冥王神話 NEXT DIMENSION
「Part61 友を送る詩(うた)」ツッコミ&感想

(2013年10月3日発売・週刊少年チャ○ピオン44号掲載)




(注意)
このツッコミはネタです。実在の人物・団体等とはいっさい関係ありません。
・強度の毒舌が苦手な方は閲覧の際に副作用として痒み・発疹・アレルギー反応が出ることがありますので十分ご注意ください。






 今回もなかなかの急展開!相変わらず論点満載なので、文章ベタ打ちで行こうと思いますー。




■論点その1:急成長を遂げたアテナが、シジマさんの疑問に答えているようでいて、良く見ると何ひとつ答えていない件。


 まず結論から申し述べましょう。どうやら前回の私は、御大のフェイクによって盛大に踊らされていたようです。
 何だこれ!普通にアテナだったのか!普通にアテナが赤子から幼児に急成長した姿だったのか!しかも、ちゃんと沙織さんとしての意識も明瞭なのか!

 ……というわけで、前回の予想のうちでは一番ありえないだろうと思っていた(4)の希望的観測が、まさかの正解になりそうな雰囲気。成長した子供は普通にアテナで、しかもその中身も沙織さんのまんまでした。

 しかし、そうであるならば、前回の教皇様が「(早くアテナを殺さないと)何もかもすべてが終わりになる」とか言ってたのは、いったい何だったんでしょうか。蛇遣座との関連性とか、単に私が気にしすぎなだけなんでしょうか。でもやっぱり前回の教皇様の態度は、ただの裏切りにしてはかなり意味深だったような気もするんですけど。
 顔の影についてはフェイクだったにしても、やっぱり謎が謎を呼びます。

 そんなアテナこと沙織さんですが、今回の描写を見ると、どうやら幼稚園児くらいの年齢のようです。海闘士のソレントさんみたいなボブショートで、割とザンバラな髪型になってます。やっぱり城戸邸でカットしないと、キレイなおかっぱにはならないらしい。
 ……ってことはもしかして、かの冥闘士のファラオさんは、あのおかっぱカットを維持するために、めちゃくちゃ頻繁に美容院に通ってたってことなんでしょうか。いったい彼は冥闘士としてそれで良いんでしょうか。いや、こんな所でアレですけど。(笑)


 「シジマ あなたにはずいぶん苦労をかけたようですね」


まったくだよ!!!!!!!!!!!


 しかも沙織さん、シジマさんがまだ名乗ってもいないのに「シジマ」とか呼んでて、既に名前まで知ってるっぽいし、やっぱり赤子の姿をしていた時も、意識だけはハッキリしてたってことなんでしょうか。そんでシジマさんの名前もちゃんと聞こえてて、それで覚えてたってことなんでしょうか。個人的にはそんな余裕があるならもっと早く助けてやれば良かったのにとか思わなくもないんですけど、まあ当のシジマさんが特に不満を感じていないようなので、良しとしましょうか。(笑)
 あ、ちなみにそのシジマさんですが、アテナの小宇宙が偉大すぎて衝撃を受けるのは分かるんですが、ちょっとあまりにも派手に雷鳴に打たれすぎだと思います。一瞬アテナに攻撃されたのかと思ったよ。(笑)

 「し…しかし先ほどまでの赤子がなぜ突然にここまで急成長を?」

 おお、まさに!まさにそれこそが、私も一番知りたかった点ですよ!良くぞ聞いてくださいましたシジマさん!
 ところが、しかし、この重大極まりない質問に対する沙織さんの答えは、以下のようなものでした。

 「わたしはクロノスのいたずらによりテロメアを狂わされてしまったのです 体内の細胞にある いわば成長時計のようなものです それで二百年以上の時空を旅する課程で 少女から赤ちゃんに逆戻りさせられたのです」

 いや、何の答えにもなってないよ!

質問に全然答えてないよ!

 だいたいこっちは「何で急成長したのか」を知りたいのに、「何で赤子になったか」の話をされてもサッパリわかりませんよ!我々読者としては、「そんな事情で赤子になった人がいったいどういう理由で今さら急成長したのか」っていうのを聞きたいわけですよ!

