冥王神話 NEXT DIMENSION
「Part69 獅子座の証」ツッコミ&感想

(2015年12月3日発売・週刊少年チャンピオン1号掲載)




(注意)
このツッコミはネタです。実在の人物・団体等とはいっさい関係ありません。
・強度のツッコミが苦手な方は閲覧の際に副作用として痒み・発疹・アレルギー反応が出ることがありますので十分ご注意ください。





■1.内容以前の感想:星矢30周年おめでとうございます!


 内容のレビュー以前に、まずは祝辞から!

 星矢30周年、おめでとうございます!

 今回は30周年記念号ということで「超銀河3大企画」などがあり、何気に熱いです。「激アツ巻頭カラー」「豪華ふろく!2016年度ポスターカレンダー」に加えて、「スペシャル缶バッジ応募者全員サービス」まであります。
 星矢30周年の記念サイトもできたし、6月には秋葉原で企画イベントもあるぽいし、非常に楽しみです。

 ちなみにチャンピオンの裏表紙にはいつもはアイドルやスポーツ選手の写真とか、ゲームの宣伝とかが載っているのですが、今回は射手座の黄金聖衣を着た星矢のイラストでした。しかも原作ジャンプコミックス27巻の表紙に使われていた星矢のイラストでした。25年前のイラスト、めちゃくちゃ美麗でした。
 今の御大の指の状況を考えると、今のNDの絵も十分以上に綺麗だと思うのですが、やはり体調的にも全盛期だった時代のイラストはとりわけ美しくて、思わず見惚れます。




■2.内容以前の感想:表紙と扉絵のあおり文句が意味深すぎて割と気になる件。


 ゴールディと一輝兄さんの表紙2ショットも気になるし、中でもとりわけ表紙用に念入りなメイクをしてきたと思しいゴールディさんの、いつもと異なる顔面の様子は、思わずチェックせずにはいられないほどの整形っぷりなのですが、そんな細かい感想がふっとぶレベルで、ツッコミ人の目線は、とある煽り文句に釘づけになりました。

 「新章突入!」

 ま、まじで!?

 ちなみに過去にも「新章開幕!」という煽り文句が使われたことがありますが(Part55)、その時のシリーズでは十三番目の黄金聖闘士の存在は明らかになるわ、水鏡先生は死ぬわ、赤ん坊のアテナは急成長するわで、確かに物語が大きく動きました。
 それに匹敵する展開とすれば、いよいよ蛇遣座が復活するのか!?

 なお、扉絵のページ(2ページ目)には、
 「聖域の崩壊が迫る…!?」
 「衝撃の新章開幕(スタート)ッ!!」
 「シリーズ誕生30年目の大激震!!」
 と、ますます気になる文言が並んでます。ぶっちゃけ怖いです。

 シリーズ誕生30年目の大激震っていったい、どういうことよ!?




■3.内容以前の感想:今までのあらすじをまとめたギャラクシープレイバックが、あまりにもヒヨコに対してひどすぎると思う件。(笑)


 いやもちろん、このギャラクシープレイバックを書いているのはどう考えても御大ではなく、編集とかマネージャーとかの人だと思うので、御大の脳内を推測するには全然役に立たないとは思うのですが、それでもあまりにも気になったので恥をかなぐり捨てて突っ込ませていただきましょう。

 まず、前提として、前回(Part68)のラストが実際にどのような展開だったかを確認させてください。
 それは、白羊宮を守るヒヨコ1号ことシオンの眼前に蛇遣座の御使いが登場し、両者が対峙するという緊迫のシーンでした。今後ヒヨコがヒヨコの汚名を返上できるにしても、できないにしても、ここにきて新キャラの蛇遣座関係の敵とガチでからんでいる以上、ここからヒヨコ最大の見せ場が始まることは間違いありません。

