■冥王神話 NEXT DIMENSION
「Part15 月の神殿」 ツッコミと考察
(2009年2月19日発売・週刊少年チャ○ピオン12号掲載)
(注意)
・このツッコミはネタです。実在の人物・団体等とはいっさい関係ありません。
・強度のツッコミが苦手な方は閲覧の際に副作用として痒み・発疹・アレルギー反応が出ることがありますので十分ご注意ください。
■扉絵のツッコミ(1ページ目)
- どアップの星矢がガッツポーズをしているすみっこの方に、またしてもさりげなく「全世界待望の『星矢』の続編!!」というアオリ文句が入っている。(この通りの色で)
- どうもここ最近、NDが「星矢」の「正統な続編」だと強調する言葉が明らかに増えている気がする。
- ちなみに今回は「激筆20ページ」らしい。
- 他の連載と同じくらいページ数がある。何気に前代未聞の掲載ページ数である。
■ストーリー以前のツッコミ(2ページ目〜)
- あれっ!なんか突然原稿が白黒なんですけど!!!
- あれほど宣伝してた「全編オールカラー」ってのはどこいったんだ。まあ別に個人的には全然カラーじゃなくていいんだけど。
- でも今回の原稿については、もともとカラーで描いたものを、後からムリヤリ白黒印刷にしてるっぽいので、背景とか濃淡が割とつぶれてて、ぶっちゃけものすごく見づらい。
- そして何気に連載が雑誌の巻頭じゃなくて149ページからになっている。
- つーかこの掲載方式だともしかして、アンケート結果がイマイチだったら容赦なく後ろの方に下がって行っちゃうんじゃないかい?
- 御大、攻めてきたな。すげえ。
■オオオオオ「どうやら迷ってしまったようですね 瞬」(2ページ目)
- また迷子かよ!!!
- どうやらここにきて「聖闘士がアテナと二人で行動したら必ず迷子になる」の法則が成立してしまったようです!(先例:ハーデス編のシャカ)
■「おまえたちどこへ行く気だい」「あなたは?」「あたしゃ月の魔女ヘカーテさ」(3ページ目)
- すごい!御大、マニアック!!!
- ちょっとだけマジメに解説すると、ギリシア神話のヘカーテ(ヘカテーとも)は、もともとはトラキア地方発祥の月の女神だが、(たぶんアルテミスとかぶってしまったため)冥界の女神とされるようになったもの。魔術や魔法・呪いをつかさどる女神として非常に畏れられたらしい。人びとを苦しめる魔神を地上に送ったり、夜、四つ辻や墓の近くや犯罪のあった場所などに、地獄の犬を連れて現れたりするらしい。そういう怖い女神なので、古代ギリシアの人々はこの神を、頭が3つある異形の姿で祭ったりしていたらしい。月の持つイメージの中からとりわけ「死」と関係する不吉な部分ばかりを切り取って具現化したような存在ですね。
- そのような恐るべきヘカーテの神話を知ってか知らずか、御大はこのキャラクターを、いかにも怖そうな悪そうな恐ろしそうな老魔女として描いております。もうこの顔とか、見るからに人外。
- しかもアルテミス神殿への道の途中でヘカーテを出すなんて、これ明らかにもともとはヘカーテが月の女神だったっていう経緯を意識してると思う。
- いやこれ、いくらなんでもギリシア神話に詳しすぎだろ。ヘカーテのキャラ把握しすぎだろ。
- いったい御大は連載を休んでいた間、どんだけマニアックにギリシア神話を研究していたのか。それともまさかこれも直感なのか。もう私ほんとに御大のことが心の底からワカリマセン。(褒め言葉です)
■「ここは人間の来るところじゃないよ とっととお帰り」「わたしたちは月の神殿に行きたいのです(略)わたしはアルテミスの妹アテナです どうか道を教えてください おばあさん」(3〜4ページ目)
- と、この部分まで沙織さんが発言した瞬間に、突然ヘカーテの顔が歪み、うろんな目付きで沙織さんを睨み上げながら、「ア…アテナじゃとぉ?」と啖呵を切り始めた。
- だから沙織さん!初対面の女性に道を聞くのにいきなり「おばあさん」なんて失礼だよ!絶対そこの部分で気分を害してるよヘカーテさん!
- これだから、13歳の財閥のお嬢ってもんは世間知らずでいかん。
■「教えてやらぬでもないが なにをくれる?」「すみません あいにくなにも持ちあわせておりません」(5ページ目)
- ほら、「おばあさん」なんて言うからヘカーテさんとうとうカツアゲモードに入っちゃったじゃないか。
- ていうか「あいにくなにも持ちあわせておりません」って酷い言い訳だな。
- 冥界の瞬ですら、「yours ever」のペンダント引っ張り出してきたっていうのにさ。
- だいたい財閥のお嬢が外出時に何も持ちあわせてないって言っても、聞いてるヤツが信じるわけないだろ!