 なのに、我々の頼みの綱であるシジマさんは、「むううっ しかしそんなことが本当に…」とか言って、思いっきり納得して引き下がってしまいました。
 ねえ、お願いだから、もうちょっと突っ込んで!「どうして今さら急成長できたのか」をちゃんと突っ込んで!ものすっごい気になるからそこ突っ込んで!ねえシジマさん!




■論点その2:事ここに及んだ今、そんな爆弾発言をされてもシジマさんたちだって困るよ!の件。


 しかしシジマさんが我々のためにそんなモヤモヤ感を突っ込んでくれるチャンスは、どうやら永久に訪れそうもありません。
 なぜならば、沙織さんがそこで間髪入れず、とんでもない爆弾発言をしてしまったからです。

 「あなたには信じられないかもしれませんが…わたしは未来からある目的でこの時代にやってきました

 ですからわたしはあなたたちのアテナではないのです」



エエエエエエエ!!!!!!!!!


 それじゃPart20で「ついに…ついに来られた!!」「われらの女神が!!この時代に!!」とか言って、思いっきり感動して喜んでアテナ神殿にまで駆けつけちゃってた以蔵さんとオックスさんとシジマさんの立場は、いったいどうなるっていうんだよ!!!
 特にオックスさんとか、そのまま勘違いしたっきりで、死んじゃったんだぞ!どうしてくれるんだよ!オックスさんをどうしてくれるんだよ!(バン!バン!)

 「われらのアテナではない…とは…!?」
 「この時代のアテナは別にいます 心配しなくてもやがて姿を現すでしょう」


エエエエエエエ!!!!!!!!!


 別にいるってどーゆーこと!? やがて姿を現すでしょうって、いつだよ! あと何年かかるっていうんだよ! 聖戦、もう始まっちゃってるじゃねえかよ! まさか、シオンと童虎がピヨピヨなのもそのせいなのかよ! まさかまだ2人とも18歳になってないっていうのかよ! だからシオンの髪が短いんだとでもいうのかよ! そりゃ私も前回のツッコミで「もっと原作ハーデス編のシオンと童虎のことも読み返してください」って書いたけど!書きましたけど! まさか本当にそういう方向でつじつまを合わせる気なのかよ! それじゃこの先、聖戦っていったい何年間続いてしまうんだよ! 本来のアテナがいないのに、そんな長期戦になってしまって大丈夫なのかよ!

 しかも、こんだけ苦労して沙織さん(アテナ)のもとに行こうとしてるのに、肝心のその沙織さんから全然無関係な赤の他人ですとか言われるなんて、それじゃそもそも水鏡先生とか、いったい何のために今がんばってるっていうんだよ!

 オックスさんだって、いったい何のために水鏡先生に倒されたっていうんだよ! しかもあの小物教皇に至っては、いったい何のために今、一刻も早く沙織さんを始末しようとがんばってるっていうんだよ! ついでにカルディナーレさんはいったい何のためにこのタイミングで裏切ったっていうんだよ!

 そして、もはや前聖戦の関係者全員に漂いはじめてしまったこの壮大なピエロ感を、いったいどうすればいいんだよ!(大爆笑)

 ……ていうか、前聖戦関係者の人々をここまで盛大に右往左往させといて、もはや「過去の歴史に介入してはなりません」どころの騒ぎじゃねーぞ、これ。

 どうすんだ、オイ……。




■論点その3:カルディナーレさんの存在様式が、もはやピエロを完全に通り越して、ほとんど痛々しいというレベルにまで達しつつある件。


 そんな動揺も抜け切れないうちに、「ですからあなたとはここでお別れしなくてはなりません シジマ今までありがとう」などという薄情なことをアッサリ言って、不思議な力でシジマさんのダメージを治癒する沙織さん。

 「じゃあ…」
 「あ…」


 いやいやいや!「じゃあ」じゃねーから!そんなかっこつけて一人でアッサリと去って行けるような場面じゃないから、ここ!