 その事実をふまえたらば、次に、ヒヨコ以外の人々がこのギャラクシープレイバックでどう紹介されているかを見てみましょう。

 ★例1:童虎・瞬・天馬
 →「童虎の前に到着した瞬と天馬だったが、童虎は、既にアテナを裏切る決意を固めていた。止めようとした瞬と天馬は一蹴されて…!?」

 ふむふむ、確かにそうでした。直近のあらすじを組み込んだ、良い紹介文だと思います。

 ★例2:水鏡
 →「アテナを裏切った元杯座のシルバー聖闘士。童虎と闘い散った。」

 これも妥当ですよね。簡潔にして正確。

 ★例3:一輝・デストール
 →「ともに冥王軍と戦い、デストールの案内で獅子宮へと辿り着くが!?」

 これも妥当。直近のあらすじがよく反映されていると思います。

 ★例4:新キャラの蛇遣座(オピュクス)
 →ここの紹介文は特に丁寧です。編集部の力が入っているのがわかります。何せ、「New」という赤文字つきで、「神話の時代、神により封印された十三番目の黄金聖闘士」「復活が迫る!?禁忌の聖闘士!!」とかなりの強調度で書かれています。前回ラストの緊迫感を考えれば、納得の紹介文です。

 では、その蛇遣座関係の敵と前回ラストで対峙した、我らがヒヨコ1号ことシオンの紹介文は、どのようなものかというと!

 ★例5:シオン・オックス
 →「水鏡に敗れる。」

 いや、前回の話は!? 前回の話は…!?
 あんなに重要そうな前回ラストの展開を、なぜそこまでガン無視!?
 ていうか「水鏡に敗れる」とかもうそんなのPart27の頃の話だし! 5年3ヶ月も前の話だし! ていうか確かに敗れたけどオックスさんと違ってヒヨコはまだ死んでないし!
 なんなの!? ヒヨコに何か恨みがあるとでもいうの!?(笑)

 あと地味に気になるのが、2ページ目の「あらすじ」で、前聖戦のことを「240年前」と断定している点です。紫龍の紹介文にも「師・童虎と240年ぶりの再会を果たした」って書かれてます。たぶんこれ編集のミスだと思います。ND内において前聖戦は一貫して「二百四十数年前」と言われ続けてます。原作でも前聖戦は「243年前」です。240年前だったら前聖戦もう終わってます。しっかりしてください編集の人。(←恨み骨髄・笑)




■4.今回のNDがガッツリと継承イベントをやったので、これはいよいよ天界編くるぞと思われてならない件。


 というわけで、以下本編の感想です。

 まずは何といっても、「ND本編で一輝兄さんが獅子座の黄金聖衣の継承者だということが明記され、しかもそれをカイザーさんによって正式に認定される」というビッグイベントについて、触れないわけにはいきません!

 個人的には、今までのNDの展開から既に十分な予想ができていたのと、あと今回の継承エピソードの描かれ方がけっこう丁寧で、説得力と納得感が高かったので、わりとすんなりと受け入れて読みました。
 いや確かに一輝兄さんに獅子座の黄金聖衣が似合うかどうか(ビジュアル的な意味で)という点については、別途改めて考えてみる必要がありそうですけど。(笑)

 しかしここにきて敢えて継承エピソードを入れてきたことの意味については、今後の展開とからめて考えても、かなり興味深い論点だと思います。
 前回の感想でもちらりと述べたのですが、今のこの怒涛の展開において、連載回数もあまり多くない中、もし御大が敢えて継承エピソードを挟んでくるとすれば、それはもう今後の展開の伏線のために、必要だからやってるとしか思えません。
 おそらくこの漫画、将来的には、星矢も含めた青銅聖闘士5名が、正式に黄金聖闘士の後継者となって、戦いに臨むことになるのではないか。そんなことを濃厚に予感させました。

