2005.07.07
ままが外の換気扇の下にふと目をやると、スズメの子が落ちて横たわっていた。
よく見たら目だった場所から沢山のアリが出ていた。
柔らかい場所から体内に侵入して食べていたのだ。
この子は巣立ちに失敗したのか、それとも誤って落ちてしまったのか・・・。
黄色い嘴は、まだご飯をちょうだいと催促しそうだったけど、その子自体がご飯になっていた。
硬いアスファルトの上で朽ち果てていくのはあまりにも可愛そうな気がして、そっと土の上においた。
土に還り、また生まれてきて、今度こそ高い空を目指して飛べる様に祈りつつ。
いつも人間の側で生活している彼らにとって、人工物の中で生きるという事はどんな感じなのだろう。
いや、彼らにとっては、人工物という言葉すら存在しない。
ただ、生きる事に命を費やし、次の命を育てる事に毎日を費やしている。
うちのちょこが外にいる時、スズメは平気でちょこの側で餌探しをしている。
ちょこの事は、仲間ではないにしろ、危険ではない生き物と認識しているらしい。
でも、ままが外にいると、警戒の声を声をからしながら叫んでいる。
人間の側で生きていても、人間は敵であると認識している。
餌台を置いてご飯の足しになる物を置いてても、やはり人間は敵とみなしている。
それでいい。寂しさを感じつつも、それが彼らにとって一番いいんだとくーじぃは思う。
2005.07.16
ままは、この前悪夢を見た。ヒドイ夢。でも、もしかしたら異常者によっておこりうるかも知れない悪夢。
いつもは絶対夜中はちょこを家の中に入れるのに、何故か朝までちょこを外に出していた。
ままは、玄関を出てちょこが座って待ってるのを見て、
『家に入るよ』と首輪にかけたチェーンを外した。
すると、スーッとちょこの首が下へ落ち、ゴロンとアスファルトに転がった。
叫ぶ事すらできなかった。
声も出ない状態で無機質に転がるちょこの顔を凝視した。
キレイな切り口。誰かに刃物で切られたに違いない。
あぁ!!!何故いつも夜は家の中に入れているのに!!!
数年前、札幌市内で外で飼っている犬に毒餌を与え殺すという事件が多発していた。
だから、誰もいない昼間や夜中は絶対家の中にいれていたのに!!!
首の無い身体に抱きつく。動かない尻尾。
警察に通報しようと電話をかけようとするけど、何故かなかなか通じない電話。
そして、やっとこ繋がったと思ったら、返ってきた答えが
『どうせ、犯人が捕まっても器物破損でしかないから。』
身体中に広がる怒り。
警察じゃ駄目だ。自分の手で仕返ししてやるんだ。
ちょこが味わった恐怖を犯人に与えてやるんだ。絶対許さない!!!
そこで目が覚めたままは階段を駆け下り、ちょこを見に行った。
寝てたちょこが驚いてガバッと起き上がった。
2005.08.26
12年前の今日、ままのままがお星様になった。
危篤の知らせを受けて乗ったタクシーの窓から空を見上げると、旭川の空一面に美しい星空が広がっていて、
『あぁ、お母さんはこの星の仲間へとなってしまうんだ・・・』と思ったんだって。
21時26分、右手をままの兄ちゃん、左手をままがにぎり、ままのぱぱ、
ままのぱぱのまま、ままのままのまま、ままのままの一番のお友達に見守られ、ままのままは最後の息を終えた。
ままのままは癌だった。
入院した時は、もう癌があちこちに転移していて手の付けようが無い状態だった。
ままは会社が札幌だったから毎日は行けなくて週末旭川へ通った。
1週間会わないと信じられない位の悪化を目の当たりにするという感じだった。
強い痛みを訴え、苦しむ姿を見ても何もしてあげられない悔しさ、
そして、病気に早く気づいてあげられなかった悔しさばかりがままの中で大きくなっていった。
8月23日、ままの直属の上司が
『こんな時位、お母さんの側にいてあげなさい。仕事は何とでもなるから。いくら休んでもかまわないよ。』
と、休みをくれた。
前の日に
『じゃ、また来週来るから。』と言って病室を出たので、その日お見舞いに行くと、とても嬉しそうに笑った。
ままがままのままと最後に交わした会話は、
『お母さん、ちゃんと食べなさいよ。』
『うん。』
だった。
そしてモルヒネ投薬がはじまり、もう目を開ける事は無かった。
そう。もう目を開ける事は無かったんだけど、
最期の時、ままとままの兄ちゃんで