 だって沙織さんってば、いったいこの後どうやって、その「神ですら出られない迷宮」から出るつもりなんだ!? しかも沙織さん、そんな危険な迷宮に、まさかシジマさんをひとりぼっちで置き去りにしてくつもりなのか!? ひどいよ!ひどいよ!かわいそうだよ!このアテナを見送るシジマさんのめちゃめちゃ不安そうな表情を見てみろよ! マジでかわいそうに思えてくるレベルだぞ!

 ……とか思っていたら突然、一群のバラ攻撃が、アテナめがけて襲ってきました。すごい、便利だ。犯人の絵が描かれていないのに、犯人がこの時点で既に特定できてしまう。(笑)
 しかし、問題はこの後です。何とシジマさんがアテナの盾になって、そのバラ攻撃をまともに食らって、倒れてしまうではありませんか。
 エエエエ?やられるの?そこ、やられるの?今さら?まさかのダガーローズで?

 「シジマ!!シジマしっかり!」
 「ぐううっ ア…アテナ…ご無事で…」


 えっ、ちょっと!なんかセリフだけ見たらまるで臨終のお言葉なんですけど、大丈夫ですかシジマさん!
 っていうか、さっきまで赤子のアテナを抱えた状態で、同じ技を散々かわしまくってたような気がしたんですけど!どうして今さら!しかもダガーローズに!(←カルディナーレさんに超失礼・笑)
 うーむ、やっぱり不意打ちのせいなんだろうか。Part54のダガーローズは不意打ちではなかったもんなあ。

 「フッ 今の話はあらかた聞かせてもらったが そんな途方もないことをこのカルディナーレは信じぬぞ まやかしは二度も効かぬ 今度こそその首とってくれるわ 覚悟しろ!」

 おおお。カルディナーレさん。思いっきり堂々とアテナ相手に「その首とってくれる」とか言っている。
 もうだめだこの人。200%裏切者確定だ。これはもう後出しの言い訳すらきかないレベル!
 ちなみに、どうやら前回カルディナーレさんを幻惑にかけたのはアテナだったらしいということが、今回のこの描写で確定したようですね。

 「カルディナーレ 控えなさい」
 「うっ な…なんだこの小宇宙は!」


 いや、「なんだこの小宇宙は」じゃねえよ。そんなもん、黄金聖闘士ならアテナを目の前にした瞬間に気づいてなきゃおかしいレベルだろ。特にカルディナーレさんなんて前回、アテナからじきじきに幻惑までかけられてんだろ。そりゃもうその時にとっくに小宇宙の巨大さに気づいてなきゃまずいだろ。おまえ本当に黄金聖闘士なのかよ。そもそもどうして黄金聖闘士になろうと思ったんだよ。色んな意味で。

 「バ…バカな…こ…この小娘 本当に…」
 「控えるのです」
 「う…うう…むうう〜〜〜っ こ…小悪魔め!わたしは信じぬ!」


 ……えっ?ちょっと、カルディナーレさん? アナタ、相手がアテナだってわかった上で、首を取ろうとしてるんですよね?「小悪魔」とか「信じぬ」とか、いったいどういうことなんですか?この期に及んでいったい何を信じないっていうんですか?まさか今まで「目の前の子供は偽者のアテナだ」とでも思ってたんですか?それで、「こいつが本物のアテナだなんて信じられない」って意味で言ってるんですか?
 それとも、「目の前の子供は本物のアテナだけど、こんな子供の格好をしてるから、アテナとはいえ弱いだろう」と思ってて、それが意外に強いから、それが「信じられない」っていう意味で言ってるんですか?
 だ、だめだ。いずれにしてもカルディナーレさんの思考回路が完全に支離滅裂になっている。まったくこれっぽっちも推察することができない!


