スターライトエクスティンクション
Starlight Extinction /Mu




■外見・形状

 その名のとおり、「まるで無数の星の光にのみこまれたように」敵の体を消滅させる技。
 何だかさらっと言われてしまうと慣用句じみてしまうところもありますが、よく考えてみたならば、星の光。それってかなり、かそけき光だと思うんです。その淡い淡い光が集まって敵の体を包み、次の瞬間にはもう「飲み込むように」消えてゆく。そしてそのときにはもう、敵の体もそこにはない。派手な背景効果や敵のダメージとは裏腹に、その部分だけに注目してみると実はすごくすごく静かな、モーションさえほとんどない、そしてそれだけにとても幻想的で不気味で美しくて恐ろしい技なのではないだろうかと感じます。(ほんと大好き)


■機能&効果、特異性

 個人的に推理を重ねた結果、この技は、どうも見た目だけではなく実際の効果もかなり…恐ろしいんじゃないかと思います。

 星矢相手に使ったときは彼をスターヒルに飛ばしていたので、テレポーテイション技だと認識されがちな気がするんですが、相手を移動させるだけの「必殺技」なんぞはっきりいって無駄に回りくどいだけ。(ていうかそれは必「殺」技じゃない。)対星矢のあの場面は、技を撃ったように見せかけての単なる普通のテレポーテイション、というのが真相であって、完全にフェイクだったのではないかという気がします。ムウ自身が「かけられた者の行く先は・・・死の国以外にありません」と言っていることからも、もともと行き先を選択して敵を飛ばす、という性格の技ではないようにも思えます。
 (ちなみに「行く先は死の国」という表現はあくまでも比喩じゃないかと私は思います。「死の国にテレポートさせる」という意味ではなくてむしろ「受けたものは必ず死ぬ」ということであり、それ以外の何ものでもないのではないかと。「行く先」という答え方をしているのは、恐らくシオンが「ペガサスをどこへ飛ばした」と問うているからでしょう。)

 いえ率直に言ってどうも私は、この技はテレポーテイションないしはその応用といった類のものでは、ないんじゃないかと思うのです。その最大の根拠は、後述するとおり実際の原作の画面におけるこの技の描写なんですが、…それ以前にそもそも、あの性格が複雑骨折してそうなムウに限って、必殺技がそんなに生易しいはずないじゃないですか!(笑) しかも普通のテレポーテイションとどう違うんだという厳しいツッコミが入りかねない技を、あのシオンがああも恐ろしがるわけがない。

 ではこの技の正体は一体何なんだ、という話になりますが。

 それを明らかにするためにも、この技については、フェイクだったと思われる対星矢戦と、本気で撃ったと思われる対デスマスク&アフロディーテ戦および対ミュー戦とを比較してみる必要があります。・・・というか、比較したら一見にして明らかというか。

 まず星矢の時。「技」を受けても彼の肉体及び聖衣はまったく破壊されることなく、ただ光に包まれ、消えて行きます。これは相手を傷つけずにスターヒルへテレポートさせるというこの時のムウの意図とも矛盾しません。

 しかしながらデスマスク、アフロディーテ、ミューのときはどうだったかと言うと、どう見てもそれまで無傷だった聖衣が技によってぼろぼろになり、破片が飛散しています。技発動時のムウの構えや画面の描写からは、この技が拳による打撃系でもなければ相手を叩きつけるような投げ技でもないことが明らかなので、つまりフェイクではない真のスターライトエクスティンクションは、どう見てもそれ自体で相手を物理的に破壊していると考えられるわけです。

 さて。ここで注目しておきたいのは、デスマスクとアフロディーテをこの技で消し去った後のムウの独白。
「デスマスクにアフロディーテよ おまえたちの肉体はこの世から完全に消滅し」・・・。
 「肉体はこの世から完全に消滅し」。
 物理的に破壊されかかっているのが確認されたのみならず、直後にはこの世から完全に消滅しているという相手の肉体。

