の確率といわれています)データの蓄積がなく、技術的にはまだまだ標準化していないことです。こうした実情を踏まえ、メリット・デメリットを十分承知したうえで行うべきだと考えられています。
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