■「ありきたりの金品などいらぬ そのかわり…(略)あたしのほしいのは…その美しい髪じゃよ」(5ページ目)
- へ、ヘカーテさんついに刃物を取り出しました!
- カツアゲです!完全にカツアゲモードです!
- しかも「その髪切ってやろうか」モードです!
- ヘカーテさんのあまりの老魔女的な外見に騙されがちですが、これは完全に女ヤンキーのケンカです!
■「髪?」「アテナの髪は一本でも煎じて飲めば百年長生きできるというからの すべてもらえばこのばばも永遠の若さをとりもどすことができるじゃろうて」(6ページ目)
- なにいーッ!!!
- ここに来て突然、まさかの爆弾発言、来たー!
- すべての聖闘士星矢ファンが長年疑問に思っていた教皇さまのナゾの長寿の秘密が、今ここに明らかにー!
- そうか……ひとりにはMISOPETHA-MENOS、もうひとりには髪の毛2〜3本、というカラクリだったんだな……。
- しかしそうだとすると、気になるのは、ヘカーテさんによると、アテナの髪の毛を煎じて飲んだ人には若さももれなくついてくるらしいという部分なのだが。
- やっぱり教皇現役在任時のシオンが、童虎と違って248歳にして身長も縮まず、腰も曲がらず、体格もしっかりしていらっしゃったのは、もしかしてあれ、アテナの髪の毛のせいで、実際けっこう若かったんじゃなかろうか。(例えば外見年齢50歳くらいとか…)
- もしかしたら教皇のあの仮面は本当にそれを隠すため…とか…(聖闘士語辞典に半分冗談で書いた文章が、何かあながち冗談でもなくなってきたような…)
■「わかりました この髪でよいのならさしあげましょう」(略)サク… (6〜7ページ目)
- お嬢様めっちゃ思いきり良いな!
- って、え?なに?髪の毛全部切ったの?耳の辺りの一房だけとかじゃなくて??ひとつかみ分とかじゃなくて???まるごと全部ばっさり???ええええ????
- いやそれ、せっかくの見せ場なのに、白黒の印刷が見にくすぎて、わかりにくいよ!もったいないよ!(爆笑)
- しかし後の方のコマで確認するに、沙織さん、どうやら思いっきりソレントくらいの髪型になっている。
- あるいは星華ちゃんです。星華おねえちゃんの髪型にそっくりです。
- ま、まさか!まさかシスコンの星矢を落とすために、こやつ、狙って……!
- どうでもいいけど、ロングの髪の毛をボブまで切ったら突然髪の毛がはね始めた、というところがやけにリアルだ。
- それにしても衝撃だなあ、沙織さん……。これ、こんなに切っちゃったら多分、漫画の中ではもう元には戻らないよねえ。星華ちゃんとの描き分けをちゃんと考えないと、このままじゃ外見かぶっちゃうよねえ。
- ……と今書きながら恐ろしい考えが脳裏をよぎったのだが、まさか、星華ちゃんの存在自体を無かったことにしようという意図なんて、まさか、よもやまさか、ありませんよね車田センセイ?
■「おばあさん どうぞお受け取り下さい」「あ…ああ え…遠慮なくもらうわい」(7ページ目)
- ヘカーテさん、あきらかに引いてます。
- 明らかにビビリまくりながら髪の毛受け取ってます。
- そりゃまあ引きもするわ。私もびっくりしたよ。
■「それで神殿への道は?」「まっすぐじゃ」(略)「あっ待て!髪だけ取って逃げる気か!」「瞬 大丈夫です ごらんなさい」「あ!?」「最初から一本道だったのですね」(8〜9ページ目)
- おお!神殿への一本道があらわれたぞ!
- しかし幻覚であざむいてまっすぐの道をわからなくさせていたなんて、まるでどこぞのジャミールの世捨て人を非常に髣髴とさせる手口ですね!
■「むうっ 幻覚であざむいて奪うとは何と卑劣な しかも女性の命ともいうべき長い髪を…」(9ページ目)
- じょ、女性の命ともいうべき長い髪とか、お前、いつ時代の人間だ!(笑)
- とりあえず瞬は今まさに、魔鈴さんとシャイナさんと星華おねえちゃんと氷の国のナターシャとエスメラルダとテティスと美穂ちゃんの全員を完全に敵に回したように思われる。
- あと紫龍やシャカやミロやサガやカノンやカミュやムウやアルデバランやシオンの髪型に対して瞬がどう思ってるのか、とっても気になってきたよ!