 しかし、だとすれば、その戦いはどこで、いつ、どんな神様とのあいだで起こる戦いなのか。

 おそらく前聖戦において戦うぶんには、間違いなく過去の黄金聖闘士たちも一緒に戦うはずなので、青銅聖闘士たちが黄金聖衣をまとう機会はないでしょう。
 となると、星矢たち青銅5人が、正式な黄金聖闘士の継承者として戦わなければならない舞台があるとすれば、やはり現在。今までにも散々伏線のあった、天界編ということになるのかなあ、と思います。

 蛇遣座との戦いが過去で完結するのか、現在に持ち越しになるのかはまだわからないので、天界編のメインの敵が誰になるのかは予測できませんが、少なくともNDの物語はいずれ前聖戦から現在に戻って、いよいよ天界編ということになっていくのだろうと、個人的には思いました。
 (とか言いつつ、車田漫画なので、ならないかもしれませんが。笑)




■5.獅子座の継承方法があまりにも例のあの遊びを髣髴とさせてならない件。


 「よかろう ならばここまで来い」(5ページ目)
 「オレの所まで来られたら信じてやろう」(6ページ目)
 「一輝 貴様が獅子座の後継者と言うのなら 自力でオレの所まで来い」(12ページ目)


 という訳で、ライトニングボルトとライトニングプラズマの嵐が吹き荒れる中、カイザーさんの立っている所まで十二宮の石段を登り切ることができたならば、獅子座の男として認めてもらえる!という展開になったのですが。

 しかし「ライトニングボルト&ライトニングプラズマが吹き荒れる」という要素を除いて考えてみると、要するにこれ、「カイザーさんのいる場所に到達できたら勝ち」ってことなんだよな?「カイザーさんのいる場所にタッチできたら勝ち」なんだよな?

 ……いや、こんな緊迫したシリアスな場面でこんなこと考えてしまって非常に恐縮なんですけど、でも私、やっぱりこれ、絶対に、

 陣取りにソックリだと思います!
 ※相手の陣にタッチしたら勝ち。

 よく考えてみたら、カイザーさんの立っている場所が階段上の広場だというのも、いかにも陣取りの陣地にふさわしい。見れば見るほどに、昔懐かしいあの遊びが連想されて仕方ありません。
 それにしても、つくづく一輝兄さんは、この種の小学生の遊びから逃れられない運命にあるようです。

※なお、参考までに列挙しておくと、これまで一輝兄さんの闘いにおいて繰り広げられてきた小学生の懐かしい遊びの数々は、以下の通りです!

・参考例1:原作白銀聖闘士編(vsカペラ)「お嬢さんと星矢が無事ここからいなくなるまでこの線よりこちらに入るな 入ったヤツは死ぬぞ!」「この線から入ったら死ぬだと たかが青銅がふざけるな――っ」

・参考例2:原作白銀聖闘士編(vsダンテ)「おまえこそ この線からこっちへ入ったら死ぬのだ!」「なにい!」

・参考例3:原作ハーデス編(vsアイアコス)「(ザッ ザッ)三秒後にここに奴は落ちて来る…」(略)「その印は貴様の死に場所になったようだな」

・参考例4:ND41話(vsカイン)「そこから一ミリでも入ったらそれが証明されることになるぞ」「ならば…うっ!?」

 いずれの事例でも、地面に線を引かずにはいられない小学生の習性が非常によく表現されています。「この線からこっちに入るな!」「1ミリでも入るな!」っていう小学生の心理も非常にリアルです。(笑)

 こうやって振り返ってみると、やはり一輝兄さんの闘いに小学生の遊び的な要素は不可欠。黄金聖衣の継承方法にも色々あるだろうとは思うのですが、今回カイザーさんによって整えられたこの舞台設定は、まさしく「この線からこっちへ入ったら死ぬのだ!」の人に最もふさわしい継承方法だと言えましょう。ウワーッハハハハ!




