―――――――For what purpose does it pray?―――――――
駅のホームに降り立つと、お決まりのようにくぁ〜〜っと伸びをする。
後ろの人に迷惑かもしれないけど、皆やるでしょ?
って言うか、電車。あれってどうよ?
まず、はっきり言ってかなり腰に悪いです。どうにかならないモンですかね?あの揺れは。
「ぬぁ〜〜〜腰痛い〜〜〜」
「って、アンタずっと寝てたじゃん!!」
「エドワード君。寝ていても腰は痛むのだよ。
っていうか、アンタ言うな。」
「ああ、さん?」
「そして何故に疑問形?それに“さん”付けいらんし。年近いんだから。」
「って、幾つだよ?」
何でだろうね、エドワード君に家名にさん付けされると、何だか違和感を感じるよ。
慣れてないからかな?
ともかく首をひねりながら考えていると、エドワード君が不思議そうに首をかしげる。
軍にいるのに十代前半はありえないからね。
「俺は19歳だよ。」
「19って近くないだろ。」
「何言ってるの。年増の大佐に比べたら何と若い事か!!」
「失礼な事を言うものでは無いよ少佐。」
「ともかく俺のほうが年近いだろ。」
「じゃぁ、名前を呼び捨てでもいいわけ?」
「もちろん。っていうか、そっちがいいな。」
「変な人。」
「良く分っているではないか。」
「失礼なのはどっちですか。」
そんなやり取りをしながら迎えの車に乗っていく。
セントラルは町並みや道路も整備してあって、乗り心地もいい。
何時ものように睡魔に誘われるが、流石にすぐについてしまったし、これからすぐに最終試験があるからね。
受かると大体分っていても緊張するよね。
大佐も何時もと同じように見えるけど、どこか落ち着かないようだ。
エドワードも窓から街を見ているが、どこか上の空。
何ていうか・・・・・・・・・
「それから試験に向かう親子みたい。」
「誰と誰が!!?」
ぎっとこちらを睨むエドワードと大佐。
だって空気暗いんだもん。
「似合ってると思うよ?」
「止めてくれるかな?私はまだ子供を持つ年ではないのだが?」
「こんなやつの子供だけはゴメンだね。」
仲悪いんですか?あんたがた。
いや、揃っているから却って仲がいいのかな?
「こんなヤツとはどういう事かね?」
「そのままの意味だろ?
それより、若作りするのやめたらどうだ?」
・・・・・・・・・レベルが低いなぁ。
それにしても、曲がりなりにも此処は大総統府なんだから、あんまり騒がないほうがいいと思うんだけど。
あ、ほら。今すれ違った人凄く迷惑そうな顔してたよ。
「大佐、エドワード君。そろそろ静かにしたほうがいいと思うんだけど。」
「う・・・・・・・・・」
ピタリと言い合いをやめると、少し大きな扉の前まで来た。
どうやら、ここで俺たちは一旦お別れって事かな?
「それでは、精々頑張るのだな。ちびっ子。」
「誰が視界にも入らないマイクロチビか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
背のこと気にしていたんだね。エドワード君。
っていうか、其処まで言っていないと思うのだが、これは関らないほうは良いような気がする。
きーきー怒っている彼を大佐は余裕の笑顔で交わすと、そのまま上へ行く階段の方へ去っていく。
「じゃ、頑張ってね。」
「おう。」
そういい残すと、俺も大佐を追って二階へあがる。
先に行ったはずの大佐は階段の下で待っていてくれた。
おや。珍しい。
「君は彼の練成を見るのは初めてかね?」
「そういや、そうですね。
どうなんです?彼の実力とか、研究分野とかは?」
一年前は遠目に姿を見ただけだったからね。
はっきり言って、彼の錬金術師としての情報は皆無に等しい。
当然のように推薦者である大佐は知っているのかと思ったら、返ってきた答えは
「実は私も始めてみる。」
「推薦者としてどうかと思いますけど。」
知らないって、アンタ。驚いたよ。
それでも大佐は笑顔を消すどころか、更に面白そうに笑う。
「だから今日は何を見せてくれるのか楽しみでね。」
「単なる野次馬ですか?マスタング大佐。」
「ははは!意外と近いかもな。」
「・・・・・・・・・・・・・」
大総統に直接この事伝えてあげましょうかね?
久々に仕事をする気になりましたよ。
そんなことを言っていると、他の軍関・錬金術係者がちらほら見えてきて話が中断される。
流石に、他の人が居るところではこんな話できないよね。
「始まるな・・・・・・・」
大佐について二階の良いポジションにつくと、エドワードが両脇を挟まれて入ってきた。
誰が監督するのか疑問に思っていると、奥の扉が開いて、どやどやと数人が入ってくる。
って、
「大総統閣下・・・・・・!?」
「まぁ、最少年の国家錬金術師候補だしね。有り得ますよね。」
驚いている大佐は放っておいて、何処か呆然と呟く。
何だか大事だなぁ・・・・・・
その場の全員が驚いていると、エドワードが「誰?」と聞いていたりした。
そりゃぁ、一般人が最高責任者を知っているわけないか。
そんなやり取りもすぐに終わって、最終試験が始まる。
「緊張しなくていいぞ。落ち着いて。
練成陣を描く道具は持っているか?」
子供を扱うような言い方すると、エドワードは機嫌悪くするんじゃないのかなぁ・・・・・・?
そんなことを心配したが、どうやら此処でまで暴れるような人間じゃなかったらしい。
「いらないよそんなもん。」
ん?要らないって・・・・・・
訝しげなみなの前で、彼は手を合わせると、床に手を付いた。
これは!!??
練成の光が走ると、床からゆっくり、見せ付けるように槍が練成されていく。
その場の全員が驚いている中、エドワードは槍を構えて、目の前の大総統に襲い掛かる。
一瞬で間合いを詰めると、寸止めで動きを止める。
周囲から銃を突きつけられた状態でいつもの変わらない様子で何か話っている。
だが、はっきり言ってそんなのはどうでも良かった。
そんなことより俺の頭から離れないのは、エドワードの練成するときの姿。
あれはまるで・・・・・・・・・
「?」
「あ、大佐・・・・・・・・・」
「どうかしたか?顔色が悪いが。」
「いえ。大丈夫です。」
大佐の声に、現実に意識を戻すと、丁度大総統閣下が退室するところだった。
大総統は、ちらりと俺の方に目をやるとそのまま去っていく。
あ〜これって、もしかしなくてもお呼び出しだよねぇ・・・・・
何となく話の内容は思い当たるけど・・・・・・・・・・
大総統が目を向けたのは一瞬だったので、誰も気付いていなかったが、俺は大佐に気付かれないようにそっとその場を去る。
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