『お母さん』と呼ぶと意識が無いはずなのに、一度だけ強く手を握り返してきた。
そして、最期に大きく呼吸した。
その瞬間、
『あぁ、これでもうお母さんが苦しむ事はないんだ』
って思った。
悲しみよりも安堵の方が大きかった。
その時、ままのままは48歳だった。
2005.09.03
崖っぷちにハヤブサがいた。
ままは車から降りずにハヤブサを撮った。
するどい爪、何事も見透かしている様な大きくて澄んだ瞳。
ハヤブサは海の方を見ていた。
崖っぷち。
そこをままは越える事はできない。いや、正確に言うと、『生きて越える事はできない』
ハヤブサは、音も立てずに飛び立ち、目で後を追う事すら困難なスピードで崖っぷちのむこうに広がる海原の上空へ消えていった。
凄い。鳥って凄い、やっぱり。
鳥だけじゃない。あらゆる生き物が凄い。
ままは自分が、そんな凄い生き物を脅かす存在である人間なんだという事を思い出しうつむいた。
2005.09.05
昔うちには『太郎』というウサギがいたんだって。
他にもウサギは沢山いたんだけど、ぱぱもままも太郎を特別かわいがっていたみたい。
他の子もかわいかったんだけど、何だか太郎は特別な存在だったんだって。
太郎がうちに来たばかりの時の家族構成は、お姑さん、ぱぱ、まま。
ままは一人だけ他人だという孤独感でいっぱいの日々を過ごしていたんだって。
何をしてても疎外感・違和感がついてまわり、心を閉じて過ごす日々。
そして自分の身体の変化にもとまどう日々。
自分の事を悪く言われて落ち込んで沈んでうつむく事が多い日々だった。
そこへ太郎がやってきたんだって。
ままは大喜びだった。
太郎がいて初めてままも安心した感じがした。
だって、太郎はままの後をついて歩いてくれたから。
太郎はこの家の中でままだけが他人とか関係なくままの事を見てくれるから。
ままにとって本当にありがたい存在だった太郎。
ある日の朝突然立っていられなくなった。
ままは直感的に『もう駄目だ』と分かってしまった。
でも、ぱぱに病院へ連れてってもらった。
ままは仕事休めなくて不安な気持ちをかかえたまま過ごした。
帰宅すると動かなくなった太郎を抱いて泣いてるぱぱがいた。
太郎が動かなくなって数日たっても埋められなかった。
だって、動かないだけでやわらかな毛は変わらない。
今にも起き出して元気に走り回ってくれるんじゃないかと思ってしまう。
でもそのうち死臭がしてきた。
『太郎ごめん。いつまでも甘えてごめん。』
お姑さんに太郎を庭に埋めてもらった。
2005.09.08
日本各地で多大な被害を与えた台風14号が北海道に上陸した。
去年の台風18号の恐怖があるので、ままはずっとそわそわしていた。
停電になったらどうしようとか、アンテナ壊れたらどうしようとか、そんな事ばかり考えていた。
でも、うちはなんともなかった。
朝になり、ままは、急にままのぱぱが心配になり(遅い)
『台風肩すかしだったわ。』ってメールを送ると
『お父さんは 車中で 屁をすかして怒られた。』と返ってきた。
まま、そんなに爆笑しなくても・・・。
2005.09.29
ままは『お見送り』というのが苦手だ。
するのもされるのも苦手なんだって。
一番初めに苦手だと感じたのが幼稚園の時。
幼稚園について、門から入るのはままだけで、ままのままは門のところで手を振っている。
園に入るまで、何度も振り返るとその度にままのままは手を振る。
そうして何度も振り返っているうちにどんどん寂しくなるんだって。
ままは、ある日ままのままに言った。
『お母さん、もう幼稚園についたらすぐ帰っていいから。』
と。
ままのままは、
『何で?』
と言ったので、
『何回もバイバイしたら悲しくなるから。』
と正直に答えた。
次の日からままは、門に入ると振り返るのをやめた。
見送るのも苦手らしい。
相手が車だったり歩きだったりしても、見えなくなるまで見ていたらとにかく寂しい。
相手が何度も振り返って手を振ると、その度に寂しい。
可能な限り、どこまでもついて行きたくなっちゃう。
でも、見送らないでいるのはもっと寂しい気がするから、仕方なく見送るんだって。
くーじぃは、お見送り好きだけどな〜。
2005.09.30
ぎゃーーーーー!!!
昨日満杯にしたばかりの醤油入れが棚の上から落ちてひっくり返ってるぅ〜!!!