■6.獅子座継承のプロセスがけっこう細かくて御大すげえと思う件。


 もちろん一輝兄さんは誕生日が獅子座だし、原作エリシオンの闘いにおいて既に獅子座の黄金聖衣を装着してもいるので、素直に読めば、一輝が黄金聖闘士になるとしたら獅子座だろうな、ということは十分予測できるし、それを覆すほどの代替案もあんまり思いつきません。

 ただ、原作ではアイオリアと一輝の直接の絡みが一切描写されていなかったので、少年漫画の漫画事情的な意味では、そこがいささかネックというか、残念なところでした。

 御大もそのへんを意識していたのか、今回の継承イベントは、少ないページ数にもかかわらず、かなり丁寧に描写されていたと思います。簡潔だけどもめちゃくちゃ濃密。さすがのネーム力だと思いました。
 というわけで、以下ではカイザーさんによる一輝の後継者認定プロセスを、項目ごとにひとつひとつ確認してまいりましょう。


★認定プロセスその1.覚悟の認定

 具体的には、「証明できぬ時は死ぬのだぞ」というカイザーさんのセリフに対して、一輝が「闘いにおいて死は常に覚悟している」と答えたシーンです。(5ページ目)
 ここは明らかにカイザーさん、「おっ」て思ってるのがわかります。一輝のセリフの後にわざわざ1コマ使って無言のカイザーさんの顔が描かれているので、かなり意図的な演出だと思います。ここでまず、戦士としての一輝の覚悟が認められたと見てよいでしょう。

 まあでも個人的に言わせていただくならば、それならばカイザーさんは闘いにおいて死を常に覚悟してヅラとマニキュアを欠かさないデストールさんのことだって、もっと評価してあげればいいのにとも思うのですが(笑)、でも実際、ものすごくよいシーンだと思いました。一輝の覚悟の重みと共に、その人柄も伝わってくる。それを評価するカイザーさんの懐の深さも伝わってくる。しかも直接しゃべっていないのに、セリフの行間から自然とそれが読み取れる。こういうの、ものすごく好みです。素敵なネームだと思います。


★認定プロセスその2.経験値の認定

 具体的には、ライトニングボルトを食らいながらも立ち上がる一輝を見て、カイザーさんが「貴様 相当の経験値を積んでいるな」と言う場面です。(6〜8ページ目)
 我々読者としては、いや経験値っていうかその人、単に宇宙の塵になっても蘇ってくる系の人なんで、経験値のせいかどうかは非常に微妙ですよカイザーさん!とも思うのですが(笑)、でも確かに一輝兄さんが尋常ならざる戦闘経験をお持ちなのは真実なので、そこをカイザーさんが認めてくれたのは素直に良かったなと思います。

 しかし一点だけ非常に気になるのが、そこ、どうしても「経験」って言わなきゃだめだったんでしょうか。「経験」じゃだめなんでしょうか。御大、意外とゲームやってるんでしょうか。(笑)

 ちなみ一輝本人は、ここでライトニングボルトを食らうことで、カイザーが本当に前聖戦の獅子座なのだと初めて実感したようです。
 継承イベントに説得力を出させるためには、一輝の側から見た時に、試練を与える側への無条件の信頼感があることが必要。
 氷河や紫龍、瞬や星矢と違って、アイオリアと一輝の間には直接の絡みが描写されていないので、そのへんをきちんと描かなければ説得力が得られにくいと思いますが、この短いページ数の中でそういう要素もちゃんと詰め込まれていて、よくできてるなあと思いました。


★認定プロセスその3.折れないメンタル認定

 「そんなことより遠慮はいらぬぞカイザー」
 「なに」
 「(略)オレに対して手加減するのならそれがあんたの敗因になるということだ」(8〜9ページ目)


 常人ならばライトニングボルトを受けた時点でメンタル的にもかなりのダメージを負うと思うのですが、しかしさすがは我らが一輝兄さん、やはり常人ではありませんでした。メンタル勝負で敗北を喫したことが一度もないという実績も頷けます。カイザーさんも「なに」とか「貴様…」とか言っているので、この強気発言はけっこう意外だったのではないでしょうか。