 そして極め付け。これはデスマスク&アフロディーテ戦とミュー戦双方に言えるのですが、この技が終了したあとの画面を良く見てください。
 シュウウウウウ
…という擬音とともに、なにやら灰燼らしきものが流れ漂っているのです。(「灰燼」に違和感ありな方は、サガやシオンたちが塵となって消滅するところの描写と比較してみて頂きたい。やっぱり車田的には灰燼だと思うんですこれって。)

 …えー、(1)必殺技発動→(2)敵の一部(聖衣)が物理的に破壊されている→(3)必殺技終了→(4)肉体がこの世から完全に消滅している(しかも灰がシュウウウと舞っている)。
 このプロセスを見るに、…そして矢印の部分で具体的に何が起こっているのかを想像してみるに、…これってつまりは、

一瞬で、相手を消滅に至るまで(文字通り)粉々にする技

…なんじゃないでしょうか、もしかして・・・。


 ……だってほらね、魔鈴さんだって破壊の根本は原子を砕くことだって言ってたしね!!うん、第一よく考えてみたら、あのシオンが「恐ろしい」なんて言ってるんだから、

そりゃあよっぽど恐ろしいんだよ!!

 (*まあ技を受けた後のデスマスクとアフロディーテが何故か実際の冥界ではなくハーデス城にいるという辺りは、「相手を直接殺しているのではなくてテレポートさせているだけ」という説に有利な部分かもしれないとも思うのですが、しかし2人の肉体が復活も消滅もハーデス軍に自在に操られていたという事実を鑑みるならば、ハーデス(軍)が「死」へと堕ちてゆく2人を途中で掬い上げてハーデス城で尋問するなり何なり、といったこともありえたのではないかという気がするんです。第一本当にムウがテレポートさせているのなら、わざわざ「ハーデス城に」2人を送るというのはどう考えても変じゃないですか?敵のお膝元に敵を送り返してどうすんだよ、みたいな。北極海の海底とか活火山の溶岩溜まりとか使用中の核実験場とかならともかく。)



■位置づけ

 上述のように、この技はシオンをして「相変わらずの恐ろしさ」と言わしめる決め技であり、さらにはいずれの場面においても必ず相手に止めを刺している、文字通りの必殺技です。そのことから考えてもおそらくは、スターライトエクスティンクションこそがムウの最大奥義であるのだと思われます。
 彼には他に師匠伝授のスターダストレボリューションもあるのですが、対ミュー戦での使い方を見るに、ムウにとっての決め技は明らかにこちらのほうでしょう。もっともそれはスターダストレボリューションという技よりもスターライトエクスティンクションという技が強い、ということを意味するのではなくて、ムウという聖闘士の個性と力が、より後者の方の技に合っていたということなのでしょうが。

 これはただ何となく思うんですが、シオンはムウに自らの決め技(であるように思えます)を伝えつつも、ムウがそれを即そのまま自分にとっての決め技とするような怠惰までは許さなかったのではないかなあ(もしそうならほんといい先生)。
 そうそう私は個人的にはシオンの態度から見て、このスターライトエクスティンクションは伝授されたものではなくムウのオリジナルなんじゃないだろうかという気がしています。「ムウよ スターライトエクスティンクション あいかわらずの恐ろしさよ」という言葉からは、シオン自身が一度もスターライトエクスティンクションを使っていないことも考え合わせると、この技がムウにのみ属しておりシオンには属していないと、そういう印象を受けるのです。

 それにしてもシオンはこの必殺技を持つ弟子を随分と評価しているようですねー。「あいかわらずの恐ろしさよ」ってあんた、公然とのろけとるんかい(爆)。いやしかし実際にデスマスクとアフロディーテに対してムウがこの技を使った時、逃げろと忠告する以外に何もできなかったというのは、結構マジに手が出せなかったのではないかなあという気もします。何せ、シオンは冥闘士として2人の力添えをする立場にあったわけですから。(実際ムウのクリスタルウォールはあんなにあっさりと容赦なく砕いているし)
 ・・・もっとも本人はシオンに対して無条件脊髄反射のレベルで一歩下がっているところがあるので、シオンが意外と本気で自分の必殺技を恐れているらしいことには全然気づいていなさそうですが(笑)。



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Written by T'ika /2004.5.6