■「あら そうでもないわ」「エ?」「ほんとはわたし前から短くしたかったの 軽くてすっきりよ ウフッ」「サ…沙織さん」(略)(9〜10ページ目)
- さすがお嬢様、漢前すぎる。(漢は「おとこ」と読みましょう)
- どうでもいいけど、今生のアテナの笑い方はやはり「ウフッ」がデフォルトなのか。(参考:邪武に馬乗りになって大喜びしていた時の笑い方=「ウフフフフ――ッ!」)
■「やっとつきましたね」(略)ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ ザザアッ (10〜11ページ目)
- おお!月の神殿に足を踏み入れた瞬間、雨のように矢が降ってきたぞ!
- なんか十二宮編の冒頭を思い出すなあ。
- また沙織さんが矢ガモになったり捕まったりしてみんなに迷惑かけなきゃいいけどなあ。(←王道展開を思わず期待するパブロフの犬的コメント)
■「あぶない沙織さん!」(略)「ローリングディフェンス!!」 ギャラアアアン (12ページ目)
- うおお!ローリングディフェンスだ!なつかしい!
- いやあ、わかってはいるんですけど、やっぱ懐かしいですねえ〜。
- あと地味に擬音も懐かしい。ギャラアアアンってアンタ。(笑)
■「乱暴はやめてください!いったい誰です!」「それはこちらの問うところ おまえたちこそ何者か」 ザッ (13〜14ページ目)
- 沙織さんと瞬に矢を射掛けたのは、アルテミスの親衛隊っぽい人びとでした。しかも全員女子!
- 確かに、ギリシア神話の処女神アルテミスって男が大っ嫌いで、お付きの者も全員女子だった。
- しかも弓矢ってアルテミスの大好きな武器だ。
- 御大のギリシア神話の活かし方がすごいさりげなくてセンスいいと思う。
■「待ちなさい月衛士(サテライト)たちよ」「はっ こ…これは…カリスト様!」(15ページ目)
- 「月衛士」のルビもさておき、個人的にはこのとき月衛士たちを制止した偉そうな人の名前が「カリスト」だという所に、御大のマニアック心を感じずにはいられない。
- 確かにギリシア神話のカリストと言えば、アルテミスの特別お気に入りの侍女の名前だった。(まあ神話のカリストはその後できちゃった婚で男嫌いのアルテミス様の逆鱗に触れて人生をクビになっちゃったけど…)
- というか、カリスト様のお顔に眉毛がないように見えるのは私の気のせいでしょうか。
- どうも某牡羊座の聖闘士のせいで、ヘンな眉毛の人には無意識的に視線が釘付けになってしまうのですが、どうすれば……。
■「アテナ様 お許しください わたしはアルテミス様の侍女をつとめるカリストでございます」「わたしは姉上に会いに参りました どうか取り次いでください」「おやめになられたほうがよろしいかと」(16ページ目)
- カ、カリストさっそく無礼すぎる!!!(大爆笑)
- 速攻で断ったよこの人!「お許し下さい」の三秒後に「おやめになられたほうがよろしいかと」って言ったよこの人!
- しかも断り方があまりにも偉そう!(←超ほめ言葉です・笑)
- そうですよね!聖闘士星矢に出てくる女戦士なら、このくらい図太くて格好よくて偉そうでふてぶてしくて肝が据わっててクールで貫禄がなくちゃダメですよね!わーい!(←ツッコミ人は喜びの踊りをおどっています)
■「アテナ様の悪行はアルテミス様のお耳にも入っておいでです ゆえにアルテミス様は不快の様子」「わたしがなにをしました?」「海王ポセイドン様 冥王ハーデス様 オリンポス十二神のなかでも天帝ゼウス様に次ぐ二大神を討ち果たされたことでございます」(17ページ目)
- いや、それ、そいつらが地上を支配しようとしたからだろ!
- 「冥王ハーデス様」に至っては地上を永遠の闇にしようとしてただろ!
- そんであんたたち今、地上のオリンポス神殿にいるんだろ!自分も地上に住んでんだろ!ハーデスとポセイドンに地上支配されるの絶対イヤだろ!
- つうか、ハーデスとポセイドンとゼウスってもともと別に仲良くないだろ!
- というわけで、アルテミス様のおっしゃっていることには明らかな矛盾が存在しているように見受けられます。こういう場合は一般的に、隠れた第三の答えが存在すると、相場は決まっているのでございます。
- つまり発言者は本当は、全然違う別のことが気に入らないのだと思われます。
- 要するに、恐らくアルテミス様は、「地上が危機に瀕しているというのに私をさしおいてアテナが目立ちまくったこと」に対して、すねていらっしゃるのだな、と!