 ちなみに原作を読んでいると、基本的に黄金聖闘士の皆さんはいかなる劣勢に立とうとも、絶対にこういう系の強気なセリフをやめないので、一輝兄さんのこういう強気発言は、個人的に非常にポイント高いです。黄金聖闘士に夢を持っていたかつての子供の一人として、「最強の聖闘士ならばやっぱりこうでなくては!」と思います。

 ただ、それはそれとして、ここでの一輝兄さんのセリフには別途どうしても突っ込まずにはいられないので、一個だけ突っ込ませてください。

 「獅子はいかなる弱者にも全力で襲いかかるという」

 いや、それ、ただ単にひどい人じゃねえか!(爆笑)


★認定プロセスその4.弟を使った細かい心証アップ(笑)

 別名、ゴールディさん経由での懐柔作戦とでもいいましょうか。「瞬」の名前を聞いた時のカイザーさんの反応が、明らかに「おっ」と思っている雰囲気なのが面白かったです。個人的には、この部分で一輝に対するカイザーさんの心の警戒感が完全にゼロになるのが伝わってきました。(笑)


★認定プロセス5.実力の認定

 やっぱり黄金聖衣を継承するのに最も重要なのは、聖闘士としての強さ=実力だと思うので、継承イベント的にはここが一番の山場だと思います。
 具体的にはライトニングプラズマを鳳翼天翔で跳ねのけたあたり。
 大コマも連発されているし、いつもあんまり動揺しないカイザーさんが汗を垂らしたりもしてるので、かなりのインパクトが感じられます。


★認定プロセス6.人柄の認定

 しかし実力認定の直後には、さらなる盛り上がりがありました。

 「こちらもあなたが真の獅子座と悟った以上反撃はせぬことにした」
 「なぜだ 勝てぬと分かったら手出しできぬか」
 「いや 先々代の獅子座の聖闘士に拳を向けるのは忍びないからだ」
 ドン


 この「ドン」のコマのカイザーさん、かなりの衝撃を受けている様子です。でも「一輝が次代の獅子座かもしれない」ことは、既に一度デストールさんのセリフで驚き済みのことなので、ここでカイザーさんが改めて衝撃を受けているのは多分、「目の前の一輝から、直接、先々代としての敬意と礼を示された」せいではないかと個人的には思います。
 これによって、「礼」と「義」を重んずる一輝の人柄もわかるし、同時に目の前の青銅聖闘士が本当に自分の後継者なのだということが、カイザーさんの中でもつくづくと実感されたのではないかなあ。

 心なしか実力認定の時よりも、カイザーさんの衝撃度がさらに大きいような気もするので(笑) 、こういった人柄的な部分は、獅子座の認定イベントにあたっては、結構ポイント高かったのかなと思います。穿った見方をすれば、一輝とアイオリアとの間に直接の師弟関係がないぶん、こうした「礼」と「義」で結ばれた人格的な交流を示すことは、余計に大事だったのかもしれません。まるである種の疑似的な師弟関係のようでもあります。さらに穿った見方をするならば、ジャンプ連載の頃からずっと師匠に恵まれなかった一輝兄さんの中の何かが、ここで初めて補完されたかのようですらあります。

 なお個人的にしみじみと感動したのは、本来の一輝兄さんは「礼」や「義」を重んずる古武道精神に溢れた性格なのだという、原作でもかなり初期の頃に示されていた設定が、今回の伏線として見事に生かされている点です。考えてみたら一輝兄さん、デスクイーン島でのギルティ師匠への態度って、最初はこんな感じでした。その後兄さんがグレたせいで、みんなすっかり忘れてたけど。

