魔法の使い方〜ゴッドガーデン1〜
そこは、どこまでも暗い闇の中。
 宇宙に渦巻くブラックホールのように、一片の輝きすらない、闇。
 自分が何者なのか、それすらも理解できない。
 そこで、ゆらゆらと闇のゆりかごに揺られているだけ。
 だが、決して孤独ではなかった。
 自分を暖かく包み込むような世界。
 そう、今はこの狭い場所が、自分の世界なのだ。
 その外側から聞こえてくる音に気づいたのは、いったいいつのことだろう。
 ある時は優しく、またある時は悲しく、その声は未発達な自分の耳に届いてきた。
 まるで、自分を呼んでいるかのような声に、小さく体を動かしてみる。
 最初はできなかった。それすら難しかった。
 やがて、自分を包み込んでいる暖かな壁を、弱く叩いていた。
 誰とも知れぬ、姿なき声に応えるために。
 そして、なぜか分かっていた。
 いつか出会えることを。
 理性とは違う。自分で考えたわけではない。心がそう言っていた。
 そして、試練の時はきた。
 周りの壁が急に萎縮を始めたのだ。
 体が圧迫されて、とても苦しかった。
 しかし、その苦しみから逃れようとは思わない。
 誰かの声が、自分を導いている。
 その声に逆らうことなく、自分がやるべきことを完遂した時……光は見えた。
 今まで経験したことのない、光の世界。
 試練を乗り越え、命として生まれ出た瞬間──
 その喜びを、初めての声として歌った。
 そこに待っていたのは、1人の女性の顔。
 外で聞こえていた声が、彼女であることはすぐに分かった。
 いつも呼びかけてくれていた声が、自分の耳元で囁かれる。
「ごめんね……」
 その言葉の意味を知ることはできなかった。
 しかし、その声の悲しみは、はっきりと心に刻まれる。
 理性が芽生える前の記憶は、理性により思い出すことはできない。
 心だけが知っている、心だけの記憶──
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