■「お会いになればアルテミス様のお怒りを招くやもしれません どうかこのままお立ち去りください」「帰りません 通さぬとあれば…力づくでも押し通るまでです」(18ページ目)
- すげえ!
- このわけのわからない強引さ、なんだかものすごく聖闘士星矢っぽい!
- でも、それならどうして「Part1」の童虎とシオンは、同じことしてたはずなのにあんなにショボかったんだろう……今回のカリストと沙織さんと比べたらまるでゴミクズだよ……威厳が……
- やっぱり「何のために行動してるか」っていう、動機の部分の違いが大きいんですかね……
■「なるほど うわさ通りお勇ましい ではこちらへどうぞ」(略)「お姉様 アテナでございます」(18〜19ページ目)
- へえ、沙織さん、アルテミスに対しては「お姉様」って言うんだ。
- それじゃどうしてポセイドンやハーデスに対しては「おじさま」って言わなかったんだろう。
- やっぱりどう考えてもケンカ売ってるようにしか聞こえないからだろうか。
■「妹よ 死ににまいったか」(20ページ目)
- うおおおおアルテミス様かっこええ!!!
- 存在感と威厳とセリフ回しがムチャクチャかっこええ!!!
- なんかもう普通に超かっこええ!!!
- というわけで、やっぱり御大は神様の描き方がムチャクチャ上手だと思いました。
■次号No.13につづく
- 普通に面白いです!
- 普通に続きがめちゃめちゃ楽しみです!
■というわけで、面白かったので御大をマジメに褒めてみました
主に3点にまとめてみた。
(1)今回の御大の長所その1
…ギリシア神話をあまりにもマニアックに読み込んでいる点。
いや、こんなの、元ネタがわかる人しか喜ばないと思うし、週刊連載のポイント稼ぎには直結しないから勿体無いとも思うんだけど、それでもこういうところがしっかりしている作品というのは、なんというか、パチモン臭が薄くなるので、実は結構大事なんじゃないかなと思うのです。
とりわけ車田漫画はストーリーが奇想天外なので、ややもすると説得力がなくなってしまう危険が(潜在的には)あると思うのですが、こういう細かい土台の部分でかなり事実関係を深く調べて、かなりしっかりした世界観を構築しているからこそ、見事な安定感で踏みとどまれる。
なので、もしかしたらこういうマニアックな姿勢(超褒めてます)が、実は今までも彼の成功の一端を支えてきていたのかな、と今回思いました。リアルタイム連載でも、ギリシア神話は相当きちんと読み込んでいたぽいし、ジャミールやスターヒルなんかも、似たような地域の資料を相当調べたんだろうなっていう感じの描写の仕方をしているし。
(2)今回の御大の長所その2
…性別に関して一見保守的に思えつつ、実はものすごくぶっ飛んではみ出しているところが、非常に面白い点。
とりわけ、惜しげもなく髪をバサアアアってぶった切る沙織さんが、非常に漢前(おとこまえ)で素晴らしかったと思います。
あと、カリストが尋常じゃなく偉そうで失礼でよかった。ラストのアルテミス様の威厳も尋常じゃなかった。
今回は敵がアルテミスなせいで、敵方も全員女っつーことで、まあ漢前なねーちゃんたちがいっぱい見られて、オイラはとっても満足です。
(3)今回の御大の長所その3
…神様の描き方がピカ一な点。
いや本当に、神様の描き方、素晴らしいです、この人。というか、やっぱりフツーに漫画が上手なんだと思います。絵の上手下手とかとは全然関係ない、もっと違う水準において。
そもそも神様というのは、実はものすごくわがままで、その意味では結構人間っぽいはずなのに、それでも存在が圧倒的に人間じゃなくて、絶対的な威厳だとか大きさだとかを兼ね備えているもの。そういう圧倒的な存在感とか、威厳とか、大きさというものを、本当に上手に表現する漫画家だなあと感じます。
だって今回のアルテミスとか、言ってることだけ見たら完全に支離滅裂じゃないですか。「アテナの悪行」とかあんなワケワカラン理由で気分を害してて、人間だったら間違いなく即刻アホキャラ認定を頂けちゃいそうな立場だというのに、出てきた時の存在感はもう、ほんとに神!でしたもの。なんか色々なものがうやむやなまま、思わず「おおお〜」と平伏させられてしまうあの迫力と説得力。ううむ。しびれる。惚れ直しました。
<完>
多分続く
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