 なんかすごく懐かしいと同時に、色々と深くて、御大すげえなと思いました。


★認定プロセス7.聖闘士としてのまっとうさ認定

 実力認定→人柄認定ときた後、さらに畳みかけるように、一輝兄さんはこのようなことを発言します。

 「それに真の敵が迫ってる以上 カイザー あなたには無傷でここに残ってもらわねばならん」


 正しすぎる。


 これ、個人的には、今回の継承イベントの中で、一番大事な発言だったようにも思います。そもそも聖闘士の本分はアテナを守ること。その意味で、サラリとこういう発言をすることのできた一輝は、黄金聖闘士認定試験において、これ以上ないほどの模範解答をしたと言えましょう。


★認定プロセス8.あとはもう形式的に最後まで走りきるだけ!

 12ページ目あたりを読むと、カイザーさんはすでにこのへんで一輝の人柄や戦士としての資質は認めてて、その上で一輝に継承資格を与えるために、敢えて「自力でオレの所まで来い」と言っているようにも思えます。それに対して「承知」と答える一輝の方も、カイザーさんの真意をわかった上で敢えて応じているように見える。
 さらに18ページ目以降になると、もはや完全に両者合意の上で、お約束として(儀式として)やっているのがわかります。

 なので、これは本当に正しい意味での「通過儀礼」だったのだと思います。

 多分カイザーさんは、一輝が後継者として信頼できることを、既に途中の時点で分かっていたと思うのですが、それでも最後までやりぬかせたのは、やはり黄金聖衣とはそれだけの重さがあるということなのでしょう。このあたり、継承イベントの説得力を上げる意味でも、読者の納得感を高める意味でも、非常にうまい描かれ方をしていると思います。

 あとこういう描かれ方をすることで、今回のカイザーさんは、ものすごく、「立ち塞がってくる圧倒的な壁」としての役割を果たしてました。
 個人的に、聖闘士星矢における黄金聖闘士の魅力とは、主人公たち=青銅聖闘士の視点から見た時の「立ち塞がる圧倒的な壁」感だと思うので、今回のカイザーさんの立ち位置は、ものすごく黄金聖闘士らしくて、非常に素晴らしかったです。




■7.カイザーさんの見た目がほとんどアイオリアであることの意味について


 というわけで、このような詳細なプロセスを経た結果、最終ページではカイザーさんがついに正式な獅子座として一輝を認めるわけですが。(←長かった…)(←いや別に漫画自体は長くないんだけど・笑)

 「貴様の獅子座の証 確かに見届けた」

 どこから見ても立派な合格判定です。たぶん通知表には「優」が付いた挙句、通信欄では臨時担任のカイザー先生によって、一輝の人柄と実力とメンタルと覚悟と礼儀とついでに弟のことが、言葉を尽くして熱く絶賛されているものと思われます。

 おそらく、御大としても、私たち読者としても、一輝の獅子座継承にかんしては、本来ならばアイオリアから直接こういう認定を出してもらいたかったところでしょう。しかし不幸にも原作ではそういう機会はついぞ巡ってこなかった。
 ゆえに今回のカイザーさんは、ある意味、アイオリアの代役を果たしているとも言えるのかもしれません。

 もしかしたらカイザーさんのキャラデザ=見た目が、ほとんどアイオリアと同じになっているのは、そういう意味合いもあるのかもしれない。
 そんなことを、ふとマジメにしみじみと考えてしまったツッコミ人でした。




■8.で、そんな重大な論点に比べたら非常にどうでもいいことなんだけど


 「LV(ライトニングボルト)はアイオリアの必殺拳で承知しているから…どうにか致命傷は免れたが…」(7ページ目)

 兄さん自身はこう言ってますけど、実は原作を読む限りでは、一輝がライトニングボルトを食らうのは、今回のカイザー戦が初めてのはずなんだよなあ。でも、ここでは明確に、「アイオリアの必殺拳で承知しているから」「どうにか免れた」って言っている。