 「死ねえ!!」

 どうやら相当テンパってしまったらしく、カルディナーレさんは突如アテナに向かって絶叫しながら、白目を剥いてヘンな踊りをおどりはじめました!あ、いやこれ一応、ダガーローズを投げつけてるのか!
 しかしながら不幸にもコマが小さすぎるせいか、まるで小人さんの踊りみたいで、正直、小物感と面白感がハンパない!(でも視覚的な破壊力だけはある意味すごい!)
 しかも何がひどいって、これでカルディナーレさん本人は真剣だというのが一番ひどい!

 しかしながら、これほどの犠牲を払ってまで(笑)、一生懸命カルディナーレさんが放ったダガーローズは、アテナによってあっさり止められ、逆にカルディナーレさん自身に襲い掛かってくるのでありました。

 「うわああ――っ」

 あ、何かこれ、原作のポセイドン編で、星矢たちがポセイドンに放った攻撃がことごとくはねかえってきたのと同じ描写ですね。たしかジュリアン様いわく、「天につばすれば己自身にはねかえってくるのだ 神に拳を向ければことごとく自分にかえってくるのだ」ということでしたが、この技、沙織さんもできたんですね。すごい。車田漫画すごい。20年以上も経って、設定が繋がったぞ感がすごい。

 それにつけても、カルディナーレさんの眼球寸前でダガーローズを寸止めする沙織お嬢さんのサド嗜好は、まさにあの「馬におなり!ウフフフー!」の人そのものであったわけですが。
 いやほんと、今回改めてつくづく思ったが、車田御大は本当に神様を描写するのが上手だよな!良い意味でものすごい恐ろしくて神々しいぞ、この沙織さん(神)!(←超ほめてます★)

 しかしこうなってくると心の底から気になるのですが、いったいどうしてカルディナーレさんは、眼球寸前でダガーローズを寸止めしてもらって、体にも聖衣にも全く傷がつかずに済んだというのに、「ひっ ひ…ひっ ひいいいい〜〜〜〜〜っ」とか言いながら、一人で勝手に「ドサッ」って倒れているんだろう。

 まさか、恐ろしさのあまり気絶したのだろうか。

 えっ。まさか、言うに事欠いて仮にも黄金聖闘士が、しかもアテナを裏切るとかハーデスに与するとか堂々と宣言して息巻いてた人が、たかだか眼球寸前でダガーローズを寸止めされたくらいで、「ひいい〜〜」とか言って気絶を……?
 いやまあ確かに沙織お嬢様のサド嗜好はひどいなって私も思いましたけど、それでも体のどこにもまったく傷ひとつついてないのに、たかだかダガーローズを寸止めされた程度で、「ひいい〜〜」とか言って気絶を……?
 もうワタシ、思わずこのページ五度見くらいしちゃったYO……?




■論点その4:アテナに許されて付いていくシジマさんがあまりにも嬉しそうすぎて、なんだかシッポをパタパタしてるワンコのように見える件。(笑)


 「シジマ!(略)ごめんなさい わたしのために幾度も痛い思いをさせて…本当にごめんなさい」

 いや、ちょっと、今さらそういうセリフをシジマさんにだけ言うくらいなら、シジマ以外の歴代の聖闘士たちに対してもちゃんと同じような言葉をかけてねぎらってあげてほしいかなあ……という気が、個人的にはうっすらとしなくもないのですが、しかしシジマさんの場合は今までがあまりにも報われなさすぎたので(Part50など参照・笑)、今回はまあ良いとしましょう!

 「な…なにをおっしゃいます わたしはアテナの聖闘士(略) たとえあなたがこの時代のアテナでなくとも…アテナであるならば…わたしはこの先も身命を賭してあなたをお守りいたします」

 うん、そりゃそうだ。聖闘士なら普通そう言うよなあ。
 このへんのシジマさんの描写は、とても真っ当な本来の聖闘士の姿、という感じで、見ていて非常に気持ちが良いです。(特に先ほど、全然真っ当じゃない聖闘士の姿を、合計で五度見くらいさせられてしまっただけに……)(チーン……)

 「しかし問題はこの迷宮 アテナといえども脱出は困難かと…」
 「たしかに…神々さえも迷って出られぬこの迷宮 いったいどうしたら…」


 おいおいおい!「たしかに」とか言って、アンタやっぱり出られないんじゃないか!
 ほんとに沙織さんは、さっきカルディナーレさんが攻めてこなかったら、シジマさんを置き去りにしてひとりで一体どこにいくつもりだったんだ?

