ストーンサークルのある山頂まで、3人は時間をかけて登ってきた。
上りだからではない。足取りが妙に重い。
「ティナさん、そろそろ……」
2人に背を向け、湖畔を見おろすティナに、申し訳なさそうにルルカが言う。
あの巨大な碑は、数え切れないほどたくさんの人間の墓標。その中に、つい先程エリーナも加わった。
今、そのマインドオーブはティナが持っている。
ロットは『頼まれた』という魔法使いから借りてきたマインドオーブを、ルルカはティナの父親のものを、それぞれ持っている。
ロットの話では、1度誰かのものになったマインドオーブは、その後別の人間がこうして使っても、最初の人間から浮気するようなことはないという。
マインドオーブが持ち主の心と共鳴するのは、ゴッドガーデンを出る瞬間。こうしておけば、ルルカたちが魔法使いと同等の心を得ることはない。
朱の世界でも蒼く光を放つその宝石を見ていて、ティナはふと思い立った。
懐に右手を入れる。
出てきた手に握られていたのは、マジカルオーブ。
ティナが初めて生成に成功した、ティナのオリジナル。
あの時、ティナの心はボロボロに痛んでいた。
絶望の縁に立っていたあのぐらいで、マジカルオーブには丁度良かったのだろう。
だからうまくいった。
しかしそれは、やはりただの偶然。
このマジカルオーブは、悲しみの結晶なのだ。
そんなものを未練がましく持っていて、なんの意味があるのだろう。
右手を大きく振りかぶる。
手を放れた赤い球は、すぐに空に溶け込み見えなくなった。
「ティナさん…………」
いたわるように、ルルカは呟く。
一度右手が顔を滑り、ティナは二人を振り返る。
そこには、笑顔が浮かんでいた。
「さ、帰ろ。みんな待ってる」
ティナは2人のいる石碑のところまで歩いていった。
(がんばって……ティナ……)
また、どこからか声が聞こえてきた気がした……
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