 ということは、実は一輝は原作でもライトニングボルトを食らったことがあったのだろうか。十二宮編で処女宮に駆けつける直前とかに。
 それとも、一輝本人は一度もライトニングボルトを食らったことがないにもかかわらず、星矢から話を聞いただけで、ライトニングボルトへの免疫がついたとでもいうのだろうか。だとしたら一輝兄さんのイメトレ能力、どんだけすごいんだろうか。まるで範馬刃牙に出てくるエア修業のようではないか。まさか一輝兄さん、範馬刃牙を読んでいたのだろうか。ってことは、兄さんのことだから、もしかしたら勇次郎のエア料理とかもマスター済みなのかもしれない。毎日妄想の中でエア瞬と一緒にエア食卓を囲んでいたらどうしよう。
 地味に気になる。




■9.カイザーさんとデストールさんのやりとりについて


 Part46で「カイザーウッフン」とか言ってた頃とは別人のようなレベルで、なんかもうあらゆる意味での変貌を遂げているデストールさんですが(笑)、カイザーさんは相変わらず超クールです。
 菩薩のような穏やかな笑顔で「この一輝は敵じゃあないわ 通しておやりよ」(3ページ目)と言うデストールさんに対しても、「笑わせるな」「お前の保証など信用できるか」と、実にクールな反応でした。

 しかしその一方でカイザーさん、9ページ目では、「この一輝はその黄金聖衣を継ぐかもしれない」というデストールさんの言葉を、普通に真に受けて信じているようにも見えます。
 ということは、実はカイザーさんって、今のデストールさんの言うことは、普通に信じてくれてるようにも思えます。

 つまり最初の「お前の保証など信じられるか」はフェイクで、本当は「敵ではない」というデストールさんの保証も、最初から信じていたのかもしれない。でもカイザーさんとしては、その上で一輝の人柄や覚悟を自分自身で見極めたくて、そのためにデストールさんの言葉を信じていないようなふりをしたのかもしれません。
 デストールさんの方も、あまりにもあっさりと引きさがっているあたり、実はそういうカイザーさんの思惑を、最初から察していたのかも。もともと「カイザーは堅物」と言っていたくらいだし、「たぶんカイザーは自分自身の目で確かめるまでは信じないだろう」と、最初から分かっていたようにも思えます。

 こういう大人同士の無言のやりとりって、なんかすごくいいなあと思います。依存しあわない、もたれあわない、別に大して仲良くもない。けれどもたぶんお互いの深い部分を理解し、さりげなく認めあっている。これぞ聖闘士、って感じでいいです。

 しかしそれはそうとカイザーさん、デストールさんの「男を見る目」のことを、めちゃめちゃ普通に受け止めていて、何だかジワジワと笑えました。(笑)




■おまけ1:今週のデストールさんチェック


 菩薩のような穏やかな笑顔といい、ボンボン跳ね回る丸っこい姿といい、今週号のデストールさんは妙に可愛いと思います。おかしいです。体はボールで、ヅラも失くしてるというのに、今のデストールさんは言動のみならず、ビジュアル的にも妙に可愛いのです。

 なぜか。

 真剣に考えてみた結果、ツッコミ人はひとつの結論に達しました。

 まず、今週号のデストールさんには、鼻がありません。Part67までの姐さんはかなり彫りの深い顔だちで、鼻もしっかりと描かれていたのですが、今のデストールさんにはその鼻が全く描かれていないのです。もしかしたらフェルメールさんとの戦いでもげてしまったのかもしれません。
 次に、今週号のデストールさんは、全体的に丸顔です。顔面部の凹凸がほとんど省略されていて、かなりふっくらとして見えます。フェルメールさんとの戦いでぶつけたところが、だんだんと腫れてきているのかもしれません。
 最後に、今の姐さんには、前髪がありません。なぜならフェルメールさんとの戦いでヅラを失くしてしまったからです。