 「はっ これは?」
 「カルディナーレの体についていたものですね」
 「まるでクモの糸のような…」


 そして沙織さんが気づいたところによると、どうやらこのクモの糸こそが、この迷宮を脱出するカギだったらしい。その名も「アリアドネの糸」。「神話の時代から伝わる迷宮脱出用の糸」らしい。
 なるほどギリシア神話のアイテムをうまく散りばめてきたなあ、という印象です。アルテミス様の親衛隊といい、ヘカーテさんといい、御大は今回の連載を描くにあたって、やっぱり結構ギリシア神話を読み込んできているのかも。凝りすぎず、浅すぎず、ちょうど良い塩梅だと、個人的には思います。

 「そ…そうか この糸でカルディナーレはここを自由に行動できたのか」

 ああ、うん、でもやっぱり「アリアドネの糸」があったとしても、教皇が迷宮を発動させたせいでシジマさんとアテナを発見しにくくなってたっていう事実は変わらない気がするけどな!(笑)

 「シジマ 一緒に行きましょう」
 「は…はい アテナ!」


 いそいそと答えるシジマさんがあまりにも全身から嬉しそうなオーラを発散させすぎていて、何だか散歩に出かけるワンコみたいでめちゃくちゃ微笑ましいです!(笑)
 やっぱり聖闘士にとって、お仕えする神様がいてくれるって、嬉しいもんなんですね。聖戦ごとにしか降誕しないというのもあって、余計に嬉しさが募るのかもしれないですね。それでこそ、アテナ降誕の時にアテナ神殿にまで駆けつけた甲斐があったってもんです。良かったね、シジマさん。

 ……しかし地味に面白かったのが、この人たち(シジマとアテナ)、一応カルディナーレさんの体についてるアリアドネの糸を切らないでやってるあたりとか、実はものすごい親切なんじゃないかと思われる。(笑)
 いやあ、だって、もし私がシジマさんだったら、ここは間違いなく速攻でカルディナーレさんの体からアリアドネの糸を引きちぎって、アトカタもなく回収しながら迷宮を脱出してやるところですヨ!(笑)
 やはりこれはアテナとシジマの懐が深いと取るべきなのか、いや、それとも、あまりにもカルディナーレさんのことがどうでも良すぎて全く眼中にないと取るべきなのか。微妙に気になるところですが、たぶんアテナとシジマである以上、恐らくは後者なのであろう……。(チーン)




■論点その5:まさかこのタイミングで水鏡先生がそうなるとは思わなかった件。


 さて、場面は変わって天秤宮。
 天馬と瞬が水鏡先生(と童虎)を気にしながら、ようやく宮まで辿りついたところ、なにやら漢詩が聞こえてきました。

 勧君金屈巵
 満酌不須辞
 花発多風雨
 人生足別離

 花発多風雨 (花が開けばたちまち嵐で吹き散らされてしまう)
 人生足別離 (人生どっちをむいても別ればかりだ)


 うわ……これ、童虎さんが歌ってるんですね。そうか、二人ともネイティブの中国人だから漢詩なのか。うわ……なんだこれ。どういう神演出だ。

 そう、天馬くんと瞬が見たのは、どうやら息絶えているらしい水鏡先生の姿と、その水鏡先生の遺体を抱えて別れの漢詩を口ずさむ童虎さんの姿だったのでした。
 この3ページの一連の流れ、描写・コマ割からネームから何から、本当にすごいです。本当に渾身の表現だと思いました。
 そうなんだよなあ。私はこの漫画を描いてる原作者さんの、こういうセンスが好きなんだよなあ。「聖闘士星矢」という漫画のことが好きになったのも、結局のところ一番はこのセンスなんだよなあ。
 いやまあND初期らへんのクオリティにはとりわけ色々思うところもありましたけど(笑)、もう今回のこれを見てしまったら、ほんとに一生ついてくしかないなと思ったよ。あくまでも個人的な感慨ですが。

 というわけで、このシーンに関しては、もう本当に何にも言う事ないです。
 言うだけヤボだわ、こりゃ!