 鼻のない丸顔。毛髪の省略。そしてボールのような、まるっこい体。

 そうです。これはもう完全に、ゆるキャラの造形なのです。

 特に11ページ目の横顔なんて、どう見ても人間ではありません。ゆるキャラです。もはやムーミンとかバリィさんとかフナッシーとか、そういうモノの輪郭に限りなく近くなってます。 こうなってくると、今のデストールさんにとっては髪の毛がないことすら、むしろプラスに働いていると言えるでしょう。

 そんなゆるキャラのビジュアルで、「ボヨオン」とか「ボョョン」とかやるもんだから、本当に今週号の姐さんはたまりません。4ページ目の「だってさ どうする一輝?」のあたりなんか、ボンボンしてるデストールさんがあまりにも楽しそうすぎて、ツッコミ人は姐さんがいとおしくてたまりません。正直、このまま一輝兄さんと幸せになってほしいとすら思うレベルです。
 しかし聖闘士星矢において一輝兄さんとフラグを立てたら、それはすなわち死亡フラグである。そのへん、かなり気がかりな点ではあります。




■おまけ2:今週のゴールディさんチェック


 まずは何といっても表紙ですよね!

 いまだかつて表紙を飾ったことがない星矢キャラもたくさんいる中、ゴールディさんは動物の身ながら、なんと一輝兄さんと2ショットで、神慮めでたく表紙に出演なさいました。ていうかカイザーさんも表紙になったことないのに。(笑)

 しかし、その表紙のゴールディさんは、表紙のためにわざわざエステにでも通ったのか、あるいはプチ整形でもしたのか、はたまたカラコンでも入れてきたのか、顔が妙にリアルライオンです。
 ツッコミ人としては、そのせいで9ページ目と13ページ目の必殺技の背景のライオンがゴールディにしか見えなくなって非常に困りました(笑)。こうなってくると、もはや原作でアイオリアさんが必殺技を打つたびに背景に出現していたライオンのイメージ画像も、実はゴールディさんの残留思念体だったのではないかと思えてなりません。やばいです。原作を読み返したら、シリアスなシーンなのに「こんな所にゴールディさんが!」って思えてしまって、楽しくて楽しくてなりません。

 あと今週号のゴールディさんはほとんどしゃべらないのですが、そんな中、「おまえの保証など信用できるか」というカイザーさんのセリフのところだけ、わざわざ「ガウウ〜〜ッ」と言って同意しています。どうやらゴールディさんはデストールさんのことがよっぽど信用ならないようです。Part46の「カイザーウッフン」がよっぽど心証を害したのかもしれません。

 また、基本的に今週号のゴールディさんはずっと同じような臨戦体勢を取っています。左前足を前に出し、右前足を後ろに置いて、その格好のままほとんど動きせん。しかし、よく見ると2回だけ、姿勢が変化してました。
 1回目はデストールさんが「一輝はその黄金聖衣を継ぐかもしれない」と言った時。右前足を一歩引いて、両方の前足が揃ってます。ゴールディなりの「マジで!?」という気持ちの表明かもしれません。
 2回目は一輝がライトニングプラズマを跳ねのけた時。いつの間にかかなり後ずさりして、ほとんど石段の上まで登っちゃってます。この時はカイザーさんもかなり動揺してたけど、ゴールディも地味に一緒に動揺していた模様です。

 ていうかこれら一連の描写を見るに、御大の芸って、マジで細かいです。セリフ以外のところでの、キャラの心理描写がすごいです。もはや職人芸だと思います。今回のゴールディの描写を見て、ツッコミ人、「御大は相当細かい」のはガチだと確信しました。




 ……以上、長かったですけどPart69の感想は以上です。こんな長々と語りまくってて本当にキモくて細かくてすみません(笑)。ND再開が嬉しすぎたのが原因です。ようやくPart69の感想を書き終わったので、これでやっとPart70を読めるぞ!わあい!


<完>


多分続く


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Written by T'ika /2015.12.13