 ……しかし、せっかくなので敢えて数点ほど感想を述べるとすると(笑)、まず、まだ天馬くんと顔合わせしてないのに、このタイミングで水鏡先生が死んでしまうとは思わなかった。
 でも良く考えてみたら、そういえば、そもそも御大って、こういうこと、しますよね……。「ギリギリ間に合わない」「ギリギリ看取れない」みたいな。うん、今までだって、良く考えたら結構あったわ。
 例えばハーデス城において、サガたちの事情をすべて知った氷河が、カミュの所に駆け寄ろうするんだけど、もう少しで手が触れる、というところでカミュが灰になっちゃうあたりとか。あるいは嘆きの壁に紫龍がたどりつくのが、黄金聖闘士たちが全員死んじゃった直後だったりするところとか。いや、氷河も紫龍も、大好きなお師匠様と言葉すら交わせずに別れなきゃならなかったわけですよ。紫龍なんて言葉を交わすどころか、死に目にすら合えなかったわけですよ。しかも、どっちも「もう少し早ければ間に合ったのに!」というギリギリのタイミングだったわけですよ。
 なんか噂に聞く限りでは、アニメだとそのへん、改変されてるみたいなんですけど(なんか間に合うらしいし、しかも長々としゃべるらしいんですけど)、私の個人的な嗜好としては、この原作の「ギリギリ間に合わなかった」「別れの言葉も交わせなかった」的な演出のほうが、はるかに余韻があって、心をえぐられて、忘れがたくて、圧倒的に好きです。世の中、成就すりゃいいってもんじゃないんだよ!しゃべらせまくればいいってもんじゃないんだよ!!!!!(力説)

 そういう原作ならではの「聖闘士星矢」のすごく良い部分を、今回は改めて再確認できたかな、と思いました。

 しかし次に思うのは、水鏡先生の真意は未だに明かされてないというのに、もう水鏡先生が死んじゃって、果たして物語は大丈夫なんだろうか、という点。(笑)
 いや、これだけ印象深い演出で死んだ以上、後から「実はまだ生きてました」とか「実はまた生き返りました」とかされてもぶっちゃけ台無しなんで、まあたぶん水鏡先生はこのまま生き返らないんじゃないかなあとは思うのですが、しかしそうしたら彼の真意は今後どうやって明らかになるんだろう。
 それとも死ぬ直前に童虎に何か伝言したりとかしてるんだろうか?

 そしてついでに思ったのは、どうやら今回、童虎さんは無事にヒヨコを卒業したようである、ということですね。(笑)
 水鏡先生が弱っていたとはいえ、一応互いの奥義を激突させて勝った、というのが理由のひとつ。しかも、あまつさえ、そのことによって相手(親友)は死んでいる。これ、どう見ても、成長譚における通過儀礼のパターンだと思います。
 そして今回のこのインパクトと演出から考えて、恐らく物語のなかで今後の童虎さんは、もう二度とヒヨコにはならないんじゃないかと思います。たぶん作者がそういう方向にお描きになるだろうという気がする。
 ……そうなってくると、超個人的な煩悩としましては、いよいよ白羊宮のほうのヒヨコの将来が非常に心配になってくる訳ですが(笑)、ま、まあそのへんは原作者のバランス感覚を信頼するしかありませんな。一応、全盛期の御大のバランス感覚は本当にすごかったし。う、うん。期待してる。き、期待してますよ……。ガクブル……。




■おまけ:巻末の作者コメント。「次は新年1号で復帰します。乞うご期待!!」


 うお!マジで!?再開までの時間がいつもより短いじゃん!やった! (←Part54のカルディナーレさん調でお読みください★)



<完>


多分続く


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Written by T'ika /2013.10.3